怪物はささやく

  • あすなろ書房
4.02
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感想 : 200
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784751522226

作品紹介・あらすじ

ある夜、怪物が少年とその母親の住む家に現われた―それはイチイの木の姿をしていた。
「わたしが三つの物語を語り終えたら、今度はおまえが四つめの物語をわたしに話すのだ。
おまえはかならず話す…そのためにこのわたしを呼んだのだから」

嘘と真実を同時に信じた少年は、なぜ怪物に物語を話さなければならなかったのか・・・

感想・レビュー・書評

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  • 「怪物は真夜中過ぎにやってきた。墓地の真ん中にそびえるイチイの大木の怪物がコナーの部屋の窓からのぞきこんでいた。おまえに三つの物語を話して聞かせる。わたしが語り終えたら、おまえが四つめの物語を話すのだ。闘病中の母の病気が再発、学校では母の病気のせいでいじめにあい、孤立……。そんなコナーに怪物は何をもたらすのか。夭折した天才のアイデアを、カーネギー賞受賞の若き作家が完成させた、心締めつけるような物語。」

    「主人公は13歳。コナーの前に現れたおそろしい怪物の正体を知る時、誰もがきっと、こころを激しく揺さぶられるはず。物語に救われる、ということばの、ほんとうの意味が分かる。物語のもつ力についての物語。」(『10代のためのYAブックガイド150!2』の紹介文より抜粋)

  • 「物語とは油断のならない生き物だ。物語を野に放してみろ。どこでどんなふうに暴れ回るか、わかったものではない」

    重病の母と二人で暮らす少年コナーの前にイチイの木をした怪物が現れて「三つの物語を聞かせたあとに、コナーが四つめの物語を話す」よう要求する

    そして語られる物語、コナーの生活や真実の第四の物語は、とても深くて、示唆に富んでいて、読み手によって様々な受け取り方ができる物語だと思いますが、自分は物語の持つ力について考えてみました

    「物語」は非常にやっかいな生き物で、様々なちからを持っていると思います
    「物語」は喜びや、悲しみや、怖れや、学びや、それはもう様々なものを与えてくれます
    いいことも悪いことも
    しかも、同じ「物語」でも読む人によって全く正反対の感情を呼び起こすこともあります
    それどころか、同じ「物語」を同じ人が読んでも、読むタイミングや何回読んだかによって受け取るものが変わってきたりします

    それって「人」と同じだと思いませんか?

    相手によって全く評価が違う
    会うタイミングで感情が変わる
    好きと嫌いが混在する

    「物語」とは「人」であり
    「人」とは「物語」なのではないでしょうか

    自分はそんなことをこの物語から感じました

    • 土瓶さん
      もう「まんじゅうこわい」みたくなってるんでは。
      もう「まんじゅうこわい」みたくなってるんでは。
      2023/06/06
    • みんみんさん
      稲川淳二で特訓だな( ̄(工) ̄)
      稲川淳二で特訓だな( ̄(工) ̄)
      2023/06/06
    • ひまわりめろんさん
      2億円恐い
      2億円恐い
      2023/06/06
  • ある種「救済」の物語。
    不気味な序盤、お決まり?のいじめっこ、合間にはさまるヒリヒリとした瞬間、避けられない運命、ファンタジー世界を行き交いながらも足元は1人の少年の心象と残酷な現実に根付いている。

    余談だけれど、手元にあるのは近くの中学校の除籍本。
    とにかく多感で、理想と現実の軋轢に苦しんで、もしかしたら主人公の少年と同じ境遇に見舞われるかもしれない中学生には良い読書になったのではないかなぁ、と思ったり。

  • 挿絵がとてもたくさんだったが、それが気になるでもなく、不思議としっくりきていた。

    物語という形で、人間の本質、現実を容赦なく伝えてきた怪物。

    「人生とは、言葉でつづるものではない。行動でつづるものだ。何をどう考えるかは重要ではないのだよ。大切なのは、どう行動するかだ。」

    どれほど自分勝手に残酷なことを願おうとも、例えば殺したいほど憎いと思っても、死んでほしいとまで願っても、行動に移さない限りその真実は善でも悪でもない。現実になったものは、自分が望み、考えたこととは関係ない。それなのに、自分に罰を与えようとしてしまう人の心の不可思議。

    この物語に、静かに暴れ回られました。

  • 13歳の子に「真実を話せ」「真実を話せ」って酷だわ…。
    そして最後はなんだかよくわからなかった。
    2つの気持ちは矛盾しつつも表裏一体ってこと?

