ミドルマーチ4 (光文社古典新訳文庫 Aエ 1-5)

  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334754419

感想・レビュー・書評

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  • いよいよ最終巻。
    3巻はこちら。
    https://booklog.jp/users/junsuido/archives/1/4334754295#comment

    『二つの誘惑』
    ❐リドゲイトとロザモンド夫妻
    1巻からこのカップルはそれぞれの心境が書かれていて、結婚したらうまく行かない感が出まくっていた。リドゲイトが求めていたのは家庭での愛と医師としての仕事の成功だ。医師の仕事も新参者ながら改革を行おうとしたり、かなりの野心家でその野心に伴う実力もある。
    だがロザモンドが求めているのは明確に有り余る資産と高い身分で贅沢な毎日を過ごして周りから尊敬されることだ。医者という仕事もこのころは自慢できる職業ではないので、リドゲイトには身分が高くお金持ちの親族から定期的な援助を受けて暮らすべきだと思っている。
    リドゲイド家はどんどん借金が増えていった。リドゲイトは夫婦協力で節約してゆこうと妻に言うが、ロザモンドにとって節約などしたら近所にバレるし社会的に堕ちたと思われることはあってはならないことだった。
    もともとロザモンドは「つねに笑顔で相手に従わず、はっきり言わないことで相手を意のままに動かす」性質なので(現在でもいますね(^_^;))、夫に先回りして家や家具の売買を断ったり、自分の親やリドゲイトの親族へ援助の依頼の手紙(素晴らしく好感持たれるような手紙)を出す。だがことごとく失敗。リドゲイトは妻のやり方に傷つくが、ロザモンドは「幸せになるために結婚したのにあなたが私の幸せを壊しているんだから、自分を守るのは当然でしょう」という考えで永久に平行線。

    ❐バルストロード氏の葛藤
    4巻はかなりの部分でバルストロード氏と強請屋ラッフルズのことが書かれている。
    バルストロード氏からある程度の金を受け取ったラッフルズだがあっという間に使い果たしてまた戻ってきた。だが今度は酒と不摂生とで譫妄錯乱状態。
    これがサスペンスやミステリー小説ならヤっちまうところであり、読者としてちょっと期待した(笑)
    しかしやはり「ミドルマーチ」は人間と社会描写の文学作品のため、バルストロード氏の心の藤葛藤葛藤が書き上げられてゆく。
    そしてバルストロード氏が少しだけの作為により、ラッフルズは死んだ。

    ❐カーズ氏の良心
    たまたまラッフルズを馬車に乗せたケイレブ・カーズ氏は、バルストロード氏の過去の卑怯な振る舞いを知ってしまいバルストロード氏からの仕事を断る。これまたカーズ氏の”良心”にとっては良心に悖ることをするなら将来と大金を棒に振ってもバルストロード氏との契約を続けることはできなかった。
    <あなたがそういうことをされていないとわかれば、私はそれを信じます。あなたの潔白が明らかになるチャンスがないとまで私は行っていません。口外するかどうかということに関しては、私は人の罪を暴くことは、それ自体が罪だと思っています。P131>
    これはすごいですね。炎上事件の”相手が自殺するまで追い込むぞーーーー”な風潮とは真逆で筋が通っている。

    ❐リドゲイトのさらなる受難の始まり
    譫妄錯乱状態のラッフルズを診察したのはリドゲイトだった。
    リドゲイトにとってバルストロード氏は病院の経営者であり、妻ロザモンドの伯母の夫だ。
    経済的に大変大変困ったリドゲイトはバルストロード氏に金策を依頼する。バルストロード氏は一種の買収のような心持ちでそれに応じる。
    ラッフルズが急死したときは、リドゲイトは自分が誤診したかと動揺する。(本当はバルストロードがちょっとだけ謀した)

    ❐バルストロード氏とリドゲイトの名誉失墜
    ラッフルズ急死によりバルストロード氏は完全に安全になったはずだった。
    だがラッフルズは別の町の酒場でバルストロード氏の過去を喋りまくっていた。それは回り回ってミドルマーチの人々の耳に入る。
    状況は「バルストロード氏は卑劣な振る舞いで大金を手に入れた。それを知るラッフルズが死ぬように仕向けた。リドゲイトは金を受け取りラッフルズの死に手を貸した」というものだった。

