- Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309226712
感想・レビュー・書評
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筆者の論調がはっきりしてて読みやすかった。人類、つまり「ホモ・サピエンス」の隆盛の過程で、何が事実としてあって、そこからどんな解釈が生まれ、どこが不確かなのか?採掘と研究によって生まれた事実と解釈を極力分けて説明されていたように思う。
ただし単調な文でもなく、知識の無い人でも想像しやすいように、リアルな具体例を添えてあったのも読みやすさに大いに貢献していた。
以下頭に浮かんだ感想をダラダラ書きます。
山菜を採って狩りをして動けなくなったら死ぬみたいな、大半の労働は直接生死に関わることのために行う生活に、わたしはどことなく憧れていたので、「農業革命後の人類より、狩猟採集時代の人類の方が、健康で幸福度の高い生活をしていたのではないか」という本書の説明に物凄くしっくりした。
目の前の短期的な効用のために改善をしていった結果農耕生活中心となり、幸福になろうとして長期的には幸福度を下げた、という説も、現代でも似たようなケースはよく見られるので頷けるなあと。
わたしたちは無意識のうちに虚構に囲まれて生きている。構成員が全員入れ替わっても生き続ける法人、ただの紙切れやデータに生活を委ねる貨幣制度など。特に現代は世に出回るお金の大半が電子データであり、この虚構はかなり危うさを感じる。だからブロックチェーンがその危うい信頼を担保してくれると期待されているのかなと(ここらへんはかじった程度なので的外れかもだけど)
ほんと、わたしがやってる仕事とか虚構の消費のためにお金をもらっていて、そういう産業の市場規模が大きいのを見ると、みんな生きるのに暇なんだなあと感じる。暇を埋める何かを求めてる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
人類は狩猟採集民から農耕民になっていった。
あらゆる神話(ルール)が人類同士強力するという体制を作っていった。
そのことが人類(ホモサピエンス)が世界を征服しピラミッドの頂点に立った理由。 -
歴史から学ぶことは多い。人類が発生してから、今の繁栄した社会を築くに至った歴史と、その理由を、この本は追求していく。比較的分かりやすい言葉と、多くの実例を用いて理解しやすい内容で書かれており、ストーリーとしても面白い。
生物学上ホモ・サピエンスと呼ばれる我々人類が地球上でどうしてこのように圧倒的な繁栄を遂げることができたのか。本書では3つの大きな変革が起きたことによると、説明している。
それは認知革命、農業革命、科学革命である。
1つ目の認知革命とは、言語を使ってサピエンスが虚構を作り出す事ができるようになったことである。
虚構、つまり実在しない想像上の秩序を作りだし、共有すること、共同的主観を持つことができるようになったことで、サピエンスは他の生物ではあり得ない大きな集団で協力して行動できるようになった。
協力することで、強力な力を持ち他の人類を圧倒した。また、長い時間をかけて進化させることを待たずに、あらゆる環境を克服し、広がって行くことができたのである。-
サピエンス全史読み始めました。
あと、「才能の正体」(坪田信貴著)がオーディブルで、出ています。
https://www.audible...サピエンス全史読み始めました。
あと、「才能の正体」(坪田信貴著)がオーディブルで、出ています。
https://www.audible.co.jp/pd/B08638MNCB?source_code=ASSORAP0511160006&share_location=player_overflow
仕事にも役立つので、オススメです。2023/03/20
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◯ハンムラビなら、ヒエラルキーについての自分の原理を、同じロジックを使って擁護したかもしれない。「上層自由人、一般自由人、奴隷は、本来異なる種類の人間ではないことを、私は承知している。だが、異なっていると信じれば、安定し、繁栄する社会を築けるのだ」と。(143p)
★農業革命が詐欺だったなんて。人類は種の繁栄と引き換えに苦労を背負い込んだ。人類が小麦を栽培したのではなく、小麦が人類を家畜化したとか面白すぎる見方だ。
★人類が多くの種を絶滅させたこと、人権が神話に過ぎないこと、自由と平等の矛盾、現代も残るヒエラルキーなどを目の前に突きつけて居心地を悪くさせる。
★126ページの子牛の表情が切なすぎる。と言いながら今日もステーキを食べる罪深さ。 -
第1部 認知革命
第1章 唯一生き延びた人類種
(不面目な秘密/思考力の代償/調理をする動物/兄弟たちはどうなったか?)
