巨象も踊る

  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (462ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532310233

感想・レビュー・書評

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  • インターネットやダウンサイジングの影響を受け、瀕死の状態
    だったIBMを救うべく、93年に就任したCEOが、如何にV字回復
    をなし得たかを綴ったもの。

    メインフレームの成功により、大企業病・官僚主義が蔓延った
    IBMに、全く異分野の企業(ナビスコ)から転職したガースナー
    が、財務状況を立て直し、戦略を明確にし、組織文化を変え、
    変革を実践浸透させることで、見事なターンオーバーを果たした
    経緯が克明に記されています。


    ここに紹介されている「古い企業体質」は、他人事とは思えませ
    ん。ガースナーが行った変革の過程に、現状を打破するヒントを
    探す事ができるはず。
    この本から、私達が得る学びは、とても多いです。

    以下、93年にガースナーが全世界の全社員に自らメールで送信
    した、新しいIBMの企業文化の基礎となる原則です。

    1)市場こそが、すべての行動の背景にある原動力である。
    2)当社のその確信部分で、品質を何よりも重視するテクノロジー
     企業である。
    3)成功度を測る基本的な指標は、顧客満足度と株主価値である。
    4)起業家的な組織として運営し、官僚主義を最小限に抑え、
     つねに生産性に焦点を合わせる。
    5)戦略的なビジョンを見失ってはならない
    6)緊急性の感覚をもって考え行動する
    7)優秀で熱心な人材がチームとして協力し合う場合にすべてが
     実現する。
    8)当社はすべての社員の必要とするものと、事業を展開する
     すべての地域社会に敏感である。

    そして、こんな表現もありました。
    事業環境が変化する中で、改善しなければいけない事は山積み、
    リスクも大きい、でも、従来のゲームが変わって新しいリーダー
    の座を争える可能性があることを指摘したうえで、以下の言葉。

    「我々は自分達の運命を自分たちの手に握ろうと考えた。
     みずから打って出ようとしていた。」

    とても参考になりますね。お勧めの本です。

  • 目次

    まえがき

    序章

    第1部 掌握
     第1章 誘い
     第2章 発表
     第3章 消火栓から水を飲む
     第4章 現場へ
     第5章 強く抱きしめる作戦
     第6章 止血する、そしてビジョンは封印する
     第7章 経営チームを作る
     第8章 世界的企業を作る
     第9章 ブランドを再生する
     第10章 報酬哲学を見直す
     第11章 ふたたび海岸で

    第2部 戦略
     第12章 IBM小史
     第13章 大きな賭
     第14章 サービス――統合のカギ
     第15章 世界最大のソフトウェア事業を再構築する
     第16章 店を開く
     第17章 スタックを分解して、事業の的を絞る
     第18章 eビジネスの台頭
     第19章 戦略についての回顧

    第3部 企業文化
     第20章 企業文化
     第21章 裏返しの世界
     第22章 原則による指導

    第4部 教訓
     第23章 絞り込み――自分のビジネスを知り、愛しているか
     第24章 実行――戦略には限界がある
     第25章 顔が見える指導
     第26章 巨象は踊れないとはだれにも言わせない

    第5部 個人的な意見
     第27章 情報技術産業
     第28章 制度
     第29章 動きを見守る人たち
     第30章 企業と社会
     第31章 IBMよさらば

    付録

  • 「いま現在のIBMにもっとも必要ないもの、それがビジョンだということだ。」「たった今IBMに求められているのは、各事業についての冷徹で、市場動向に基づく実効性の高い戦略だ。」大企業の経営セオリー(当たり前)を疑い、危機に瀕するIBMの立て直しの優先順位として、収益性の回復>ビジョンの再構築としたガースナーのバランス感覚がわかる回顧録です。

  • 文章の構成がものすごく整っていて、非常に読みやすい。
    大企業の経営者となった筆者が、どのように考え、どんな取り組みを経て危機を乗り越えたか、またIBMという会社と社員にどれほどの愛情を注いだか、が伝わってくる。
    時間を置いて再度読み返したい一冊。

  • 倒れかけてたIBMの経営を見事に立て直した、ガースナーのIBM時代の取り組みについて書かれている。かなりのパッションをもって、いらないものを削り、必要なものに投資していた姿勢が感じられ、読んでる方が興奮する。

    大きな企業ならではの問題が多いのかもしれないが、おそらく企業経営をするとこに気をつけるべきことのエッセンスが所々に散りばめられてるかんじ。

    こういう風に仕事してみたいもんだ。

  • 「eビジネス」の名を今も全く耳にしたことがないんだけど、どうなるんだろう。これからよく聞くようになるのかしら。

  • Who Says Elephants Can’t Dance? 巨象も踊る

    BOOK OFFに行った際100円で売っていたため、手に取ってみた。どん底に落ち込んでいたIBMを救った経営者として、ルイス・ガースナーの名前は著名だが、今回実態を知る良いきっかけになった。

