- Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309226712
感想・レビュー・書評
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途中エビデンスが怪しい章がいくつかある(確信はないが)。読みやすくて面白いが、2014年に書かれているため、現在のポピュリズム隆盛を予期していない。
上巻は今後世界が「グローバル帝国」となっていくだろう、という楽観的な見解で終えられる。 -
認知革命・農業革命・科学革命という3つの激震を軸に、人類史を語る本。感想は下巻に回し、以下は各章のまとめ。
1章:ホモ・サピエンスの覇権
ネアンデルタール人等ではなくサピエンスが覇権を握った理由を語る前段階。
2章:認知革命
現実に物理的に存在しないもの「虚構」を想像し、その概念を他者と共有することにより、非常に大きな集団での協力が可能になる。法律・国家など大きな枠組み=神話は、遺伝子により規定されるものでもないため、目まぐるしい進化が可能となる。人類が生物学から歴史学へ足を踏み入れたと言える。
3章:農業革命以前
狩猟採集民の生活復元は難しい。認知革命によってDNAの束縛から放たれ、多様な可能性を孕んでいる。暴力・宗教・社会構造も。栄養バランス等いくつかの点では農耕社会より優れていたと思われる。
4章:狩猟採集民による惑星生態環境の改変
人類の進出=大型哺乳類の大量絶滅。農耕を始めるまでもなく、生態系に与えた衝撃は劇的だった。人類の電撃戦に、動物は人類への恐怖を学習する時間がなかった。
5章:農業革命という罠
人口爆発、エリート増大、種の拡大↔生活の劣悪、死亡率増加、贅沢の必需化と新たな義務。種としての成功は個々の成功を意味しない。人口なんて少ない方が良いのかも?
6章:大量の人間を統制する(現在の社会制度を含めた広い意味での)神話の存在
2章のおさらい。本来動物はせいぜい数十頭が共同体の単位の上限となるが、想像上の秩序、古代でいえば神話が共同体としての意識を作り出し、帝国の成立を可能にした。
これは、宗教に限ったことではない。ハンムラビ法典もアメリカ独立宣言も皆に信じてもらうことでその共同体のルールとなるだけであり、何ら客観的な正当性はない。これは多くの個人の主観的意識を結ぶコミュニケーションネットワークの中に存在する「共同主観的」なものとでも呼べるものである。
こうした枠組みは、農耕の始まりによる始まりによる階層化、それに伴う支配者非支配者の関係の成立に伴い必要になったものだ。
7章:文字の登場
文字は、詩歌を書き留めるためではなく、最初は数を把握するものとして発明された。これは、社会の複雑化に伴い数を操る必要がでたのに対し、人間の脳は数を処理することに長けてはいないからだ。
これを操る書記、官僚制が登場し、現代ではコンピュータが発明されている。この書記体系が人間を説明しようとするまでに到っているともいえる。
7章:ヒエラルキーの社会的役割
ヒエラルキー、悪くいえば差別は、複雑な人間社会には必要なようだ。ヒエラルキーは、見ず知らずの人同士が、互いをどう扱うべきか知る手がかりとなる。
様々な格差の中で、最も広汎に見られるのが男女の差別であり、生物学的差異を始まりに、文化的な区別が与えられている。男の方が偉い、的な家父長制はあまりにも普遍的であり、一部に存在する偶発的偏見から生まれたとは考え難い。男性の筋力的優位性
・攻撃性・遺伝、どれも決定打とは考えにくい。男女の社会的文化的性別の役割が劇的な変革を遂げているとおり、家父長制の普遍性や永続性も過去のものになるかもしれない。
8章:一体化に突き進む世界
神話と虚構を手に入れた人類は、人工的にルールを作りだし、膨大な数の成員による共同体の維持を可能とした(このルールないしネットワークを文化と呼ぶ)。
文化には必然的に矛盾が含まれるが(自由と平等など)、これは文化の本質的な特徴であり、絶えず変化し、巨視的に見れば統一へと向かっていることは疑いようがない。
「私たち」と「彼ら」という二分法は人類の統一に向けて全世界・全人類の想像が可能になった。これを可能にしたのものが、次章以降で紹介する貨幣・帝国・宗教である。
9章: 普遍的秩序をつくるもの 貨幣
貨幣は最も普遍的で、最も効率的な相互信頼の制度である。ただし、需要と供給の法則が各地の伝統や親密な関係、人間の価値といったものを損なうこともある(貧困層が子どもを売ったりとか)。なので、暴力であれ政治であれ、経済を造り変える努力もなされてきた。人類の統一は経済だけで語ることはできない。
10章:普遍的秩序をつくるもの 帝国
帝国は、文化的多様性と変更可能な国境により定義される。帝国の文化は支配されたさまざまな被支配民により採用され、帝国が失われた後もその文化を引き継いでゆく。
現代では、この帝国は「国家」という枠組みでなく、共通の文化や利益によりまとまり始めており、真にグローバルな帝国が生み出されつつあるのかもしれない。 -