人類は十分な容量の脳に進化したにも関わらず200万年に渡って中位にいた。
40万年前に大きな獲物を狩り始め、10万年前に動物の頂点にたち、7万年前に他のサピエンスも駆逐した。
この間フィジカルな進化は無いが思考能力と意思疎通能力が発達しており、これを認知革命という。
第2章 虚構が協力を可能にした
(プジョー伝説/ゲノムを迂回する/歴史と生物学)
動物の群れでの個体認知能力は20-50体で、人間の認知力でも最大150人程度。
この生物的な限界を共通の虚構を認識することで乗り越えたことにより発展が始まった。
通常の生物は能力が遺伝子に支配されているが、人間は遺伝子を変えずに認知能力を進化させた。
認知革命以降の人類の発展を理解するには、生物学だけでなく歴史学、社会学が必要。
・取り巻く環境情報の伝達力→ 狩りの計画や実行
・社会関係についての伝達力→ 最大150人の組織
・共同体や信仰の概念の伝達力→ 見知らぬ人同士の連携
第3章 狩猟採集民の豊かな暮らし
(原初の豊かな社会/口を利く死者の霊/平和か戦争か?/沈黙の帳)
狩猟採集時代は意外と豊か、週に40時間労働程度で現代よりも少ない。
単一作物に頼らないので栄養状態も良く、移動も容易で飢饉に強い。
家畜由来の感染症も少ないし蔓延しにくい。
第4章 史上最も危険な種
(告発のとおり有罪/オオナマケモノの最期/ノアの方舟)
4万5千年前にオーストラリアや、1万5千年前のアメリカ大陸に人が上陸した後、その地域の大型動物が絶滅。
第2部 農業革命
第5章 農耕がもたらした繁栄と悲劇
(贅沢の罠/聖なる介入/革命の犠牲者たち)
従来の考えでは農業革命により豊かになったということだが、個人としてはそうではない。
食料の増産は人口爆発を生み、より貧しく格差も大きくなった。飢饉にも弱くなり安定性もなくなった。
個々の人は栄養失調や病気で苦しんだが、ホモ・サピエンス全体の人口(遺伝子の複製)としては劇的に増えた。
狩猟採集民を数で圧倒したので結局、ほぼ全員が農耕民になった。
家畜についても同じで、数は劇的に増えたが個々の家畜は非常に不幸。
進化上の成功と個々の苦しみとの乖離が顕著。
小麦などの穀物がホモ・サピエンスを奴隷化して自分たちの勢力を広げたとも言える。
歴史の鉄則:贅沢は必需品となり、新たな義務を生じさせる
第6章 神話による社会の拡大
(未来に関する懸念/想像上の秩序/真の信奉者たち/脱出不能の監獄)
狩猟採集民に比べ農耕民は遠い将来を考える必要があり、農耕が始まると共に未来への不安が人に芽生えた。
支配するためには想像上の秩序が必要だが、人が作ったのではなく、神から与えられたものとした。
その意味ではハンムラビ法典、アメリカの独立宣言は本質的には同じ。
想像上の秩序は、
・物質的世界に埋め込まれていて、具体的な形をとる
・私達の欲望を形作る
・通貨や会社のように、共同主観的(主観でも客観でもない)
第7章 書記体系の発明
(「クシム」という署名/官僚制の驚異/数の言語)
進化は個々の実施能力は与えていないが、ルールを作る能力を与えた。
狩猟採集民が使うルールは単純だが、農耕して暮らすには個人では処理できないほどのルールが必要となる。
紀元前3000年にシュメール人が書記体系を発明、9世紀に計算の基礎が誕生。
第8章 想像上のヒエラルキーと差別
(悪循環/アメリカ大陸における清浄/男女間の格差/生物学的な性別と社会的・文化的性別/
男性のどこがそれほど優れているのか?/筋力/攻撃性/家父長制の遺伝子)
複雑な社会ではどこでも想像上のヒエラルキーと不正な差別が見られる。
差別により格差が生じ、格差が差別を正当化する悪循環が生じて固定化される。
男女についても格差の一種で、文化が変われば立場は大きく異なる。
今日では同性婚の合法化など、大きな変化が生じている。
第3部 人類の統一
第9章 統一へ向かう世界
(歴史は統一に向かって進み続ける/グローバルなビジョン)
