ハイエクから教えてもらったことは、個人の自由と、より良い経済秩序または社会秩序の両立。歴史の中で培われてきた経験的な知識の大切さ。

2013年1月11日

読書状況 読み終わった [2013年1月11日]
カテゴリ 経済

2016.02.19.~再読

現在、世界の主要国では、政府や中央銀行の経済政策において、ミルトン・フリードマン流のマネタリズムが主流となり、金融緩和という錬金術を駆使して、貨幣価値や為替を、政府の都合の良いように操作している。
こんな、フザけたことが許されていいのか?

貨幣という、中立的であるべき経済の根幹的ツールを、政府と中央銀行が作為的に操作することで、マーケットはもちろん実体経済までをもコントロールしようとしている。
これは、統制経済そのものだ。
市場の自律性と個人の自由を損ねてんじゃねえか。

一方で、権力者の操作によって価値が規定される各国の通貨を過去の遺物とすべく、よりグローバルな、よりニュートラルな「未来の貨幣」が生まれている。
ビットコインのような暗号通貨が作り出されたことは、貨幣の革命のきっかけとなるだろうか?

オレは、ここで、今一度、ハイエクの貨幣理論を知りたいと思って、この本を、本棚の奥から引っ張り出してきた。

ハイエクとフリードマンが同じ新自由主義者であることに異論はない。
だが、多くの人が誤解しているように、ハイエクの貨幣理論とフリードマンのそれは同じではない。むしろ、大きく違っている。
ハイエクの考えた「国家に依存しない貨幣」モデルは、よりラジカルで未来的な貨幣の形態であり、しかも、それは、今や現実のものである。

  • 再読しました。

    再読了日:2016年2月19日

読書状況 読み終わった
カテゴリ 経済

18 West Magnolia Avenue
Auburn, Alabama 36832-4501
Mises Instituteの蔵書で読んだ。
ここって、オーストリア学派の経済学とリバタリアンについての資料がいろいろ揃ってる。
The institute serves students, academics, business leaders, and anyone seeking better understanding of the Austrian school of economics and libertarian political theory.
-------------------------------------------------

This is the constitutional limitation of man's knowledge and interests, the fact that he cannot know more than a tiny part of the whole of society and
that therefore all that can enter into his motives are the immediate
effects which his actions will have in the sphere he knows. All the
possible differences in men's moral attitudes amount to little, so far
as their significance for social organization is concerned, compared
with the fact that all man's mind can effectively comprehend are the
facts of the narrow circle of which he is the center; that, whether he is
completely selfish or the most perfect altruist, the human needs for
which he can effectively care are an almost negligible fraction of the
needs^ of all members of society. The real question, therefore, is not
whether man is, or ought to be, guided by selfish motives but whether
we can allow him to be guided in his actions by those immediate con-
sequences which he can know and care for or whether he ought to be
made to do what seems appropriate to somebody else who is supposed
to possess a fuller comprehension of the significance of these actions
to society as a whole.
p.14

From the awareness of the limitations of individual knowledge and
from the fact that no pe...

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2016年5月3日

読書状況 読み終わった [2016年5月3日]
カテゴリ 経済
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ヴィタリック・ブテリン君、すげえ
この人物は、天才です。

とっても刺激的な本だった。
貨幣の未来、だけでなく
政府の未来、とか、市場の未来、とか、アートの未来、とか
人類の未来、とか、あらゆるものの未来を描いている。

ブテリン君、天才だよー、オレは彼のことを愛してる。
「あなたは、何者か?」
と問われれば、オレは答えるだろう。

オレのことなら、サイファーパンクと呼んでくれ。
オレは、ブテリン君とは考え方が違うけど、フリードリッヒ・ハイエクの弟子であり
究極のリバタリアンであり
アナーキストであり、暗号反逆者だ。
なんちゃって。

この本は
2023.02.27. 第1版第1刷発行の新しい本で

他の図書館から取り寄せてもらって借りたんだけど
忙しくてずっと読めなかったんだよね

図書館来て、集中的に読み込んで、これで、返却できる。
返却期限を1日過ぎてしまった。
お取り寄せの本は、期限守らないとヤバいんだー。

Ethereum co-founder Vitalik Buterin deposited 600 ether (ETH), which is around $1 million worth of the cryptocurrency, to crypto exchange Coinbase on Monday, according to data from Ethereum blockchain scanning website, etherscan.
The move comes as ether, the second largest cryptocurrency by market capitalization suffered a 10% decline over the last seven days, amid a broad market downturn which saw traders witness $1 billion in liquidations. Ether has recovered slightly on Monday, trading in the green over the last 24 hours at $1,700.

By Lyllah Ledesma
Aug 21, 2023 at 7:09 p.m.
Updated Aug 22, 2023 at 3:33 a.m.

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若き天才が示す暗号資産の真実と未来
イーサリアム
ヴィタリック・ブテリン

18
これまでは
生産活動のインセンティヴになるものは
主に2つに限られていた
 1.市場
 2.組織
今、第3のインセンティヴが生まれつつある
通貨だ。

19
通貨発行益
シニョレッジ 通貨の市場価値とその内在的価値との差異

20
ビットコインも、ドルと全く同じように
その価値は、100%がシニョレッジであり、内在的な価値はゼロだ

23
暗号資産と経済の民主主義

シニョレッジのファントムヴァリューという考え方
新たな「経済と民主主義」の青写真ができあがる

25
こうした通貨の使い方は、けっして新しいものではない
限定的なコミュニティの中だけで運用される社会通貨というものが1世紀以上前から存在する。

27
イーサリアム 次世代の暗号資産と分散型アプリケーションのプラットフォーム

45
スマートコントラクト 人の仲裁や関与をまったく必要とせず、その機会もなく、自律的に実行される契約(コントラクト)

61
私は、反制度的、完全自由主義的、アナーキスト的な性向が一般よりかなり高いが、そうした性向がかなり低...

