寿命尽きて読みきれない確定の本棚

予想外の文章量で、読み応えがある。

戦争和平が目的であろう会議が遅々として結論の出ないことに業を煮やして、子どもたちのためにというスローガンで動物たちが会議を開催することに。

人間の大人は自国の利益にしがみついて相克がおこる、という見解からか動物たちは国境、書類、軍隊、制服といったものを標的にする。国境は対立を生み、書類は正しく考えることの邪魔になり、制服は役割を与え人間が一つにまとまることを阻害する。

最後は強硬手段で子どもたちを拉致。結構マッスルな手段だなーという印象。そもそも国境を取っ払うことで人間が一つにまとまるのだろうか。民族間の軋轢が発生して争いが誘発されちゃうじゃないかなと個人としては懐疑的。

全面的に賛成なのは、人間がサインした条約の第五条、教育者に一番高い給料とすること。現実に採用した方がいいでしょう。個人、特に女性の献身に頼って成り立っている構造は改善せな。

2024年4月30日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2024年4月30日]
カテゴリ 絵本

店舗型書店、さらに敷衍して「本屋とは?」という問いに真っ向から語る内容となっている。

出版業界の苦境は自分が子供の頃から叫ばれているし、本の売り上げは年々減少傾向。ネットの充実から娯楽のレパートリーは増加し続け、本をことさら選ぶインセンティブもないような感じは頷けなくもない。 

それでも自分は本の無限とも言える知的好奇心の探究へのガイド、著者がどうしても伝えたいという熱意を持って届ける作品に心が震える感覚が好きだ。

これからは利益を追求するのではないライフワークとしての本屋の可能性が示唆されている。自分もそんな活動に参加したいという欲求が刺激されます。本業はあるので、自分なりの形を模索していければと考えよう、モティベートされました。

2024年5月13日

読書状況 読みたい
カテゴリ 読書
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理想的本箱の紹介を受けて。
一瞬一瞬のひとときを大切にせねばな。

2024年4月30日

読書状況 読み終わった [2024年4月30日]
カテゴリ 絵本

ブックカタリストの裏側を覗いた気分でファンとしては満足度高い。

「〜は〜である」というテーゼの形にタイトルをつけることが、後に振り返りやすくなるという。アトミックな読書メモはテーゼの形式でまとめて一つのことだけ表現することが肝要。
確かに今実践している読書メモは雑多にまとまりなく長文がダラダラ書き綴られていて読み返してみると要領を得ない。これからはアトミックにまとめることを心がけようと思う次第です。

年一のアトミックシリーズをライフワークにするとのことで、次回作とその先の作品も待ち遠しいですね。

2024年3月24日

読書状況 読み終わった [2024年3月24日]
カテゴリ 読書

このタイトルを思いついただけで勝ちでしょう。

本書の骨子は「経済人」偏重の市場経済に女性の存在が無視されているという、社会のあり方に異議を申し立てる。フェミニストは上野千鶴子のようなもっと狭義のジェンダーの違いから受ける不利益にフォーカスするものであるという先入観があったので、経済との関連で論じるものはとても新鮮。新しい社会のあり方、寛容さへの期待みたいなものを感じる。(今ちょうど観終わった「不適切にもほどがある」と共通するテーマ)

少し具体的なところでは2008年金融危機への解説が秀逸。デビット•ボウイの逸話との絡め方と専門用語なしの人間の情動的な反応による説明が、腹落ち度高い。ここだけでも読む価値あるかな。

2024年4月7日

読書状況 読み終わった [2024年4月7日]
カテゴリ ジェンダー

数年前に高橋和久訳で読んだことがあるが、再読熱が少し上がってきているタイミングで山形浩生訳を発見し手に取る。

お堅い表現を意図的に避けているような印象で、読みやすい。当時は読み飛ばしていた附録の「ニュースピークの諸原理」も難なく読み終えることができた。

共産主義やナチスが幸運にも失敗した全体主義的な絶対寡頭制を成就させるオセアニア国の手法は、自由や反発を思考させないための徹底的な言語の簡略化、疑いを持つことを自ずから矯正する『二重思考』から成り立っている。人間の尊厳に関わる言葉の重大さと、思想への寛容性の大切さが本作の物語から翻って身に染みる。
あと、ふしだらなジュリアとの関係も大義名分にかこつけてるところが少し滑稽。

101号室の件は全く覚えていなかったが、こんなに少ない頁数だったかしらと少し驚き。しかし、ビック・プラザーに屈服する最終局面、心を隠して言葉で欺くという信念を凌駕する圧倒的な服従。単に謀反者を殺戮するだけではない、心から服従させ反乱分子を抹消させてから撃ち殺すというプロセスの凄み。

