サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福

  • 河出書房新社
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  • / ISBN・EAN: 9784309226712

感想・レビュー・書評

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  • やっと読了。かなりハイスピードに読めた一冊。前から読みたいと思っていたので良かった。

    まず、ホモ・サピエンスの認知革命により、何がほかの哺乳類と違うのかが明確で面白い。
    私たちはほかの生物と大きく異なり、想像の産物(例えば神様や法律など)を信じることができ、その信頼をベースにコミュニティを作っていけることが強みなのだ。そのため、お互いのために行動をしたり、社会を作れる。

    そして、生きるために沢山の生態系のバランスを崩し、様々な生物を絶滅に追いやり、また進化を変えてきた。家畜たちが、生物学上では数を増やしていても、世界で最も惨めな生物である(自由を奪われ、従順な遺伝子を選択されて育てられる)と書かれているのを見て、申し訳ない気持ちになった。

    紀元前9500年前におきた農業革命は、コミュニティを数十人規模から数千人規模に増やすことに貢献した。狩猟民族のほうが食などは充実していたが、定住して暮らすことで安定して子供を増やし、共同体をつくり、コミュニティ規模を大きくすることで狩猟民族から守る形が作れる。これはとても大きな変化。

    そして、最後に人々の生活を大きく変えたものとして、貨幣、宗教、帝国という話が出てくる。貨幣は物を売るために市場をグローバルにし、宗教は布教する為にグローバルになり、帝国も支配をするためにグローバルになった。これはとても面白い観点。

    グローバル化が人類の歴史の中で、どうやっておきてきているのかがわかり、必然と仕組みが見えた。

  • 途中エビデンスが怪しい章がいくつかある(確信はないが)。読みやすくて面白いが、2014年に書かれているため、現在のポピュリズム隆盛を予期していない。
    上巻は今後世界が「グローバル帝国」となっていくだろう、という楽観的な見解で終えられる。