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2023年10月6日

読書状況 読み終わった [2023年10月6日]
カテゴリ 経済

すげえ本だ。イッキに読み終えた。

『仮想通貨革命』を読んだ時、余りの衝撃でひっくり返ったけど、この本も、寝る前に読んだら、ワクワクドキドキしてきて、心臓の鼓動が激しくなり、読後、しばらく興奮状態が続いて、眠れなかった。

インターネット革命によって、フラットな社会が実現されるとバラ色の未来を描いたのに、現在では、グーグルやamazonやアップルやマイクロソフトなど、ごく小数の勝ち組企業が市場を独占して、多くの優良企業がツブされてしまったし、新しいアイディアをもった未来の新企業も今現に成長を阻害されてる。

または、GoogleやAppleやAmazonなど、ごく小数の独占企業がビッグブラザー化してしまい、次世代の石油と称されるビッグデータを確保すべく、私たちの個人情報はないがしろにされ、全てのプライバシーは監視可能な状態に置かれている。
これはもう『1984年』のディストピアそのものだ。

それと同じことが、ブロックチェーン革命でも、起きる危険性がある。

ブロックチェーン技術を中央集権的に用いれば、小数の管理者によって、全人類の全ての金の動きが監視可能になる。

ブロックチェーン革命によって、自由な社会が実現されるのか、それとも、全てが監視される監獄社会になるのか、現在は、その分岐点にある。

コインチェックのような「カス中のカス企業」がNEMをコールドウォレットに入れておらず、マルチシグにもしてなかったために、ハッカーにまんまと580億円相当も盗まれてしまったなんていうマヌケ過ぎる話は、この際、どうでも良い。
こういうバカげた事件を通して、それぞれのオルトコインは追跡可能な機能を備えたり、マネーロンダリングできない仕組みを作ったり、さらに進化してゆくだろうし、最終的には「盗む価値がなくなる」機能を備えた暗号通貨だって生まれるかもしれない・・・・・ということを書いてる最中にも、Plasma Cashのニュースが飛び込んできた。
2018.3.9.パリ
パリで3月9日に行われたイーサリアムコミュニティ会議に、ヴィタリックがサプライズで出席し、2017年8月から発表されたスケーリング解決のためのPlasmaに続く、Plasma Cashを発表した。
Plasma Cashはヴィタリックと開発者のダン・ロビンソン、カール・フローチによって開発された。
Plasmaをよりスケーラブルにし、一般ユーザーたちの必要動作環境を大幅に緩和する方法として提案された。
Plasma Cashの特徴は
・Plasma coinを発行し、ユーザがトークンを容易に追跡できる
・取引所でハッキングが起こっても、ユーザーは資産を失わない
Plasma Cashのシステムではユーザーの資金を直接扱うのではなく、取引所が注文書の機能を提供し、プラズマの契約を通じて、損失を保証できる。
「取引所がハッキングされた時でも、ユーザーの資産が失われることはない」
とヴィタリックは語った。
すげーーーーー。
まさに未来の通貨だーーーー。
これまでの歴史上なかった、画期的な機能を装備した暗号通貨!
これにより、良貨は悪貨を駆逐するだろう。
素晴らしすぎる。

このように、これまでの歴史上の貨幣にはなかった画期的な機能が、進化する暗号通貨には備わりつつある。
量子コンピューターですら解けない暗号を備えた通貨も開発中。
暗号通貨の未来ははかりしれない。

私たちは、人類の叡智を結集して、ブロックチェーン技術を、小数の特権的な管理者の手に渡さず、自由な未来を実現するために生かさなければならない。
インターネット革命の失敗を、ブロックチェーン革命で繰り返してはならない。


<読書メモ>

ブロックチェーン革命
分散自立型社会の出現
野口悠紀雄

はじめに
p4
間違った説
① なぜビットコ...

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2018年3月1日

読書状況 読み終わった [2018年3月1日]
カテゴリ 経済

むっつかしー

よく分かんなかった

2023年5月4日

読書状況 読み終わった [2023年5月4日]
カテゴリ 経済

おもしろかった。
図書館で借りたんだけど、人気の本で、数十人待ちだったし、今こうして読んでる間にも、どんどん、待ってる人の数は増えてる。

p20
あまりにも危険でありやめなければならないのは、政府の貨幣発行権ではなく、その排他的な権利であり、人々にその貨幣を使わせ、特定の価格で受領させる政府の権力である。
『通貨の選択』ハイエク

責任ある金融政策をとる国の通貨は、次第に信頼できない通貨にとって代わるようになるだろう、というのがおそろらく結論である。金融的高潔さの評判があらゆる貨幣発行者が用心深く守ろうとする資産となるであろう。
『通貨の選択』ハイエク

ハイエクの貨幣についての考えは、このふたつのフレーズに尽きている。

p21
ハイエクが異議を唱えているのは、政府あるいは中央銀行による貨幣の発行そのものではなく、その「選択」に関する政府の介入であり、具体的には、自国の造幣局や中央銀行が発行する貨幣しか使用させないという法的手段による強制だということ。

ハイエクは世界的インフレに対する処方箋として、貨幣に関する選択を人々に委ねることを提案した。

p23
国際通貨制度が、1971年のニクソンショックから、固定相場制から変動相場制に変わり、通貨価値の維持競争が始まった。
これこそが、ハイエクの主張が形を変えて実現したものといえる。
通貨間競争が世界のインフレを見事なまでに収束させた。

p23
通貨を人々の選択に委ねれば、インフレは解決するとしたハイエクの主張が実現した。

p34
1998年、クルーグマンは、バブル経済崩壊後の日本の状況を整理して、これは大恐慌から遠ざかるにつれて、経済学者たちから忘れさられてきた「流動性の罠」が再び現れてきたのだと診断した。

アメリカでは、IS曲線もLM曲線も死語に近くなっていた。

p37
アベノミクスにおいて、浜田宏一は、物価は貨幣的現象であり日銀は貨幣量を増やしさえすれば良いのだという分かりやすい提言を行ったが、彼は、ケインジアン全盛時代には、不況期における金融政策の一般的限界を説いていた。

p56
ビットコインは先端的な数学理論の所産ではなく、よく知られた常識的な理論と技術を組み合わせて、誰もが気づかなかった使い方をしたもの。

p103
なぜ紙切れが貨幣になるのかを満足に説明できないままで金融政策を論じ続けている現代の中央銀行たちは、なぜ卑金属が貴金属になるか(実際にはならなかった)の正しい理論を持てないまま研究を続けた錬金術と似ている。

p112
ビットコインが成功すると、多くの追随者または模倣者があらわれた。
これらはアルトコインと呼ばれる。アルトコインはモノマネではあるけれど、無価値ではない。
そもそも貨幣の歴史そのものがモノマネの歴史なのだ。

p284
通貨の選択をひとりひとりに委ねることは、私達の選択をエリートたちの誤りや功名心から遠ざる賢い知恵になる、それこそがハイエクが提唱していた通貨発行競争の世界ではないか。

p286
金融政策というのは、現在の豊かさと将来の豊かさを国民経済全体として交換する政策でしかありません。
成長の時代にあった将来の豊かさへの予感が消えてしまったら、金融政策にはその役割を果たすことはできない。
そして世界的に広がる格差の問題がある。
格差拡大そのものは金融政策の責任ではないが、金融政策を「良きもの」とする合意を崩すことにはなる。
たしかに企業業績は良くなったらしい、だが、賃金は上がらない、残るのは物価の上昇による老後の貯えの現象への恐怖だけだとしたら、人々の怒りが中央銀行に向くことになる。

p289
ハイエクの描く通貨競争の世界は、民間の銀行が、各々の通貨単位を自ら決め、銀行券を競って発行する世界。
その競争を動機づけるものは、各発券銀行の企...

