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感想・レビュー・書評
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岡本太郎がこの本、あるいは生涯を通して伝えたかったことがここにあるように感じた。それは「無条件に生きること」だろう。
岡本は第二次世界大戦でも兵士として出征した経験もあり、日本が降伏後は半年ほど捕虜となっていた時期もあった。そういった経験があるからかもしれないが、人生にはそして人間には生きている目的なんてないということを話している。無目的であるなら、条件など課さずにその瞬間にベストをつくせ、と訴えている。
そんな中でも2点特に考えた場面がある。
1点は「ほとんどの人は政治、経済だけが価値であり、社会の現実だと思っているようだ。」という箇所だ。確かに現代社会では、誰もが仕事やお金、毎日のニュースばかりに気を取られ、人間的な活動は一切していないといえるだろう。全てを合理化された世の中では、本当に美しいものや変えてはならないものがどんどん捨て去られ、最後には虚無感しか残らなくなってしまうのではないかと、改めて危惧したところだ。
2つめは「‥この社会の中で自分がどういう役割を話せるんだろうとか、いろいろ状況を考えたり…しても無意味な袋小路に入ってしまう」という箇所だ。岡本もどうしたら自分のアイデンティティーをアピールできるのか思い悩んだこともあるようだ。しかし、そんな外側のことを考えても意味がないことに気づいた。自分の中に燃える炎だけをみて、無条件かつ無目的でもいいから、それを爆発させればいいのだと。
途中愛の話がでてくるが、正直岡本の考える愛と何かは見えてこなかった。また、私としては無目的でも無条件でもいいというところには非常に共感したが、短い人生どうしたら社会の役に立てるのかということを考えるのは決して無駄なことではないと思う。
自分が成し遂げたいと思うこと、やってみたいと思うことは、仮にそれが下手くそでも、無条件にやり続けていきたいと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
タブロー 分限 即己 天才論 因果論 「今日の芸術」「アヴァンギャルド芸術」 ホモルーデンス 権謀術数 モメント
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自分も同じだって共感するところ、全然足りてませんって恐縮するところ、これからがんばろって希望が持てるところ、いや具体的にはなんなんだってつっこみたくなるところ、など。
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実はあまり岡本太郎のことを知らなかったが、どういう生き方をしてきたのか若い頃の話からの気づきなどは興味深い。他にも読んでみようと思った。
岡本太郎に講演などを依頼する人達はどういうことを期待されてたりしたのか気になる。 -
システマティックに生きる人々、合理的に生きる人々、メリットを追求して生きる人々、社会にとって都合よく型におさめて生きようとする人々への強烈なメッセージ。
本来、生きるとは非合理的で、無目的な作業である。だから、生きるとは芸術なのである。誰もが理解できる、誰もが共感できる、誰もが同意してくれる、誰もが美しいというモノ、人、意見は、何にもクリエイトしてないし『上手に』『精巧に』『職人的に』作られたモノは自由が存在しないのである。
不器用であればあるほど、下手であればあるほど、何の囚われもなく、何の制限もされておらず、何の見返りも求めず、そこには褒める人批判する人感嘆する人恐怖に怯える人様々な反応がある。そんな無償の物が真の芸術であり『生きる』ことである。
誰からも評価される無難にまとめた好感度の高いものは、生身の生きたものではないのだ。全力で生きてないのだ。
そのメッセージがとにかく心を打ちました。
わたしが生前の岡本太郎さんを思い出しても『芸術は爆発だ!』のCMと、太陽の塔、ピアノでショパンの軍隊ポロネーズを弾いている映像しかほとんど覚えておらず、アバンギャルドな芸術家のおじいちゃんという印象しか正直ありませんでした。彼がここまで自分の内側にあるものに従って、信念を貫いて生きた人だとは思いませんでした。
彼が生きた明治から平成初めの時代はまだ今以上に日本社会は閉鎖的で古いものに縛られたり、高度経済成長で国のために社会の歯車として生きることが良しとされていた頃だと思います。なので、今の時代以上に変わったことをやったり考えたりする人は激しく叩かれた頃だったと思います。
でもその彼の異端な人生観は結果的に今のこの令和に入って一人一人に一番求められている部分だと思います。
彼のこの感覚についていかれない人たちは、これからの時代は厳しいとわたし個人は思います。わたしも、つい数年前までは社会の型にハマろうと頑張りすぎて自分が壊れたり、他人からの評価を気にする生き方しかできなくて悩んだ過去があったのでこれはすごく響きました。
結婚観についても、新たに考えさせられています。
発達障害やメンタル疾患に悩む『普通の人』になれない人はここにもしかしたら生きるヒントがあるかもしれない。
これはバイブルだと思います。 -
読んでいると常にヒリヒリさせられた。
脈拍と呼吸が早くなる。ずっとドキドキしながら読んだ。
太郎節炸裂、これでもかと読者の心に向かって矢を放つんだけど、攻撃するためではなくて読者の心に問いかけるため。
一度パッと火種を撒き、それを回収してまたスパイスを加える感じ。
芸術は爆発だ、人間の感性を解放することぶつけること、全身全霊で生き抜くこと。
人生は絶望だ。
だけど絶望を悲観して捉える必要はない。
どうしようもない世の中、社会で生き抜くのが人生。
肯定は否定の裏返しではなく、裏の理論にも論ずる余地がある。 -
有名なので読んでみたが、今の自分が求めている本ではなかった。
思いは強いが、特に根拠などなく、納得性のあるものではなかった。ただししかるべき時に読むとやる気が湧いてきそうな本だった。 -
前半で、自己肯定感についてや、人生の選択方法、内向性について書かれていた。この類の人生観について私もよく1人でぼんやり考えているので、1つの考えが例示されてすごく楽になったし励まされた。後半の愛については、正直気持ち悪いと感じて内容に一気に冷めてしまった。一晩の相手についてわざわざ書いたり、他人に視線を送ってすぐ恋を始めようとする、相手をころころ変えて共に生きる気概もないというところに刹那的なその場が良ければいいゲーム感を感じ共感できなかった。男女の違い、国の違いなのだろうか?