この世の春 下

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (399ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103750147

感想・レビュー・書評

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  • 下巻は元藩主が療養という名の座敷牢で過ごす日々の中で、何故解離性人格障害になったのか、徐々に謎が解き明かされていきます。実の父親からの虐待があり、しかもその虐待自体は側女としていた忍びの者による操りという名の復讐だったことが判明します。
    どちらにしても父を殺し、側女を殺し、奥女中を殺し、側女の父も殺してしまったのは事実。仕方がなかったとはいえ、後始末が大変だったことでしょう。
    御霊繰を行う一族の住んでいた村の殲滅事件や城下での男子失踪事件など、最後はきれいにはまって終わったのには、さすがです。しかも現代物ではなく、時代物で解離性人格障害を軸とした話にするとは、なかなかない試みだったと思います。ただ、途中から謎解きの部分が少々長いなと感じたのは何故だろうと考えたのですが、多分その大元となる忍びの親子が先に死んでしまったことにより、そこまで急いで解明する必要がないのではないかという思いがあったからかなと思います。あの親子が原因だったのなら、もう元藩主が治ったも同然という未来が透けて見えてしまったからではないかと個人的には思っております。もう少しサスペンス的な部分を残しておいてくれたなら、最後までドキドキして楽しめたのかも、と。

  • まとまってます。
    でも二人に幸せになってほしいな…と思いつつもいざくっつくと、早すぎない?とも思えてきます。
    本当の重興がやっと出てきて動き出したのに…。
    まあ一目惚れと言われたらそれまでですが。

  • 宮部さんらしく丁寧で登場人物、設定もいいと思ったが、解明された真相がどうも・・忍びの技とかで説明されても、それはないでしょうとなる。また、復讐の発端、やり方についても異常過ぎる。大名家を揺るがす大事件が父娘の偏執だけによるってのは、なるほどとならない。憑き物を否定し多重人格の原因を追究しながら、呪いによる操りで決着するのは矛盾じゃないかな・・まだ催眠術の方が説得力ある。
    まぁ、それでも登場人物、絡みが面白かったし、一応は大団円って事で読後感は悪くなかった(^^)

  • 宮部みゆき作品の中でも、あまり引き込まれにくかった作品でした。上下巻が長く感じてしまいました。
    いつもの不思議で奇っ怪な話はどちらかと言うと横に置かれていて、真正面から心の病にスポットを当てて描かれていました。けれど、それであればもう少し丁寧に現実的に心の病について描けば良かったんじゃないかなぁ。せっかく心の病を真正面から捉えようとしてるのに、そこを微妙にファンタジックに、綺麗事でまとめてしまってるのはもったいない気がしました。
    何となくボヤケた印象でしたが、宮部みゆきだからこその辛い感想になってしまったかな。

  • 最近まとまって本を読む時間も気力もなく
    上下巻の厚みと「サイコ&ホラー」の謳い文句になかなか手がのびなかったが
    いざ読み始めたら頁をめくる手が止められず
    上巻は1日で、下巻も2日で読了。
    さすが宮部さん。
    [図書館・初読・10月30日読了]

  • 御魂繰の血を受け継ぐ身である多紀が、その技の使い手であったという流れを期待していたのだけれど。もう少し多紀を活躍させてほしかった。
    自分としては重興より、人間くさい半十郎のほうが好みだなぁ。
    「はかなくて過ぎにし花の森を経て白滝の音の懐かしきかな」

  • 勢いのある上巻だったので期待してしまったが下巻になると何だか静かになってしまった。不気味さはあるのだが、わりと謎解きだけで話が進み、悪を倒すというより向こうからやって来て勝手に動いて勝手に散った感じが否めない。主人公である多紀の存在がわりと薄く、重興の心を開かせたのかも知れないが、何となくただ話を聞く程度しかしていないような気がして残念。伏線はきっちり回収しているのでスッキリとした終わり方だが上巻の面白さからすると盛り上がりに欠けてしまった気がする。

  • 幸せな読書体験だった。
    美貌の青年藩主・重興、婚家に離縁され各務家にもどった多紀、美しい二人を取り巻く不幸な復讐劇である。
    時代物なのに、サイコ的で心理学的、憑りつかれたと思わせ、実は性的虐待からの逃避による多重人格と、現代物を読んでいるかのような現実感。

    多紀の優しさの中にある凛とした強さに心打たれ、重興がつらいながらも必死に自分を取り戻していく過程に胸を熱くし、重興が押込された別邸「五光苑」を取り巻く野山の美しさに心を洗われ、駿馬の毛並みの美しさに見惚れ、ただ文字を追うだけでその場に立ちすくんでいる自分を実感できる幸せ。
    二人を取り巻く元家老、医師、多紀の従弟、女中などの人物描写も優れていて、それぞれの抱えた事情もうまく背景として溶け込んでいる。

    多紀が重興の先妻由衣の方に拝謁する場面では、重興を強く慕いながら、だからこそ由衣の方の素晴らしさに打ちのめされる多紀の心情を思い涙したり、重興が真の理解者を得、わが身の中に作り上げた別人格である琴音と別れを告げる場面では胸を熱くしたりした。

    復讐、呪い、神隠し・・・ミステリー的な要素も十分で、謎を解きながら、時代背景、二人の恋の行方など十二分に楽しめた作品だった。

  • 下巻読了。

    重興の父、北見成興を怨む“狭間”父娘の執念に戦慄しつつ、重興を支える五香苑の皆の姿に癒されながら、読みました。

    ラストは幸せな感じで、温かな読後感でした。

  • ちょっとショッキングな題材ではあるけど、多重人格なのか、それとも重興が乱心したふりをしているのか、などと思いつつ興味深く読んだ。
    最後は自然に顔がほころぶような終わり方でよかった。
    さすが宮部さん、やっぱりおもしろい。
    ドラマか映画になりそうな気がするなー。

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

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