    モノトーンのイラストは凄い。

    怪物のセリフはフォントを変えてあるのだが、微妙な違いしかなくてわかりにくい。
    どうせ変えるのなら、もうちょっと違いがちゃんとわかるくらいにフォントを変えて欲しかった。

    ママ本人ももちろんだけど、おばあちゃんが可哀想。

    本書は『ロンドン・アイの謎』の著者が遺した原案を元に、全く別人の著者が書き、『ロンドン・アイの謎』とは別の翻訳者による作品。

    『ロンドン・アイの謎』の著者がやはり原案を遺し、翻訳者は『ロンドン・アイの謎』と同じである『グッゲンハイムの謎』を借りてきてあるので、そちらの作品に期待。

  •  怪物は何なのか。表紙や挿絵のモノクロのイメージから、怖い話なのか、ファンタジーなのか。様々な疑問を持ちながら読み進めた。確かに怪物は現れた。でも主人公のコナーは怪物よりも恐ろしい悪夢に悩まされていた。その悪夢が何なのか、怪物との関係は?読んでいくうちに悲しくて、辛くなってしまい、この展開は全く想像もしていなかった。しばらくの間、この世界観が頭の中から離れなかった。シヴォーン・ダウドが残したものを、パトリック・ネスが引き継いで出来上がった本作品。もっともっとシヴォーン・ダウドの作品を読みたかったな。

  • 怪物は恐ろしく描写されているけれど、どこか優しくて。コナーの心の整理を助けてくれているように感じる。いや、コナーが生み出したのか…?
    とても、怒っていることを、どう表現したら良いのか。
    コナーは気持ちを怪物というものにおきかえて自分と対話できたのかもしれない。
    いろいろな説を考えてしまう。

    受け止めたくない現実を受け止めなくてはならないとき(それは、心に秘めていることでも、実際起こることでも)が誰にでもいつか来ることで。そのときにどうやって向き合うのか、向き合えるのか。

    今は私はもう自分なりの答えをもっているけれど、持っていない頃のもやもやを感じ取れる作品だったなあ

    映画ももう一度観たい。

  • 装丁も挿絵もホラーっぽいけど、ダークファンタジー小説です。恐々と読み進めていたのに、気付けば本の世界に引きずられ、最後は胸をギュッとつかまれた。
    毎晩現れる怪物は何者なのか、なぜ少年の前に現れるのか。その真実が明らかになった時「誰かこの少年を救ってあげてくれ」と願わずにはいられなかった。

  • 13歳の少年コナーの母は、重い病気で死期が近い。
    そんなある日の12時7分、コナーの前にイチイの木の姿をした怪物が現れる。怪物は、コナー自身が呼ばれて歩いてきたということ、そして、3つの物語を怪物が語ったのち、コナー自身が四つ目の物語を語らなくてはならないことを伝える。物語は、コナーが母の死を受け入れるまでの葛藤を、夢と現実が入り混じった、この怪物とのやりとりを通して描く。

    終始一貫して、怪物から語られる次の物語は、一体何なのか、コナーの語るべき四つ目の物語とは、一体何なのか、それが現実世界にもたらす影響は、そして、怪物の正体とは、といった謎が、残され続けることで、どんどん次のページをめくりたくなった。
    最後にコナー自身によって語られる四つ目の物語である「行っちゃだめだよ、母さん」「行っちゃいやだ」の二言がとても印象に残る。この物語の中では、繰り返し、コナーは、ちゃんと全部分かってることが、様々な登場人物のくちから語られ、コナー自身も、自分が知っていることを知っていた。ただ、それ、つまり、お母さんは死んでしまうのだということを、怖くて口にすることができない。お母さんが元気になると信じることは、お母さんが死んでしまうという現実から、逃げることである。だから、怪物は、コナー自身の口で、四つ目の物語=コナー自身の物語=母親の死を語らせようとする。
    知っていながら、受け入れられない。だから、何かを信じ続けることで、安心しようとする、その気持ちは分かるように思う。怪物のやり方は、かなり、荒療治でもあるような気もする。

    もう一つのテーマとして、怒りがあったように思う。三つ目の物語を聞き、いじめっ子のハリーを殴り倒したのち、コナーは、母親のお見舞いに行き、もはや、何も治療法がないことを知らされる。その時、お母さんがコナーに言うのが、「怒っていいのよ、コナー。思い切り怒っていいの」という話だった。
    コナーは、いじめっ子にいじめられようが、無視されようが、怒らない。そして、自分が罰せられることを望む。コナーが「破壊行為」をするのは、いつも怪物がいるときだったことを思うと、怪物は、コナーの怒りそのものだったようにも思う。

    そうした意味で、この物語は、母の死を受け入れることで、自らの心を癒すために、少年が自分の怒りを呼んだ物語だった。

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