風に立つ (単行本)

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 97
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  • / ISBN・EAN: 9784120057281

感想・レビュー・書評

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  • 久々の柚月裕子さん

    いつも読み応えのある作品を
    しっかり書かれている印象

    なのでこちらも腰を据えて読まなきゃ!
    …と思っているとなかなか手が伸びず
    ご無沙汰でした。


    でも久々に読むととてもよかったー!


    補導委託を受け入れる、ある家族の物語。


    補導委託というのは
    問題を起こした少年を、
    更生を目的として一定期間預かる制度のこと


    少年を預かることで、
    元々あった家族間のすれ違いも
    少しずつ変化が見られていきます


    家族それぞれの想いが
    丁寧に描かれていて
    後半は知らぬ間に泣いておりました。



    すごい大きな事件があるわけじゃないけど
    人と人とがきちんと向き合うことで生まれる
    心の動きがよく描かれていました。


    この本を読むと
    『幸せ』とはなにかと
    考えさせられます


    自分の過去の経験から
    子どもには同じ経験をさせたくないと思う孝雄と達也の気持ちもよくわかります

    でも子どもには伝わってなくて、、

    もっと関心を持って欲しいと思う悟と
    好きなことをさせて欲しいと思う春斗くん
    二人の気持ちもよーくわかる。。


    子どものことを思う親の気持ちは間違ってないのに、すれ違ってしまう。


    それはまさに
    『なにが幸いで、なにが不幸と思うかは、
    人それぞれだ。』からでしょう。


    親の思いも、子の思いも
    きちんとわかりあうために必要なのは
    話し合いでした

    バーのママが言っていた

    『思ったことはできる限り言葉にしないといけない。
    気持ちなんて、それでやっと自分が言いたいことの数パーセントが伝わる程度なんだから。
    しかも、それが近くにいる人だったらなおさら
    近すぎて見えないこともあるからさ』

    ということでしょう。
    とても納得してしまいました。



    また

    『あなたは春斗くんの敵ではないけれど、
    味方じゃない』
    『俺から言わせれば、
    あなたは春斗くんの応援者にすぎない』


    という言葉はとても考えさせられました。
    私は子どもの応援者になってないだろうか、、


    子どもの気持ちも、
    未来の可能性も考えて、
    味方でいる。。。

    子育てって難しいです。。


    うーがんばろm(._.)m



    盛岡は行ったことがないですが
    行ってみたくなりました(*´-`)

    • アールグレイさん
      どんぐりさん(^_^)/こんにちは
      この本、私92番目!待っている人は104人。
      市内の図書館、四館で四冊を回す!もし一冊だったら・・・・(...
      どんぐりさん(^_^)/こんにちは
      この本、私92番目!待っている人は104人。
      市内の図書館、四館で四冊を回す!もし一冊だったら・・・・(◎_◎;)
      2024/03/21
    • どんぐりさん
      アールグレイさん

      ひー!先は長いですね(_ _).。o○


      私は田舎に引っ越してから
      予約本がすぐ届くようになって、
      引っ越してよかった...
      アールグレイさん

      ひー!先は長いですね(_ _).。o○


      私は田舎に引っ越してから
      予約本がすぐ届くようになって、
      引っ越してよかったと思う事1位かもしれないです笑


      ちなみに1ヶ月半くらいで届きましたよ(`_´)ゞ
      2024/03/21
  •  我が家には、数十年前に盛岡で購入した南部鉄器のつりがね型風鈴があり、今も変わらず、高く澄んで残響の長い洗練された音で涼を運んでくれます。さすが「残したい日本の音百選」(これは水沢駅の南部風鈴)です。本作は、この風鈴がますます愛おしくなるような物語でした。
     また、先日の柚月さんのエッセイに続いて新作の本書を読むことができ、岩手の風土や柚月さんの作風を中心に、内容の理解が深まった気がします。

     南部鉄器工房の親方・孝雄(72歳)は、頑固、寡黙、不器用‥と、絵に描いたような昔気質の男。同じ工房で働く息子の悟(38歳)は、父とぎくしゃくした関係です。
     そんな父が、補導委託(試験観察)で非行少年・春斗(16歳)を相談なしで預かることに‥。

     本作は、こんな父と息子、そして預かった少年の親子関係の内面に迫る、濃密な物語でした。
     2組の親の過去、主人公と少年の心の揺れを丁寧に描き、周囲の支えと未来への希望を温かく見つめる柚月さんの眼差しが伺えました。