全ての歴史を通し、人類は貿易と宗教を原動力として統一に向かって進み続けている。
第10章 最強の征服者、貨幣
(物々交換の限界/貝殻とタバコ/貨幣はどのように機能するのか?/金の福音/貨幣の代償)
貨幣の特徴
・普遍的転換性: 貨幣を媒介にすればなんでも交換できる
・普遍的信頼性: どのような相手とでも共通の利害で協力できる
第11章 グローバル化を進める帝国のビジョン
(帝国とは何か?/悪の帝国?/これはお前たちのためなのだ/「彼ら」が「私たち」になるとき/
歴史の中の善人と悪人/新しいグローバル帝国)
現代のグローバル化の状況は後期ローマと似ている。
多民族のエリートに支配され、共通の文化と利益で結びついて、参加者は増加し続けている。
第12章 宗教という超人間的秩序
(神々の台頭と人類の地位/偶像崇拝の恩恵/神は一つ/善と悪の戦い/自然の法則/人間の崇拝)
宗教は超人的な秩序の存在を主張し、その秩序に基づいて規範や価値観を確立し拘束する。
・アニミズムや多神教は他者を改宗させる必要がないので宣教はしない
・一神教は秩序を押し付けることには強いが、悪の存在を説明しづらい
・二元論は悪の存在を説明しやすいが、秩序や世界の法則を説明しづらい
・仏教は宗教というよりイデオロギー、共産主義も同じ
最も広がった一神教も結局は聖人の形での多神教か、善と悪の二元論の形をとっている。
最近300年は人間至上主義が強く、3つのバリエーションがある。
・自由主義:ヒト個人の自由が最も大事
・社会主義:ヒトの種の中での平等が大事
・進化論主義:種としてのヒトが重要、優生学、ナチス
第13章 歴史の必然と謎めいた選択
(後知恵の誤謬/盲目のクレイオ)
歴史は二次のカオス系、予測により結果が影響を受ける。
第4部 科学革命
第14章 無知の発見と近代科学の成立
(無知な人/科学界の教義/知は力/進歩の理想/ギルガメシュ・プロジェクト/
科学を気前良く援助する人々)
過去500年の発展はこれまでの知識の革命とは異なり、無知を認識した革命。
・進んで無知を認める意思:昔は教会が全て知ってるという世界観なので進歩がなかった
・観察と数学を重視:観察結果を想像の物語ではなく数式化すると予測に使えるようになる
・新しい力の獲得を志向:資本主義と産業革命が結びつき、科学が役に立つことが理解された
宗教やイデオロギー、政治や経済が提携して科学研究は支えたことで発展した。
第15章 科学と帝国の融合
(なぜヨーロッパなのか?/征服の精神構造/空白のある地図/宇宙からの侵略/
帝国が支援した近代科学)
ヨーロッパは近代前期の科学と資本主義の蓄積で近代後期に世界を支配した。
科学者も征服者も自分の無知を認めることから始まり、探検して征服する野心を持った。
科学者は征服者に技術を与え、征服者は科学者に情報と資金を提供。
第16章 拡大するパイという資本主義のマジック
(拡大するパイ/コロンブス、投資家を探す/資本の名の下に/自由市場というカルト/
資本主義の地獄)
昔はパイが一定だったので金儲けは悪だった。
今日より明日の方がパイが大きいと考え、将来を信用することによる資金の循環が生まれた。
・昔: 信用ない→資金ない→経済成長しない→将来を悲観→信用ない
・今: 信用発生→資金調達→ 経済成長→将来を信頼→信用発生
オランダ、金融と法制度が発達し私有財産が尊重されたので発展
スペインは王の権力が強く、信用をなくしたので衰退
今のところ資本主義に変わる良いものは無いが、市場主義(リバタリアン)は決して万能ではない。
政府の規制がないと資本主義は暴走する。労働者の搾取、奴隷貿易。
イギリスは資本家と政府が結びつきアヘン戦争を起こした。
第17章 産業の推進力
(熱を運動に変換する/エネルギーの大洋/ベルトコンベヤー上の命/ショッピングの時代)
エネルギーと原材料が有限というのは理論上のことであり、実際には爆発的に増え続けている。
・エネルギー:蒸気機関、内燃機関、電気、原子力
・原材料 :作物、家畜、アルミ、プラスティック