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2016年9月12日

読書状況 読み終わった [2016年9月12日]
カテゴリ 経済
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はじめて読んだときはビビった。社会をこんなふうに分析する方法があるんだーと思って。
その後、この論文で彼が使ってるデータの不正確さや恣意的な論理の構築を批判した最近の論文も読んで、その主張に根拠があるのか無いのか知らないけど、まー、そういう見方もあるんだなとは思った。

それでもやっぱり、ヴェーバーのやった仕事はすごいなーって、尊敬しちゃう。
着想がスゲーよ。
細分化された特定の分野の専門家であり科学者であるエコノミストからは見えない、総合的な社会の実態を、ヴェーバーは見ている。

2013年1月11日

読書状況 読み終わった [2013年1月11日]
カテゴリ 社会

古典的名作だよねー。
第一部「現代日本政治の精神状況」が好き。
「一 超国家主義の論理と心理」とか「二 日本ファシズムの思想と運動」とか「三 軍国支配者の精神形態」とか。

日本政治を覆い尽くした「無責任の体系」の分析が明晰。

読書状況 読み終わった
カテゴリ 政治

本書の大部分は「不平等の経済学」と呼ぶべき内容で占められている。 p.20

図書館で借りた。
スティグリッツは優しい。
彼は宇沢弘文がシカゴ大学で教えてたときの、数理経済学セミナーの教え子なんだって。
なるほど、って思った。
彼の育った町のことや、家庭のことが、書いてあった。
彼が子供の頃、アメリカンドリームはすでに幻だったと書いてある。

マリーアントワネットとギロチン。
「ギロチンを忘れるな」
1パーセントの人々のあいだでも、不平等に対する懸念は切迫してきていた。
p12

レーガン大統領からアメリカの不平等は著しく拡大しはじめた。
シカゴ大学のロバートルーカスは強調した。
「健全な経済学に危機をもたらす風潮のうち、最も人を惑わせ.......最も有害なのは、分配の問題に焦点をしぼることである」
ルーカスの主張は、保守派の経済学者の大多数と同じだった。
p16

金融セクターはアメリカ経済の過ちを象徴している。

金融セクターが独力でうまく機能することはない。

アメリカと世界が2008年に直面したのは、人為的な厄災だった。
p.36

攻撃型の金融政策、いわゆる量的緩和の主眼は、中小企業を回復させることではなく、株価を回復させることのほうに置かれていた。
結果として、平均的なアメリカ人に大きな恩恵はもたらされず、雇用が創出される効果も薄くなった。他方、富裕層の資産を回復させる効果は絶大.........
p.40

過去30年間にわたって、市場経済は100回以上の危機に直面してきた。
市場経済を機能させるうえで政府の規制と監督がきわめて重要になる。
p.94

オーストラリアでは、選挙参加は義務であり、投票ブースに姿を現さなかった者には罰金が課せられる。
p.104

クズネッツは経済成長の初期では不平等が拡大するものの、豊かさに比例して社会の平等性が高まると示唆した。
1980年代以降の実体験からすると、クズネッツの説は正しくない。
対照的にピケティがたどりついたのは、資本主義は高い度合いの不平等を特徴とする、というごく自然の結論だった。

資本家は利益の大部分を再投資するため、最上層の富は金利と並行して増えていく。もしも金利が経済成長率を上回っていれば、国民所得における彼らの資本の占有率は、永遠に上昇しつづけるわけだ。
p.115

ピケティは収穫逓減の法則を、静かに破棄した。

経験主義者であるピケティは、資本利益率が減少していない事実を確認し、将来的に減少すると考える理由は存在しないと結論づけたのだった。
p.116

じゃぶじゃぶの資金は信用の洪水をもたらした。
たとえば、FRBは量的緩和政策でバランスシートを3倍にふくらませた。短期間に約2兆ドルを注ぎ込み、大量の中長期債権を買い入れたのである。

信用の拡大は富の増加として表出するが、現実を見誤ってはならない。結果としてアメリカはさらなる豊かさを手に入れていない。資産の量は同じなのだ。
p.118

法人税が安すぎる

アップルやGoogleやゼネラルエレクトリックは創意工夫のかなりの部分を税金逃れの努力に振り向けている。
p.152

ええええええ!
1963年8月28日
ワシントンのナショナルモールで
キング牧師が記念すべき
「わたしには夢がある」
の演説を行ったあの場に、なんとスティグリッツはいた、そうだ。ビックリ。
単なる偶然ではなくて、彼はクラスメートとともに人種平等のための闘いにのめり込んでいた、とのこと。

ピケティはわたしの青春時代を、資本主義の黄金時代として描き出した。
しかし、わたしの記憶は違っていた。生まれ育った...

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2015年10月27日

読書状況 読み終わった [2015年10月27日]
カテゴリ 経済

世界金融危機 (2007年-)を予測できた数少ない経済学者の一人。
ウォールストリート占拠デモにも参加した行動するエコノミスト。
この本では、99%の貧困層と1%の富裕層という、アメリカの歪んだ社会構造を分析している。
「第9章 上位1%による上位1%のためのマクロ経済政策と中央銀行」の中の「現代のマクロ経済学と通貨政策がどのようして下位99%を痛めつけたか」は、アホノミクス以後の日銀の通貨政策が、オレにとって、具体的にはどのように作用するんだろう?と考えながら読んでいた。

「ほとんどの人々にとって、賃金は最も重要な収入源だ。結果として高い失業率をもたらすマクロ経済学と通貨政策は、現在のアメリカ社会における不平等の主な源だ。過去4世紀の間、マクロ経済学と通貨政策は安定を生み出してこなかった。維持可能な成長を生み出さなかったし、最も重要なことに、アメリカ社会のほとんどの成員に恩恵をもたらす成長を生み出さなかった。」

「真相を言えば、マクロ経済学の諸モデルは、不平等と配分政策のもたらす帰結にあまりにも不注意だった。これら欠陥のあるモデルにもとづく政策は、危機の発生を助長する一方で、危機に対処する能力を欠いていることが証明された。たとえ経済が回復しても、それが雇用なき回復になるという絶望的な展開にも、これらの政策が寄与していたものと思われる。」

スティグリッツのことが好きなのは、やっぱりそこに、数式だけじゃなくて、モラルがあるから。
経済学はモラル・サイエンスだと言ったアダム・スミスの言葉は、ケインズでさえ受け継いでいるんだから。

2013年2月7日

読書状況 読み終わった [2013年2月7日]
カテゴリ 経済

『ナラティブ経済学』ってナニ?
『物語の経済学』では、ダメなの?