     親方の孝雄にとって少年を預かることは、亡き妻や息子への「贖罪」というよりは、自分自身の家族との関わり方への「問い直し」だったのかな、と思えました。
     結果的に主人公も少年も、親子関係の縛りを乗り越え、分かり合えたことが何よりです。親子関係、幸せについて深く考えさせてくれる秀作でした。
     読後の余韻に浸っていると、心の原風景に南部風鈴の涼やかな音が聞こえたように感じました。

  • 南部鉄器の職人である父は、仕事一筋で家族思いとは到底言えない昔気質の堅物だと思っていた。
    その父が突然、補導委託の引き受け先になると言う。
    母は亡くなり、妹は結婚して出て行ってから父との二人暮らしで、そこに問題のある少年を受け入れることが納得できない悟に有無を言わさぬまま、少年春斗が来る。

    工房で一緒に働く健司は、若い子が来ること事態が嬉しい様子で、手取り足取り面倒をみる。
    あまり喋らず、表情も乏しい春斗が、アルバイトの八重樫が来たときに己を爆発させたことがあったが、やがて落ち着きを取り戻す。


    春斗と工房で働き、一緒に暮らすことによって見えてきたものは…。
    悟にとっては父の存在が大きく影響していたように思う。
    自分にとっては、無関心であった父なのに春斗には笑顔を見せ、寄り添っている。
    嫉妬ではないが、何がそうさせたのかがわからないと戸惑っているように思えた。

    父が昔話をしたことで、悟にはわかったのではないだろうか。
    とても不器用な親子だけれど、その間にひとり少年が入ったことで見えてくるものがあった。
    家族だからこそ、近くにいすぎたからこそ伝わらなかったものがあったということに気づいた。


    幸せな人生とはなんだろう。
    恵まれた人生と充実した人生は違う。
    与えられたものと自分が望んで生きる道とは得る価値が違ってくるだろう。
    自分の目でしっかりと選んでその道を目指してほしいと願う。





  • 南部鉄器、岩手山、盛岡八幡宮、チャグチャグ馬コ。
    読んでいる間、澄んだ空気や風が感じられる、
    そんな盛岡で繰り広げられる父と子の物語。

    無口な南部鉄器職人の孝雄、72歳。
    弟子で息子の悟、38歳。
    父親に対するわだかまりを心に抱え
    素直に父と話をすることができない。
    ただ、古くからの職人、健司は
    おしゃべり好きでお人よし。
    工房の雰囲気を明るくする。

    そんな工房で、孝雄の独断により
    問題を起こした少年、春斗を預かることになる。
    悟は突然のことに戸惑う。
    自分とはまともに口も聞かない父親が
    なぜ見ず知らずの少年を預かることにしたのか。

    春斗の登場で徐々に変わっていく父と子の関係。
    補導委託をすることにした父親の心の内は
    父の過去が明らかになる中、あぶり出される。

    スナックのママと健司のやり取りが面白い。
    ママが言う。
    「人なんてさ、どんなに話し合ったって、
    100% 分かり合えることなんてないんだよ。
    近くにいる人のことは近すぎて見えないこともあるからさ」
    「近すぎて見えないって、老眼かよ。
    そうそう、話した方が相手のことが分かる」
    と、ダジャレを重ねる健司。

    もうひとつ、いいなと思ったのは、
    悟が春斗の父親に啖呵を切るところ。
    「あなたは春斗くんの応援団に過ぎない。
    応援することと、味方をすることは違う」
    応援団は結果が出ないと怒ることがあるが
    味方は寄り添い続ける人だと。

    タイトルは、ある高齢会長の言葉に由来するのかな。
    「物事には風というものがありましてね。
    仕事、人生、時代にいろんな風が吹く。
    立ち向かうために必要なものは何だか分かりますか」
    回答は、やめておきますね。

    とても心温まる物語でした。
    でも、柚月ファンとしては、敢えて言いたい。
    もう少し読者を信用して
    最後の説明は端折ってほしかった。
    そして、やはり柚月さんには
    エッジの利いたミステリーを書いてほしいな。

    • ハッピーアワーをキメたK村さん
      y y様

      おはようございます
      y yさんは柚月ファンでもあるんですよね!
      私、y yさんの本棚に柚月さんの作品が沢山あるの知っています笑
      ...
      y y様

