国のために死ねるか 自衛隊「特殊部隊」創設者の思想と行動 (文春新書)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166610693

感想・レビュー・書評

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  • ●→本文引用

    ●普通の人生観を持つ者でも突入だけならできるが、特別な人生観の持ち主でなければ、その任務を完遂することはできない。特殊部隊員に必要なのは、覚悟でも犠牲的精神でもない。任務完遂に己の命より大切なものを感じ、そこに喜びを見いだせる人生観だ。
    ●私に欠落していたのは、リアリズムの追及であった。(略)いつの間にか、実際に遭遇する環境よりも、訓練しやすい環境を優先していた。無意識のうちにである。(略)実戦経験の有無によるものではないかと言う人もいるがあまり関係ないと思う。(略)経験があるというだけで自然にリアリズムを追求できるわけではないし、経験がなくても、周到な準備をすればできないことではない。(略)要は訓練への向き合い方の問題なのである。
    ●戦いとは、戦闘能力の競技会ではない。(略)自分が能力を発揮できる環境ではなく、自分も発揮しにくいが、相手がさらに発揮しにくい環境を創出すべきなのである。なぜなら、相手の方が戦闘能力が高くとも、それを発揮しづらい状況に引きずり込んでしまえば勝てるからだ。

  • タイトル買いしちゃったんだけどね、この本。どこかで見た名前だなと
    思ったら、2012年8月19日の日本人活動家尖閣諸島上陸事件の時に、
    魚釣島に日の丸を掲げた人だったわ。

    元々は海上自衛官であり、自衛隊初の特殊部隊である海上自衛隊の
    特別警備隊発足に係わっている。

    意に沿わぬ異動命令をよしとせずに、退官後にはフィリピン・ミンダナオ
    島に渡り、実戦的な格闘訓練を積み、現在は現役の警察官や自衛隊員
    を指導する私塾を開いている特異な経歴の持ち主である。

    冒頭の1999年の能登半島沖不審船事件の記述から既に映画のような
    ストーリーである。この事件をきっかけに著者は特殊部隊の必要性を
    実感するのだけれど、どうもしょぱなから違和感を持ってしまったのだ。

    著者の考え方に大きな影響を及ぼしたのは彼の父親の存在である。
    陸軍中野学校で蒋介石暗殺を命じられ、戦後になっても「命令は解かれ
    ていない」として射撃訓練を続けた人物。

    子供の頃は父の話が分からなかったという著者だが、確実にその影響は
    受けていると思うんだ。特にミンダナオ島でのトレーニング・パートナーで
    あった女性との会話の中で彼女が日本国憲法を「他から押し付けられた
    掟」と言った時に、きちんと反論できていないのだもの。

    著者は自身の価値観をきっちりと持っている人なのだと思う。それを貫こう
    との姿勢には共感は出来るのだが、結局のところ、突き詰めて行くと憲法
    改正をして、自衛隊を軍隊としたいと思っているのではないのかな。

    現行の日本国憲法が他から押し付けられた掟だというのであれば、自衛
    隊だってアメリカの希望で誕生したものなんだけれどね。

    警察や海上保安庁同様に、自衛隊も私は感謝をしている。それは主に、
    大災害が発生した時の自衛隊の機動力に対してである。だから、今まで
    と同じように自衛隊員に戦場で命を落とすような事態にないって欲しくない
    し、他国の人に銃を向けて欲しくはない。

    「君達は自衛隊在職中、決して国民から感謝されたり、歓迎されることなく
    自衛隊を終わるかもしれない。 きっと非難とか叱咤ばかりの一生かもしれ
    ない。御苦労だと思う。
    しかし自衛隊が国民から歓迎されちやほやされる事態とは、 外国から攻
    撃されて国家存亡の時とか、災害派遣の時とか、国民が困窮し国家が混
    乱に直面している時だけなのだ。
    言葉を換えれば、君達が日陰者である時のほうが、国民や日本は幸せな
    のだ。
    どうか、耐えてもらいたい。」

    防衛大学の第1回卒業式で、時の首相・吉田茂は式辞でこう述べた。比べ
    てみて欲しい。先の国会での所信表明演説で安倍晋三は海上保安庁、警
    察、自衛隊を称えて拍手を促した。

    本書を読んでいて、安倍晋三の所信表明演説に通じる危うさを感じたのは
    私の考え過ぎなのだろうか。

    生まれ育った国だから守りたい。それは私も思う。でも、「国のために死ね
    るか」と問われたら、そこには大きな疑問点がついちゃうんだけどね。

    タイトルで勘違いしちゃんただよな。自衛隊出身であるからこそ、隊員を死と
    隣り合わせの場所へ送り込みたくはないというお話かと思ったんだ。失敗。

  • まったくうなずける話なし。
    いざとなったら拳骨で有無を言わさずいうことを聞かせる!
    という考え方が大嫌い。

  • 日本人は平和ボケしていると言われている昨今、著者のような危機感を持つ人は希有だろう。
    彼の言う事はある意味正論ではあるだろうし、理解はしたいと思うが、共感までは難しい。

  • 普段なら手に取らないハードなタイトル・・・僕は死ねま千円。普段知らない世界を垣間見れて結構面白かった。

  • 海上自衛隊の特殊部隊設立の経緯、その後の筆者の海外での訓練生活を踏まえた日本への考えがつづられた1冊。
    格闘訓練や避難訓練の箇所を読み、平時に非常時をシミュレーションしていないことにハッとさせられる。

  • この本、思考方法以前に思想で受け付けられない人もたくさんいるのでは?
    第一優先以外を捨てられると、ある意味生きやすそう…

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著者プロフィール

伊藤祐靖(いとう・すけやす)
元海上自衛隊特別警備隊先任小隊長。昭和39(1964)年、東京都生まれ。日本体育大学卒業後、海上自衛隊入隊。防大指導官、「たちかぜ」砲術長等を歴任。イージス艦「みょうこう」航海長時に遭遇した能登沖不審船事件を契機に、自衛隊初の特殊部隊である特別警備隊の創隊に関わり、創隊以降7年間先任小隊長を務める。平成19(2007)年、退官。拠点を海外に移し、各国の警察、軍隊などで訓練指導を行う。著書に『国のために死ねるか』(文春新書)、『自衛隊失格』(新潮文庫)、『邦人奪還』(新潮社)などがある。

「2023年 『日本の特殊部隊をつくったふたりの“異端”自衛官 - 人は何のために戦うのか! -』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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