『無形資産が経済を支配する』の中身に出てくる言葉もそうだけど
最近の山形浩生の翻訳はカタカナが多すぎ。
翻訳になってないよね?

人々が、しばしば通念や物語によって、不合理な経済行動をとることについての研究。
ある種の作り話が、人々を不合理な行動に駆り立て、それが、バブル経済や、大きな詐欺事件、その崩壊による不景気などを引き起こしてきた。
サブプライムローンや不動産バブルは、合理性を完全に無視した、もっともらしい作り話で、人々を経済行動に駆り立てるという行為が国家規模で行われた例だ。

ミクロ経済学では、人々が様々な物語を聞いて経済行動を変えることは、行動経済学の分野で、心理学的に研究されてきた。
本書は、マクロ経済学でも、様々な作り話とそれに影響された景気変動の間に、明確な因果関係があることを実証し、経済予測の新しい方法を模索している。

ただし、この試みは、まだ始まったばかりで完成形ではない。
本書では、単なる思いつきや、雑な議論、説得力のない実例が、あちこちに散見される。でも、オモシロかったよ。

narrative
物語、物語文学、説話、話術、語り口、(本の会話の部分に対して)語りの部分

nar‧ra‧tive /ˈnærətɪv/ ●○○ noun formal
1 [countable] a description of events in a story, especially in a novel
At several points in the narrative the two stories cross.
2 [uncountable] the process or skill of telling a story

6
ナラティブ経済学は、人気ある物語が時代を通じて変化し、経済的な結果に影響を与えることを実証する。そうした結果は、不景気や不況にとどまらない各種の重要な経済事象を含む。

10
伝統的な経済学アプローチは大規模な経済事象における世間の「信念」が果たす役割を検討できていない。つまりはナラティブを見ていないということだ。

10 (感想)
ケネス・E・ボールディングの名前が突然出てきて、軽く驚いた。
今頃になって、ボールディングの名前を聞くなんて、思っても無かったから。
シラーの恩師なんだって。
その、ボールディングの言葉
『経済学は人間の思考と理想を扱うのだから「道徳」科学と考えるべきだ』
まるで、アダム・スミスみたいなこと言ってんな。
でも、この考え方には、オレも賛同する。

11
ドイツは本当に賠償金を払う能力がなく、それをドイツ人に無理強いする危険性についてケインズの予測は正しかった。

ケインズの洞察はナラティブ経済学のお手本だ。というのも、それは、人々が経済条件の中でヴェルサイユ条約の物語をどう解釈するかに注目しているからだ。

18
第1章 ビットコインのナラティブ

ビットコインは、投機的な熱狂と、実際の商業利用ではなく市場価格から見て、史上最も驚くべき暗号通貨だ。それを取り巻く各種のナラティブは、ナラティブ経済学の基本的な疫学を議論するための直感的な基盤を提供してくれる。

ビットコインの物語は、成功した経済ナラティブの一例だ。きわめて感染力が高く、世界の相当部分でかなりの経済的変化をもたらしたからだ。

22
ビットコインとアナキズム
プルードンは1840年にアナキズムを次のように説明している。

統治されるというのは監視され、操作され、スパイされ、指図され、法に動かされ、数字を振られ、規制され、徴兵され、強化され、説教され、制御され、チェックされ、推計され、価値評価され、検閲され、命令されるということだが、そ...

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2021年11月19日

読書状況 読み終わった [2021年11月19日]
カテゴリ 経済
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はっきり言って、ぜんぜん理解できてないんだけど、近代経済学の最も重要な古典だと思って、いつでも読めるように、本棚に置いてる。
ハイエクは、この本を、景気対策として財政政策が必要だという結論が先にあって、それを説明するために後から理論を組み立ててると批判した。

2013年1月11日

読書状況 読み終わった [2013年1月11日]
カテゴリ 経済

山形浩生の解説が分かりやすかった。

以下、引用。

本書は経済学という分野を震撼させた、革命的な本だ。

本書は失業というものが一時的な過渡期の現象などではなく、定常的に存在し得ることを説明し、そしてそれが金利を通じてお金の市場(つまりはお金の量)に左右されることを、まとまった形でほぼ初めて示した。


それまでの経済学はこの状況に対して答えを持っていなかった。それまでの経済学は、失業は変な規制や不合理な抵抗さえなければ、だまっていてもなくなる、と述べていた。

需要と供給は市場メカニズムを通じて価格によって均衡する。失業なんてのは、価格による調整が完了するまでの一時的で些末な現象でしかない、と。

そして恐ろしいことだが、もはやケインズ『一般理論』など過去の遺物と思われつつあった 2008 年になって、サブプライム問題とリーマンショックに端を発する世界金融危機が発生し、世界的に急激な景気停滞と失業増加が見られた。そのときも、ケインズから70 年にわたり進歩と洗練をとげてきたはずの新しい経済学は、有効な診断も処方箋も出せなかった。そして危機に対してきちんと対処を行ったあらゆる国(つまり日本以外のほぼすべての国)は、この古くさいケインズの基本的な処方箋どおりの対応を(不十分ながらも)実施し、最悪の事態を回避している。

この本は
「美人投票」         2箇所に出てくる?
「アニマルスピリット」    6箇所に出てくる?
「穴を掘って埋める公共事業」 2箇所に出てくる?
といった、印象的で有名な比喩やフレーズがたくさん登場する。

一部のケインズ解説書などでは、『一般理論』の英語は格調高い美文なのでわかりにくいなどと書かれているがまったくのウソで、関係節に関係節がぶら下がり、そこにいくつもの条件節が並置されて延々と引き延ばされた典型的な古くさい悪文だ(むろん古くさいわかりにくい書きぶりこそが格調高いのだ、という価値観はあり得るが)。


純粋ケインズ左派の立場からすれば、IS-LM などというのは経済学の数理的な処理を明白に否定していたケインズの理論を、中途半端に数式化して後退させてしまったということになる。厳密すぎるからダメ、というわけだ。それどころかこのヒックス論文は、こともあろうにケインズがあれほど批判した古典派の理論を、ケインズ経済学と野合させている。おかげでサミュエルソンが、両者を統合した新古典派総合なんかをでっちあげることになったではないか、と。