      おはようございます
      y yさんは柚月ファンでもあるんですよね!
      私、y yさんの本棚に柚月さんの作品が沢山あるの知っています笑
      ずっと気になっている作者なんですが、まだ読んだ事がありません
      家には『盤上の向日葵』と『慈雨』があるのですが、いきなり読んでもOKですかね?
      2024/02/24
    • yyさん
      ハッピーさん ♪♪

      おはようございます。
      昨夜はこの本を最後まで読んで
      そのあとブクログも書いちゃったのですっかり夜ふかし。

      ...
      ハッピーさん ♪♪

      おはようございます。
      昨夜はこの本を最後まで読んで
      そのあとブクログも書いちゃったのですっかり夜ふかし。

      ところで、ハッピーさんの本棚の二冊、
      どちらも 絶賛 おススメ。
      お家にさらっといい本が置いてあるのね♡
      シリーズものではありません。そこ、気になりますよね。
      私は星評価をしていないけれど、
      自分の中では、二冊とも★5つ!!

      何に対しても、好みってあるから
      お口(?)に合うといいけれど☆彡
      2024/02/24
    • ハッピーアワーをキメたK村さん
      y yさん、お返事ありがとうございます♪

      ブクログ書いちゃうと、意外と時間が経っていたりする、する!
      あ〜ら、ビックリ!なんてことがよくあ...
      y yさん、お返事ありがとうございます♪

      ブクログ書いちゃうと、意外と時間が経っていたりする、する!
      あ〜ら、ビックリ!なんてことがよくあります

      娘がチョイスした積読本が沢山あるので、主にお伺いをたててから読ませてもらっているの

      そう、そう、この二作がシリーズものなのか、ちょっと繋がりがあるからこっちが先の方がいいよ、とかあるのか気になったもので
      こういうのは読み慣れている人に聞くのが一番だものね!

      y yさん、ありがとう(♡´ェ`♡)カシコマリ!
      時間がある日にゆっくり読みますÖk◡̈⑅
      2024/02/24
  • 更生のために非行少年を預かる補導委託の物語。
    少し前に読んだ、いとうみくさんの「夜空にひらく」に設定が似ていた。
    こちらは南部鉄器工房が舞台。何かしらの問題を抱えている少年と職人気質な親方という組合せは、それだけで更生のきっかけを与えてくれそう。
    親方の孝雄と息子の悟、少年春斗と父親の達也。それぞれの父子から、親子関係で大切はものは何なのかを考えさせられた。
    「親は応援者ではなく、子供の一番の味方であるべき」という悟の言葉は妙に納得。肝に銘じておきます。

    • どんぐりさん
      こんにちは

      私もこのセリフ、とても考えさせられました
      子どものことを思うあまりいつのまにか応援者になってしまってるパターンもあったりします...
      こんにちは

      私もこのセリフ、とても考えさせられました
      子どものことを思うあまりいつのまにか応援者になってしまってるパターンもあったりしますよね。。。難しいです

      でもやっぱり子どもの味方でありたいです
      2024/03/21
    • ねこさん
      どんぐりさん

      コメントありがとうございます♪
      同じところが心に残ったのですね。
      味方に徹するってなかなか難しいことですよね。気がつけば「が...
      どんぐりさん

      コメントありがとうございます♪
      同じところが心に残ったのですね。
      味方に徹するってなかなか難しいことですよね。気がつけば「がんばれ、がんばれ!」って思ってしまう。自分への戒めとなる言葉でした。
      本を読んでいて、こういう気付きがある瞬間が好きです。
      また、どんぐりさんのレビューも楽しみにしていますね(*^_^*)
      2024/03/21
  • 広島 蔦屋書店が選ぶ本 VOL.316『風に立つ』柚月裕子/中央公論新社 | 特集・記事 | 広島T-SITE | 蔦屋書店を中核とした生活提案型商業施設
    https://store.tsite.jp/hiroshima/blog/humanities/38622-1004000204.html

    【文芸】風に立つ | ほっと一息 | いー山形どっとこむ
    http://www.e-yamagata.com/eyamac/hot-hitoiki/2024/02/01/1164/

    なぜ父は、非行のあった少年を更生させようとしたのか……親子だからこそ伝わらないことを問う | 文春オンライン(2024/02/05)
    https://bunshun.jp/articles/-/68613

