国のために死ねるか 自衛隊「特殊部隊」創設者の思想と行動 (文春新書)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166610693

感想・レビュー・書評

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  • 命を賭してでも、やり抜かなければならないことがある。守り抜かなければならないことがある。確かにあるはずだと思う。そのためには高尚な理念が必要だ。全くその通りだと思った。でも何を守るのだ?
    私はただの技術者だが、絶対に譲れないことはなんだ?そのために命を賭して立ち向かっているのか?そう問われている気がした。
    今の日本は守り抜かなければならないものなのか?確かに日本は守っていく必要があると思うが、もっと広い視点で守っていくべきものがあるような気がした。

  • うーん、富山沖のシーンは臨場感あふれて当事者のみにしか書けない心情がとてもよく書かれていたのだけど、進むに従い感動は薄れていった。オレ感が強すぎるというか…
    粉骨砕身して創設した特殊部隊の成果が書かれてないので、結局意義があったのかが分からない。

    ラレインの強烈な生存競争への執着は何から来てたんだろうか?出自なのかな。

    命を懸けて守ろうとしている「国」には価値を持っていてほしい、という気持ちには全く同感です。

  • 借りたもの。
    私も知らなかった……不審船事件を目の当たりにし、これをきっかけに自衛隊特殊部隊の創設に関わった著者による、「闘争とは何か」さらには「日本という国は何か」を問う本。

    著者の父を通して、太平洋戦争中の”軍人/兵士”が何を考えていたのか――を垣間見、ミンダナオ島の女性から闘争の本質を見る。
    己の身体の一部を犠牲にしてでも、確実に相手を殺す――
    どんな大義名分も無い。純粋に「生か 死か」の二択に研ぎ澄まされた世界だった。

    日本の戦後反省や戦争論――国家間など様々な利害の駆け引き――はこの本には無い。ただ、戦うと決めた人間たちが、どう行動するのかを、著者の経験からひも解いていく。

    日本の自衛隊についても言及。
    陸・海・空の発想の違いなど。
    米軍とも比較し、彼らは、‘兵員の業務を分割し、個人の負担を小さくして、それをシステマティックに動かすことで強大な力を作り出す仕組み’と、的確で詳しい。
    そのうえで、自衛隊には質の高い人間が揃っている事を伺わせるが、実際の戦闘になったとき、臨機応変さに欠ける――マニュアル化しているため――ような事を仄めかしている。

    日本は戦争をする気がないと考えるのは、短絡的かもしれない。
    少数精鋭の傾向のある自衛隊は、有事の時に犠牲を抑えて戦えるのか?
    ともすれば、再び”カミカゼ”をしてしまうのか、それは真に勝利へ結びつくのか――
    しかし、この本を読み進めていくと、覚悟を持った人たちに、この疑問は無意味なのかもしれない。

    本の後半、情についての言及もあったが、情が覚悟を邪魔することは一切なかったという。

  • 元自衛隊の猛者が語る本当に国家と公のあり方とはという話し。8割は著者の経験談で、暗殺者だった父の訓練、自衛隊に入隊し、北朝鮮の拉致の現場と遭遇し、特殊部隊を創設に走る、自衛隊の組織と自分の国家認識への疑問を感じミンダナオ島で自活する、という普通じゃない人生とサバイバルを語り、最後に(これが言いたかったであろう)日本という国は借り物の憲法のもとではあるが必死に経済成長をさせてきた。じゃあそこからどうする?という問いかけをする。

  • タイトルからするとかなり右に振り切れていそうな感じを受けるが、読んでみるとそこまでではなく、どちらかといえば筆者の思想について非常に落ち着いた筆致で描かれている。
    序盤二章は、自衛隊での経験や自衛隊初の特殊部隊創設に至るまでの過程を、自分の思いや出会いを絡めながら語っている。
    陸と海の思想の違いや、自衛隊の特殊性など、経験した方でないと書けない話が非常に興味深い。
    後半二章は、話としてどこまで真実かは置いといて、いろいろと考えさせられるエピソードが多かった。
    敵との戦い方(どこまで自分の体をさらせるのか)ということや、日米の関係、そして戦争相手のアメリカに従属する日本人への黒人とネイティブアメリカンの思いなど。

    また、自衛隊員となり「国のため」に働くことからスタートした筆者の思いが、幾多の経験を経て、日本人とは何なのか、この国は本当に守るべき国なのか、迷った末にもう一度「国のため」に動く(ただし、迷いを抱えつつ)ことにする最後がとても心打たれた。