IS-LM がなければケインズ理論が戦後の世界経済を席巻できたかどうか。この
モデルの異様な使いやすさは比類がない。この図を一つ描けば、ほとんどの場合には経済政策の基本的な方向性は見極められる。

2016年9月11日

読書状況 読み終わった [2016年9月11日]
カテゴリ 経済

絵もカワイイ。この本、図書館で借りたのオレが最初だ!新品。
-----------------------<以下、引用>

古典派経済学は完全雇用を前提とした理論で、完全雇用という特殊な状況にのみ当てはまる、いわば特殊理論。
だが、ケインズの理論はどんな状況下でも通用する「一般理論」。p.148

・労働需要曲線(古典派経済学のグラフ)
・労働供給曲線(ケインズのグラフ)p.150

・総供給曲線(社会がモノを売る力)p.159
・総需要曲線(社会が喜んでお金を使うキモチ)p.160
総供給曲線と総需要曲線の交点で物価水準と雇用量が決定される。

古典派経済学は
「供給が需要を生み出す」と言う。
ケインズは逆だ。
「需要が供給を生み出す」

社会全体の需要が上がれば、物価が上がり、雇用量も増え、供給を刺激する。
ケインズはこれは「有効需要」と名づけた。
有効需要が増大すれば、失業問題は解決する。
p.163

有効需要の担い手は消費者。

個人消費者の他に
モノを供給する企業にも消費者の一面がある。
企業は新しく設備を購入し、材料を仕入れる消費者でもある。
これを「民間投資」という。

国内のモノを外国が買ってくれる海外輸出。
これは外国が消費者。
ケインズの経済学では輸出についてはあまり重要視しない。
p.175

政府が国内のモノを買えば「政府支出」
★★★ケインズ経済学では政府の役割がとても重要。

これらお客さんの消費を全て合わせたものを
国内総生産 Gross Domestic Producut と言う。
★★★有効需要の増加とは、GDPが増えることを意味する。
p.176

ミクロの視点でこれを見ると混乱する。
ケインズはマクロの視点で経済を見る。
p.177

所得=消費+貯蓄
衣食住の必需品は「基礎消費」
消費には「基礎消費」に加えて「限界消費性向」がある。
貯蓄が増加したときの消費の増分を
★★★★★限界消費性向(もっとお金を使いたい)
と言う。
p.183

不況を解決するには有効需要を上げれば良い。
有効需要が上がるとはGDPが増加すること。

GDPを増やすためには、まず投資が重要になる。
ここで言う「投資」とは
民間投資+政府支出
のこと。
投資によるGDP増加の効果は個人消費に依存する。
(私たちがお金を使えば使うほど、投資がパワーアップするということ)
p.188

所得が増加すると消費も増加する(限界消費性向)
投資の効果をパワーアップさせるには限界消費性向の大きさがカギとなる。
これを説明するためには「乗数の公式」を用いる。

GDPの増分=乗数×投資の増分
乗数=1/1-限界消費性向

乗数が消費の大きさを表す。p.191

限界消費性向の値が0.8だとすると
乗数=1/1-0.8
乗数=1/0.2=5 なので
GDPの増分=5×投資の増分

投資の増分が1兆ポンドだとすると
GDPの増分は5兆ポンドになる。

つまり1兆ポンドの投資が、5兆ポンドにパワーアップしたことになる。
p.184

消費を増やすということは貯蓄を減らすということ。
せっせと貯金する必要は無い、ってこと????

ケインズは答える。
「個人がどれだけ倹約に励んでも社会経済全体には何の意味ももたない」
p.198

社会経済の主役は、消費者と企業。

じつは企業に消費は無い。
企業のための購入はすべて「投資」になる。
売れ残りがあれば「在庫投資」

個人消費者の場合
所得=消費+貯蓄

企業の場合
所得=貯蓄

消費者が100Gのパンを買うとする
パンの原価は30G

企業の所得はこうなる・・・・・・
所得=売り上げ-原価
  =100-30=70G
投資=在庫が一個へる=-30G
消費=0
貯蓄=所得=70G

消費者はこうなる・・...

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2015年8月2日

読書状況 読み終わった [2015年8月2日]
カテゴリ 経済

『超訳~』の類には、おおよそロクなものがなく、これまで、読むに値する本は一冊も無かった。

だから、この本に対しても、期待値は限りなく低かった。
コソッと読んで、読まなかったことにしておこう、と思ったほどだが、山形浩生の解説はおもしろかった。

ケインズの『雇用、利子、お金の一般理論』は
第二次世界大戦後の世界の経済政策を一変させ、社会における政府の役割を徹底的に変えた。

第1章

強調したかったのは『一般理論』という部分。
古典派理論の公準は特殊なケースのみ当てはまり、一般には当てはまらない。

第2章

賃金は、労働力の需要と供給で調整されるはずで
賃金引き下げに労働者が応じないから失業が突く、というのは、何でも良いから仕事をくれという失業者で溢れた大恐慌当時の状況から見ておかしい。

「作ったものは、いずれ売るしか無いので、供給は需要を作り出す」
という話はおかしい。

第3章 有効需要の原理

ケインズ経済学のベースとなる「有効需要」の概念を述べる章。
経済全体で見ると、その期の総需要は、みんなが消費する分と、みんなが投資する分の合計。
これが有効需要。
有効需要が、雇用の量を決める。
それが少ないと、失業が起きる。

第4-5章

期待が、生産量と雇用を決める。

第6-7章

所得、貯蓄、投資の定義
この章では各種概念の定義を行う。
経済全体として見た場合、貯蓄と投資が透過となることを強調。
マクロ経済学の基礎を構築する章となる。

第8-9章 消費性向

雇用は有効需要で決まり
有効需要は消費と投資で決まる。

消費は客観的な要因と主観的な要因に左右される。
ただし、消費は、だいたい総所得の一定割合であまり変わらない。
とはいえ、それを減らすような財政規律論はダメ。

第10章 限界消費性向と乗数

雇用は有効需要で決まり
有効需要は消費と投資で決まる。
このうち、投資は乗数効果があるので、投資による直接雇用の何倍もの雇用が経済全体で発生する。
だから、失業をなくすためには投資を増やすのが効果的。
失業時には、ムダでも良いから公共投資を増やすべき。
ピラミッド建設でも、お金を埋めて掘り返す、でも良いから、公共投資を増やせ。

