- Amazon.co.jp ・本 (563ページ)
- / ISBN・EAN: 9784120041372
感想・レビュー・書評
-
『ばんば憑き」と順番は前後したけど、こちらも大満足!
お話のおもしろさだけじゃなく、表紙や扉、頁の挿画のかわいらしいこと
それがプロフィールや他の本の宣伝の頁にいたるまで行き届いている。
南伸坊さんて、昔テレビに出てらした頃しか知らなかったけど、こんな仕事をなさるんだ
読売新聞連載だったそうだから、購読者の方は、毎日、お話も挿画もさぞかし楽しみだっただろうなぁ。
「あんじゅう」が「暗獣」であることは読むまで知らなかっけど、ひらがなの妙だ。漢字をあてられるとどうしたって乱歩の「淫獣」のような欲にまみれた人間を想像してしまうから、かわいらしいくろすけにはそぐわなかったろう。
「くろすけ」というあだ名を聞けばすぐに思い出すのは、トトロに出てくるカンタのおばあちゃんの、
『にこにこしとれば わるさは しねえし、いつのまに いねくなっちまうんだ。 いまごろ てんじょううらで ひっこしの 相談でも ぶってんのかな』
というセリフ。
メイとさつき言うところの『まっくろくろすけ」、別名「すすわたり」のことだ。
くろすけは宮部さんのまっくろくろすけへのオマージュなのかなぁ…
引用ついでに、あんじゅうからピンと来た言葉を2か所
p9『哀しいことがあったからといって、そのたびに死んでいたら命がいくつあったって足りない』
p559『これは御仏の業ではござらん。人の世の縁(えにし)の妙でござる』
三島屋変調百物語に、お勝、利一郎、行然坊、三人組とあらたなメンバーが加わってますます続きが楽しみだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
前作「おそろし」に続く百物語である。
三島屋の姪おちかが聞きとり手となって綴られる不思議な百物語。
今回は手習い所の子ども達も加わって、楽しかったり恐ろしかったり・・・。
『逃げ水』
お旱さんと呼ばれる山神様にとり憑かれた男の子平太。
彼が近づくと水がなくなってしまう。
そんな平太とお旱さんとの関わりが、ちょっぴり哀しい。
『藪から千本』
針問屋の娘お梅がようやく嫁ぐことになった。
お梅の婚期が遅くなったのには、訳があった。
実はお梅は双子の片割れだった。そして・・・。
自分でも気づかないうちに嫉み、恨んでしまうことってあるんだろうな。
『暗獣』
紫陽花屋敷と呼ばれる空き屋敷には幽霊のうわさがあった。
でもそこにいたのは、真っ黒く大きな草鞋のような暗獣だった。
本の題名にもなっているあんじゅうのことである。
同じ屋敷に暮らすことになった新左衛門と初音は、
あんじゅうに「くろすけ」という名前をつける。
くろすけとの関わりがとても温かく微笑ましかった。
その分、最後は切なくて哀しくて、涙が止まらなかった。
新左衛門がくろすけを諭したことばが忘れられない。
おまえは孤独だが、独りぼっちではない。
おまえがここにいることを、おまえを想う者は知っている。
離れてはいても、仰ぐ月は同じだ。眺める花は同じだ。
離ればなれになっても、それを支えと慰めに、生きていこう。
『吼える仏』
偽坊主行念坊が若かりし日に訪れた山里は、豊かな村だった。
その豊かさを周りには隠すことで、保っていた。
自分を守るために、人を犠牲にしてしまう。
でもそれは自分を傷つけることなのかもしれない。
全編をとおして、人の優しさ、温かさ、そして哀しさを感じた。
そして南辛坊の挿絵がとてもよかった。 -
「おそろし」を読んで、また三島屋の人たちに会いたいと思っていたところだったので、つい単行本を購入。
やはり宮部みゆきの読ませる力はすごい。
「いちばん怖いのは生身の人間」というのは、時代小説でも現代小説でもこの人のテーマなのだろう。 -
「あんじゅう」が一番良かった。
怪異を恐れず、何かを感じ取った夫婦がその怪異を心を通わせていく。あんじゅうの最後が悲しい。悲しいけど、温かなものが心の中に残った。
また読みたい。 -
やっと登場お勝さん!待ってました(^_^;)
2番目の花ちゃんと梅ちゃんの話は最後もやもやが残って先に進んだのですが、表題の「暗獣」と「吠える仏」は楽しめました!!行然坊さんと若先生また登場してほしいなあ〜〜良いキャラしてる おちかちゃんは違う人と結婚しちゃうけど、若先生とのいい話も見てみたかった! -
宮部みゆきの時代物シリーズは、外れがないなぁ。
-
暗獣が、泣けた。
-
<くろすけ>の話に泣かされました。そしてその後の吼える仏の話の人間臭さ。一話一話のギャップにやられました。
-
短編集。表題作「あんじゅう」の、やりきれない切なさと深い深い優しさに涙しました。
-
可愛い、でも悲しい…たとえもう会えなくても生きてさえいてくれればきっと良かったと思える日がくる