資本主義を信じる裕福な人は投資を行い、そうでない人は豊かさを享受した消費行動。
第18章 国家と市場経済がもたらした世界平和
(近代の時間/家族とコミュニティの崩壊/想像上のコミュニティ/変化し続ける近代社会/
現代の平和/帝国の撤退/原子の平和)
産業革命の結果、人は生態系に依存しなくなった。
技術革新により資源不足の心配はないが、環境は悪化している。
昔の社会は家族とコミュニティだったが、国家と市場に変わり、個人が強くなった
・弱い個人→強いコミュニティが必要→国家と市場は弱い → 個人が弱い
・強い個人→ コミュニティ不要 → 強い国家と市場が必要→個人が強い
国民や消費者という想像上のコミュニティが台頭
この2世紀の間に国家のような社会秩序は流動的なものと考えられるようになった
2002年、暴力犯罪で57万人、戦争で17万人、自殺で87万人が死亡
核兵器のおかげで戦争の代償が大きく利益も無いので大国間の戦争は消滅。
世界の人々や指導者のほぼ全員が、戦争は悪で回避できると信じている。
第19章 文明は人間を幸福にしたのか
(幸福度を測る/化学から見た幸福/人生の意義/汝自身を知れ)
一般の幸福の定義は 主観的なので外部から計測できないが、アンケート調査でいくつか結論。
・一定水準まで富は幸福をもたらす
・病気は短期的には不幸だが、慣れる
・家族やコミュニティ、結婚は重要
様々な幸福論
・幸福とは客観的な条件と主観的な期待との相関関係。
昔から「足るを知る」が重要と言われてきたが、現代の研究成果もそれを裏付ける。
そういう意味ではマスメディアと広告は人々の不満を増やしているだけ。
・生物学者にとっての幸福とは化学物質によって体内に生じる快感。
どんな状況でも幸福を感じる生物は危機感がなく淘汰されてきた結果、
現在存在している人の幸福レベルはほどほどに留まるようになっている。
個々の人の幸せは生まれつきの幸福度調整システムに依存する。
この観点では歴史は重要ではなく、社会的な向上も意味がない。
近年では人間が生化学システムに関与できるようになり、抗うつ剤などで幸福になれる。
・幸福とは単なる快と深いではなく人生全体に価値を見出せるかどうか。
これは宗教と同じくただの自己欺瞞ともみなせる。
結果、幸福の求め方は二つの方法がある
・生化学システムを再構築
・自己欺瞞を強化し満足度を高める
これらはいずれも主観的感情を重視した、自由主義の考え方。
仏教は幸福の問題を重視してきた。
感情は変化するので快い感情を追求したり不快を避けようとするのは無駄で、むしろその渇望が苦しみにつながる。
外部の成果を追うのをやめるだけではなく、自分の感情の追求すらもやめる必要がある。
第20章 超ホモ・サピエンスの時代へ
(マウスとヒトの合成/ネアンデルタール人の復活/バイオニック生命体/別の生命/特異点/
フランケンシュタインの予言)
いくら繁栄しても所詮生物学的な限界を超えられないとされてきたが、近年は3つの方法が出現。
・生物工学
・サイボーグ工学
・人口知能 非有機的生命工学
今日のホモ・サピエンスが抱えている様々な問題はこれらの次世代では消滅する。
とはいえ、その第一世代は設計者である我々の思想が反映するので、歴史について考えることは重要
<あとがき>――(神になった動物)
七万年前、ホモ・サピエンスはただの動物だったが、その後地球を支配した。
境遇は改善し人口も増えたが、個々の幸福は必ずしも増えなかったし、他の動物や環境は大きな被害を受けた。
我々は自分が何を望んでいるかもわからず、無責任で常に不満を持っている。
創造と破壊の力を手に入れたことで神になる寸前だが危険。 -
サピエンスは増えすぎてしまった.そして,力を持ちすぎてしまった.しかし,幾多の犠牲の上に成り立つ現在の生活でさえ,私達に幸せを与えてはくれない.
サブタイトルの「文明の構造と人類の幸福」がまさにこの本の主題となっている.長いけれど興味深く,考えることが多い.