久々の再読でしたが、本書の良翻訳に助けられ読み込みが深まった実感があります。現代のテクノロジーを利用すれば本作のような統制は意外と低コストで実現できるのではと恐ろしい空想(で終わってほしい)が日々にじり寄ってきてる感覚。この先読み継がれる意味を増す作品ではないでしょうか。

2024年5月13日

読書状況 読み終わった [2024年5月13日]
カテゴリ SF

ブックカタリストを愛聴しており、倉下さんとごりゅごさんのトークに魅かれてる今日この頃、お二人の思考回路の一端を垣間見れるカナと手に取る次第。

Obsidianをブックカタリストから聞きかじり利用していましたが、トピックノートの考えた方は実践していなかった。様々な読書ノートをカテゴライズしたノートにまとめることで、それぞれの相似性に気づき理解やテーマが拡張していくという。つながりが見えてくると自分の中で知識が整理されていく。
これは、各読書ノートが独立しちゃってどうつなげていけば良いか悩んでいたので早速実践してみたい。

硬くならずに無理しない範囲で、書くことを継続していくことがスキル向上の要なのだ。日常の問題に直面してモヤモヤしてしまう局面にてフリーライティング、日記にて事実と感想の区別化、読書ノートでライティング実践と知識のダイナミズムを。著者自身の実感から著された本だからか、熱量があるし極論は自身の理解度向上のためというエゴがあり共感。

2024年3月4日

読書状況 読み終わった [2024年3月4日]
カテゴリ 教養・雑学

雑誌連載の記事を編集加筆してまとめた著書。
『動的平衡』というキーワードを軸に生命とは何か、ダイエットやES細胞などの日常関心のある話題を素材に論を展開しておる。

まずは筆者の読ませる文章力に脱帽。
次に、どこかで直感的に思い込んでいる機械的システムとしての人間観に、一石を投じる論にも目を覚まされる力強さがある。手放して良いことだと短絡的に賛同してしまっているES細胞などの万能細胞に対する、不確定さと気味悪さの指摘はとても新鮮で考えを改めるきっかけとなったのです。

シリーズものとのことで、適宜手に取っていこうと思う。「ベリクソンの孤」理論がどのように展開しているかも気になるので。

2024年3月13日

読書状況 読み終わった [2024年3月13日]
カテゴリ 生物

一年生の娘の宿題どんぴしゃ内容でジャケ買い。

舐めてかかっているつもりはなかったのだけれど、一年生の自由な発想と着眼点、大人への鋭い風刺にどきりとさせられた。頭の凝り固まった大人なんかより、世の中や世界を正確に捉えられる感性があるんだなと実感できる絵本です。

ヨシタケさんが書く不審感丸出しの子どもの目、大人のずるい部分なんてものはうまく取り繕ってるつもりで全部見抜かれてるんだろうなぁ。

2024年1月27日

読書状況 読み終わった [2024年1月26日]
カテゴリ 絵本

堀元節が小気味良い。
ビジネス書の皮を被ったコメディ。
お陰でビジネス書を読んでいるとフラッシュバックしてすんなり内容が入らなくなってしまった。
早速「VUCA」にはちあってしまい、もう素直に読書に没入できない。でも1ファンとしてそれでいいと思える。

2024年1月26日

読書状況 読み終わった [2024年1月26日]
カテゴリ 自己啓発

久しぶりに小説を読んだなー。

文学作品を題材にそのエッセンスを借りてさらに上質な物語へと昇華されてるのだろう、取り上げられる作品では唯一『ボヴァリー夫人』だけ学生時代邪な動機から手に取ったのを思い出したが、他の作品は未履修ではあるが。

少女から大人への成長ストーリー。その過程で育まれた感性や挫折や苦悩を糧に花開いていってほしい、ダイアナと彩子の今後の実りある友情を切に願ってやまない。それぞれの境遇に憧れて嫉妬して、それでも互いに認め合い心の通じ合う大切な存在であり続けますように。

物語のクライマックスに向かうところで彩子が後輩を助ける場面、その後の生き生きとした姿を見て心が綻ぶ描写が好き。そうなのです、非力な存在が安心して過ごすことができていることで、世界への希望が見出され自分も救われる気持ちになるという感触に大きく共感させられたな。

2024年1月26日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2024年1月26日]
カテゴリ 一般小説

ダマシオさんの文章が思弁的で読み取りづらいというのはそうなんだが、大枠のエッセンスだけでも汲み取れたかなという感触。

山形さんの解説が良い意味で砕けた表現でまとめてくれており、最後に自分の読解とのすり合わせとチューニングができます、みなさん諦めずに読み進めてほしい。

ソマティック・マーカー仮説から波及して、意識・心・自己とは何かを解き明かす探究。心踊る取り組みですし、自分とは一体なんなんだろうという究極の問いに哲学とは異なるアプローチ、人文学と科学の交差点は魅力的なテーマ。