  •  認知革命・農業革命・科学革命という3つの激震を軸に、人類史を語る本。感想は下巻に回し、以下は各章のまとめ。

    1章:ホモ・サピエンスの覇権
     ネアンデルタール人等ではなくサピエンスが覇権を握った理由を語る前段階。
    2章:認知革命
     現実に物理的に存在しないもの「虚構」を想像し、その概念を他者と共有することにより、非常に大きな集団での協力が可能になる。法律・国家など大きな枠組み=神話は、遺伝子により規定されるものでもないため、目まぐるしい進化が可能となる。人類が生物学から歴史学へ足を踏み入れたと言える。
    3章:農業革命以前
     狩猟採集民の生活復元は難しい。認知革命によってDNAの束縛から放たれ、多様な可能性を孕んでいる。暴力・宗教・社会構造も。栄養バランス等いくつかの点では農耕社会より優れていたと思われる。
    4章:狩猟採集民による惑星生態環境の改変
     人類の進出=大型哺乳類の大量絶滅。農耕を始めるまでもなく、生態系に与えた衝撃は劇的だった。人類の電撃戦に、動物は人類への恐怖を学習する時間がなかった。
    5章:農業革命という罠
     人口爆発、エリート増大、種の拡大↔生活の劣悪、死亡率増加、贅沢の必需化と新たな義務。種としての成功は個々の成功を意味しない。人口なんて少ない方が良いのかも?
    6章:大量の人間を統制する(現在の社会制度を含めた広い意味での)神話の存在
     2章のおさらい。本来動物はせいぜい数十頭が共同体の単位の上限となるが、想像上の秩序、古代でいえば神話が共同体としての意識を作り出し、帝国の成立を可能にした。
     これは、宗教に限ったことではない。ハンムラビ法典もアメリカ独立宣言も皆に信じてもらうことでその共同体のルールとなるだけであり、何ら客観的な正当性はない。これは多くの個人の主観的意識を結ぶコミュニケーションネットワークの中に存在する「共同主観的」なものとでも呼べるものである。
    こうした枠組みは、農耕の始まりによる始まりによる階層化、それに伴う支配者非支配者の関係の成立に伴い必要になったものだ。
    7章:文字の登場
     文字は、詩歌を書き留めるためではなく、最初は数を把握するものとして発明された。これは、社会の複雑化に伴い数を操る必要がでたのに対し、人間の脳は数を処理することに長けてはいないからだ。
     これを操る書記、官僚制が登場し、現代ではコンピュータが発明されている。この書記体系が人間を説明しようとするまでに到っているともいえる。
    7章:ヒエラルキーの社会的役割
     ヒエラルキー、悪くいえば差別は、複雑な人間社会には必要なようだ。ヒエラルキーは、見ず知らずの人同士が、互いをどう扱うべきか知る手がかりとなる。
    様々な格差の中で、最も広汎に見られるのが男女の差別であり、生物学的差異を始まりに、文化的な区別が与えられている。男の方が偉い、的な家父長制はあまりにも普遍的であり、一部に存在する偶発的偏見から生まれたとは考え難い。男性の筋力的優位性
    ・攻撃性・遺伝、どれも決定打とは考えにくい。男女の社会的文化的性別の役割が劇的な変革を遂げているとおり、家父長制の普遍性や永続性も過去のものになるかもしれない。
    8章:一体化に突き進む世界
     神話と虚構を手に入れた人類は、人工的にルールを作りだし、膨大な数の成員による共同体の維持を可能とした(このルールないしネットワークを文化と呼ぶ)。
    文化には必然的に矛盾が含まれるが(自由と平等など)、これは文化の本質的な特徴であり、絶えず変化し、巨視的に見れば統一へと向かっていることは疑いようがない。
     「私たち」と「彼ら」という二分法は人類の統一に向けて全世界・全人類の想像が可能になった。これを可能にしたのものが、次章以降で紹介する貨幣・帝国・宗教である。
    9章: 普遍的秩序をつくるもの 貨幣
     貨幣は最も普遍的で、最も効率的な相互信頼の制度である。ただし、需要と供給の法則が各地の伝統や親密な関係、人間の価値といったものを損なうこともある(貧困層が子どもを売ったりとか)。なので、暴力であれ政治であれ、経済を造り変える努力もなされてきた。人類の統一は経済だけで語ることはできない。
    10章:普遍的秩序をつくるもの 帝国
     帝国は、文化的多様性と変更可能な国境により定義される。帝国の文化は支配されたさまざまな被支配民により採用され、帝国が失われた後もその文化を引き継いでゆく。
     現代では、この帝国は「国家」という枠組みでなく、共通の文化や利益によりまとまり始めており、真にグローバルな帝国が生み出されつつあるのかもしれない。

  • 2016年を代表する本として各所で絶賛されていた本書、確かに凄まじく知的好奇心を揺さぶられた。この一冊で広範な人類の活動の謎を全て知ってしまえるのではないか、という奇妙な錯覚を与えてくれる点にある。
    ホモ・サピエンスの歴史と進化、狩猟から農耕へのライフスタイルシフトで組織の構造化が始まり、貨幣の登場、地域間の価値格差を利用した貿易の発達、それにともなう価値の平準化など、鳥よりも高い大局観を終始一貫して保ち続けているからこそ大きなうねりがみえてくる。当初は物理的、時間的、空間的な隔離から、それぞれに最適化した多様な文化が独自に進化してきたが、その流れはすでに反転、歴史は統合に向かって進み始めている。引き続き下巻へ。

  • ホモ・サピエンスという括りで歴史を捉えた場合のいくつかの転換について、非常に納得のいく結論が述べられていると感じた。差別の部分に関しては、わからない、という結論だったのが興味深い。著者のバックグラウンドによるものなのか、それとも相応の事実が出揃っていないということなのか。あるいは両方とも含まれるのか。新たな問いをも含んでいる。

  • 生物学を基にした人が今の人の様に変化していった様子を実際の生活様式を照らし合わせて述べた部分が、興味深かった。言葉が、記憶の方法が、明らかにほかの動物と異なり、これがサピエンスたらしめたのかと、納得しました。

