さようなら、オレンジ (単行本)

著者 :
  • 筑摩書房
3.58
  • (135)
  • (255)
  • (245)
  • (67)
  • (20)
本棚登録 : 1743
感想 : 317
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480804488

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • サリマ、ハリネズミさんも、人生を大切に生きていると思いますを

  • 感想
    アイデンティティを凝縮した言語。手放すことがあまりにも容易な現代社会。それでもあえて固執する。ずっと消えない灯火を灯し続ける。

  • 生まれたばかりの女の子の母親であり、大学で働く夫を持ち、、自らも高等教育を受けてオーストラリアに暮らす日本人女性。アフリカで戦争に巻き込まれ命からがら逃げ出し、難民としてオーストラリアに移住。夫は蒸発し二人の子を男の子を育てる黒人女性。同じ英会話教室に通う全く異質な二人の女性が主人公の話です。
    それぞれの生き様を描きながら、合間に書簡体を挟み込み、重層的に話が進みます。本音の話、最初は話の筋が見えずかなり苦戦したのですが、途中からはグイグイ引き込まれます。これが岩城さんのデビュー作のはずですが、そんなことを全く感じさせない見事な構成力です。わずか170頁。余白も大きな本ですが、充実度が高く、重たい長編小説を読んだような気がします。
    岩城さんは長くオーストラリアで生活されている作家さんで、先日読んだ『サウンド・ポスト』でもこの作品でも、母語(日本語)と第二言語(英語)の葛藤が大きなテーマなのですが、どうも岩城さんの文体は、翻訳書を、あるいは英語で考え日本語で書た文章の様な感じがします。それも味なのでしょうが、私はちょっと苦手です。
    全体を覆うどこか重苦しい雰囲気は岩城さんの持ち味なのでしょうね。それでも二人の女性がしっかりと前を向いて進んでいくエンディングは心地良く。

  • それでもイタンジたちは強く生きていく。

    アフリカから難民として渡ってきたサリマ。夫と共に日本から渡ってきたサユリ。2人の女性を軸として、オーストラリアの田舎町で生きていこうとする異邦人の生き様を描いた小説。

    第二言語という異国で生活するための言葉を獲得したサリマだが、彼女の底にある強さは今までの人生と息子への思いにあった。決して奪われないものがある。それは自分の人生を肯定するための尊厳。日が沈んでまた新しい日が来るたびに、新しい自分へと生まれ変わり、階段を登っていくのだという前向きな強さ。

    サリマからハリネズミと呼ばれるサユリは、幼い娘を事故で亡くす。大学で学び、書くことを手放そうとした彼女に、サリマは「違う」と伝え続ける。結局彼女は書き続けることを選んだ。様々な事情に振り回される彼女も奪われないものを見つけた。それが母語で書くことだった。

    言語は思考を形作る。コミュニケーションの手段となる。マイノリティつまり「イタンジ」である登場人物たちが、自分の中にある奪われないエネルギーを見つけ、立ち上がっていく姿は美しい。まるで鮮やかなオレンジの夕陽のように感じた。

  • 外国に限らず、慣れない土地で暮らす苦労や地元の人から滲み出る「よそ者」としての扱いが滲み出していました。

    どんよりしていて、無気力な雰囲気で途中で読むのをやめようかと思いましたが
    後半は光が差し込むような感じでじんわりと温かい気持ちになりました。

  • 岡野幸夫先生 おすすめ
    59【専門】913.6-I

    ★ブックリストのコメント
    難民のサリマが、移民先で言葉の壁に苦闘しながら自分の居場所を見つけていく感動の物語。作中のスピーチ(?)が胸を打つ。異文化交流の実践を小説で疑似体験してみよう。

  • 海外で暮らしたことがある人にはしみるのだろうな。
    移民の受け入れとか外国人との共生とか言われるようになってきたタイミングで読めてよかった。
    二つ目の言語は二つ目の人生を送るチャンスというフレーズにぐっと来た。そうだよなあ。移民でなくても同じ。もっと言えば、言語に限らず新しいことを始めるのは新しい人生をはじめるチャンス。

  • 傑作だと思う。
    異国で暮らした者には染みいる。

  • 途中でよむのをやめた。

  • 母国以外の国で暮らすためにその言語を覚えることは絶対条件。これに人種の差別が絡むとどれだけ生きにくいことか。決してフィクションではなくきっとどこにでも同じような人達がいて戦っています。どんな状況でも子供を守るためだったら女は何でもします。どれだけ打たれても悲しいことがあっても強くなければならない。近い現実を知っていると簡単に共感したり感動したりできるものではなかったけれど、ちゃんと前向きに歩ける彼女たちと理解してくれる人達にほっとしました。この物語にオレンジを持ってきたのが印象的ですごく上手いと思います。

全317件中 71 - 80件を表示

著者プロフィール

大阪生まれ。2013年『さようなら、オレンジ』で第29回太宰治賞を受賞し、デビュー。同作で第150回芥川賞候補・第8回大江健三郎賞受賞・2014年本屋大賞4位。2015年刊行の『Masato』(集英社文庫)で第32回坪田譲治文学賞受賞。他、『ジャパン・トリップ』(角川文庫)、『Matt』(集英社)、『サンクチュアリ』(筑摩書房)の著作がある。

「2022年 『サウンド・ポスト』 で使われていた紹介文から引用しています。」

岩城けいの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×