    ❐名誉、ゴシップ
    バルストロード氏のゴシップはあっという間に広まる。
    この時代のゴシップって、退屈しのぎのおしゃべりでもあるし、自分たちが同じ価値観を所有していて同じ階級に所属していることの確認であり、誰かが道を外さないかの監視でもある感じ。ゴシップがただの人の不幸の噂話や悪口ではなく、自分の所属する社会が正しく機能するかの監視体制というか。
    ミドルマーチの人々は、バルストロード氏が名誉にもとることをしたなら追放されるべきだと判断する。

    ❐ウィル・ラディスロー再登場
    ドロシアとは別れざるを得なくなったのだが…わりとすぐに戻ってきたな(笑)
    この時点ではラディスローは自分がミドルマーチゴシップの一端を担っているとは知らない。
    今の仕事のためであり、親しかったリドゲイトの家に立ち寄っている。
    ロザモンドはラディスローが自分の魅力に屈するといいのにと思っているし、ドロシアも二人の仲をちょっとだけ気にしているので、ちょっとした三角関係になっている。
    ドロシアって、お硬く融通の効かない机上の論理の人かと思えば、案外普通の恋愛感情や嫉妬もあるのよねー。
    退屈な上級マダムにとって、情熱的な崇拝者が自分を崇めて救ってくれる☆って魅力的な妄想は数々の小説のネタになっいますね(笑)

    ❐ドロシア
    リドゲイトのスキャンダルを聞いたが「あの人を知っています。信じません」
    リドゲイトが病院に留まるならさらなる融資をすると申し出る。
    ドロシアに関しては1巻から「私にはお金が多すぎます」を繰り返していて、社会福祉をしたいという気持ちが大きい。
    更にラディスローが「ユダヤ人質屋の孫で反逆者音楽家ポーランドの息子」と言われてしまっていても、彼が自分を愛していると信じる限りはその想いは揺るがないでいる。

    ❐被害者意識、自己意識
    バルストロード氏は、神の名のもとに自分の強引や整合性の取れない行動を正当化している。
    だからたかり屋ラッフルズが現れたときは「神が私を試している?」彼が死にそうなときは「私は許される」と、周りの要因を自分中心に考える。
    ロザモンドは、自分が絶対正しく、思い通りにならないのは、周りが私をいじめるから。思い通りになるとやっと私が正しいってわかったわね、という感じ。
    リドゲイトはスキャンダルに巻き込まれて、世間全部が自分に悪意を持っていると感じてしまう。
    どれもあるよなーという感覚だなあ。
    なお、フェアブラザー牧師は「自分にとって不愉快だと、それが間違った行為だと考えがちなのではないでしょうか」と言っているがこれも納得だ。
    そして作者は、「非難を受けた人がきっぱりを潔白だと言えないのは、『自分が正しいことを公言したからではなく、自分が公言した通りの人間ではないことを知っているから』だ」という。

    『日没と日の出』
    ❐ドロシアとロザモンド
    スキャンダルに巻き込まれたリドゲイドは、ロザモンドのためにもミドルマーチを去ろうとしている。
    ドロシアはそれでもリドゲイトが残るなら病院にお金は出すし、ロザモンドさんとお話もしましょう、と言っている。
    1巻から出ていたこの二人がついに対面!
    …なんだが、リドゲイト家を訪ねていたラディスローがロザモンドと二人っきりでいるところにドロシアが現れたものだから…。
    …それでも強い意志を持つドロシアは、改めてロザモンドを訪ねて自分はリドゲイトを信じて後押しをすることを伝える。
    ロザモンドにとっては、一番つらいときに自分のために言葉をくれたドロシアへの感謝の気持ちを呼び起こす。
    まさにドロシアが自分の情を超えてリドゲイト夫妻のためにやろうとしたこの行動が、ドロシア、リドゲイト夫妻、ラディスローの将来を良いものに導いた。
    この場面は印象的だ。彼女が自分の感情よりもリドゲイト夫妻の逆境を助けたいという気持ちを重要視したため、彼女を含む人々の未来を良いものにした。

    ❐おっとメロドラマな展開に
    ドロシアとラディスローは互いを愛し合っているということを確信できた。
    カボーソン牧師の遺言のために別れなければいけない。
    だがドロシアはラディスローに財産放棄など構わないと本音を出す。おっとこれは逆プロポーズ?!
    もう4巻後半はほぼメロドラマ(笑)。

