ドーン (100周年書き下ろし)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (498ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062155106

感想・レビュー・書評

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  • 自分の中にある、場面場面に応じた様々な顔。そこにディヴという名前を与えてしまうと、あたかも複数の人格がいるように考えてしまう。
    しかし、本当は自分という1人の人間であり、現象に名前を与えることによって、過度の意識化がなされる。
    分人主義という考えはわかるけど、違和感を感じる。その違和感を可塑整形という未来的技術や、監視カメラとネットとのリンクによる人物検索システムなどとからめ、非常に巧妙に描くあたりは、さすがと思わせる。
    いろいろな危機の中で、人間関係が崩壊していく様と、なんとか維持しようとするもがく様はいつでも変わらないのだろう。
    近未来を見据えた先進技術とそれを受け止める人間の姿を描く予言的書

  • 【2033年、人類で初めて火星に降り立った宇宙飛行士・佐野明日人。しかし、宇宙船「DAWN」の中ではある事件が起きていた。世界的英雄となった明日人を巻き込む人類史を揺るがす秘密とは?愛はやり直せる。 】

    とにかく読みづらくて、どうにか頑張って読了。
    2033年、そう遠くない未来の話。生活の描写の中には今の時代ではまだ存在しない機器(3D映像で会話ができる電話とか、いくつもの顔を持つことが出きる整形術だとか)があったりしてどこまでも進化し続けるテクノロジーを感じる。

    人類史を揺るがす秘密・・・。随分と引っ張っている印象を持ったけど、宇宙飛行士だって普通の人間。愚かな事だってするし、間違いを犯すことだってある。
    宇宙船内での話、明日人の苦悩、ハマダラ蚊の話、いろんな話が行ったり来たりしているのが読みにくさにつながったのかな。

    題材としては好きな分野だったのでなんだかちょっと残念。

  • 分人主義 dividualism

  • ちょっと読むのにてこずったけどなんとか完読。人物名を頭に入れるのが難しかったがストーリ的には納得かな。

  • ドーン?

    ドーン!ってエレカシ宮本浩次の口癖?

    ドーン、、、DAWN

    ああ、英語のDAWNか、夜明けって意味ね。

    とそんな超インパクトのある題名と表紙で色々考え思わず手にとってしまった作品のレビューを書きます。

    タイトルのインパクト通りドでかい、壮大な物語でした。
    SF小説のようで、政治的な内容も色濃い作品です。しかも近年起こった出来事を見事なまでに反映させていて、本当に現実の話のような抜群のリアリティがあります。
    サブプライム問題やオバマ大統領という現実ネタがありつつ、羽田が国際空港になってたり、Googleアースの進化版のようなネットを介した人物探索システムだったり、ネットによる新国家や、dividualism(分人主義)というindividualism(個人主義)に対する概念まで創造してしまった著者の想像力が素晴らしいです。
    特にdividualismに関しては一つの新しい概念を作りだしたと言っても差し支えないほど完成された考え方で驚きました。これタダごとじゃない気がします。英語で検索したらこの語でいくつかヒットするので平野氏がオリジネイターではないのかもしれませんが、ここまで確立したのは凄いです。これ作品が大々的に評価されたら現実に世間に浸透しかねない用語ですよ。

    壮大すぎて初めの100ページ辺りまでは全貌をつかめないし登場人物が多くて混乱したので、一旦読むのを止めてしまっていましたが、その先はジェットコースター式に猛烈な勢いで読み手を惹きつけます。ミステリーな部分もあるので引きが物凄く強いです。

    一部こんな人が宇宙飛行士に選ばれますか?という人もいますが、それぞれの人物の思想と葛藤や発言や矛盾までがdividualismを介して考えると完璧でリアルです。とにかくリアルです。

    貧富格差、人道的介入か戦争か、宇宙開発問題、ネットの弊害などの問題をまとめてぶち込んで、それぞれに対しある程度の著者の回答を示しているところが面白いです。実際はどうかわかりませんが宇宙飛行士の苦悩がとてもリアルに伝わってくるし、登場人物が少し哲学的に様々な問題に答えを出していく描写が美しいです。これだけの内容をぶち込んだにも関わらず、最後は愛でまとめ上げるところ評価が分かれそうなところですが、私は非常に良いと思います。寧ろこれだけ盛りだくさんの内容をまとめるには愛しかありえません。夜明け、わかりはじめる、などの意味があるが日本人にはあまり馴染みのないこの言葉を選んだタイトルも秀逸です。

    激烈おススメします!SF好きにも政治好きにもミステリー好きにもおススメ!!ちょっと難しい漢字があってルビもふってないので読めないのがありましたが、私レベルでもちゃんと理解できたので最初の100ページ我慢すれば、その後に素晴らしい読書体験が待ってますよ。私はすぐにでも再読したいです。



    ここからは完全に余談ですが、上記のように「ドーン」という言葉はエレカシの宮本さんの特に好きな言葉として有名ですが、彼は勢い的な意味でドーンと無意識に使っていますが、英語だとDawnで(夜明け)という意味で日の出というような意味合いがあります。エレカシファンはもうお気づきのことと思いますが、エレカシの最新作のタイトルはそうです「昇れる太陽」です!!何たる偶然!!!
    もちろん宮本さんは英語なぞ全く興味ないでしょうから何の意図もないのですが、彼の口癖は偶然にも英語では彼の最新作のタイトルと近い言葉であり、彼が最近テーマのようにさかんに訴えている、沈んでも陽はまた昇るんだ、人生もそう!という考え方と一致していたのですね。もう一度言います、何たる偶然!何とジャケも似てます。ひょっとして平野啓一郎さんはエレカシファン?
    トリビアなら90へぇ~は超えたでしょ~この話。