ホモ・サピエンスという括りで歴史を捉えた場合のいくつかの転換について、非常に納得のいく結論が述べられていると感じた。差別の部分に関しては、わからない、という結論だったのが興味深い。著者のバックグラウンドによるものなのか、それとも相応の事実が出揃っていないということなのか。あるいは両方とも含まれるのか。新たな問いをも含んでいる。
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生物学を基にした人が今の人の様に変化していった様子を実際の生活様式を照らし合わせて述べた部分が、興味深かった。言葉が、記憶の方法が、明らかにほかの動物と異なり、これがサピエンスたらしめたのかと、納得しました。
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大学図・1F開架 209A/H32s/1
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人類(ホモ・サピエンス)の反映は、神話・宗教・国家などの”虚構”を共有できたことであるというユニークな観点で人類史を描いた本。上巻は他の原始人類を凌駕したホモ・サピエンスの誕生から、貨幣経済・古代王国/帝国の形成まで。
続きはこちら↓
https://flying-bookjunkie.blogspot.jp/2018/05/blog-post_3.html -
ジャレド・ダイアモンドの大作とかぶるような文明史大観ではあるけれど、人類に焦点を当てたのがポイント。人間社会を統一するための、神話、宗教、道徳律、法律、貨幣。たしかに虚構と言われたらそうだろう。
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未来に先回りする思考法を読んで先見性を得るには歴史を学ばなければならない。と思って読んでみた。
すごくおもろい。人類の歴史一通りとなぜそういう選択を人類がしたのかを学べる。
興味深かった点
・ネアンデルタール人から私たちホモ・サピエンスが進化したのではなく、両者同じ時代に存在していた。そのためホモ・サピエンスがネアンデルタール人を滅ぼしたのでは?という説がある
・大きな脳は大きなエネルギーを使う。脳の代償として人類は筋肉にかける資源の一部をニューロンに回した。
・人類とチンパンジーとの真の違いは、多数の個体、家族、集団を結びつける虚構や神話という接着剤である。
・人類が特定の秩序を信じるのはそれが客観的に正しいからではなく、それを信じればより良い社会を作り出せるからである。 -
是非読みたい
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ホモ・サピエンスが「虚構」を信じられたからこそ発展できたという観点が面白かった。
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素晴らしい。これは必読だね。ただしアラ探しになるが進化過程に誤表記。多分参照した資料が古い。
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ホモ・サピエンスたちは虚構により、生き残ってきた。
神話という超壮大な作り話によって人々は考えを統一し、協力することが可能になった。
平等、自由の概念すらも全てが虚構。
この世は虚構。
筒井作品みたいだ。
人類の歴史は、地球の歴史からするとまだまだカスみたいなもの。
農業革命により人口も増え、暮らしが良くなるかと思いきや幸福度は狩猟採集民の頃より低いということは、テクノロジーが発達し続けている現代にも当てはまる。
便利すぎるが故に忙しすぎる。
自分の祖先を遡って行くと7万年前のとあるホモサピエンスにたどり着くのだろうかと、思いを馳せながら読んだ。 -
予想外に軽くて面白かった。歴史のPhDが一般人向けに書いた歴史人類文化考察という感じ。なんとなく参考書的な装丁で小難しいような前評判を聞いていたが、ところがどっこい大変柔らかく字も大きくてサクっと短いです。まぁ、そこらへんの教科書にのっているような基礎知識は割愛されていて話が早くテンポがよくて読みやすい。主役はサピエンス、本著ではネアンデルタールは別種扱いされているが、今の所はホモ(ヒト属)の基種がサピエンスでネアンデルタールは亜種やと思うんだが、ま、諸説あり。ともかく、著者が生きるユダヤ世界から見ている立ち位置なので日本語への翻訳は大変だったろうと思う、所々原文が気になってしまった(ヘブライは読めんけど)。面白かったのはサピエンスが種として勝ち残った勝因を”虚構を創作する能力”を持っていたと言及しているところ。日本では古事記や日本書紀で書かれているように外来のヤマトが在来の王たちを東征してくときに”嘘”をつける能力が力の差となったのは誰でもしっているが、もしかしたら日本神話はサピエンスに負けたネアンデルタールの記憶伝承なんかもしれん、、、、な〜〜〜んてな妄想を抱きました。文書化したのは和銅5年とはいえ、内容は口承伝承なわけなんだから、実は28万年前の話かもしれん。