  • 大学図・1F開架 209A/H32s/1

  • 人類(ホモ・サピエンス)の反映は、神話・宗教・国家などの”虚構”を共有できたことであるというユニークな観点で人類史を描いた本。上巻は他の原始人類を凌駕したホモ・サピエンスの誕生から、貨幣経済・古代王国/帝国の形成まで。

    続きはこちら↓
    https://flying-bookjunkie.blogspot.jp/2018/05/blog-post_3.html

  • ジャレド・ダイアモンドの大作とかぶるような文明史大観ではあるけれど、人類に焦点を当てたのがポイント。人間社会を統一するための、神話、宗教、道徳律、法律、貨幣。たしかに虚構と言われたらそうだろう。

  • ジャンル分けの難しい本
    面白い
    大きな集団の統率のためには大きな嘘が必要
    ※言語による神話など

    ローマ法王はアルファボス

    こういう本がベストセラーになるのだから
    日本もまだまともだと思う

  • ログインできなくなってしまったので申し訳ないですが、新しいアカウントでもう一度記録させてください。

    未来に先回りする思考法を読んで先見性を得るには歴史を学ばなければならない。と思って読んでみた。

    すごくおもろい。人類の歴史一通りとなぜそういう選択を人類がしたのかを学べる。

    興味深かった点

    ・ネアンデルタール人から私たちホモ・サピエンスが進化したのではなく、両者同じ時代に存在していた。そのためホモ・サピエンスがネアンデルタール人を滅ぼしたのでは?という説がある

    ・大きな脳は大きなエネルギーを使う。脳の代償として人類は筋肉にかける資源の一部をニューロンに回した。

    ・人類とチンパンジーとの真の違いは、多数の個体、家族、集団を結びつける虚構や神話という接着剤である。

    ・人類が特定の秩序を信じるのはそれが客観的に正しいからではなく、それを信じればより良い社会を作り出せるからである。

  • 是非読みたい

  • ホモ・サピエンスが「虚構」を信じられたからこそ発展できたという観点が面白かった。

  • 素晴らしい。これは必読だね。ただしアラ探しになるが進化過程に誤表記。多分参照した資料が古い。

  • ホモ・サピエンスたちは虚構により、生き残ってきた。
    神話という超壮大な作り話によって人々は考えを統一し、協力することが可能になった。
    平等、自由の概念すらも全てが虚構。

    この世は虚構。
    筒井作品みたいだ。

    人類の歴史は、地球の歴史からするとまだまだカスみたいなもの。

    農業革命により人口も増え、暮らしが良くなるかと思いきや幸福度は狩猟採集民の頃より低いということは、テクノロジーが発達し続けている現代にも当てはまる。

    便利すぎるが故に忙しすぎる。

    自分の祖先を遡って行くと7万年前のとあるホモサピエンスにたどり着くのだろうかと、思いを馳せながら読んだ。

  • 予想外に軽くて面白かった。歴史のPhDが一般人向けに書いた歴史人類文化考察という感じ。なんとなく参考書的な装丁で小難しいような前評判を聞いていたが、ところがどっこい大変柔らかく字も大きくてサクっと短いです。まぁ、そこらへんの教科書にのっているような基礎知識は割愛されていて話が早くテンポがよくて読みやすい。主役はサピエンス、本著ではネアンデルタールは別種扱いされているが、今の所はホモ(ヒト属)の基種がサピエンスでネアンデルタールは亜種やと思うんだが、ま、諸説あり。ともかく、著者が生きるユダヤ世界から見ている立ち位置なので日本語への翻訳は大変だったろうと思う、所々原文が気になってしまった(ヘブライは読めんけど)。面白かったのはサピエンスが種として勝ち残った勝因を”虚構を創作する能力”を持っていたと言及しているところ。日本では古事記や日本書紀で書かれているように外来のヤマトが在来の王たちを東征してくときに”嘘”をつける能力が力の差となったのは誰でもしっているが、もしかしたら日本神話はサピエンスに負けたネアンデルタールの記憶伝承なんかもしれん、、、、な〜〜〜んてな妄想を抱きました。文書化したのは和銅5年とはいえ、内容は口承伝承なわけなんだから、実は28万年前の話かもしれん。
    下巻が楽しみです。