  • 海上自衛隊に存在する特殊部隊を設立した方の本。どのような経緯で特殊部隊が設立され、その設立に携わったかが、中の人ならではの視点から書かれている。

    …のと著者のなかなか香ばしい軍人っぷりが読んでいてときに胸が熱くなり、ときに吹き出してしまう。

    まず北朝鮮の不審船を発見し追跡するあたりからもうこの人は完全な軍人なんだなぁと思わせる。帰投しようとする海上保安庁に対して「逃げるくらいなら自決しろ!もしくは本艦を沈めてくださいといえ!」ってあたりもう面白すぎるし「大丈夫かよオイ…」と変に不安になる。面白いけど。

    そもそも自衛隊のことを「軍隊」といって憚らない。海自に入隊するときも「海軍に行きます」だもん。そして退役後はガチの海外に行って戦い方を学びなおす毎日。熱いです。でも不安になります。

    でも実際本当に国を守るために死ねる、、つまり本書に出てくる「死ぬのはまぁ仕方ないが任務はどうやって完遂するかなぁ」と考えられる人間がいないと多分戦争って勝てなくってこの人を始め一般常識から見るとあっぶねぇなぁと思っちゃう人たちのお陰で今日もカタカタ本の感想なんかかけているのかなぁと思ったりしました。

  • 読みやすく、分かりやすいリアルスパイもの。こういう人に自衛隊員やってほしいが、そうとばかりも言えないのよね…組織内の軋轢なんかについても描いて欲しかった

  • 米軍
    兵員の業務を分割し個人能力に頼らずシステマティクに動かす。交代要員を量産できる。

    特殊部隊
    不平不満を感じても、その場で何とかする。

    任務分析
    通信ができないときの意思疎通の手段。

    上級指揮官の存在意義
    それは戦闘前にある。
    始まってしまったら現場指揮官に専念させる環境を整えるのが仕事。

    戦争
    各国の底辺と底辺が勝負するようなもの。
    エース同士の戦いではない。

    最高の軍隊
    アメリカの将軍、ドイツの将校、日本の下士官。

    自分の何を失ってでもやる価値があるか?
    成功の確実性が変わらずに自分のダメージがより少ない方法を模索する。

    アメリカ人
    おなかいっぱいになっても、食べるのをやめない。
    日本人
    空腹時は凄いが、ちょっと満ち足りるとやめてしまう。

    日本人の危うい行動美学
    我慢の限界を超え堪忍袋の緒が切れたときの感情的な敵対行動。

  • 文春新書のデザインのせいもあって、このタイトルがよりキツく迫ってくる感じがしますね(笑
    センセーショナルなタイトルですが、別にイデオロギー的なイロモノ本ではなく、著者の経験を元にちゃんとパッケージングしたらまぁこうなるか、という感じです。読めばわかるんだけど、タイトルで敬遠する人はいるかも。

    とっても良い本でした。
    事前に想像していた流れは、自衛隊的なエピソードが並んだ後に、今の日本人はだらしない!的な展開で、一方的に扇動されるかなと思ってたらさにあらず。
    序盤は確かに自衛隊のエピソードで、圧倒的なスピード感に引き込まれて感情的にも高ぶったものの予想通り。でも、そこから先の広がりは予想外で、お父さんのエピソードも効果的に作用してる印象。ミンダナオ以降はゾッとするほどエッジが立ってて、日本人論的なくだりも刺さりました。(経験と自覚があるだけに。。

    色々面白かったくだりはあるのですが、絞るなら、優先順位と絞り込みのくだり、常識を捨てる話、そして、日本人の「3回目には皆殺し」のくだりと、感情を押し殺さないこと。

    あとがきもメッセージ性があって、なんか一貫してるなぁという印象。敢えて避けずに通ったのは素晴らしいのでは。

  • 真剣に戦うことを考えてた人の話で、全部に頷けるかは別として面白い。
    戦闘にあたっての陸海の文化の違い(ビークルかインディビジュアルか)、レンジャーでの経験、ミンダナオ島での生活、防大での指導経験にあった非常時においての常識に囚われた判断の弊害など、改めて戦闘に全ての基準を置くことの重要性を感じた。

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著者プロフィール

伊藤祐靖(いとう・すけやす)
元海上自衛隊特別警備隊先任小隊長。昭和39(1964)年、東京都生まれ。日本体育大学卒業後、海上自衛隊入隊。防大指導官、「たちかぜ」砲術長等を歴任。イージス艦「みょうこう」航海長時に遭遇した能登沖不審船事件を契機に、自衛隊初の特殊部隊である特別警備隊の創隊に関わり、創隊以降7年間先任小隊長を務める。平成19(2007)年、退官。拠点を海外に移し、各国の警察、軍隊などで訓練指導を行う。著書に『国のために死ねるか』(文春新書)、『自衛隊失格』(新潮文庫)、『邦人奪還』(新潮社)などがある。

「2023年 『日本の特殊部隊をつくったふたりの“異端”自衛官 - 人は何のために戦うのか! -』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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