- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062883078
感想・レビュー・書評
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AIの現状と著者から見た日本、そしてコンピュータと競争することになる人間への課題を提示した本。
著者は研究所の研究員と大学院の教員をされている方のようだが、知識と視野が広く感じられ、共感を持って読むことができた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
人工知能の危惧もそうだねも、どちらかというと電子端末市場がGoogleやAppleに奪われたようにAIというあらたなターニングポイントにおいて日本はまたもや出遅れるのでは?という主張の方が強く感じた。
日本は果たしてドイツ産官学でのインダストリー4.0やアメリカGE社(ゼネラルエレクトリクス)が打ち立てたインダストリアル・インターネットといったような時代の潮流に遅れを取らないか、多くの人が今一度見つめなおさないといけない。 -
『これまで人間とコンピュータ(機械)を分ける最大の要素は、「創造性」あるいは「独創性」にあると考えられてきました。
しかし作曲活動のような最も人間的で創造的な作業までもが、コープ氏の言う「音楽データの量とそれを構成する能力」などという無機質なコンピュータ科学の対象となりつつある今、その本質があらためて問い直されています。
一体、創造性とは何なのでしょうか?』
AI技術の急速な進歩とAIが様々な産業に与える影響について、人間がそれとどう向き合っていけばいいのか、表面的な議論は一通り出来ている入門書。
AIがこの先、どの領域まで担っていけるのか。自動化の先にある、人間であれば求められる価値判断はいかに処理・処置されうるのか、そこが一番重要なんだと思う。 -
AIの現状についての新書。
コンピューティングの速度がムーアの法則で上がり、それにソフトウェアの進化が加わり、人間の創造的活動をコピーできるようになってきた。そもそも人間の創造的活動自体が、過去の経験の組み合わせが中心であり、それを創造的であると祭り上げていることがほとんどである。
それなら、ビッグデータの計算能力さえあれば、組み合わせ能力自体はコンピューターには及ばず、あとはアルゴリズムで良いものを絞り込めれば良い。 -
よくここまで調べて書いてくれたものです。
総論として「人工知能の発達」は人類の味方だということは誰もが認めるところだと思うのですが、その裏に色んな世界があることを知り、勉強になりました! -
わかりやすい
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KDDI総研のフェローが、コンピュータと脳科学の融合により研究開発が急速に進んでいるAI(人工知能)について、その現状と将来の見通しを解説している。
本書で著者は以下のように述べている。
◆AIの研究開発は、1950年代に本格的に始まったが、当初の技術の「ニューラルネット」(脳を構成する無数のニューロン(神経細胞)のネットワークを工学的に再現したもの)は、「脳科学」というより「数学の産物」に過ぎなかった。しかし、2000年代に入り、脳科学の研究結果をAI開発へ本格的に応用した「ディープ・ニューラルネット」と呼ばれる技術により「パターン認識能力」(音声や画像を認識する能力)が飛躍的に高まり、近年中に「言語処理能力」が大きく進化すると考えられている。
◆更に、脳科学との融合は、AIについて、「パターン認識」や「言語処理能力」などの特定の用途に使われるツールに過ぎないと考える「弱いAI」という思想から、人間と同じく汎用の知性を備え、いずれは人間のような意識や精神さえも宿すようになると考える「強いAI」という思想へ転換しつつある。
◆この技術の飛躍的な進歩により、近年は、掃除ロボットやドローン(無人航空機)などが生み出され、自動運転車などの開発が進められている。こうしたAI技術は巨大なビジネスチャンスを生み出すものと捉えられ、グーグル、フェイスブックなどの世界的なIT企業が研究開発体制を急速に整えている。日本の産業界も後れを取ってはいけない。
◆一方で、AIは進化の過程で自然発生的に自らの意志を持ち、それを作り出した人類の意図とは全く違う方向へ発達してしまう危険性(究極的には人類を滅亡させる)を秘めているとも言える(「コンピュータ2045年問題」)。理論物理学者スティーブン・ホーキング氏やビル・ゲイツ氏など、多くの有識者が警鐘を鳴らしている。また、更に現実的な懸念としては、AIが人間の雇用を奪う恐れがある。
◆AIは今や、将棋やチェスでその世界のトップレベルの人間を破り、多くの人がバッハよりもバッハらしいと感じるような曲を作るレベルに達し、更に、ある領域で学んだ事柄を別の領域へ応用する「汎化能力」を示し始めている。
本書により、AI技術が凄まじいスピードで進歩しており、それが人間の生活やビジネスを大きく変えつつあることは認識できた。
一方で、予測不可能なAIの進化が人類の滅亡を招く懸念があるとなると、未だ映画や小説の中の世界としか考えられないものの、生命科学の場合と同様に、科学の進歩の行き着くところには、従来では考えも及ばなかった問題が立ち現れるのかもしれないとも思う。
現代科学技術の最先端の一部に触れることができる。
(2015年3月了) -
さまざまなことを考えさせてくれる良書。
手塚信者としては、AIの進歩を手放しで歓迎しているふしはあったんだよね。でも本書を読んで、
「ん?それほど楽観的に構えられないのでは?いや、実は相当にやばい状況なのでは?」
という気がふつふつとわいてきた。多くの論者が指摘するように、AIが人類最大の敵になっちゃうんじゃなかろうか、と。
著者は「人間にしかない『何か』」があるってことで楽観してるんだけど、それって本書に登場してた「チェスや音楽は人間にしかない『何か崇高なもの』を体現したものだ」と素朴に信じる人物と同じ楽観なんじゃないかなと思う。
「強いAI」が登場したら、チェスの評価がそうであったのと同じように、人間そのものの評価ががたっと落ちちゃうと思うんだよね。そうするとどうなるか。僕たちが常識と思い込んでいる倫理や道徳が大きく変わるだろう。そのとき、社会ってのはどうなるんだろうか。そんなことを考えて身震いしてしまう。
かといって経済を考えると、AI開発を禁止することなどできるはずもなし、いや難しい問題っすわ、AI。 -
AIとは…みたいな本は過去に数冊読んだが、
これを読んで思ったのは、
AIとは"大量のデータの奪い合い"と"そのデータの活用"の2つを指し示すのだろうということ。
今まではオンライン上のデータ(EC、SNS、閲覧記録etc)のみだったのが、
人のもつ全てに近いデータを使おうとされている。
これらのデータから人の一体なにが見えるようになるのか
気になるようなそんな気がします。