  • タイトルが、中々学術的な雰囲気ではあるが、中身は基礎的。非常に理解しやすいし、面白い。ベストセラーになる理由が分かります。それと、「人類の進化を、こう言う風にひも解くのか」刮目させられます。ためになります。

  • ヒトはどこから来て、どこへ向かっていくのか。壮大なテーマで、膨大なリサーチをもとに書かれた本。生き物としての人間の進化と、文化人類学、歴史学、生物学、そして幸せはどうやって感じられるのかという倫理学的なテーマに移っていく。
    よくこんな本書いたな~というのが素直な感想。これだけ散逸するテーマを纏めた本書は、まだ若い著者の人生の集大成に違いない。読むだけでも、爽快な達成感が得られる。
    上巻のネアンデルタール人の箇所が面白かった。「~だろう」ではなく、断定的な文章が印象的だ。下巻のヨーロッパ人がどう帝国を築いたかも、読みごたえがある。
    かつてネアンデルタール人や大型動物を絶滅させたホモサピエンスが、将来は絶滅させられるのだろうか?サイエンスや歴史が好きな人にお勧めの本である。

  • ホモ・サピエンス以外の生物の生活の変化は、進化に伴って起こるのに対し、ホモ・サピエンスの生活の変化の速度は、進化の速度をはるかに上回っている、という観点は、非常に素晴らしいと思います。

    ホモ・サピエンスのもつ社会性と攻撃性は、その存在や思考が抱えている矛盾の際たるものだと思います。

    果たして、我々ホモ・サピエンスは、どこへ向かっていくのか。
    生物の一種であるがゆえに、絶滅からは逃れられないと思いますが、せめて破滅には向かわないでほしい、そう願っています。

  • ヒトと他の生物を分けるものは、ヒトが創り出す「虚構」にあった。人文科学と自然科学を行き来して、ヒトがどの様に自然界の頂点にのし上がりながら、虚構世界の中で如何に悪戦苦闘しているかを忠実に描く。平易な文章と豊富な具体例も、読者の理解を助ける本書の魅力。

  • 上巻読了。

    ホモ・サピエンスが生き延びたのは虚構により協力しあう認知革命があったから。宗教、政治、民主主義、などはすべて客観的なものではなく共同主観的。

    その後の農業革命が人口増加をもたらしたが、個々の人は不幸になった。

    世界の統一に向かう上での要素である貨幣と帝国までで下巻へ。

  • 人類学を面白い視点で書いている。とても視野が広まる。

  • 世界的なベストセラーとなったユヴァル・ノア・サラリ氏のマクロ歴史本である。
    本書は人間が現在の人間たらしめた革命は「認知革命」「農業革命」「科学革命」の3つに分けられる。
    (上巻は主に「認知革命」「農業革命」について述べられている)

    上巻では人類が文化を営み始める歴史前から存在したが「虚構によって見知らぬ人と協力を可能にした」7万年前から人類の営みを他の生物学から切り離し、歴史と呼ぶ。
    国家が虚構である事を言い表したのはベネディクト・アンダーソンだったかだと思うがこのように歴史構造のみを取り出してしかもベストセラーとなり考えが一般に流布される事の意味は大きい。

    そして人類は農耕生活を始める(「農業革命」、一万年以上前)がこれは最も物議を醸す出来事の一つである。子孫繁栄と進歩を手に入れる代わりに多くの物を捨て去ったと言える。人類は小麦に頼り多様な食物から栄養を得ていた狩猟時代と異なった。未来の時間に対する不安が生まれ、想像上の秩序、ヒエラルキーが生まれた。小麦を栽培化するように見れたが逆に小麦が私達を家畜化したと言えるのである。集合的な力の増加が個々の苦しみの上に成り立つ現在社会の源はここを起源にしていると言えよう。

    歴史は統一性に向かっているのか、それとも多様性に向かっているのか短期的な視点では把握は難しいが超長期的視点から見れば統一に向かっている。その時に登場したのが貨幣である。貨幣により「複雑な商業ネットワークと市場の活性化」に貢献したがよって貨幣は見知らぬ人との協力を促進するが人間的なコミュニティを無意識の内に壊してしまっているかもしれない代物なのである。