「まんがでわかる〜」を読んでいたけど,本体の方が圧倒的に魅力的.要約では表現しきれない奥深さがある.
人類は小麦の奴隷となったという説はやはり面白い.しかし一方で,種としては繁栄したと思われる家畜達は決して勝者ではないだろう.本文中で度々触れられる家畜の生活は本当に心が痛む.しかし,お肉は美味しい・・・私達はこのジレンマにどうやって向き合うべきか.まずは,日々の食卓に感謝したいと思った.
あとがきの「自分が何を望んでいるかもわからない,不満で無責任な神々ほど危険なものがあるだろうか?」は心に留めておきたい言葉だ.私達は何を望んでいるのか.まずはそこを考えることから始めるべきなのかもしれない.
あとは備忘録で,気になったとこ
・農業革命により私達は満足度の低い暮らしを余儀なくされた.狩猟採集民時代の方が満足度は高かったし,ヒトの体もそれに適している.
・結局,農業革命で得をしたのは小麦だけで,ヒトは小麦の奴隷となった.
・贅沢品は必需品となり,新たな義務を生じさせる.元の生活には戻れなくなる.
・神話という物語によって社会的繋がりが形成された.そこには,ヒトが獲得した言語の力が影響している.
・想像上の秩序から逃れる方法はなく,監獄の壁を打ち壊して自由に向かって脱出しても,より大きな監獄に入っているだけだ.
・アメリカの秩序は自由を尊重するが,故に富裕者と貧困者のヒエラルキーも尊重した.
・認知的不協和は人間の心の欠陥として捉えられることが多いが,必須の長所であり,人類の文化を維持することに役立っている.
・お金は諸悪の根源と言われ,ある意味当たっているが,一方で人類の寛容性の極みでもある.
・ブッタは,渇愛せずに物事をありのままに受け入れることで心の平穏を失うことなく生きられると説いた.
・アダム・スミスが「国富論」で,個人の利益を最大化し,“再投資”することで全体の富が増加すると説く.利己主義は利他主義でもある.裕福であることは道徳的.
・現代で大きな戦争が起こらなくなったのは,戦争の代償が大きくなりすぎたのと,得られる利益が減少したから.核兵器により大きな戦争は集団自殺に等しいものとなった.その意味では,ノーベル平和賞は原子爆弾を設計したロバート・オッペンハイマーに贈られるべき.
・「幸せは身の内より発する」が,「すばらしい新世界」で描かれる薬により幸福感を与える世界は幸せか. -
歴史の話をこんなに興味深く読み進めたのは初めて。
学生時代不勉強だった私には新しい史実がたくさんあった。今まで私の中では「歴史」と「現代社会」の間に繋がりをイメージすることができてなかったが、サピエンスの歴史を知り、全てが今の礎となっていると理解できた。
認知革命によって他の動物、他の人類と一線を画したホモサピエンスは地球上の生態系の頂点に立った。
マンモスの絶滅は気候変動ではない⁉︎
狩猟採集社会の時の方が幸せだった⁉︎
どれも客観的事実に基づいた理論的な説明で思わず納得。
下巻に期待 -
けして力の強くはないサピエンスがらネアンデルタール人を含む他の動物を駆逐し、反映したのはなぜか?それは、虚構を信じることができたことである。虚構を信じることで、サピエンスの集団は同じ方向に向かって協力できたのである。そして、他の動物からするとサピエンスのその能力は、圧倒的な脅威であった。
ふと、現代の我々を振り返れば、身の回りはほとんどのもの虚構であることに気がつく。お金も、会社も、宗教も資本主義も。自然なものと虚構的なものを意識するようにしようと思う。 -
「銃・病原菌・鉄」以降、流行っている"マクロ歴史学"的本の一種。その種の本の中ではもっとも読みやすく、未来への言及が多いのが特徴だと思う。人類(この本の中ではネアンデルタールなど他の類人猿と区別するためにサピエンスと呼んでいる)は、7万年をかけて3つの革命を経て現在に至り、最終革命を経てサピエンスではない新種の生物に変化するのではないかと上下巻をかけて分かりやすく解説している。
最初の革命は、7万年前の認知革命。これによりサピエンスは"虚構"という新しい意思疎通の方法を会得し、これにより血族以上の集団を統合する術を身に着けた。その虚構とは神話であり、宗教であり、直近では民主主義や資本主義である。そして、虚構によるサピエンスの統合の最大の発明品が"貨幣"であると作者は指摘する。(確かにそうだ!)
