さようなら、オレンジ (単行本)

著者 :
  • 筑摩書房
3.58
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本棚登録 : 1743
感想 : 317
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480804488

感想・レビュー・書評

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  • 2014.5/15 戦火に追われ母国ではない地で生きるしかない主人公の姿は、日々精神的な異邦人感とでも呼べばいいのか、そんなものを感じている自分と重なり、のめり込むように読まされた。

  • 岩城さんの作品、おもしろい。もっと読みたい。

  • 最初、背景がよくわからず、半分くらいまでは読むのに苦労したけど、後半は一人一人のキャラクターも、彼女たちの力強さも加わってよかった。
    タイトルと本の厚さからは想像できない内容ですが、なかなか良い本でした。

    2017.12.24

  • 難民サリマの悲喜、厭世、矜持、希望を織り交ぜて、彼女が心理的葛藤の中で自分を見出し、成長していく姿を著す。新たな環境に放たれて、女性として自活することの困惑が自信へと変じていく様が心に響く。対して、サユリの手紙は何なんだろう。家庭生活の愚痴、夫への半端なわだかまり、そんなのを長々と記した手紙を頻繁に読ませられるジョーンズ先生は、真にお気の毒である。自己研鑽するに決して不幸な立場とは思えません。単純にサリマの物語で良かった。

  • 2017.10.31

  • 太宰治文学賞受賞作。
    オーストラリに移住してきた難民のサリマと、サリマも通う語学学校の生徒たちの物語。
    言語という壁の屈強さがすごい。縁もゆかりも無い土地にやってきて、その国の言葉が話せない、分からないというのは途方も無く孤独なことだと改めて思う。
    そして話すことと、読み書きもまた違う。
    結局は言葉なのだから、誰だってできるようになるっていうのは確かにその通りなんだけど、それがいかに大きな壁かということなんですよね。
    そしてこの本では同時に母親としての強さも描かれていました。
    異国で神経を尖らせながら子育てすることってどれだけの苦労があるんだろう。
    赤ちゃんを亡くしてしまった日本人女性(ハリネズミ)が先生に宛てた手紙で述べた「深い悲しみのあとには、生きることへの強い願望と希望がその人の心のなかに必ず訪れる」という言葉には胸を打たれました。
    深い悲しみを知っている人は強くなる。太陽が昇る限り生かされ、必ずまた立ち向かえる。
    私も英語勉強しなきゃな…。

  • 形式が面白かった。同じく在外の身で、色々と自分自身と重ねられるところもあった。今住んでいるカナダはシリアなどからの移民を多く受け入れているし、アジアの移民も多い。一人一人の物語を伝えてあげたい気持ちになる。

  • アフリカから紛争を逃れてオーストラリアに移住したサリマ。夫に逃げられ子どもを抱え仕事を始める。落ち着きを取り戻した頃、英語教室に通う内、日本から来たさゆりと親しくなっていく。絶望の淵にたつことになるさゆり、息子を手放さなければならなくなるサリマ。2人の交流がたくましく、静かに流れていく。途中までどういう風に読んだらいいのか分かんなくて、戸惑った。さゆりの書簡など、少しずつ背景が分かっていく。女性はいつもたくましい、と思わずにいられない作品。

  • あらすじ
    オーストラリアの田舎町に流れてきたアフリカ難民サリマは、夫に逃げられ、精肉作業場で働きつつ二人の子どもを育てている。
    母語の読み書きすらままならない彼女は、職業訓練学校で英語を学びはじめる。
    そこには、自分の夢をなかばあきらめ夫について渡豪した日本人女性「ハリネズミ」との出会いが待っていた。


    祖国と移住先の違いにとまどいながらも、淡々とできることをできうる限りこなしていく、自分というものをしっかり持った難民がオーストラリアの住民であると自覚するまでの話。

    「○○を××で買う」のに夢中な同僚に違和感を抱き、「何か違う」と感じるサリマに共感する。自分も「○○を××で買う」に嫌気をさしながら、「○○を××で買う」に流されているのを感じているから、考えさせられた。

  • 本屋さん大賞第4位、太宰治賞受賞。それだけの知識しかなかった。読みやすい系の純文学なんだろうなと、それだけで手に取る。

    パーカーの「愛と名誉のために」系の、底まで堕ちた人間が「これじゃいかん」と這い上がっていく成長小説が大好きである。やり直しが効くということは、俺にとって一番夢を与えてくれる希望である。

    この作品には、アフリカで底を見てきた女性と、英文学を志し挫折した女性を軸に話が進む。ステージこそ全く違うが、二人とも這い上がるために自分の手と足と頭脳を使って苦闘する。働くこと、英語を習得すること、家族や家庭のこと…それらに正面から対峙する二人の姿が俺に希望を与えてくれる。

    後半、ご都合主義とも安易に流れるとも思えるくらいのスピードで物語が好転していく。
    ちょっと粗いな、とも思ったが、現実だって何かをきっかけにとんとん拍子に事態が好転していくことがある。そういう時の幸福感を疑似体験させてくれているのではないかと思い直した。贔屓目かも知れんがそれくらい物語に肩入れできたということ。

    予備知識なく手に取った作品だが、読んで良かった。

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著者プロフィール

大阪生まれ。2013年『さようなら、オレンジ』で第29回太宰治賞を受賞し、デビュー。同作で第150回芥川賞候補・第8回大江健三郎賞受賞・2014年本屋大賞4位。2015年刊行の『Masato』(集英社文庫)で第32回坪田譲治文学賞受賞。他、『ジャパン・トリップ』(角川文庫)、『Matt』(集英社)、『サンクチュアリ』(筑摩書房)の著作がある。

「2022年 『サウンド・ポスト』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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