  • 虚構。

    ホモ・サピエンスが他の人類種を差し置いて、唯一生き残った所以。

    7万年前に起こった認知革命、
    1万2000年前に起こった農業革命から
    5000年前の人類史初の書記体系や貨幣制度等が、大型社会発展にどのように影響を与え生成していったのか。

    本質的客観的長期的な観点で捉えることができる。

  • 内容が強烈だった。虚構を信じることができるから地球の覇者になれたという文脈は新鮮だった。たしかに、全ては虚構、神話に繋がるなと。

  • ヒトの歴史を文化的側面から紐解いたもの。

    生物学的にであったり遺伝学的であったりは今までにも読んだことがあったがこういうアプローチのものは初めてでとても納得させられる。

    最初の違いの認知革命という想像力こそが猿人からヒトたらしめたというのは、確かにそれが宗教にも繋がり、科学や産業の発展にも繋がり、現在の経済システムにも繋がることを示し、これがものすごく大きいことであったことがよくわかる。

    この認知革命という想像力の発展のせいで今の世界が幸せなのか不幸せなのかを投げかけている。

    その幸せとは何なのかが、また不透明な題材ではあるが。

    これは読んでおいて損はない。

  • おもしろかった。
    ただ、『〜かもしれない、おそらく〜だっただろう、〜とは思いにくい、〜とする学者もいる、〜と証明することは出来ない』みたいな文章ばっかりで、「これ、今まさに“虚構”を吹き込まれているのではなかろうか…」という気持ちになった。
    「そんな発想・視点もあるんや」と知らせてくれたという意味でおもしろかったけど、信じるかどうかはまた別。
    さ、下巻へGO。

  • (2017.02.20読了)(2017.02.10入手)(2017.02.13・25刷)
    副題「文明の構造と人類の幸福」
    著者は、どんな人なのかと表紙カバーの袖にある紹介文を見ると中世史、軍事史を専攻した歴史学者でした。エルサレムのヘブライ大学で歴史学を教えている。
    考古学や古生物学の専門家ではないのですが、人類の誕生から説き起こして人類史を概観しています。何年も前に世界史を習った人たちには、最近の知見が盛り込まれているので、新鮮で驚きの内容が多々あると思います。
    逆に、考古学・古生物学が好きな方たちには、内容が薄いので物足りないとか、議論が大ざっばの感はぬぐえないと思います。
    農業革命については、多くの人たちにとってはいいことのないものだったと述べています。一生懸命働いても大部分を支配者にもっていかれてしまうし、天候不順で飢饉になったりすれば多くの人が亡くなってしまう。
    狩猟採集の生活のまま継続すればよかったということなのでしょう。
    文字については、事実と数を記録するためにつくられたとしています。シュメールは多分そうだったのでしょう、インカ帝国のキープについても同様の役割だったのでしょう。でも、文字の発明がすべても文明でそうだったのかについて検証する必要があるのではないでしょうか。たとえば、中国の甲骨文字についてとか。
    一方、貨幣の発明を非常に評価しています。貨幣の利便性は確かにすばらしい発明だと思いますが、現代のマネーゲームの弊害についてはどのように考えているのでしょうか。ちょっと見えないところです。
    下巻では、科学革命について述べられるようですが、中世の錬金術や軍事史の面からの見解を聞きたいものです。

