- 作りたい女と食べたい女 5 (it COMICS)
- ゆざきさかおみ
- KADOKAWA / 2024年2月15日発売
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好きなもの(食)が似ていて、楽しく同じ時間を共有することができる、二人の大人の話。
他人の尊重の仕方や自分の尊厳の守り方は確立されておらず明示されておらず教育も行き届いていないのだ、と気づく一方で、でも少しずつ体系化され言語化され、強い者の特権ではなくただ人のありようを捉えるための方向に進んでいるのだ、と思う。
私にも狡さや弱さや怒りや偏見があって(ない人なんてほぼいない)それを度外視して自分の生き方をこの本が正当化してくれるとか、そういうことでは勿論ないけれど、その人なりの幸福を大切にしている姿に胸が温かくなる、そういう自分がいるのだと思うと、安心する。
2024年3月30日
- グレイス・イヤー 少女たちの聖域
- キム・リゲット
- 早川書房 / 2022年11月16日発売
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Good girls go to heaven, bad girls go everywhere.
私が、私たちが、この物語の終盤に起きることを涙なしで読める日が来るだろうか。怒りや屈辱を、団結の奇跡を、我が物ではないフィクションとして遠く薄く感じられる日が。
2023年12月2日
- 私の男 (文春文庫)
- 桜庭一樹
- 文藝春秋 / 2010年4月9日発売
- Amazon.co.jp / 本
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理解し難さや嫌悪感とともに時が遡る。私は最終章でくらってしまった。
理由なく奪われた愛の回復を求めた先に、全てが詰め込まれた血の人形がある。残されたものはそれしかない。だから愛する。
「家族がいないのに生きていたって仕方ない」世界で、血のために、自分だけを好きでいてくれる人が見つかる。その人しかいない。だから愛する。
灰白色の空の下の青黒い海で、しがみつく人が互いしかいなければ溺れるように求めるだろう。最後まで読んでそう思った。歪で、間違っていて、不道徳であることを筆致が凌駕する瞬間がある。良い読書だった。
2023年11月4日
2023年9月23日
- パンズ・ラビリンス 通常版 [DVD]
- ギレルモ・デル・トロ
- CKエンタテインメント / -
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ありえない夢想が真実であってほしい。その想いが切実なほど、ファンタジーは強固に、唯一無二となる。
ファンタジーとは何か、その一面を極度に突きつける作品。
2023年9月17日
- 螺旋じかけの海(5)
- 永田礼路
- ナンバーナイン / 2023年9月3日発売
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生きているということを、理科的な軸に絡みつき融合し繁茂する倫理と情動で描く。ページの海原の向こうに世界の広さや深さを感じさせる。そして、船の上には個の脆さがある。得難く読みがいのある漫画作品。
2023年9月17日
- 楽園とは探偵の不在なり (ハヤカワ文庫JA)
- 斜線堂有紀
- 早川書房 / 2022年11月16日発売
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2023年9月18日
- 82年生まれ、キム・ジヨン (ちくま文庫 ち-19-1)
- チョ・ナムジュ
- 筑摩書房 / 2023年2月13日発売
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キム・ジヨン氏の独白は冷静で真っ当で、その正しさが認められず受け止められず流されていく様が、これが現実だと肌身で分かることが哀しい。様々な違和感や苛立ちには理由があり、本書が出ることで、その拒否感に名前がついた。存在の輪郭が浮かび上がった。
2023年6月17日
- 八月の光 (光文社古典新訳文庫)
- フォークナー
- 光文社 / 2018年5月20日発売
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2023年7月16日
- 作りたい女と食べたい女 3 (it COMICS)
- ゆざきさかおみ
- KADOKAWA / 2022年11月15日発売
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語弊がある書き方だろうけれど、この作品は普通の感性を描いている、と思っていて。繊細な機微やナイーブさではなく、これが「普通」なのだ。
他者との関わり方は人によりけりという事実が、こういう読みやすい作品によって、多くの人の納得にリーチするということは、この漫画の面白さにプラスワンされる美点だと思う。