  • 以下のリンクに日本インターネット新聞社JanJanで掲載された、私の書評が載っています。内容は同じです。
    http://www.book.janjan.jp/0910/0909270842/1.php

    時は近未来の2033年アメリカ。ちょうど今小学生くらいの子供が社会人になった頃の話だ。情報化社会はさらに進み、市街のあちこちに設置されたWebカメラの画像から、特定の人物をネット検索すると、個人のおおよその行動までも明らかになってしまう。それを逆手に取り、可塑整形で、いろんな顔を使い分ける人間も現れた。

    主人公は外科医の宇宙飛行士、明日人。彼は先に起きた東京大震災で一人息子の「太陽」を失っており、それがきっかけで宇宙飛行士に志願した。彼は、人類初の有人火星着陸ミッションを成功させた、世界的ヒーローになる。

    一方、彼の妻今日子は、息子のARを実験的に自宅に設置し、共に暮らしている。ARとは3次元のホログラムのようなもので、個人の全遺伝子情報がインプットされ、現実と同じように体や精神が成長するようにプログラムされている。明日人が火星に行った2年半、彼女はARの開発者と出会い、成長する息子のARと一緒に暮らしていた。

    明日人はデヴォン社という軍事企業からヘッドハンティングされ、未来は順風満帆なように見えた。しかし、宇宙船「ドーン号」の中で「重大なミス」が起きたことに絡んで、個人的な浮気の問題、薬物依存、人種差別、生物兵器、挙げ句の果てに大統領選挙の行く末までが一つの大きな渦となって、様々な人間の運命を容赦なく翻弄していく。

    この物語のエッセンスは盛りだくさんであり、主なもので、近未来のテクノロジー、宇宙でのクルーの生活、アメリカの大統領選挙、そして、ネット社会と現実社会での人格の違いから拡張したと思われる、「ディヴィデュアリズム(分人主義、以下ディヴ)」という考え方が挙げられる。ディヴとは、人々はそれぞれの場所、人間関係で別々の人格を持っているという概念である。仕事の顔、家庭での顔、恋人に会う時の顔と言った方が早いだろう。この物語の中では、情報化社会におけるディヴと可塑整形によるアイデンティティの希薄化が深く取り上げられている。

    情報が複雑になりすぎた社会では、どんな情報に対しても、何か意図的に作られたのではないか、自分だけは絶対にだまされない、と人々は懐疑的になる。そして、一体何を信じて、拠り所として生きて行けばいいのか、全くわからなくなり、日常的に不安な状態が続く。調べれば調べるほどわからなくなるはずなのに、いつもGoogleで検索し、ネット掲示板やテレビを観て、精神的に満たされようとする私たちの様に。そんな人々のネット上の行動と心理描写が非常に細やかで、リアリティーに溢れている。

    しかも、既に現実に利用されている技術が少しだけ進歩しただけなので、突拍子も無い空想上の世界とは思えないところが、物語の凄みを際立たせている。

    それでも、どんなに世の中が複雑怪奇になろうとも、人々が拠り所にできる場所は、結局「愛」がある場なのだ。著者の言いたいのは、500ページ近くを経ても、やはりそういうことなのかと感じた。

    「ドーン」 とはDawn、夜明けを意味している。太陽が少しずつ照らし出す、今日と明日の境界線はぼんやりとして誰も目にする事はできない。しかし、最後はどんなに暗い夜もいつか終わりが来るはずだと信じたい。

  • 「それぞれの人生を歩むべきだと思うけど、あなたとのディヴは、わたしの中に残りつづけると思う。」

    やっと終わった~~!!
    読み終わってまずは、物凄い達成感・・・
    遅々として進まず一体どうしたもんかと思った初平野啓一郎。

    すっごいSFチックなんだけれど、どこか今の現実を繁栄しているし、こんな未来もあるのかもしれないなって思わせる。
    それなのに、テーマはなんだか結局愛とか正義とかそういうところなんだ。。となんだか凄く理解しがたかった「個」という概念を用いつつ、着地点は単純で、シンプルといえばシンプル。
    それでいいような気も、物足りない気もさせる。

    ひたすら、宇宙船の中でたった数名で何年も暮らすっていうことを創造しただけでもう死にそうだったし、結局私は主要登場人物の誰にも共感したり寄り添ったりすることができなかったような・・・
    書き方かもしれないけれど、どこか出てくる人たちと距離があったのだ。

    それでも、やっぱり最後は、なんだか良かったね!と爽快感で纏め上げているので、読後は達成感と疲労感と爽快感と、、一応読んでよかったなー面白かったなーという気分にさせてくれたよ。

    【11/10読了・初読・大学図書館】

  • 平野啓一郎=読みづらい
    そんな印象を覆す一作。
    文学と娯楽を巧みに融合している意欲作。
    未来のシミュレーションっぷりも楽しめる。

  • 2030年代の近未来小説。有人火星探査機「ドーン」のクルー明日人が主人公だか、ちょっと盛りたくさんの感じ。

  • 新潮2009年10月に書評されていた本

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著者プロフィール

作家

「2017年 『現代作家アーカイヴ1』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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