    【目次】
    歴史年表
    第1部 認知革命
    第1章 唯一生き延びた人類種
    不面目な秘密/思考力の代償/調理をする動物/兄弟たちはどうなったか?
    第2章 虚構が協力を可能にした
    プジョー伝説/ゲノムを迂回する/歴史と生物学
    第3章 狩猟採集民の豊かな暮らし
    原初の豊かな社会/口を利く死者の霊/平和か戦争か?/沈黙の帳
    第4章 史上最も危険な種
    告発のとおり有罪/オオナマケモノの最期/ノアの方舟
    第2部 農業革命
    第5章 農耕がもたらした繁栄と悲劇
    贅沢の罠/聖なる介入/革命の犠牲者たち
    第6章 神話による社会の拡大
    未来に関する懸念/想像上の秩序/真の信奉者たち/脱出不能の監獄
    第7章 書記体系の発明
    「クシム」という署名/官僚制の驚異/数の言語
    第8章 想像上のヒエラルキーと差別
    悪循環/アメリカ大陸における清浄/男女間の格差/生物学的な性別と社会的・文化的性別/
    男性のどこがそれほど優れているのか?/筋力/攻撃性/家父長制の遺伝子
    第3部 人類の統一
    第9章 統一へ向かう世界
    歴史は統一に向かって進み続ける/グローバルなビジョン
    第10章 最強の征服者、貨幣
    物々交換の限界/貝殻とタバコ/貨幣はどのように機能するのか?/金の福音/貨幣の代償
    第11章 グローバル化を進める帝国のビジョン
    帝国とは何か?/悪の帝国?/これはお前たちのためなのだ/「彼ら」が「私たち」になるとき/
    歴史の中の善人と悪人/新しいグローバル帝国
    原 註
    図版出典

    ●三つの革命(14頁)
    七万年前、ホモ・サピエンスという種に属する生き物が、文化を形成し始めた。
    歴史の道筋は、三つの重要な革命が決めた。約七万年前に歴史を始動させた認知革命、約一万二千年前に歴史の流れを加速させた農業革命、そしてわずか五百年前に始まった科学革命だ。
    本書ではこれら三つの革命が、人類をはじめ、この地上の生きとし生けるものにどのような影響を与えてきたのかという物語を綴っていく。
    ●ホモ・サピエンス(27頁)
    十五万年前までには、私たちにそっくりのサピエンスが東アフリカに住んでいたということで、ほとんどの学者の意見が一致している。
    東アフリカのサピエンスは、およそ七万年前にアラビア半島に拡がり、短期間でそこからユーラシア大陸全土を席巻したという点でも、学者の意見は一致している。
    ●二重の現実(49頁)
    サピエンスは、認知革命以降ずっと二重の現実の中に暮らしてきた。一方には、川や木やライオンといった客観的現実が存在し、もう一方には、神や国民や法人といった想像上の現実が存在する。
    ●社会の成員(66頁)
    農耕社会と工業社会の成員の過半数は家畜だ。
    ●犬の家畜化(66頁)
    犬はホモ・サピエンスが真っ先に飼い慣らした動物で、犬の家畜化は農業革命の前に起こった。およそ一万五千年前には飼い慣らされた犬が存在していたという、動かしがたい証拠がある。
    ●日本・台湾(88頁)
    人類は、約三万五千年前に日本に、約三万年前に台湾に、それぞれ初めて到達している。
    ●農耕への移行(105頁)
    農耕への移行は紀元前九千五百~八千五百年ごろに、トルコの南東部とイラン西部とレヴァント地方の丘陵地帯で始まった。
    紀元前九千年ごろまでに小麦が栽培植物化され、ヤギが家畜化された。
    私たちが摂取するカロリーの九割以上は、私たちの祖先が紀元前九千五百年から紀元前三千五百年にかけて栽培化した、ほんの一握りの植物、すなわち小麦、イネ、トウモロコシ、ジャガイモ、キビ、大麦に由来する。
    ●農業革命は詐欺(107頁)
    農業革命は、安楽に暮らせる新しい時代の到来を告げるにはほど遠く、農耕民は狩猟採集民よりも一般に困難で、満足度の低い生活を余儀なくされた。狩猟採集民は、もっと刺激的で多様な時間を送り、飢えや病気の危険が小さかった。人類は農業革命によって、手に入る食料の総量を確かに増やすことはできたが、食料の増加は、より良い食生活や、より長い余暇には結びつかなかった。むしろ、人口爆発と飽食のエリート層の誕生につながった。平均的な農耕民は、平均的な狩猟採集民よりも苦労して働いたのに、見返りに得られる食べ物は劣っていた。農業革命は最大の詐欺だった。
    ●神殿の建設(121頁)
    従来の見方では、開拓者たちがまず村落を築き、それが繫栄したときに、中央に神殿を立てたということになっていた。だが、ギョベクリ・テペの遺跡は、まず神殿が建設され、その後、村落がその周りに形成されたことを示唆している。
    ●歴史(132頁)
    農耕民の生みだした余剰分を、王や政府の役人、兵士、聖職者、芸術家、思索家といった少数のエリート層が食べて生きており、歴史書を埋めるのは彼らだった。歴史とは、ごくわずかの人の営みであり、残りの人々はすべて、畑を耕し、水桶を運んでいた。
    ●普遍的原理(140頁)
    ハンムラビもアメリカの建国の父たちも、現実は平等あるいはヒエラルキーのような、普遍的で永遠の正義の原理に支配されていると想像した。だが、そのような普遍的原理が存在するのは、サピエンスの豊かな想像や、彼らが創作して語り合う神話の中だけなのだ。これらの原理には、なんら客観的な正当性はない。
    ●書記(158頁)
    紀元前三千五百年と紀元前三千年の間に、名も知れぬシュメール人の天才が、脳の外で情報を保存して処理するシステムを発明した。
    シュメールが発明したこのデータ処理システムは、「書記」と呼ばれる。
    ●能力(175頁)
    人がある才能を持って生まれても、その才能は育て、研ぎ澄まし、訓練してやらなければ発揮されない。すべての人が、自分の能力を養い、磨くための機会を同じだけ得られるわけではない。
    ●戦争指導者(197頁)
    戦争は、並外れた程度までの組織化や協力、妥協が必要とされる、複雑な事業だ。国内の平和を維持し、国外では同盟国を獲得し、他の人々の考えていることを理解する能力が、たいてい勝利のカギを握っている。
    ●貨幣制度(224頁)
    これまで考案されたもののうちで、貨幣は最も普遍的で、もっとも効率的な相互信頼の制度なのだ。