2022年11月28日
- 星水晶の歌 下 サラファーンの星 (創元推理文庫)
- 遠藤文子
- 東京創元社 / 2018年5月31日発売
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胸がいっぱいになる、真っ直ぐで素敵なファンタジー。
4巻(5冊)は長いが、その長さと時間が必要な物語なので、最後まで読み通してほしい。
リーヴは純朴で心優しく、大切な人を深く慈しむ。彼女をはじめ、登場人物は一途な人間性とともに一日一日を生き抜いていく。
「ユリディケ」を未読なので、読むのが楽しみなような怖いような気がする。
2022年11月22日
- DUNE/デューン 砂の惑星 ブルーレイ&DVDセット (2枚組) [Blu-ray]
- ドゥニ・ヴィルヌーヴ
- ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント / -
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原作を読んだ上で観ないとあんまりかもしれない。原作を知っていれば、ストーリーの省略を自分で補完できるため、映像良し俳優良しで楽しめるだろう。ベネ・ゲセリットである母と当主の父の間の緊張と葛藤や、ユエ、ハワト、リエトといった人物の立ち位置など、個々の登場人物の掘り下げを省いて壮大な伝記を追うことが軸になっており、よくまとまっているが、原作の面白さを知っている人向けの映画になっていると思う。
2022年10月24日
- 魔導の矜持 〈真理の織り手〉シリーズ (創元推理文庫)
- 佐藤さくら
- 東京創元社 / 2017年11月13日発売
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ファンタジーの骨格に、非常に現代的な、というか現実的な問題を被せてくるシリーズだなと思う。魔法にわくわくしたり、初めて見る世界や情景に浸ったり、ストーリーが深刻でも幻想世界はどこか浮世離れしながら没入するものだと思っているが、この作品は問われるもの、あるいはその問い方が卑近で、半分現実を見ているような気分で読み進めている。それが最初は居心地が悪くもあるのだが、中盤あたりから一気に読み進めてしまう。私にとってはちょっと不思議な感覚の作品。
2022年10月26日
- 寄港地のない船 (竹書房文庫)
- ブライアン・オールディス
- 竹書房 / 2015年7月2日発売
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SFと原始的文化や生活という取り合わせはあまり触れたことがない。船の中、ジャングル、狭いコミュニティ等のモチーフが畳み掛ける逼塞感が抑圧された心理と絡み、息詰まるストーリーである。
2022年11月22日
- ゴッドファーザー PARTI<デジタル・リストア版> [DVD]
- フランシス・フォード・コッポラ
- パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン / -
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定期的に観たくなる傑作。名シーンが多い。私はPart Iが一番好きです。
2022年9月25日
- プリズナーズ [Blu-ray]
- ドゥニ・ヴィルヌーヴ
- ポニーキャニオン / -
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2022年9月11日
- 疫神記 (下) (竹書房文庫 う 4-2)
- チャック・ウェンディグ
- 竹書房 / 2022年5月26日発売
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面白かったー。1500頁とは思えない。続編もぜひ読みたい。
2022年9月19日
- L.A.コンフィデンシャル [DVD]
- カーティス・ハンソン
- 日本ヘラルド映画(PCH) / -
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入り組んだ話。面白かったー。終わり方も、音楽が最高。
2022年7月23日
- 図書館島 (創元推理文庫 Fサ 2-1)
- ソフィア・サマター
- 東京創元社 / 2022年5月12日発売
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著者が詩人、と聞くとなるほど…となる、霊感に満ちた作品。何の話をしているんだっけ?となりがちだが、話の筋は分かるので初読はあまり気にしないほうがいいかもしれない。
何でこの邦題なんだろうな。手に取る人が想像する内容とはギャップがあると思う。
生という名の物語を紐解くことで、永遠に去った者を愛することになる青年の話。死者は既に終わっている故に語られることで成就するが、生きている彼が抱く愛に結末はなく、逍遙と語りは続いていく。
2022年11月6日