    執筆にあたって要望が多かったと本文にも有るように、全文を通して、著者がIBMで行ったことを書き上げているため、本書から積極的に視座を提供するというよりは、ある種のビジネス物語となっている。

    尚、どうやら著者は執筆経験がないらしく、今回が最初(で最後と言っている)の著書となっているようだ。確かに全体的に書き慣れている感じはせず、物語ともビジネス書とも言えない。

    彼が行った決断としてはいくつもあったが、大きなものから小さなものまで大企業に典型的(と思われる)な問題に対処している。戦略的に大きなものは、数々の事業の中から何を存続させ、何を切り放すかという『選択と集中』の問題(因みに著者は、IBMを存続させるためには事業を切り売りし解体するしかないという外部の見方を否定し、全体として存続する方を選んでいる)。小さなものとしては、形式的な経営会議を取りやめたり、専用機でのアルコールを許可したりと、従来の不合理と思われる組織の改革を断行している。

    本書で最も印象的な部分として、実行することが何より難しく且つ重要であるということ、CEO一人で改革を断行できるわけでは当然なく、CEOを支える経営幹部と、それについていく社員が大切であるということがあげられる。さて、おそらく今の日本の大企業に当てはまる部分も相当あると考えられるため、参考となりそうな部分を下記に列挙してみる。

    ・今のIBMにとって最も必要ないものは『ビジョン』である。IBMの再建は全て『実行』に係っている
    ・結局のところ、現在成功している企業も基本的に同じ武器で戦っていることが多い。したがって、実行こそが成功に導く戦略で決定的な部分である。競争相手よりうまくやり遂げることが、将来の新しいビジョンを夢想するよりはるかに重要である
    ・実行面で秀でるためには、『世界クラスのプロセス』『戦略の明確さ』『好業績を育む企業文化』の三つの要因が必要である
    ・今後、ネットワークが氾濫する方向に向かう。そうなれば当社のネットワーク事業の価値が今以上に上がることは無い。そう呼んだ我々は、入札で高値を付けた企業に売却した
    ・要するにIBMが成功するのに必要な資産はそろっていた。ただ、ハードウェアや技術、ソフトウェアやサービスのどれをとっても、その能力は市場の現実から大きく遅れたビジネスモデルとなっていた
    ・IBMは、メインフレームによる一人勝ちの恩恵にいつまでも浸かっていた。そのため、『ぬるま湯』という企業文化が定着してしまっていた
    ・大企業は、完全な権限分散の戦略をとることは不可能に近いため、経営者は何が特殊で、何が共通なのかを判断する必要がある

    →各部門が共通する活動は、①企業規模が活かせる部分(データ処理、通信網、購買、人事制度、不動産管理等)、②市場と顧客に密接に接する部分(共通の顧客DB、受注処理システム、顧客関係管理システム等)、③行き過ぎた(完全なる)統合(つまり、理想郷を目指しすぎてもいけない)

    →③の水準まで行くということは、社運を賭けるということに等しく、通常は①や②の水準で十分と考えられる(②の水準は市場に接している部分であるため、卓越した実行力が必要になる)

  • すばらしい。

  • 90年後半に巨額の赤字に苦しんでいたIBMを再生させた経営者のルイス・ガートナーの自伝.

    60年代以降,基礎研究所を核として半導体,ストレージ,メインフレームとほぼ全ての情報技術を自社で賄うことで巨額の利益を稼いでいたIBM.
    しかし,90年に入ると社内競争が絶えず,OSをマイクロソフトに,マイクロプロセッサについてもintelに寡占を許すまでの状況に陥った中,挽回しようと巨額の投資を行うIBMに対して選択と集中,企業文化の再生とハードとソフト両面の改革を行ったガートナー.

    内容は自伝となると自己賛美が多いかと思ったらそうではなく,あくまでもIBMに視点を置いた内容で企業再生の考え方,実践した方法が記載されていて下手な経営本よりも遥かに勉強になる.

    内容がとても面白く,体系的なのでこれはずっと家に置いておきたい本だと感じた.

  •  読んで良かった。私たちの商売敵ではあるが、学ぶことは多くあると思う。
     幹部陣は、もっとしっかりして欲しい。とは思う。だが、我が社の社風は、
     大好きではある。そこがブレ無ければ、私たちは大丈夫。所感そんな気がした。

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