    ☆関連図書(既読)
    「人類の誕生」今西錦司著、河出書房、1968.03.10
    「人類の創世記 人類文化史1」寺田和夫・日高敏隆著、講談社、1973.09.20
    「入門 人類の起源」R.リーキー著、新潮文庫、1987.06.25
    「世界の歴史01 古代オリエント」杉勇著、講談社、1977.02.20
    「歴史としての聖書」ウェルネル・ケラー著・山本七平訳、山本書店、1958.11.10
    (2017年2月27日・記)
    (「BOOK」データベースより)
    なぜホモ・サピエンスだけが繁栄したのか?国家、貨幣、企業…虚構が文明をもたらした!48カ国で刊行の世界的ベストセラー!

  • 認知革命と農業革命。虚構を生み出す力。未来を想像する時間の獲得。

  • 被支配者の視点で描いた人類史。見方を変えただけで特に新しい事実はなく、何かの仮説を展開しているわけでもない。その見方は独特で話題にもなっているけど、根拠は薄く、ちょっと論理に無理を感じるところも。世界が統合に向かうという見立てなどそう感じた人も多いのでは。本書が書かれた(2011)のは英国の国民投票前とはいえ、EU憲法否決などの兆候は出ていた。現代に近くてよくわかるところがこうなのだから歴史的な分析についてもこの程度の論証ではないのかと疑うべきだろう。日本が描かれていたらそのへんがもっとはっきりしただろう。
    歴史を知った上で著者の説を知るのならいいけど、これで歴史を学ぼうとするのは危険では。
    作者が透けるところがところどころあって、西洋の一神教論者にとっては驚くことなんだろうが、なんで仰天するのかわからないと思うところがいくつか(ネアンデルタールとの交雑を想像すると心が乱れるなど)あり、そのたびに作者との共感を失って一歩下がらせられる。
    ただ読み物としては面白いので読みやすいし、提供された視点はとてもインパクトがある。

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著者プロフィール

歴史学者、哲学者。1976年イスラエル生まれ。オックスフォード大学で中世史、軍事史を専攻し博士号を取得。現在、ヘブライ大学で歴史学を教授。『サピエンス全史』『ホモ・デウス』『21 Lessons』。

「2020年 『「サピエンス全史」「ホモ・デウス」期間限定特装セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ユヴァル・ノア・ハラリの作品

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