2024年2月24日

読書状況 読み終わった [2024年2月24日]
カテゴリ 心理学

主張を述べるのではなく、思考を回遊する作品。
文芸作品をエコロジーという視点で多角的に読み解く道程は、のっぺりと文芸作品を味わっていた私に別のもっと高次な味わい方を差し伸べてくれる。

文学作品に触れることで己とは別の擬似環境に触れる。そうすることで、自分が己の擬似環境で世界を捉えていることに自覚され、擬似環境の裾野をさらに広げることができる。自分の世界にさらなる彩りを与えることができる。つまりは、読了後の自分は全く異なる心体に変化しているといっても良いでしょう。

著者の誠実さが溢れている文体で、読み進めるごとに親近感が湧いてくる。バックグラウンドはプログラミングなどの理系素養なのに、文芸作品に対する深い洞察は脱帽もの。だからこそ、本作品のように文芸作品をシュミレータするといった手法が思いつくのだろう。様々なことに興味関心を持ち、身につけていくことによるシナジーがうらやま。自分も手がける領域を広げていこうと決意させられるのです。

2024年5月7日

読書状況 読み終わった [2024年5月7日]
カテゴリ エッセイ

事務という身近なテーマに興味を惹かれた。
文学作品や作家に焦点を当て、事務との関係性を章立てしながら説く。

文学という一見事務のような形式的で冷たい印象からかけ離れた題材にも、事務らしさから発せられる魅力を垣間見ることができる、事務の深淵さに触れたような心持ちになる。

「注意の規範」というキーワードが提示される。事務は矮小化された部分への注意によって成立する。その徹底により成り立つ作品もあれば、そこからの逸脱が表現される作品もある。事務という基点から考察する作品の魅力に気付かされ、まだ未読なものがほぼだが早速読んでみたいという気持ちになった。

個人的には第4章「ガリヴァー旅行記」の情報処理能力でのあくまで事実をして捉える観察眼、それを通して表現される事務的な冷淡さにおける違和感の考察。と、第11章 事務に敗れた三島由紀夫の豪胆な行動の裏にある時間へのこだわり、父梓との対比。この2章が特に面白く読めた。

2024年1月6日

読書状況 読み終わった [2024年1月6日]
カテゴリ エッセイ

2024年初読了。

謝罪の多層性、曖昧性を読み解きながら、謝罪全般に通底する本質的な「当事者性」と「コミュニケーションの起源」を見出しております。

I’am sorry の残念に思う気持ちと自責の念という両義性が包含させている、日本語のすみませんなどのには責任を取るという立場が曖昧になる、これらの分析は表現に対する解像度が上がった。

謝罪というテーマ一つでも社会性、人間関係における複雑さが詰まっていて、奥深いものです。

2024年1月1日

読書状況 読み終わった [2024年1月1日]
カテゴリ 思想

巷で話題の図書。美術や芸術という言葉にアレルギーがある私でしたが、「美学」は哲学的な学問だと冒頭での説明に急に親近感。

近代西洋における美学の概論という内容で、各テーマごとに起源、成り立ち、現代における捉え方と丁寧に解説してくれており、初学者としてとてもとっつきやすい構成となっている。

前半は古代、中世、近代と芸術や芸術家、美の意味することが異なっており、一部にはそれらの概念が17-18世紀ごろの近代までなかったという驚き。現代の私たちが当たり前と思っている感覚の成り立ちにおける趨勢を体感できる。

特に感じ入った点。カントの「判断力批判」を引き合いに出し、個人的に疑問に感じていた美的感覚は個人的な感覚なのに、他人と共通で美しいと感じる作品やもの、風景があるのはどいうゆうことかな?という問いに一応の答えが与えられたことがよかったかな。(美は主観的であるにもかかわらず、普遍妥当性を要求するもの。)でもなんで味覚との対比で美が普遍性を要求するという位置付けなんだろう?美味しいものも他人と共有したい気持ちはありそう。。という疑問は払拭できず。

後半では、「崇高」と「ピクチャレスク」といった自分には初めての概念を学ぶことができ、この学問への興味が掻き立てられた。読書案内も充実しており、活用してさらにこの学問への興味を深めていきたい。良い出会いでした。

2024年2月25日

読書状況 読み終わった [2024年2月25日]
カテゴリ 芸術

狐に摘まれたようなとはこの読後感にピッタリの感想だろう。物語があるわけではないが、作品ごとに読者である私が受け取り紡ぐ、あるいは想起される出来事が不思議と湧き起こる。ここまで読者に意図的に委ねられている小説は初めて出会ったと思う。

