子どもたちに民主主義を教えよう――対立から合意を導く力を育む

  • あさま社
4.68
  • (60)
  • (21)
  • (3)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 530
感想 : 39
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784910827001

作品紹介・あらすじ

★ベストセラー『学校の「当たり前」をやめた。』著者
元麹町中の校長と、「哲学対話」で著名な教育哲学者が初タッグ!
★宿題廃止、全員担任制、合唱コンクール廃止…
究極の狙いは「民主主義」教育だった!
★教育関係者・必読のあらたな羅針盤
分断の時代を生きる子どもたちに必須の「対話の力」とは?
★親も注目! ビジネスパーソンの現場にも役立つ必須知識

「教育の役割とは何か?」
「学校は何のためにあるか?」

学校改革の旗手と教育の本質を問い続けてきた哲学者・教育学者が
教育の本質を徹底議論! 究極の目的は「民主主義」教育だった。

ーー「多数決で決めよう」のどこに問題があるか、わかりますか?

「誰一人置き去りにしない」を教えるはずの教室で
平然と少数派を切り捨て、
一度決めたことには従え! と「従順な子」をつくる教育がおこなわれている。

未来の社会をつくる子どもたちに本当に伝えるべきことは、
対立を乗り越え、合意形成に至るプロセスを経験させることではないか。
学校で起きるトラブルこそが絶好の学び場であるはず……

本書は、子どもたちの「対話の力」を重視し、
学校で民主的な力をいかに育むかを提案する実践的教育書だ。

民主主義の考え方を広めていくことで
当事者意識が低い「日本社会」をアップデートする、
著者二人のつよい覚悟を持って書かれた。

いじめ、理不尽な校則、不登校、体罰、
心の教育、多数者の専制、学級王国・・・

いまの学校が抱える大問題を分析しながら
何ができるか、どこから変えていけるか、
哲学と実践を見事につなぐ画期的1冊。

現場で奮闘する教育関係者・保護者、必読!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 私の好きな苫野一徳氏と、話題の工藤氏の共著ということで、読んでみましたが、期待に違わぬ良書でした。私は滅多にないんですか、もう一度読み返しました。すると、たくさんの学びがありました。工藤氏の教育に対する並々ならぬ熱い思いと、行動力に圧倒されました。何かを変えるときに、最上位目標の設定がいかに大切かが、分かりました。また、改革するとき、「対立構造をつくらない亅「戦わなくていいところから変えていく亅という指摘がとても新鮮で、心に留めておきたい言葉でした。また、「何が目的で何が手段なのか亅「手段として優先すべきものは何なのか亅を考えていこうと思いました。

  • 対談形式で、書かれていることは非常にシンプル。

    民主主義教育を重要視している2人が、その目的や意義、原則、方法をわかりやすく語り合っている。

    ただ真似るのではなく、本書から指針のようなものを得られるように心掛けて読み進めた。

    民主主義においては、”対話“が重要であること。
    また、対立を恐れず、且つ対立構造を生まずに合意形成を得るための共通の最上位目標を共有することなど、多くの学びがある本だった。

    「戦わなくていいところから変えていく」
    「勝ちながら変える」
    面従腹背
    などのキーワードも、心に残った。

  • 学校は何のために存在するのか?→子供たちが「社会の中でよりよく生きていけるようにするため」にある。だからこそ子供たちに「自ら考え、自ら判断し、自ら決定し、自ら行動する資質」すなわち「自律」する力を身につけさせる必要がある。これは工藤先生が、これまでの著書の中で一貫しておっしゃっていたこと。ここまでは私も同じような事を思っていた。しかし、「学校は民主主義の土台を作る場」と言う発想はなかった。この先に言えるのは、学校とは「平和教育のためにある」と続く。哲学的な話になり、初めて耳にするような言葉が飛び交っていて新鮮であった。また、あらためて民主主義について考えさせられるいい機会となった。

  • 「何のために」と原点に立ち返って考えることの大切さ。
    そしてそのための最上位目標の大切さがよく分かる。

  • 民主主義を学ぶとは自律的な解決方法を身につけてもらうものであり、法教育の最上位目標とほぼ同義ではないか。

  • 面白かった。一気読み。工藤さんの考えはすごくしっくり来る。

    学び いろいろあるが
    心の教育ではなく、行動の教育に どんな場面でどんな行動をとればいいか
    最上位目標は設定しても良い、そこから対話は始まる
    意識改革のために 矛盾に気づく→優先事項の自問自答→矛盾しない自分に変わっていくプロセスを考える

