終わりの感覚 (Shinchosha CREST BOOKS)

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (188ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105900991

感想・レビュー・書評

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  • 人生の話 退屈で普通だけに共感

  • 2/20のヨモウカフェ課題本でした。

    ブッカー賞は聞いたことなく、でもイギリスではかなり評価の高い賞らしい。
    賞金も5万ポンド(現在の為替で700万以上)という破格の高賞金でもある。

    作者のJulian Barnesはブッカー賞に4回候補に挙がって2011年が
    初の受賞となりました。内容はというと、ある男の人生の回想から
    とんでもない結末へと進んでいくいわゆる推理小説というところか。

    作者がフランス文学、哲学を大学時代に専攻していたこともあって、
    本の中で印象的な言葉がありました。
    「歴史とは、不完全な記憶が文書の不備と出会うところに生まれる
    確信である」なんてこの本の真髄を表している。

    本の感想はというと、かなり読みやすい内容でした。
    でも読み返すたびに新たな発見がある。
    結末がわかっていても引き込まれるのは、正直驚きだ。

    主人公の男にいらいらさせられると自分は感じていたんだが、
    それって主人公が自己愛が強すぎるよね、
    とグループのある女性が言った時に僕はびくっと来た。
    だって裏を返せば自分が彼を批判するのは、
    結局のところ自分を批判しているのと同じだからだ。
    僕も自己愛が強くて、でも最近少しは自分に向き合えるようになってきた。

    文学は本当に考えさせられますね。終わりのないJourneyです。

  • 記憶の曖昧さ。自分という存在の曖昧さ。自分が生きた人生は自分だけのものではない。

  • ブッカー賞受賞作。読みやすいのに深い。
    自分らしさというのは瞬間瞬間にでると思う。その人がどう何を判断するかの積み重ねが自分らしさじゃないか、と。で、その判断にもっとも影響するのが記憶であり経験だろう。
    でも記憶ってのも、とんでもなくあやふやだよね。あれ?じゃあ自分ってなんだよ。
    と、いうのが最近の自分のテーマ。
    で、そんな俺にぴったりな小説。

  • 自分が覚えてない事で他人を傷付けたことを穏やかな老年期に突きつけられる怖さ。日々、発する何気ない言葉や振る舞いがどんな影響を人に与えているのか考えると身震いがするラストのどんでん返し。年齢を重ねてから再読したい作品。

  • わずか184頁の中篇小説ながら、その破壊力たるやすさまじい。

    まず目につくのは簡潔で明瞭な筆致。選び抜かれたワードによって形成されるセンテンスほどモチベーションの高まる読書はない。愛と性、老いと記憶を中心に書かれたこれら言葉の数々は、シンプルだけど感情の奥深くにまで浸透する。作家が主人公の口を借りて主義思想を主張する威圧的な雰囲気はなく、主人公に何かしらの役を演じさせているように見受けられた。もちろん、前者のような意識下で書いているのかもしれないが、読み手にそう悟られない心配りとしたたかさが行間から漏れ伝わってくる。老いに対する緩やかな楽観目線が気に入った。

    サプライズの後にくる主人公の感情の揺らぎが心地よかった。ひとつひとつ結び目がほどけていくような感覚。一種のカタルシスなのだが、そこに畏怖と悔恨の重ね塗りを見たような気がする。重いです。重いけどそれ以上に巧い。そして大胆。余裕のある周到さに脱帽。

    想像力に秀でているというよりは、実体験が大部分を占めているのではないか──そう思わずにはいられないリアルな空気感がある。現実と虚構の隙間にフワフワ浮かんでいるような独特の世界観。作者がミステリ作家ならば残らずリピートしたいところだが、ミステリ作家にはこのような世界観は創れないし、また必要ともされていないところがある意味ラッキーだったのかも。たまには、きちんとした文学作品も摂取しないといけないね。

  • 老年を迎えた主人公のアントニー・ウエブスターが、とあるきっかけから過去を振り返る独白として記される。

    親友と出会った思い出深い高校時代の頃から、恋に目覚めた60年代の大学生活の思い出までが前半に置かれている。

    若さの特権に満ちた輝かしくも苦い青春の思い出話をさりげなく読み飛ばしがちだけれど、この著者はそこかしこの叙述にいくつも地雷を仕掛けている印象。

    物語が大きく動くのは、昔の恋人ベロニカの母の死を告げる一通の手紙が届いてからだ。なぜに遺言が彼に届くのか謎が深まるばかり、、、 

    その後の急展開は、主人公のリアルタイムでの体験と重なっていく。鮮明だったはずの記憶の中の出来事は、突きつけられてくるいくつかの事実によって、次第にぼやけてくる、、、

    主人公の困惑は我々にも伝わってくる。なぜならこの独白を読み進めている以上、読み手も主人公と同じ過去に囚われているからだ。事実が判明し始めるあたりのスリリングさは、まるで乗っている椅子ごと振り回される感覚で、遊園地の乗り物に乗っているかのよう。

  • 隠居生活をしている老人に突然送られてきた一通の手紙。五百ポンドのお金と日記をアナタに遺したとの知らせ。
    また日記は学生時代を共にして、自殺してしまったエイドリアンのものだった。なぜ彼の日記を、一度しか会ったことがない当時の恋人の母親が持っているのか。それをなぜ主人公である老人に遺したのか。しかし、かつての恋人ベロニカが日記を譲ろうとはしない。
     現在での、時を刻んだ容姿ベロニカとの会話や、遠い昔の記憶を頼りに、老人は自分がしたある一つのことに辿りつくのだった・・・。

    __記憶は自分が良いようにすり替っていることも多々あるはず。本人には忘れてしまう些細なことでも、された側からしたら重大であることも多々ある。本作は、日々の生活、平々凡々と時を過ごしてきた主人公が、本人でさえ忘れさられていた事実に向き合わなくてはならなくなった話。
     年齢を重ねてきた人の方が、本質に迫れるのではないだろうか。最後に、どんでん返しもあります。

  • 184ページで人生における記憶の意味を問いかける。深くて重いが読んでよかった。
    ブッカー賞受賞。

  • 込み入った仕掛けがあるわけではないが、洞察に富む文章を味わいつつ、どんでん返しのラストに驚愕する。月並みな感想だが、まさにそのとおり。

    主人公そのままの鈍い俗物としては、苦く辛い気分で身につまされながら読んだ。

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