次の革命は1万年前に起きた農業革命。これにより、食糧事情は安定し、単位あたりの人口密度は増大した。が、代わりに所有と貧富の差が生じ、また労働の長時間化と苦痛化が起きた。
人類が過去に経験した最後の大革命は500年前の科学革命である。科学革命の核心は"無知の知"である。「我々は何も知らない」から始まる知的探求は、革命前のサピエンスの知識に対する認識(神と神に近い指導者は全てを知っており、昔はよかったという懐古主義となる)からはまさにコペルニクス的転換であり、「何も知らないから調べて知る。知るから未来はより発展する」というフィードバックループをサピエンスの中に作り出した。そして、科学の発展には金(投資)がいる。この無知の知→投資→科学的発展(富の増大)というループの強化に繋がったのが帝国主義であり、特にユーラシア大陸をアラブと中華の帝国主義国に牛耳られていて劣勢にたっていた欧州諸王国がこのループに積極的に関与して新大陸やアフリカ大陸を植民地化していったという歴史的事実は「今日の弱者は未来の強者」という観点からみてとても興味深い。
現在、科学革命の担い手は資本主義となり、科学革命と資本主義、あるいはそれに付随する自由主義とによって世界は唯一に統合されつつある。その先にあるのが、生命工学的革命であり、それは不老不死や他の生物との遺伝子的融合、工学化(サイボーグ化)である。この段階に及んでサピエンスは有機的な進化から科学的あるいは無機的進化を伴う生物となり(いわゆるシンギュラリティ)、もはやそれはサピエンスではなく別種の生物となり、10万年に渡り繁栄し、地球を支配したサピエンスはここに終焉するし、その時点ではサピエンスの価値観はいまのものとは全く異なるものとなっているので、いまからそれを悲観したり、警戒したりしてもほとんど意味のない議論だろう、と作者は論じている(と思う)
この本は、まず全体において、人類の歴史を3つの革命と今後起こる最後の革命とに整理して、莫大な事象と理論的解説を経て分かりやすく説明しているのが非常によい。その上で、これらの発展と個々人の幸福との関係性について作者はかなりの字数を割いて論じている(批判している)。要するにこれらの種としての大発展と個々人との幸福は別物であり、ここに我々はこの大発展について立ち止まって考える必要がある、としている点がまたよいと思う。本当にそうだからだ。
といことで、次は"個々人の幸せ"についてマクロ歴史学的視点で書く本がぜひ読んで見たい気がする。まあ、それは非常に主観的問題なので過去のデータは残りずらく、書くのは難しいかもしれないが。。
一連のマクロ歴史学的本の中では、分かりやすく読めるという点で、もっともオススメの本だと思います。 -
人類を頂点に導いたものは、虚構。
共通に神話持つことでしゅうだんは大きくなった。
虚構の最たるものが貨幣。
貨幣は相互信頼があって成立するもの。 -
2023年度【国際学部】入学前知トラ「課題図書」推薦作品
OPAC(附属図書館蔵書検索)リンク
https://opac.lib.hiroshima-cu.ac.jp/opac/volume/353282?locale=ja&target=l -
うわさ話は共同体の異物を排除し社会を守るために為される良い行為。
歴史は人にしかないものである。
認知革命以後と以前で「人」という存在を別の存在として捉える必要性がある。
人間の組織の規模は共通の神話がない限りは150人が限度。
小麦に人が飼われる 現代の会社と社員か?
