- Amazon.co.jp ・本 (584ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152088000
感想・レビュー・書評
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村上春樹がチャンドラーの詳細な人物描写や状況描写を丁寧に翻訳。チャンドラーの構成の素晴らしさに惚れ惚れ。もう一度読みたいと読み終えて思った。
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レイモンド・チャンドラーの最高傑作と言われるだけのことはある。村上春樹が若かりし頃繰り返し読んだというのも肯ける。村上春樹の『羊をめぐる冒険』は、この作品の影響を濃厚に受けている。フィリップ・マーロウとその分身のようなテリー・レノックスの人物像が魅力的。特に主人公マーロウは、クールでタフ、ハードボイルド小説の典型と言える。しかし、その魅力の淵源はどこにあるのかといわれてもなかなかに表現しがたい。そこを訳者の村上春樹は、長いあとがきでこう分析している「自我意識というくびきに代わる有効な<仮説システム>を雄弁に立ち上げた」。この作品に登場するマーロウは、生身の人間としてではなく、純粋仮説として設定されているというのだ。ラストシーンのマーロウとレノックスの再会と分かれの幕切れは見事という外ない。
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男の相互理解の物語。村上春樹版の新訳もイイ感じ、チャンドラー作品で一番好きです。
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マーロウという人物は、シニカルで、うざったくて、格好良い。
チャンドラーは、人間という生き物をよく理解している。
他人を愛するが故の行動、自分を愛するが故の行動。
そこで生じる矛盾。
あまりにも複雑で、難解な生き物。
これはハードボイルドという枠を超えた、純文学ともいえる作品。 -
カズオ・イシグロさんの「巨匠の翻訳で巨匠の作品を読むことができる日本の読者は、なんと幸せなことでしょう。」との言葉、レイモンド・チャンドラーを知らずに始めて読んだときはまったく実感がなかった。
その後、チャンドラーのその他のものを含め、さらにロバート・P・パーカーなども読みつつ、すっかりハードボイルドワールドにハマってしまっている今、この贅沢さを実感しています。
久しぶりに「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」を読み直したいなぁ。今度、実家の本棚を探してみるかな。 -
マーロウはタフで、時にきざったい。
使われる比喩なども同様だ。
それでもこの作品は、うっとおしさをギリギリ感じさせないような絶妙なバランスの上に成り立っている。
それは、ストーリーが心情描写でなく行動によって紡がれるせいだ。
誰がどうした。何がどうなった。
その一歩引いた視点が、どこかクールな雰囲気を生み出している。
村上春樹訳のおかげもあるのかもしれない。
時に古典的すぎるタフな探偵の格好よさを、ドライで都会的な文章がうまく紡いでいる。
そして、とにかくテリー・レノックスという登場人物の魅力がすごい。
この魅力はどこから来るのだろう。
描写の素晴らしさ故だろうか?
勉強になります。
そして、かっこいいです。 -
清水訳を含めてこれで4回目です。毎回、新しい発見があります。
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我が家にも朝食用の小さなテーブルが欲しくなりました。
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はじめて清水訳で読んだ時は、内容が非常にわかりにくかったような記憶がある。はじめて読むフィリップ・マウローであったし、翻訳のせいでもあったのだろう。たしか原尞の「そして夜は蘇る」を読んで、その本家である「長い別れ」を読んでみようと思ったような気がする。その後「長き眠り」を読み、あらためてその良さを感じた記憶している。
今回、村上訳で読んでみる内容の難解さの片鱗はあるものの容易に理解できた。ということは、内容の難解さは著者に起因し、理解の容易さは翻訳者と読者に起因するということか。