第11章 資本の限界収益率

社会全体の投資は、投資で見込まれる収益率が金利よりも高いと起こる。
つまり、投資を増やしたければ
投資収益率の見込み/期待を高める方法と
金利を下げる方法がある。

第12章

失業を減らすには、有効需要を増やすための投資が有効。
投資を増やすための手として、投資の収益率を上げる方法を検討する。
が、投資プロジェクトの収益未投資なんて、誰にも分からない。
みんな自分の勝手な思い込みや勢い(アニマルスピリット)や、その時の気分に支配されてるだけ。
収益未投資を冷静に分析するはずの株式市場も、じつは、美人コンテスト波のハラの探り合いにようる投機に堕し、目先の流行に流される。
だから、期待収益率の評価改善で投資を増やすのはつらい。

第13-14章 金利の理論

失業を減らすには、有効需要を増やすための投資が有効。
でも、期待収益率改善では投資を増やせない。

では、金利は?
金利は、現在の消費と将来の消費を均衡させるものであると同時に、手元に置く資産を利子のつかない現金で持つか、債権で持つかという選択を左右する。
この選択が流動性選好。

お金の量を増やすと、みんなの流動性ニーズが満たされるので、現金の需要が減少し、金利も下がる。
これは従来の古典派の理論では無視されてきた部分。

第15章

失業を減らすには、有効需要を増やすための投資が必要。
その投資を左右する金利は流動性選好
つまり人々が現金をどれだけ持ちたがるかで決まる、と前章で論じたが
ではなぜ、人々は現金を持ちたがる...

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2021年11月22日

読書状況 読み終わった [2021年11月22日]
カテゴリ 経済

r > g
資本の収益率 > 経済成長率

20カ国以上の所得と富の分配をめぐる世界的な動学を研究し、過去15年にわたり30人以上と集めた歴史的データを活用。

<以下引用>--------------------------

資本収益率が長期的に成長率を大きく上回っていれば、富の分配で格差が増大するリスクは大いに高まる。

この根本的な不等式を
           r>g
と書こう。

rは資本の平均年間収益率で、利潤、配当、利子、賃料などの資本からの収入を、その資本の総価値で割ったもの。
gは、その経済の成長率、つまり所得や産出の年間増加量。    p.28

<資本主義の第一基本法則>  α=r×β

資本/所得比率βは、国民所得の中で資本からの所得の占める割合(αで表す)と単純な関係を持っており、以下の式で表される。

α=r×β

ここでrは資本収益率だ。  P.56


<資本主義の第2基本法則>

長期的には、資本/所得比率βは、貯蓄率s、成長率gと以下の方程式で示される単純明快な関係を持つ。

β=s/g

たとえばs=12%、g=2% なら β=s/g=600% となる。    
p.173

α=r×βという式を使うと、ある国全体、さらには全世界についてさえも資本の重要性を分析できる。
また、個別企業の財務も研究できる。

たとえば、500万ユーロの資本を使い、年に100万ユーロの財を生産し、うち60万ユーロが労働者の賃金、利潤が40万ユーロだとする。

この会社の資本/所得比率は β=5
(資本が産出5年分に相当)
資本所得のシェア αは40% 
資本収益率 r=8%         p.59


インフレは事実上、有閑階級に対する税、もっと正確には、投資されていない財産に対する税と言える。 p.470

だが現代のインフレは、きわめて切れ味が悪い道具であると認識しておくことが重要だ。 ・・・・ 累進資本課税のほうが、民主的透明性と、現実の有効性の両方において、もっと適切な政策だ。 p.473

いったん通貨が貴金属への兌換性を失うと、中央銀行がお金を作る能力は潜在的に無限になってしまうので、厳格な規制が必要だ。これが中央銀行の独立性に関する論争の核心だし、無数の誤解の源にもなっている。
p.576

世界の金融資産の大部分がすでにさまざまなタックス・ヘイブンに隠されていて、世界的な富の地理的分布の分析に限界をもたらしているという点だ。  p.483

課税における20世紀の大イノベーションは累進所得税の考案と発展だ。
この制度は、20世紀における格差低減に重要な役割を果たしたが、今では、国際税制競争により深刻に脅かされている。      p.514

累進課税は、格差削減のかなりリベラルな手法だと言える。自由競争と私有財産は尊重されつつ、私的なインセンティヴはかなり過激にもなりかねない形で改変されるが、それでも常に民主的論争で検討されたルールにしたがって行われるのだ。    p.528

<以上引用>----------------------------------------

↓ ネットで公開されてる。どのピケティ本より参考になった。

ピケティ『21世紀の資本』
訳者解説 (v.1.1) 2015.1.23-2.1
山形浩生
hiyori13@alum.mit.edu

↑ 山形浩生が必要最小限の図式化で明快解説。必見。

山形は、ピケティはインフレーションに対して、この本の中では賛成とも反対ともとれる書き方をしている、と述べている。
しかし、オレは、ピケティはインフレに対しては否定的だとしか思えない。

「だが現代のインフレは、きわめて切れ味が悪い道具であると認識しておくことが重要だ。 ・・・・ ...

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2015年3月29日

読書状況 読み終わった [2015年3月29日]
カテゴリ 経済
タグ

トマ・ピケティの弟子。LSEの若き准教授。

この、直接的な行動力っつーか発想力がすごいわ。

株式や債権などの金融証券の持ち主を明らかにする世界規模の帳簿を作成する。
21世紀の資産に課税するには、これが必要不可欠な条件。

桁外れの富裕層を、さらに裕福にするタックス・ヘイヴンを打ち砕く各国の団結と科すべき制裁について明らかにする。
国際的な連携を組織し、各国政府が自らが被る損失に相当する制裁を科す覚悟があれば、タックス・ヘイヴンとの戦いに勝機はある。

資産に対する世界的な累進課税の創設。

この人にこそ、「闘うエコノミスト」になって欲しい。

2016年5月5日

読書状況 読み終わった [2016年5月5日]
カテゴリ 経済

最初に読んだとき、難しすぎて、よく理解できなかった。
ナニコレ?って思って、2021年11月21日の時点では
★ という評価にしたんだけど。。。

2022年1月19日

マイクロソフトが、米ゲーム大手アクティビジョン・ブリザードを687億ドル(約7兆8700億円)で買収する、というニュースが世界中を駆け巡った。

メタバースへの先行投資で、その朝、日経新聞を読んでて
「あ、この前読んだ、本に書いてあったヤツだ」
って気づいた。

アメリカの有形資産と無形資産の推移のグラフを見て、すぐにピンときた。

かつては、先進国ですら、無形資産は添え物でしかなかった。
しかし、アメリカでは、1990年代半ばに、無形投資が有形投資を追い抜く。

そのことが、この本には書いてあるし
2ヶ月後に読んだ日経新聞の記事にも同じことが書いてあった。

日経新聞の記事をまとめると

マイクロソフトは、なぜ687億ドル(約7兆8000億円)もの金額で、ゲーム会社を買収しなければならなかったのか?
財務諸表を見ても、よく分からない。

アクティビジョンは株式上場企業で、2021年9月末時点の純資産が
1兆9000億円。
買収額がそれを超えた部分
つまりマイクロソフトが支払うプレミアム(のれん)は6兆円弱にものぼる。