    ❐その後
    フィナーレではそれぞれのその後が。
    リドゲイト夫妻は一番の危機を乗り越えロンドンに出る。開業医として大成功だが、リドゲイトは自分を失敗者と思い続けていた。ロザモンドは相変わらずでお金持ちになったんだからやっと夫も過ちを認めたわね☆って感じ。ある意味幸せでありある意味人生の勝者だ(笑)
    メアリ・ガースとフレッド・ヴィンシーは結婚して実に実に幸せに。メアリは人格が素晴らしいフェアブラザー牧師より、自分がいないとダメダメなフレッドと結婚で良かったのだそうだ。そしてフレッドを引き上げたのだから良い女性ですね。
    ドロシアもラディスローと結婚してミドルマーチを離れた。彼女は客観的に考えると「最初は父親ほどの男と結婚、死後1年未満で財産を捨ててまで亡父の従兄弟と結婚。二度目の夫は最初の夫の息子ほどの年齢でユダヤ人泥棒質屋と、反逆者のポーランド人音楽家の血を引いている」となってしまうんだが、実際に彼女に会うとみなその素晴らしさを称えるという性質を持ち続けていた。
    まあ現在感覚からすると、財産捨てたといっても暮らすに困らない土地収入はあるし、将来生まれる息子も土地の所有を約束されてるし、そんなに”財産捨てた”というほどか?!とは思うんだが…。
    そしてラディスローも社会活動の功績が認められて国家議員にまでなった。ドロシアの「志の高い人物を支えて自分も成長したい」は叶ったというわけだ。
    この3組の男女は、社会的地位に差があるフレッドとメアリ、ドロシアとラディスローが非常に非常にうまく行き、社会的は釣り合いの取れているリドゲイトとロザモンドは価値観がすれ違いまくりというのも作者の意図なんだろうか。


    ❐この世をよくする人とは
    終盤が素敵だった。
    <世の中がだんだんよくなっているのは、一部には歴史に残らない行為によるものだからである。
    そして私達にとって物事が思ったほど悪くないのは、人知れず誠実に生き、誰も訪れることのない墓に眠る数多くの人々のおかげでもあるからだ。P430>

    全4巻の人間模様。スキャンダルもあったけれど結局はメロドラマ(笑)。
    読んでいる私とは国も時代も人種も違うのだけれど、人は変らないなあと思った。
    どの登場人物も、その心の動き方は現在にもいるいるいるいるという感じ。
    また人々の様子も、もともとの権威者とやる気のある野心家若者の対立、スキャンダルが広まる様子、自分が苦しいときに都合の良いように考えてしまう心、どれもあるあるあるあるですね。
    どうしても遺産相続や政治のことはよくわからない部分もあるのですが、規模は違えども人って本当に変らないんだなあって思いました。

  • 感動のフィナーレをむかえる完結編。濃密な群像劇のなかでジョージ・エリオットが私たちに伝えたものとは何か。

    第7部冒頭からリドゲイトの窮状。金銭のトラブルから発生する夫婦喧嘩の描写がリアル。妻に折れざるをえなくなっていく夫の心境の変化が生々しい。

    いっぽうフレッドくんたちの三角関係に進展が。誘惑を振り切って紳士の生きざまを貫く牧師の、自らの弱さも強さもすべて打ち明ける潔さ、そしてそこからの恋愛関係の決着に心を打たれた。

    お金の相談をしたリドゲイトを冷たくあしらったバルストロードに、ラッフルズが火種を持ち込む。ミドルマーチの良心、ケイレブ・ガースが潔癖な対応をするなか、バルストロードの心に誘惑の魔が忍び寄る。彼の心の葛藤は、「罪と罰」を彷彿とさせる奥深さがあり、ミステリー小説ばりのサスペンスにも引き込まれる。この後の、燎原の火のように噂が広がっていく様子が印象的で、スキャンダルが個人に与える打撃の恐ろしさは、当時も今も変わらないと感じさせた。バルストロードの心変わりでホッとしたのもつかの間、さらなる窮地に陥るリドゲイト。彼らはどうなってしまうのか……!というところで怒涛の第7部終了、クライマックスの8部へ突入する。

    第8部にきてドロシアが、少年マンガ終盤の主人公のような感化力を発揮し、正論と情熱で周りを変えていく。いっぽう真実を知ったバルストロード夫人の心理描写が感動的で、人間の心の中で起こっていることをかくも詳細に書けるものかと驚く(この作品全般そうだが)。そして74章のバルストロード夫妻の姿は泣けるとしか言いようがない。こんなに味わい深い小説はまたとない。

