ロング・グッドバイ

  • 早川書房
3.86
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  • Amazon.co.jp ・本 (584ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152088000

感想・レビュー・書評

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  • 村上春樹がチャンドラーの詳細な人物描写や状況描写を丁寧に翻訳。チャンドラーの構成の素晴らしさに惚れ惚れ。もう一度読みたいと読み終えて思った。

  • 最高の小説。

    無人島に持って行くカバンか
    棺桶には是非入れておきたい一冊。


    はじめて読んだのも丁度2月の真冬で、
    なんだかこの時期に不思議とフィットする
    小説みたいです。

    あの時は丁度2週に渡る仙台出張のお供として
    カバンに忍ばせ、2週間に渡る長期のホテル暮しの
    間、大いにお世話になりました。

    そんな以前の背景や自分の心情まで、
    読み返しながら懐かしく味わいました。

    それもこれもこの本が村上春樹さんの訳だったから
    手にしたようなもので、心から村上さんには
    感謝しています。

    今回改めて読み返していて、その村上さんご自身も
    いかにこの一冊から多大な影響を受けているか
    ということを改めて発見し嬉しくなりました。

    例えば、「羊をめぐる冒険」で突然謎の屋敷に
    招かれるシーンはハーランポッターの屋敷に
    呼び出されるシーンと重なるし、
    最後にテリー・レノックスと劇的な邂逅を
    果たす場面は死んだ鼠との再開と重なる。

    また最初に警察にしょっぴかれ、友人である
    テリー・レノックスのことを尋問され
    一言も口を開かないシーンは「ダンス・ダンス・ダンス」で
    主人公の“僕”が五反田くんをかばうシーンそのもの。

    この気の利いたオマージュがぼくは好きだし、
    このロング・グッドバイという下敷きを
    活かせたのも愛読者の村上さんだからだと
    思いました。


    そして、
    この本をはじめて手にするまで、世に言う
    「名作」というものは一般人には理解できない
    崇高なものだとばかりに思い込んでいたのですが、
    本当の「名作」は誰が手にしても面白いもの
    なのだと思い知らされました。

    一章一章の適切な短さと、
    各章の締めくくりの鮮やかさも実に見事で、
    ほんとうに何度読んでも新しい発見があって
    読み飽きるということがまずありません。


    何なら今からもう一度読み直してもいいくらいです。笑


    それくらい素晴しい一冊。

    そして的確で素晴しい訳を付けて下さった
    村上さんにも深く感謝です。

    きっと後生大切にして、
    少なくとも後2、3回は読み返す
    だとうろおもいます。

    最後にもう一度、
    ロング・グッドバイは最高の小説です。


    読むのにかかった時間:9時間(くらい)

    こんな方にオススメ:全ての読書家に…

  •  レイモンド・チャンドラーの最高傑作と言われるだけのことはある。村上春樹が若かりし頃繰り返し読んだというのも肯ける。村上春樹の『羊をめぐる冒険』は、この作品の影響を濃厚に受けている。フィリップ・マーロウとその分身のようなテリー・レノックスの人物像が魅力的。特に主人公マーロウは、クールでタフ、ハードボイルド小説の典型と言える。しかし、その魅力の淵源はどこにあるのかといわれてもなかなかに表現しがたい。そこを訳者の村上春樹は、長いあとがきでこう分析している「自我意識というくびきに代わる有効な<仮説システム>を雄弁に立ち上げた」。この作品に登場するマーロウは、生身の人間としてではなく、純粋仮説として設定されているというのだ。ラストシーンのマーロウとレノックスの再会と分かれの幕切れは見事という外ない。

  • 男の相互理解の物語。村上春樹版の新訳もイイ感じ、チャンドラー作品で一番好きです。

  • マーロウという人物は、シニカルで、うざったくて、格好良い。

    チャンドラーは、人間という生き物をよく理解している。
    他人を愛するが故の行動、自分を愛するが故の行動。
    そこで生じる矛盾。
    あまりにも複雑で、難解な生き物。

    これはハードボイルドという枠を超えた、純文学ともいえる作品。

  • カズオ・イシグロさんの「巨匠の翻訳で巨匠の作品を読むことができる日本の読者は、なんと幸せなことでしょう。」との言葉、レイモンド・チャンドラーを知らずに始めて読んだときはまったく実感がなかった。
    その後、チャンドラーのその他のものを含め、さらにロバート・P・パーカーなども読みつつ、すっかりハードボイルドワールドにハマってしまっている今、この贅沢さを実感しています。
     久しぶりに「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」を読み直したいなぁ。今度、実家の本棚を探してみるかな。

  • マーロウはタフで、時にきざったい。
    使われる比喩なども同様だ。
    それでもこの作品は、うっとおしさをギリギリ感じさせないような絶妙なバランスの上に成り立っている。
    それは、ストーリーが心情描写でなく行動によって紡がれるせいだ。
    誰がどうした。何がどうなった。
    その一歩引いた視点が、どこかクールな雰囲気を生み出している。

    村上春樹訳のおかげもあるのかもしれない。
    時に古典的すぎるタフな探偵の格好よさを、ドライで都会的な文章がうまく紡いでいる。

    そして、とにかくテリー・レノックスという登場人物の魅力がすごい。
    この魅力はどこから来るのだろう。
    描写の素晴らしさ故だろうか?

    勉強になります。
    そして、かっこいいです。

  • 清水訳を含めてこれで4回目です。毎回、新しい発見があります。

  • 我が家にも朝食用の小さなテーブルが欲しくなりました。

  • はじめて清水訳で読んだ時は、内容が非常にわかりにくかったような記憶がある。はじめて読むフィリップ・マウローであったし、翻訳のせいでもあったのだろう。たしか原尞の「そして夜は蘇る」を読んで、その本家である「長い別れ」を読んでみようと思ったような気がする。その後「長き眠り」を読み、あらためてその良さを感じた記憶している。
    今回、村上訳で読んでみる内容の難解さの片鱗はあるものの容易に理解できた。ということは、内容の難解さは著者に起因し、理解の容易さは翻訳者と読者に起因するということか。

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著者プロフィール

Raymond Chandler
1888年シカゴ生まれの小説家・脚本家。
12歳で英国に渡り帰化。24歳で米国に戻る。作品は多彩なスラングが特徴の一つであるが、彼自身はアメリカン・イングリッシュを外国語のように学んだ、スラングなどを作品に使う場合慎重に吟味なければならなかった、と語っている。なお、米国籍に戻ったのは本作『ザ・ロング・グッドバイ』を発表した後のこと。
1933年にパルプ・マガジン『ブラック・マスク』に「脅迫者は撃たない」を寄稿して作家デビュー。1939年には長編『大いなる眠り』を発表し、私立探偵フィリップ・マーロウを生み出す。翌年には『さらば愛しき女よ』、1942年に『高い窓』、1943年に『湖中の女』、1949年に『かわいい女』、そして、1953年に『ザ・ロング・グッドバイ』を発表する。1958 年刊行の『プレイバック』を含め、長編は全て日本で翻訳されている。1959年、死去。

「2024年 『プレイバック』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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