「歴史の数少ない鉄則の一つに、贅沢品は必需品となり、新たな義務を生じさせる、というものがある。」
現在を犠牲にして未来の自分に投資する
我々は狩猟採集時代のDNAのまま現代を生きている
「人間の脳は特定の種類の情報だけを保存し、処理するように適応してきた。」
↓
大量の情報を処理できる能力は無い→書記体系の発明
自然だと信じさせることによって神話を確立する。
「自然な」という概念はキリスト神教学に由来し、「自然を創造した神の意図に一致した」という意味。
人が(生物が)できることはなんであれ自然なのだ。
想像上のヒエラルキー(学歴、カースト)
p188 虫の翅の発現について 進化に目的はない。
アメリカ合衆国憲法の「人権」に当初黒人は含まれていなかった。
後々黒人も人だという共同主観が生まれたから黒人は人になったのだろうか。
ジーンズは労働階級者の衣料であった。現代の人々は平等を信じているため富裕層もジーンズを履く。
p148〜 想像上の秩序は私達の欲望を形づくる 想像上の秩序は共同主観的である。
現代の潮流はロマン主義的消費主義
欲望もこの主義に基づいており、私達の欲望はプログラムされている。
人類が信じる虚構(道徳、貨幣、人権、株式会社、宗教、学歴、カースト、資格、賞、国等)
p202〜 統一へ向かう世界
騎士道とキリスト教 自由と平等 これらを両立して実行していくことはできないが、この矛盾が文化のスパイスとなる
p178〜 差別
黒人差別をするための理論付けをした。例 今現在で黒人が社会に出て活躍している人が少ないという事実が黒人は白人より劣っているという考えを生んでいる。(実際は貧しいから教育が不足しているだけ。この偏見がより黒人差別を促進する。)
p181の図
偶然の歴史上の出来事(プランテーションではアフリカ由来のマラリア等の伝染病が流行っておりアフリカ人は遺伝的免疫を持っていた)
→白人による黒人の支配
→差別的な法律 ← 悪
↑
→黒人の貧困と、教育の不足← 循
↑
→文化的偏見 ↑ 環
認知革命
1章 唯一生き延びた人類種
2章 虚構が協力を可能にした
3章 狩猟採集民の豊かな暮らし
4章 史上最も危険な種 ホモ・サピエンスは移り住んだ島々のその全てにおいて元々いた大型動物に殺戮の限りを尽くした。人類の手が及ばなかった場所がガラパゴス諸島
農業革命
5章 農耕がもたらした繁栄と悲劇
ホモ・サピエンスの思いつきによって人類は小麦の奴隷となり、労働を始めた。
家畜化された動物の悲劇
6章 神話による社会の拡大
7章 書記体系の発明
8章 想像上のヒエラルキーと差別 セクシズムの起源は不明(家父長制の遺伝子、攻撃性、筋力等の視野から理解を試みているが、どれも解決には至らなかった。)
9章 統一へ向かう世界 エスニック料理はエスニックではない
10章 最強の征服者、貨幣
11章 グローバル化を進める帝国のビジョン
帝国の定義 「帝国は、その由来や統治形態、領土の広さ、人口によってではなく、文化的多様性と変更可能な国境によってもっぱら定義される。」
帝国のサイクルp250
帝国主義の産物を取り除いても純正の文化はとうに失われており、何も残らない。 -
農業革命のパートがとても面白かった。人間の欲深さや集団の成功のためにのために個人が虐げられる問題はこの頃から続いていたことが驚きだった。人間の悪しき部分は農業によって発現してしまったのか、、
また人間は遺伝子でなく信じる虚構の進化によって変化に対応し、急速に進化を遂げたことも今までにない発想だった。 -
人類の何が平凡で、何が特別なのか分かる本。幸福=欲望の追求と思い込んでしまいそうな時に読み直したい一冊。
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本書は最近の人類史の起爆剤になったとも言えますが再読するとやはり面白いですね。
現在の人間に至るプロセスとして認知革命、農耕など、生存確率を高め、ここまでの発展を遂げた歴史を分析することができます。 -
人類史という視点がおもしろい。
日本史も世界史も苦手なので、理解に時間がかかる部分が多かったけれど、それでも読み進めたい気持ちになる。
ホモ・サピエンスとはどういう生き物で、どのように繁栄してきたのか。歴史を学ぶよりも、さらに俯瞰して。全体におもしろかったけど、虚構を信じることで今の社会が成り立っている、ということは忘れないように時々振り返りたい。
一貫してバランス良く、偏らない視点に安心する。 -
人類の起源について、理解したよ
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読むのに集中力が必要。
上巻では人類史における認知、農業、統一をテーマとしており、特に農業は興味深かった。 -
有名な本なのですでに読まれた方も多いかと思います。私も以前から読んでみたかったのですが、なかなか時間が無く、結局年末年始の休みを利用して、という形になってしまいました。