ここ10年で6件以上の企業を買収したマイクロソフトにはすでに
5兆7000億円ののれんがあり
新たな買収でそれが2倍以上に増える。

「払い過ぎだ」との声がある一方
「現在の財務諸表を基準にする点にこそ問題がある」との見方もできる。

のれんとは「会計監査で認識できない見えない資産」

現在の会計基準は製造業が主役だった時代に基礎ができたため
無形資産を計測しにくい。

有形資産の少ないIT企業は純資産が小さくなり
買収される際はプレミアムが大きく見えやすい。

アクティビジョンも本当の価値は1兆9000億円と7兆8000億円の間
マイクロソフトはメタバースのもたらす成長余地に期待を寄せ
デューデリジェンス(資産査定)の結果を受けて
のれん部分の6兆円弱を明確な無形資産だと考えた。

逆に言えばIT企業の無形資産がどの程度になるかは定期的な会計監査ではなく
M&A(合併・買収)の際に初めて顕在化する。

他のIT企業にも似た動きはあろうが
注目すべきは財務諸表には映らない「見えないメタバースの資産価値」になる。

この記事を書いた人
日経新聞コメンテーター:中山 淳史
自動車、電機など産業動向、経営トレンドに精通。編集委員、論説委員などを経て
2017年2月より現職。「GEと東芝」「移動の未来」などで講演多数。
2001年の米同時テロをニューヨーク駐在時に取材。アルゼンチン留学も。

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本を読んだだけでは、オレには内容が理解できなかったんだけど
日経新聞のこの記事読んで、やっと、意味が分かったわー。

この本の評価を、★ から ★★★★ に引き上げた。
これは、重要な本だ。

さて、本書の内容に戻る。

34
図2-1 アメリカの有形資産と無形資産の推移

かつては、最先進国ですら無形資産というのは添え物でしかなかった。
アメリカでは、どうも、1990年代半ばに、無形投資が有形投資を追い抜いたらしい。

53
知識生産もGDPを引き上げる

95
なぜ無形投資はスケーラブルなのか

97
ウーバーの運転手やAirbnbホストやインスタグラム利用者のネットワークやHTMLのちからや、ウェブの元となっている無数の規格は、無形資産であり有形資産ではない。

98
グーグル、MS、フェイスブックは、かつての製造業の巨人に比べて必要...

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2021年11月21日

読書状況 読み終わった [2021年11月21日]
カテゴリ 経済

学生時代に、真剣に読んだ。

政治的現実主義は、オレの気質にあってて、理解しやすかった。

アメリカ、中国という大国に挟まれた日本にとって、今こそ、力の均衡を作り出す戦略が必要だと思う。

アメリカ追従政策は、もう、やめてさ。
田中角栄がやろうとしたような、小沢一郎がやろうとしたような、日本国の独立外交を、トランプみたいなバカがいる今こそやるべき最大のチャンスだ。

そのためにも、小沢一郎の後継者が出てこなくてはいけない。

読書状況 読み終わった
カテゴリ 政治

POLITICS AMONG NATIONS
The Struggle for Power and Peace

A REALIST THEORY OF INTERNATIONAL POLITICS

This book purports to present a theory of international politics. The test
by which such a theory must be judged is not a priori and abstract but
empirical and pragmatic. The theory, in other words, must be judged
not by some preconceived abstract principle or concept unrelated to reality,
but by its purpose: to bring order and meaning to a mass of phenomena
which without it would remain disconnected and unintelligible.
It must meet a dual test, an empirical and a logical one: Do the facts as
they actually are lend themselves to the interpretation the theory has put
upon them, and do the conclusions at which the theory arrives follow
M'ith logical necessity from its premises? In short, is the theory consistent
with the facts and within itself?
The issue this theory raises concerns the nature of all politics. The
history of modern political thought is the story of a contest between
two schools that differ fundamentally in their conceptions of the nature
of man, society, and politics. One believes that a rational and moral political
order, derived from universally valid abstract principles, can be
achieved here and now. It assumes the essential goodness and infinite
malleability of human nature, and blames the failure of the social order
to measure up to the rational standards on lack of knowledge and understanding,
obsolescent social institutions, or the depravity of certain
isolated individuals or groups. It trusts in education, reform, and the sporadic
use of force to remed...

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2017年8月4日

読書状況 読み終わった [2017年8月4日]
カテゴリ 政治
タグ

3
執筆にとりかかったのは1991年末
ソ連が崩壊した直後
終えたのは、ほぼ10年後だった

冷戦の終わりは、大国間戦争が存在せず、バランス・オブ・パワーのような概念が意味を失う新しい時代の始まりだと広く信じられていたから

リアリズムは世界の動きについて、今後も重要な示唆を与え続けるものであることを論じた。

ただし私は、本書の大部分を、ハンス・モーゲンソーやケネス・ウォルツのような著名なリアリストたちの議論とは大きく異る、独自の国際政治の理論を提唱することに費やした。

4
アメリカがアフガニスタンだけでなく、イラクにおいて負け戦にはまってしまったことが明らかになって

アメリカの「テロとの戦争」に終わりが見えないことが段々と明らかになってきた。

アメリカが
25年前の冷戦終了から、6つの
戦争を戦っている
1 イラク 1991年
2 ボスニアをめぐるセルビアとの戦い 1995年
3 コソボをめぐるセルビアとの戦い 1999年
4 アフガニスタン 2001年~現在
5 イラク 2003年~
6 リビア 2011年

米軍は1989年から、3分の2の期間は戦争をしている。
これらの戦争はすべて小国に対して行われたものであった。

ビュー研究所の意識調査によれば
39カ国中の23カ国の過半数や多数派の人々が、中国は超大国として、すでにアメリカを追い抜いた、もしくは最終的に追い抜くだろうと答えている