    ことあるごとに読んどきたい


  • 日本の教育の現状と課題を提示した本。

    感想

    良い本で非常に考えさせれる本。

    10年くらい前に出会っていたかったなぁとも思う。

    また工藤先生は民間のご経験があるのかと私は勘違いしていた。
    どこかでお話を聞いたりご一緒してみたりしたいと思った。



    教育界だけでは無いかもしれないが、
    特に学校という現場は、
    感情論が入りやすいような気がした。

    教員の感情、
    生徒の思い
    卒業生の思いなど。

    だから、何が最上位目標なのか?
    を忘れがちな気がする。




    厳しいことを言えば
    この本が良い本と言われているくらいでは、
    正直まだまだ日本はレベルが低いと思ってしまった。

    ここに書いてることを前提として、ではどうするか?と話を進めていかないといけないと感じた。







    序章学校は何のために存在するか

    ・学校を民主主義の土台とする

    ・民主主義とは、対話を重ねながら、社会やルールを作っていくことに意義がある。


    ・日本は民主主義国家だと思われているが、
    民主主義を理解しきれていない(お上が絶対と言う意識が長い間あったから)


    ・教員主導で、民主的な対話の仕方を実践しながら、組織を変えていく


    1章民主主義の土台としての学校

    ・誰1人置き去りにしないためにどうしたら良いか?を共通のゴールにする。(最上位目標とする)
    多数決の問題点は、少数派の意見が切り捨てられてしまう

    ※多数決OKの条件
    A案でもB案でも誰の利益を損ねることがないとき


    ・自由の相互承認(ヘーゲル)
    すべての人が対等に自由な存在であることをお互い認め合う。
    そのことをルールとした社会


    ・一般意志(ルソー)
    みんなの意思を持ち寄って見出した、みんなの利益になる行為
    1部の人の意思や権力で決められた方や権力はダメ



    ・公教育の役割
    すべての人の自由を実現して、そして社会における自由の相互承認をより充実するための制度

    ルールは作るものではなく、与えられるものだと誤解している人が多い


    ・学校は、一人一人の自由と平和な社会のためにある


    ・ランニング、コンパス2030 は教育界の目指すべき方向性そのもの

    教育の最上位目標
    個人及び社会の2030年におけるウェルビーイング


    最上位目標実現する手段
    ①責任ある行動をとる力。
    ②対立やジレンマに対処する力
    ③新たな価値を創造する力


    ・当事者意識の低い日本
    (特に政治への参加意識が低い)


    ・だから、教育が必要。
    子どもの時から

    【社会をみんなで作っていくもの】
    【人のせいにしない自分で考え行動しよう。】
    【おかしいと思ったらちゃんと声をあげよう。】
    【対立は必ず起きるから、それをどう解決するか学ぼう】
    ということを教える。


    ×あなただからできたでしょう。
    ×社会が悪いから学校が良くない。
    ×どうして全国に広がらないんですか

    →当事者意識がない
     行動を起こそう



    2章日本の学校の大問題

    ・課題①心の教育「思いやり」で対立は解消できない


    心の教育はできもしないことをゴール設定にしているから、いろいろな歪みを生む


    嫌いな人がいても構わない
    対話を通した合意形成の経験を積むことが重要

    道徳は、国や時代、宗教によって大きく変わるもの。それよりも
    市民教育を



    ・課題②いじめ、撲滅の発想がいじめを増やす。

    子どとのトラブルに大人がいつまでも介入していると、子どとたちは自分の問題を自分で解決すると言う当事者意識を失ってしまう。 


    いじめの定義を広げすぎたがために、本当に助けが必要な事案が埋もれてしまった

    いじめの発生件数を減らす事が、目的化すると、大人による過度の介入か隠蔽が起こる  


    子どもの自己解決能力を伸ばすことに力を注ぎたい

    いじめを減らすための設計の2つの提言

    ①学校空間で子どもたちが受けるストレスをできるだけ減らす。
    自己肯定感を高めるなど

    ②学校設計を流動的にする
    固定担任生を止めるのも、1つの手


    ・課題③教員養成同質性と従順さの要求

    教員養成の段階で、同質性と従順さを求めてしまっている。
    教師は自由の相互承認こそ教えるべき存在だが、教員養成の段階から逸脱していると、厳しい指導が入ることも


    日本人の従属性は、家族システムから切っている(お父さんが偉くて兄弟姉妹が不平等)