生物学的・文化人類学的な視点から、有史以前のヒトの歴史について紐解かれています。
・7万年前、ホモ・サピエンスは架空の事物を捉え語ることのできる能力を得ることができ、新しい認知を獲得できた(=認知革命)。それとともに、共通の目的を他者と共有することができるようになり、飛躍的に発展した。
・1万2000年前、自然を支配することができるようになった(=農業革命)。その結果、劣悪な環境であったとしても以前よりも多くの人を生かすことができるようになったが、生活の幸福という意味で向上したとは言い難い。
・貨幣といった経済秩序や帝国化によった政治秩序により、人類はよりグローバリゼーション化が進んだ。
記述自体は少し難しめに書かれていますが、全体としてストーリーとしても面白く、筋が通った納得感が得られるものでした。まるで良質なドキュメンタリー番組を見ているような錯覚に陥ります。
下巻もさっそく読んでみたいと思います。 -
認知革命と農業革命の話がとても興味深かった。個人的な人間関係を築くのは150人が限界。宗教や大企業など、たくさんの人間をまとめる為には、それ相応の「虚構」が必要になる。それは「神話」かもしれないし、「企業理念」かもしれない。多くの人の心を擽る物語が、人をまとめる力になる。また、小麦が人々を家畜化したというのも面白い。小麦を育てるために人々は定住化し、所有物が増え、自分の持つ時間が増え、何十年も先の未来を思い描くようになった。狩猟採集時代とは全然違う生活に切り替わる過程がとても面白く、農業革命は史上最大の詐欺であると語られているのもとても納得させられた。
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人類がいかに多様だったか、認知革命などどういう意味で他の生物と異なるか、どういう歴史を繰り返してきたのか。人類史に関して当たり前に思っていたことが正しくないかもしれないということを教えてくれる。
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人文知まとめ
仏教解釈に納得感
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ゴータマは、渇愛することなく現実をあるがままに受け容れられるように心を鍛錬する、一連の瞑想術を開発した。この修行で心を鍛え、「私は何を経験していたいか?」ではなく、「私は今何を経験しているか?」にもっぱら注意を向けさせる。このような心の状態を達成するのは難しいが、不可能ではない。
苦しみは渇愛から生まれるので、苦しみから完全に解放される唯一の道は、渇愛から完全に解放されることで、渇愛から解放される唯一の道は、心を鍛えて現実をあるがままに経験することである、というのがその法則だ。
もし、ある人の心があらゆる渇愛と無縁であれば、どんな神もその人を苦悩に陥れることはできない。逆に、ある人の心にいったん渇愛が生じたら、宇宙の神々が全員揃っても、その人を苦しみから救うことはできない。
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サピエンスの自覚があるなら一読すべき本
読み終わると人生観が変わった気がする -
ホモ・サピエンスが生き残ったのは言語能力のおかげ。
噂話をすることによって誰が信頼できるかの情報を得る
その中でも1番の能力は、全く存在しないものについて情報を伝達する能力。
それによって集団による協力を促す。
交易を行う動物は、実はサピエンス以外にはなく、それは虚構により行われてた
なぜ農業革命はオーストラリアや南アフリカではなく、中東と中国と中央アメリカで勃発したのか。
それはほとんどの動植物種は家畜化や栽培化できないから。
それらが特定の地域に生息していたから。
人類は、大規模な強力ネットワークを維持するのに必要な生物学的本能を欠いているのに、自らをどう組織してそのようなネットワークを形成したのか?
その答えは、人類は想像上の秩序を生み出し、書紀体系を考案することによって。
カースト制の成り立ちは、約3000年前にインド・アーリア人がインド亜大陸に侵入し、地元の人々を征服した時に具体的な形を取ったとされている。 -
学生の頃、世界史が好きだった自分としてはすごく楽しめました。サピエンスがどうやって発達してきたか、集団を作り維持するために作られた虚構が、組織の大きさに比例して壮大な「文化」や「宗教」になっていく。こういう切り口なかったから、新鮮。下巻も楽しみっ!!
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人は小麦のせいで狂った。定住化が始まり、病気が蔓延するようになった。森の中でナッツをかじって移動する生活を続けて入ればこんなことにはならなかった。森の生活に今こそ帰るべき。と、極端なことを思ってしまった作品。