- Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
- / ISBN・EAN: 9784758431026
感想・レビュー・書評
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自分の世界の中でみちたりることは、くるしくなくて絶望などなくて、でもなんとなく別に死んでもいいや、と思えてくるのはなぜだろうと、ずっと思っていた。誰かに認められる世界(恋愛はもちろん、友人でも、仕事でも、家族でも)はとても幸せだけれど、それと同時にそんな幸せはときどきすごく絶望…まやかし?のように感じるときも、ときどきある。認められなくなったら終わり、いま認められているのは、なにかを騙しているような。どっちのほうが生きやすいのかは今もよくわからないけれど、たぶんわたし含め、後者の世界が良いとする人はすごく多くて、なんで苦しい道を選ぶのだろう、と思っていたけれど、みちたりていると死という選択肢がでてくるから、それを本能的に回避するために、わたしたちはみたされることのない承認欲求を抱えて生きているのかもしれない。
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美しく、うっとりする文章。
何度もため息がでました。
丁寧に噛みしめながら読むと、絶妙なバランスで保たれている文であることやひとつひとつの表現の的確さをさらに感じます。
大好きな作品です。 -
恋愛で苦しんだ時読むとなんだか楽になる本だと
思います -
人生で1番好きな本。
おだやかにゆっくり美しく蝕まれていくところがすきです。
最後の一行が切なくて、心の深いところがぎゅーっとなります。
何回も読み返してしまいます。 -
切ない。
タイトル、なるほどな -
自分を何度も中年と称す三十八歳の画家の私と、既婚者の恋人や妹や旧友のように会いに来る絶望との日々。金属質な作り物のオブジェみたいにきれいで現実離れして、きっと実写にしたら不倫や人間の有機さが剥き出しになってしまうと思うような文章ならではの壊れ物みたいな緻密さ。格好つけているなあと感じるのに心地好い。
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不思議な感覚だった。
とても暗くどうしようもなく絶望的で
それでも、なんだか共感してしまう子供の頃の話。
恋愛は自由だ
誰がしてもどんな時にしても良いのだ。
ただ、年を重ねると
自由はうわべになってしまう。
恋人は上手に現実と彼女を行ったり来たりして楽しく生きているけれど、彼女は絶望から逃れられない。
ウエハースの椅子
言葉一つ一つが巧みで物語に入り込んで、江國さんワールドに包まれた1冊でした。 -
壊れていく美しさ
完璧な恋愛だとしても
その先にあるものは絶望
ページをめくるにつれ
切なくなる胸の痛みを感じたけど
僕の中に残ったものは
否定でも肯定でもなく
だけどたしかにその絶望は
感じてきたということ
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自分の陰鬱とした気持ちを伸び伸びとさせることが出来たので、陰鬱とした自分が認められている嬉しさをしみじみと感じた。
主人公は、幸せは、人生数十年の積み重ねではなくて、死ぬ瞬間に決まるという考えを持っているように捉えられた。だからこそ、中途半端な、どうせ終わりが来ると思われる幸せを拒もうとするのに、瞬間的な幸せに酔ってしまって、甘受してしまう、ふらふらとしている。けど、その瞬間が去るやいなや不幸な死が自分を待っている絶望を思い出すという、ヒトの不徹底な生き方とその陰鬱とした気持ちが、自分に陰鬱さと少し似ていて大分違うので、陰鬱さについて見地が広まった感覚であった。人の気持ちを知ることができ、自分が認められてうれしい気持ちになった。