    「あたたかな家庭なんて、ほとんどの人にとっては幻想」 柚月裕子が家族小説『風に立つ』に込めた想い|Real Sound|リアルサウンド ブック(2024.02.06)
    https://realsound.jp/book/2024/02/post-1558755.html

    naoki ando
    https://andonaoki.jp/

    風に立つ -柚月裕子 著|単行本|中央公論新社
    https://www.chuko.co.jp/tanko/2024/01/005728.html


  • 罪を犯した少年の補導委託を受け入れた、南部鉄器の工房が舞台。子を思う親心が核となるお話だった。

    親が子供の将来を思う時、
    良い大学に行って、給料が良い安定した職に就いて欲しい、苦労をさせたくないと願う親もいるだろうし、
    自分のやりたいことを、後悔のないようして欲しい、と思う親もいるだろう。
    どちらも、子を思う親の愛情からのものだ。この二つの考えの両立はなかなか現実的に難しい。だが、それをどうするか?という問いを投げかけられた。

    時々出来過ぎだな、としらけそうになることもあったが、先が気になりどんどん読み進めた。

    『子供が幸せなら、ずっと幸せなままでいて欲しいと願い、子供が失敗すれば、大丈夫だろうかと心配する。どっちに転んでも、これで安心ということは無い。(親とは)損な役割です。』
    この台詞が、とても心に残った。親が子の幸せを願う心は、見方によってはとても貪欲なのだ。

    気になったところ
    ○何かを作り出す者は、刺激や影響を受けつつも、己を貫き通す心がないと、中途半端なものしかできない。
    ○何かがこじれる理由は、相手の考えていることがわからないから

  • 補導委託-問題を起こし家庭裁判所に送られてきた少年を一定期間預かる制度

    この補導委託を突然 引受た南部鉄器職人の孝雄と仕事一筋で決して良い親とは言えなかった父の行動に戸惑う息子の悟
    納得いかぬまま工房で少年と共に働き、同じ屋根の下で暮らしていくうちに・・・

    柚月裕子先生の違う一面を堪能できる秀逸の作品でした。

    不器用な父と子
    近くにいるからこそ、家族だからこそ、伝わらない想いと過去があり、良かれと思ってしている事が、重荷になったり、期待に応えられず苦しんだり・・・

    幸せな人生ってなんだろう?
    恵まれた人生と充実した人生って同じものではないんじゃないのかも?
    でも生きていくためには?

    いろいろ考えてしまいましたが、ラストは涙を流し爽やかな読後感を味わうことが出来ました。

    ご存知の事と思いますが・・・
    この作品は、ミステリーではありません。
    落涙の家族小説です。(笑)

  • 犯罪を犯した少年が補導委託される場所が職人の町工房。ん?どこかで読んだような…と思ったら、いとうみくさんの『夜空にひらく』だった。

    『夜空にひらく』はあくまでもYA向けで、こちらの方が一般書で大人に向けた小説。

    無口で仕事一筋の南部鉄器職人の父とその息子の関係性と万引きを繰り返していた少年が、心を開くまでの物語。

    エンディングは読む前からなんとなくわかるんだけど、柚月さんの文章力に引き込まれどんどんと読み進められた。

    母娘って、良くも悪くもおしゃべりで仲良かったり、悪かったりなのに、父息子ってお互い無口で何を考えてるのかわからずに、一方通行が多いような。

  • 検事や刑事など、かなりハードなものを書いておられる
    著者
    今回は南部鉄器工房の父と息子
    引き込まれて読んだ

    〈家族だからこそ、届かない想いと語られない過去がある。岩手・盛岡を舞台に、揺れ動く心の機微を掬いとる、著者会心の新たな代表作!〉

    知らなかった「補導委託制度」
    鉄の農具の工房でお遊びの体験をしたことがある
    職人さんの一途さに頭が下がった

    柚月裕子さんの筆致には胸をえぐられるが
    ストーリーは先が読めた気がする
    ちょっと残念

    かなり分厚いが一気に読んだ
    家族って厄介だなあ、愛しいなあ

    ≪ 過去を超え 歩いていく道 風に立つ ≫

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著者プロフィール

1968年岩手県生まれ。2008年「臨床真理」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、デビュー。13年『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞、16年『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。同作は白石和彌監督により、18年に役所広司主演で映画化された。18年『盤上の向日葵』で〈2018年本屋大賞〉2位となる。他の著作に『検事の信義』『月下のサクラ』『ミカエルの鼓動』『チョウセンアサガオ咲く夏』など。近著は『教誨』。

「2023年 『合理的にあり得ない2 上水流涼子の究明』 で使われていた紹介文から引用しています。」

柚月裕子の作品

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