    ・課題④理不尽な校則「ルールは守るもの」とだけ教える学校教育

    ルールだから仕方ないと思うのではなく、
    ほんとにこのルールでいいのかと言うクリティカルシンキングを


    ・課題⑤学級運営、学級王国の問題


    日本は、学級王国を築きたがる教員が多い。

    学級を家族のような集団であるべきと考えると
    真面目な先生ほど苦しむ。
    (愛せない子がいる、一致団結できないなど)


    教師の仮面を脱ぐことの大切さ

    3つの問いかけが有効

    「どうしたの?」
    (子供の置かれている状態を言語化してもらう。
    メタ認知の1歩。頭ごなしに叱らない。)

    「どうしたいの?」
    意思を確認。
    置かれた状態を解決するための方法を頭の中で考えるきっかけ作り


    「何か手伝える事はある?」
    問題解決の手助け。
    どんな支援を受けるのか、手助けを受けないのかを判断するの子ども自身。
    大人がサポートの意志表示することで味方であると認識してもらい、心理的安全性に寄与する。



    課題⑥教師の力先生の技量を上げれば、問題を解決すると言う幻想


    教える技術の向上にこだわると、子どもたちは、受け身になり、主体的に学ぶ体験ができなくなり、当事者意識も奪いかねない。
    それより自立を支援する技術の方が必要。


    どんな教育なら良いのか、最上位目標、本質論が欠けている

    3章学校は「対話」で変わる


    ・自分たちの学校を自分たちで作ると言う意識を

    ・合意を目指すアプローチ(超ディベート)を

    ・スピーチ指導を徹底する理由
     みんなを当事者意識に変えていくから


    プレゼンテーション3つのチェックポイント。
    ①僕は何のためにプレゼンしてるのか?
    ②誰に対してプレゼンしているのか
    ③話した言葉が、相手にはどう伝わっているのか


    ・理想とのギャップに苦しむ教員へアドバイス

    ①できるだけ対立構造を作らない。
    戦わなくてよさそうなところから学校変えていく(例えば年1回の学校行事など)

    ②子どもたちに任せつつも、戦略はしっかりアドバイスをする。
    やる以上成果につなげていく。


    ・スピーチ指導を徹底する。
    常に次の3つを自分に問う
    ①何のためにプレゼンしてるのか
    ②誰に対してプレゼンしているのか
    ③話した言葉が、相手にはどう伝わっているのか


    ・理想とのギャップに悩む教員へ


    できるだけ対立構造を作らない


    ・意識改革は、3つのステップで進む。
    1自己矛盾が起きるフェーズ

    2優先すべきものを自問自答するフェーズ


    3 矛盾しない自分に変わっていくプロセスを考えるフェーズ

    ・こだわりを捨てる

    終章教育を哲学することの意味

    ・この本を使って対話会を開いて欲しい




  • 色々な理由をつけて
    安易に多数決に頼っていた
    自分を省みる。
    さあ、自分からできる変革をしていこう。

  • とても勉強になった。
    読みながら、たくさんメモしたくらい。。

    学校の先生じゃなくても、知っておいていいことだらけ。

  • 多くの人と共有したい内容の本です。
    多数決の問題点、わかりますか?
    考えたこともありませんでした。当たり前な手段だと思ってました。多数決という仕組みは、少数派を容赦なく切り捨てる、多数者の専制に陥ってしまう。誰一人置き去りにしない社会を作るために、何をすべきか、それぞれに考えて、対話しながら、社会を作る。民主主義の原点を教えてもらいました。

全39件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

【工藤 勇一】(くどう・ゆういち)
 横浜創英中学・高等学校長・堀井学園理事/前東京都千代田区立麹町中学校長 1960年山形県生まれ。東京理科大学理学部応用数学科卒。山形県中学校教諭、東京都中学校教諭、目黒区教委、新宿区教委等を経て2014年4月より2020年3月末まで千代田区立麹町中学校長。2020年4月より現職。麹町中での教育改革を加速させ、横浜創英中で2022年4月より中高一貫6年制の「サイエンスコース」を立ち上げる。社会で活躍するさまざまな人を学校とつなぎ、「社会に貢献する科学」を創出する新しい時代の学びを構築する。内閣府の教育再生実行会議(2021年9月に第12次提言を出し終了。後継会議が設置予定)委員。

「2023年 『社会を変える学校、学校を変える社会』 で使われていた紹介文から引用しています。」

工藤勇一の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×