    八方塞がりのリドゲイトにドロシアの信頼が救いをもたらす一方、ウィルにロマンスを求めるロザモンドが打ちのめされ、4人の感情は四角関係のようにこじれるかに思われたが、ドロシアの気高い決意が絡まった糸をほどいていく。

    日常よりもロマンスを求めてしまうという、ロザモンドが結婚というもの自体に抱く不満は、現代においても変わらぬリアリティがある。彼女が結婚というものの現実を受け入れるきっかけとなる、ドロシアとの会話シーンは本書の名シーンのひとつで、これも涙なしでは読めない。ついには諦観に至るリドゲイトの結婚に対する想いも、必ずしもネガティブなものだけではない終わり方が心にしみる。

    意外と出番の少ないウィルは、終盤に大きな花火をあげていく。
    真実の愛を感じさせる彼の精神力は、恋愛小説としての本作の魅力を引き立てる。

    坊っちゃんくささの抜けないフレッドだが、だからこそメアリの力強さと二人の絆の深さが映え、彼もまた成長をみせることで物語のテーマの一つを体現していくことになる。

    ほとんどの主要な登場人物と深い関わりを持つバルストロードの存在は、主人公とはいえないものの、具体的な事件や小説そのもののテーマも含めて、構造的に核となっている気がする。彼を軸とした人間関係の複雑なドラマが、ミドルマーチという物語世界を重層的なものにしていると思う。

    フィナーレは圧巻。長編ドラマシリーズとか、大河ドラマを見終わったかのような、圧倒的な読後感にひたる。

    本書から得られるものはたくさんあり、すべては書き切れそうにないが、テーマ的な結論としてラストの文章について考えてみたい。夢や希望を描いて若き日を出発した私たちは、現実とどう向き合って生きていくべきなのか。本小説には一つの答えが示されているように思う。偉大な英雄的人物にはなれなくても、名を成さない数多くの人々の誠実な人生に世の中は支えられている。それはきっと悪くないものなのだ。

    どこか似ているのでアンナ・カレーニナと対比して読んでいたが、巻末の読書ガイドでもこの点について言及していた。トルストイはこの作品に影響を受けた節があり、8部構成というところも似ている。

    かつてないほど興奮し、夢中になった本作。あまりに要素が多すぎて、まとまりのない感想になってしまった。「なりたかった自分になるのに、遅すぎるということはない」という名言を残したジョージ・エリオットの世界は、まだまだ探索する余地がありそうだ。

  • 最後の文章に感動を禁じ得ない。
    「世の中がだんだん良くなっていくのは、一部には、歴史に残らない行為によるものだからである。そして、私たちにとって物事が思ったほど悪くないのは、人知れず誠実に生き、誰も訪れるこのない墓に眠る、数多くの人びとのおかげでもあるからだ」

    中産階級の女性に光を当てた本作の独創性はいくら強調してもし過ぎることはない。

    心根がよいところに、最後は派手ではないが、一つの幸福が訪れることを伝えてくれる。傑作だ。

  • 心理描写等ジェイン・オースティンから多くの影響を受けているところもあるだろうが,それよりもさらに地域社会の観察に特化した書と言える。人々の変化はそれなりに大きかったが地域としての変化は少ない,と感じたことは覚えておく。訳者については,解説にある「〈分別〉と〈多感〉」という視点が興味深い。

  • 最高だった。カソーボン氏が死ぬ際、「ドロシアとラディスローが再婚した場合、財産を残さない」と遺言を残したのは、ラディスローがドロシアにふさわしい人間になろうと自分を磨くためにドロシアのもとを離れるのが、カソーボン氏の財産なしで自分の能力だけでドロシアを養うための準備になっていると考えると、伏線だったのかなぁと思う。

    「それがあなたにとって新たな苦労なのでしたら、私があなたから離れられない理由がまた一つ増えることになります」

    このフレーズを見たときにグッときました。エリオットってこんな恋愛物語書くのかと感動しました。

  • ついに完結感無量。
    類まれなる心理描写、些細な事実の積み重ね、善意と好奇心がもたらす予期せぬ出来事などミドルマーチは4巻になってざわめく。でも落ち着くところに落ち着いたのでは。フィナーレでホッとしました。