特に今の自分に印象深いのは、「肉と夫」の夫への諦観と突き放し、「私たちの優しさ」の夫の矮小さ、甲斐性なさ、「グレン・グルード」の妻の焦燥感、輝かしい過去への憧憬といったところかな。自分の心情や状況にリンクしてしまう。

読む年代や置かれている状況によって一番刺さる作品は違ってくるに違いない、それほどまでに懐の広い作品群になっている。たった数ページで人間、社会の本質をつくを一文に出会ったらかと思ったら、幻想のように脳裏を掠めていく。去年他の短編小説も白水Uブックスで刊行されているとな。手に取るしかないとな。

2024年2月13日

読書状況 読み終わった [2024年2月13日]
カテゴリ 一般小説

数理生物学は門外漢の分野でしたが、ユーモア溢れる筆致で楽しく学べました。「お宝への旅編」は、著者の実体験が情緒豊かに語られており胸熱です。

学問のみならず、常識に捉われずに信念を持って取り組むことの力強さは勇気づけられますね。

2023年11月4日

読書状況 読み終わった [2023年11月4日]
カテゴリ 生物

著者がおわりで述べている哲学とは、過去の哲学に対する再解釈であるという姿勢が体現された著作だったなと。 過去の文献の丁寧な読み込みと再定義から発する「訂正可能性」の意義。人間に対する親しみを込めた諦観が、著者の人間愛を醸し出す。

ところで過去の作品から文体が変わったとのこと。ぜひ、『一般意志2.0』あたりから振り返りたいなと。もちろん今後の創作活動にも期待しておりますです。

2024年3月24日

読書状況 読み終わった [2024年3月24日]
カテゴリ 哲学

観光客=誤配=他者といった認識。

意図しない偶発性が生み出す関係に基づく、グローバリズムとナショナリズムの二者択一ではなくて、新しいアイデンティティを。そこには政治的なや経済的なつながりではなく、「憐れみ」のような感情的なものに促される連帯がある。

過去の哲学者や事象による思想を乗り越えようという試みは、哲学入門書を読んでいるだけでは味わえない生の哲学という感触で読み応えがある。同時に、過去の思想に(著者の解釈を織り込んであるだろうが)も多角的に触れることができるのは個人的に有益。ここから興味の幅が広げることができるのさ。

姉妹編「訂正可能性の哲学」も早速読み始めよう。


2024年2月12日

読書状況 読み終わった [2024年2月12日]
カテゴリ 哲学
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他の方々と同様にハマスへのイスラエルによる報復のニュースをみて、パレスチナ問題への問題意識と関心を持つきっかけなり本書を手に取る。

今までの歴史的背景をつぶさに解説し、多角的にこの問題の紛糾する理由、非常にナイーブな立場の軋轢を提示されている。今までのあいまいな理解を整理することができた。

2023年12月16日

読書状況 読み終わった [2023年12月16日]
カテゴリ 歴史

イギリスにおける階層格差や人種・LGMTQの問題多種多様な問題を、地べた目線で寄り添うような文体で描写・思いを提示している。

食べず嫌いで、息子の成長期やややもすれば押し売り的な教育論の本かと思って手が伸びずにいましたが、世論の評価を信用してもっと早く読むべきでしたね。日常に垣間見える、でもそこにこそ問題の本質っていうのは表出するし直面している当事者はいるのだという現実を教えてくれる。

「多様性というのは物事をややこしくするし、けんかや衝突が絶えないし、ない方が楽よ。多様性はうんざりするほど大変だしめんどくさいけど、鞭を減らすからいいことなんだと母ちゃんは思う。」
キラッと光る箴言ですよね。世の中少し多様性疲れが散見されますが、異質なものへの無知を晒しているのではと反省せねばなりますまい。

2023年10月9日

読書状況 読み終わった [2023年10月9日]
カテゴリ エッセイ

人生の悲しくて辛い段階を経て、それでも生きることを肯定して期待する。心が洗われる優しい絵本。

思い出は人生を豊かにする最良の手段なんだな、なんて。

2023年10月21日

読書状況 読み終わった [2023年10月21日]
カテゴリ 絵本

中村文則流ディストピア小説。後味は期待通りに悪い。
現代社会の問題を投影してるとのことで、無意識で従ってたことが目前に晒される恐怖があります。

ストーリーとして展開も程よく、内省的な独白や心理描写も抑えられていて著書の作品と中では読みやすい部類ではないでしょうか。相変わらず語りの圧倒感はひしひしと感じるしそこが良い。

2023年9月30日

読書状況 読み終わった [2023年9月30日]
カテゴリ 純文学
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