下巻が楽しみです。 -
タイトルが、中々学術的な雰囲気ではあるが、中身は基礎的。非常に理解しやすいし、面白い。ベストセラーになる理由が分かります。それと、「人類の進化を、こう言う風にひも解くのか」刮目させられます。ためになります。
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ヒトはどこから来て、どこへ向かっていくのか。壮大なテーマで、膨大なリサーチをもとに書かれた本。生き物としての人間の進化と、文化人類学、歴史学、生物学、そして幸せはどうやって感じられるのかという倫理学的なテーマに移っていく。
よくこんな本書いたな~というのが素直な感想。これだけ散逸するテーマを纏めた本書は、まだ若い著者の人生の集大成に違いない。読むだけでも、爽快な達成感が得られる。
上巻のネアンデルタール人の箇所が面白かった。「~だろう」ではなく、断定的な文章が印象的だ。下巻のヨーロッパ人がどう帝国を築いたかも、読みごたえがある。
かつてネアンデルタール人や大型動物を絶滅させたホモサピエンスが、将来は絶滅させられるのだろうか?サイエンスや歴史が好きな人にお勧めの本である。 -
ホモ・サピエンス以外の生物の生活の変化は、進化に伴って起こるのに対し、ホモ・サピエンスの生活の変化の速度は、進化の速度をはるかに上回っている、という観点は、非常に素晴らしいと思います。
ホモ・サピエンスのもつ社会性と攻撃性は、その存在や思考が抱えている矛盾の際たるものだと思います。
果たして、我々ホモ・サピエンスは、どこへ向かっていくのか。
生物の一種であるがゆえに、絶滅からは逃れられないと思いますが、せめて破滅には向かわないでほしい、そう願っています。 -
ヒトと他の生物を分けるものは、ヒトが創り出す「虚構」にあった。人文科学と自然科学を行き来して、ヒトがどの様に自然界の頂点にのし上がりながら、虚構世界の中で如何に悪戦苦闘しているかを忠実に描く。平易な文章と豊富な具体例も、読者の理解を助ける本書の魅力。
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上巻読了。
ホモ・サピエンスが生き延びたのは虚構により協力しあう認知革命があったから。宗教、政治、民主主義、などはすべて客観的なものではなく共同主観的。
その後の農業革命が人口増加をもたらしたが、個々の人は不幸になった。
世界の統一に向かう上での要素である貨幣と帝国までで下巻へ。 -
人類学を面白い視点で書いている。とても視野が広まる。
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虚構。
ホモ・サピエンスが他の人類種を差し置いて、唯一生き残った所以。
7万年前に起こった認知革命、
1万2000年前に起こった農業革命から
5000年前の人類史初の書記体系や貨幣制度等が、大型社会発展にどのように影響を与え生成していったのか。
本質的客観的長期的な観点で捉えることができる。 -
内容が強烈だった。虚構を信じることができるから地球の覇者になれたという文脈は新鮮だった。たしかに、全ては虚構、神話に繋がるなと。
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おもしろかった。
ただ、『〜かもしれない、おそらく〜だっただろう、〜とは思いにくい、〜とする学者もいる、〜と証明することは出来ない』みたいな文章ばっかりで、「これ、今まさに“虚構”を吹き込まれているのではなかろうか…」という気持ちになった。
「そんな発想・視点もあるんや」と知らせてくれたという意味でおもしろかったけど、信じるかどうかはまた別。
さ、下巻へGO。 -
認知革命と農業革命。虚構を生み出す力。未来を想像する時間の獲得。
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被支配者の視点で描いた人類史。見方を変えただけで特に新しい事実はなく、何かの仮説を展開しているわけでもない。その見方は独特で話題にもなっているけど、根拠は薄く、ちょっと論理に無理を感じるところも。世界が統合に向かうという見立てなどそう感じた人も多いのでは。本書が書かれた(2011)のは英国の国民投票前とはいえ、EU憲法否決などの兆候は出ていた。現代に近くてよくわかるところがこうなのだから歴史的な分析についてもこの程度の論証ではないのかと疑うべきだろう。日本が描かれていたらそのへんがもっとはっきりしただろう。
歴史を知った上で著者の説を知るのならいいけど、これで歴史を学ぼうとするのは危険では。
作者が透けるところがところどころあって、西洋の一神教論者にとっては驚くことなんだろうが、なんで仰天するのかわからないと思うところがいくつか(ネアンデルタールとの交雑を想像すると心が乱れるなど)あり、そのたびに作者との共感を失って一歩下がらせられる。
ただ読み物としては面白いので読みやすいし、提供された視点はとてもインパクトがある。