    「私たちにとって物事が思ったほど悪くないのは、人知れず誠実に生き、誰も訪れることのない墓に眠る、数多くの人々のおかげでもあるからだ。」

  •  銀行家バルストロードの前に、彼の過去の秘密を知る無頼漢ラッフルズが現れ、前巻では、バルストロードの回想の形で読者にもその秘密が明らかにされ、登場人物ウィル・ラディスローとの関わりも明らかになった。  

     ラッフルズに金をせびられ、気が気ではないバルストロードであったが、ラディスローが突然倒れ、彼の元に運び込まれたことから、医師リドゲイトに治療を頼むことに。看護を任されたバルストロードだったが、適正を欠いた看護もあり、ラッフルズは亡くなってしまった。
     また、診療を依頼されたリドゲイトだったが、一旦はバルストロードに断られた借金を受けてもらえることになり、当面生活が立ち行くことになった。
     秘密が守られたかと思いきや、生前のラッフルズの自慢語りが次から次へと噂となって伝わり、遂にバルストロードはミドルマーチにおける地位を追われてしまう。また、リドゲイトがバルストロードから受け取った金は賄賂だったのではないかと疑われてしまう。 
     ここまでが第7部。

     町の噂に押しひしがれるリドゲイトに対して、ドロシアは支援の手を差し伸べようと彼と話をする。自分のことを信じてくれる人がいることを知ったリドゲイト。そしてドロシアはリドゲイトの妻ロザモンドを訪ねたところ、そこにはウィルがいた。再び出会った二人。
     そこから二人は。

     フィナーレとして、登場人物それぞれの人生が簡潔に紹介される。こうして、全8部の大長編小説は幕を閉じる。 
     リドゲイトとロザモンドの夫婦関係、バルストロードの自分本位の信仰心などは作者の筆の冴えが感じられた。それに比べると、ドロシアとウィルの繋がりがもう一つ納得できなかったのが、全体を通しての感想。


     主要登場人物のほか、脇筋的人物も魅力的だし、人物の心理や人間関係の機微がたっぷりと描かれている。また、当時のイギリス社会の状況、例えば政治や新聞、医学などについても、ストーリー展開の中でうまく取り上げられている。
     非常に読み応えがあって、小説読みの醍醐味を堪能できた。

     
     
     

  • ようやく読了。よくこんな複雑な人間模様が書けるものだと舌を巻く。頭どうなってんだ。ドロシアが貧乏に負けず?どんな生活を送ったか知りたかった。ロザモンドっょぃ…

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著者プロフィール

George Eliot(Mari Anne Evans)1819-1880.
筆名は男性、本名メアリ・アン・エヴァンズという女性。英国小説史における、もっとも傑出した知性、リアリズムの作家と評されている。
彩流社からの邦訳・関連書に『急進主義者 フィーリクス・ホルト』(冨田成子 訳、ジョージ・エリオット全集 6、2011年)、『スペインのジプシー 他2編 とばりの彼方、ジェイコブ兄貴』(前田淑江、早瀬和栄、大野直美 訳, 玉井暲、廣野由美子 解説、ジョージ・エリオット全集 9、2014年)、『牧師たちの物語』(小野ゆき子、池園宏、石井昌子 訳、惣谷美智子 解説,、 ジョージ・エリオット全集 1、2014年)、『ロモラ』(原公章 訳、ジョージ・エリオット全集 5、2014年)、『詩集』(大田美和、大竹麻衣子、谷田恵司、阿部美恵、会田瑞枝、永井容子 訳 ジョージ・エリオット全集 10、2014年)、『サイラス・マーナー [付]ジューバルの伝説』(奥村真紀 訳、清水伊津代 訳・解説、内田能嗣 解説、ジョージ・エリオット全集 4、2019年)、『ダニエル・デロンダ(上・下)』(藤田 繁 訳、ジョージ・エリオット全集 8、2021年)、『テオフラストス・サッチの印象』(薗田美和子、今泉瑞枝 訳、2012年)、『ジョージ・エリオット 評論と書評』(川本静子、原 公章 訳、2010年)、『エドワード・ネヴィル  G・エリオットの少女期作品とその時代背景』(マリアン・エヴァンズ 著、樋口陽子、樋口恒晴 編訳、2011年)、『ジョージ・エリオット 時代のなかの作家たち 5』(ティム・ドリン 著、廣野由美子 訳、2013年)ほかがある。



「2022年 『フロス河畔の水車場』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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