アメリカでも 47%の人々が
中国がナンバーワンになりつつある、と答えており
同じく、47%がその反対の回答をしている。

5
中国が台頭を続ければ、アメリカが西半球で行ったように、アジアを支配しようとするだろう。
地域覇権国家になることが生き残りの確立を最大化するうえで最適な方法だからだ

6
本書は、初版からほとんど何も書き換えていない
自分の理論であるオフェンシヴ・リアリズムについての考えを変えていない

中国の台頭は平和的なものだろうか?
私の答えは「ノー」である。

19
20世紀は、国際的に、暴力の時代であった。

第1次世界対戦1914-1918 約900万人がヨーロッパの洗浄で死んだ
第2次世界対戦1939-1945 約5000万人が死んだ
              その半分以上は、一般市民であった。

第2次世界対戦が終わったとたん、全世界が冷戦に飲み込まれた。

21
私が「攻撃的現実主義 Offensive Realism」と名付けた理論は
本質的には
現実主義 Realism と呼ばれるものである。

E・H・カー
ハンス・モーゲンソー
ケネス・ウォルツ

などのリアリストの思想家たちの伝統に沿ったものだ。

大国は、セカイ権力の分け前を常に最大化しようと行動する
中でも特に強力な大国を含む多極システムでは、戦争の起こる傾向が強まる

31
フランシス・フクヤマの言葉を借りれば
冷戦の集結は「歴史の終わり」をもたらした、ということになる。

アメリカは
ソ連の驚異が消滅した後でも、ヨーロッパに10万人、北東アジアにもほぼ同じくらいの規模の軍隊を引き続き維持している。

もし米軍が撤退すれば、大国の間で危険な高層が起こるだろうと見越しているからだ。

32
台湾をめぐるアメリカと中国の衝突の可能性もなくなったとは言い切れない。

35
多極システム multipolar systems の場合には
二極システム bipolar systems の場合よりも戦争が起こりやすい

覇権国となる可能性を持つ強力な国家、潜在覇権国家 potential hegemons を一つだけ含む「多極システム」こそが、実は一番危険な国際システムである

38
社会科学の理論は「現実の世界」で怒っていることとは関係がなく
ボケた学者たちの暇...

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2022年9月11日

読書状況 読み終わった [2022年9月11日]
カテゴリ 政治

2023年10月7日
ハマスによる大規模攻撃の直後
バイデン大統領が言った
「アメリカはイスラエルとともにあり、確実に支援していく」


参照
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20231128/se1/00m/020/041000c

なぜ米国はイスラエルを支持するのか?

米国は最大のユダヤ系の人口を持つ国
調査会社『Statista』によれば
米国のユダヤ人 730万人>イスラエルのユダヤ人 718万人

米国のユダヤ人の成人人口に占める比率は2.4%
比率からすれば極めて少ないが
ユダヤ人の持つ影響力は極めて大きい

政界では
下院議員435人のうち28人がユダヤ人
上院100人のうち10人がユダヤ人

バイデン政権の閣僚にはユダヤ人が多い

 ブリンケン国務長官
 コーエンCIA(中央情報局)副長官
 ガーランド司法長官
 ヘインズ国家情報長官
 クレイン前主席補佐官
 イエレン財務長官

スタッフを含めれば、その数はさらに膨らむ

ユダヤ系ロビーの影響力も強い
最大のロビー集団は
「イスラエルのためのキリスト教徒連合(CUFI)」
400万人以上の会員

政治的に活発なのは
「米イスラエル公共問題委員会(AIPAC)」
その資金力は全米ライフル協会に匹敵

同委員会は選挙で親イスラエル候補に積極的に政治献金し
反イスラエル派の候補者を攻撃することで知られている


法曹界でもユダヤ人の存在が目立つ
現職の最高裁判事9人
うちユダヤ人判事はケーガン判事1人

最初のユダヤ人判事は
ウィルソン大統領に
1916年に指名された
ブランダイス判事

ブランダイス判事以降、49人の判事が誕生
そのうちの8人がユダヤ人

連邦裁判所や弁護士、検事を含めれば
その数は極めて多いと推測される

メディアも親イスラエルの傾向が強い
情報紙『AXIOS』は
「主要な米国のメディアは歴史的に中東で緊張が高まるとイスラエル側に立つ」
と指摘している。

ガザ地区の一般市民を巻き込むイスラエルの攻撃は国際的な批判を浴び、特に病院への攻撃は国際的な反イスラエル運動に火をつけた。
ハマスの攻撃をテロ行為と断定し、軍事支援を約束したバイデン政権は国際社会で、“道義性”を問われ始めている。
パレスチナ問題の解決策を示すことができず、バイデン政権は出口のない泥沼に踏み込んだのかもしれない。

(中岡望・ジャーナリスト)
週刊エコノミスト2023年11月21・28日合併号掲載

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現代では
アメリカ国民のおよそ4分の1を占めるエヴァンジェリカル(福音派)が
イスラエルを支持

Wikipedia
福音派(ふくいんは、英語: Evangelical、エヴァンジェリカル)
福音主義(ふくいんしゅぎ、英語: Evangelicalism)

福音派プロテスタントは
プロテスタントを神学や信仰の姿勢によって比較分類する際に用いられる用語

米国・英国をはじめとする英語圏を中心として
自由主義神学に対抗して
近現代に勃興した
聖書信仰を軸とする神学的・社会的に保守派のムーブメント

福音派自身による簡潔な定義は
「福音に献身する者」
「聖書は神の霊感によって書かれ、誤り無い神のことばであるという、聖書の十全霊感(聖書信仰)を信じるすべての教会」と定義される。

この聖書信仰は「福音派全体の恵みの絆」と呼ばれる。

組織としては
世界福音同盟
日本福音同盟
日本プロテスタント聖書信仰同盟
などが代表的であるが、無所属単立の福音派教会も存在する。

現在、世界的に福音派の教条として広く認められているのは
「ロ...

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2022年1月25日

読書状況 読み終わった [2022年1月25日]
カテゴリ 政治

宝物のような一冊。
過激でアンダーグラウンドな結社「アセファル」に集う、思想家や芸術家たち。
フランス現代思想のミッシング・リンク。

危険でドキドキしてくるような本。
本棚にいつも並んでる。

聖社会学 1937-39パリ「社会学研究会」の行動
[著者] ドゥニ・オリエ ジョルジュ・バタイユ ロジェ・カイヨワ ピエール・クロソウスキー ミシェル・レリス アレクサンドル・コジェーヴほか 
[編集] ドゥニ・オリエ [翻訳] 金子正勝 中沢信一 西谷修
[エディトリアルデザイン] 西山孝司
[発行] 工作舎 1987年

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カテゴリ 政治
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