- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784834023527
作品紹介・あらすじ
とおいむかし、クマたちは高くそびえる山の中で静かにくらしていた。ところが厳しい冬がやってきて、飢えと寒さにたまりかねたクマたちは山を下り、人間の住む平地をめざす。行く手に待ち受けるのは、残忍な大公に、ばけ猫、人食い鬼。ゆうれいもいれば、魔法使いもいる。さてはてクマたちの運命やいかに。さあ、それではまばたきもしないできこうではないか。おもしろく、やがて悲しい、シチリアを征服したクマ王国の物語を。
感想・レビュー・書評
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再読。家にあったのは名久井直子さんデザインのかわいいカバーつきの版。そんな外見に反してなかなか厳しい世界が描かれている。主人公である熊の王さまが人生の浮き沈みを経験する物語。味わい深い話と語り口の軽妙さと素敵な挿絵とで忘れて難い。
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児童書ですが、大人をもワクワクさせてくれる内容でした。何よりも挿絵が素晴らしくブッツァーティの良さが詰まった本と言えるでしょう。
小学生くらいのお子さんがいる方には全力でお勧めします。 -
冬ごもりしていたクマ王国の王さまレオンツィオは、猟師に捕らえられた息子のトニオを探すため、山を降りることにした。いじわるな大公と老魔法使いに翻弄されながらも、サーカスで綱渡りの芸をさせられていたトニオを救いだした王さまは、そのままシチリアの領主となってクマと人を統治することに。だが、人間の悪徳に染まったクマたちのなかに、謀反を企む者がいて……。著者自身による挿絵がかわいい、風刺の効いた児童書。
『モレル谷の奇跡』が大好きなので、他にもブッツァーティの絵が見たいなぁと思い手に取ったら、児童書の皮を被ったコメディタッチの政治風刺小説だった。おじいちゃん魔法使いのなけなしの魔法で息を吹き返した子グマの王子が、13年後に話が飛んだら賭博で破産しそうになってるのエグい(笑)。残忍な大公たちはナチスがシチリアに敷いた傀儡政権、クマたちはパルチザン政権に擬せられているらしい。もっとも、パルチザンもクマたちのように〈山にいるあいだは純粋無垢〉だったわけではないと、今では明らかになってるわけだけど。
クマが堕落していく前の幽霊城でのダンスシーン、そしてトニオ生還の夜のダンスシーン、両者の挿絵が特に好き。幽霊を恐怖するメカニズムの講釈は、戦争から間もない時期の実感だろう。キャラクターのなかでは、敵としてでてきたのに二回しか使えない魔法を結局二回ともクマのために使ってしまうおじいちゃん魔法使いがいい味をだしている。この人も誤認逮捕されたりなかなか酷い目にあう。 -
映画を観る前に。飢えと寒さをしのぐために山を下り、人間の住む土地にきたクマたち。そこで出会った残忍な人間やあざとい魔法使い、化け猫や幽霊とも果敢に戦い、遂にはクマ王国を作る。でも素朴だったクマたちは変わってしまう。着飾ったり威張ったり怠けたり。まるで人間のように。ユーモアたっぷりの物語。最初の人物紹介からぐっと引き込まれる。ところどころにある挿絵もまたかわいらしくて楽しい。生きものは自分達のいるべき場所であるべき自然な状態で生きるのがいい。クマたちはそれをわかってちゃんと山に帰った。やり直しの道を選んだ。人間の正しい道はなんだろう。どう生きるべきなんだろう。
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挿し絵もブッツァーティーの贅沢な児童文学。軽妙な語り口で読みやすい。ブッツァーティーは大人の短編の名手のイメージだったので、こども向けも書いてたんだなと。(イタリアでは児童文学はロダーリのイメージなので……)
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あのブッツァーティがこんなに素敵な子どもの本を書いていたなんて!扉をひらくと本人による美しい挿絵、そして登場人物たちを紹介する優しい語り口に期待がいっぱいになります。勇敢なクマの王様レオンツィオに率いられて山から降りてきたきたクマたちが経験するいくつもの戦争は、おとぎ話というには血なまぐさく、そしてようやく平和が訪れたと思ったときには、悲しいお別れが待っているのでした。わたしたちがたくさんのモノやすてきな服につつまれていてもどこか魂をなくしたような気がするのは、クマという愛すべき気のいい友たちにおいていかれてしまったからなのかもしれません。どこからめくっても素敵な魔法のような絵本。
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映画化したと知り、嬉しくなって話の内容を思い出そうとしたら、まったく思い出せなかったので、改めて借りて読んでみた。
食べ物を求めて人間の世界に下りていった熊たちが、堕落して裏切りと不信に振り回された挙句に、平安を求めて再び山に帰る話だった。
一行にまとめるとシンプルな話だけれど、読み返してみると熊たちとわくわくする冒険をしている気分になれる楽しい話だ。そして最後は切ない。
熊の王さまが息絶えるラストシーンの寂しさだけはなんとなく覚えていた。 -
「とおいむかし、クマたちは高くそびえる山の中で静かにくらしていた。ところが厳しい冬がやってきて、飢えと寒さにたまりかねたクマたちは山を下り、人間の住む平地をめざす。行く手に待ち受けるのは、残忍な大公に、ばけ猫、人食い鬼。ゆうれいもいれば、魔法使いもいる。さてはてクマたちの運命やいかに。さあ、それではまばたきもしないできこうではないか。おもしろく、やがて悲しい、シチリアを征服したクマ王国の物語を。」
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クマは、とりわけ利口でもなく、愚かでもなく、可愛くもなく、醜くもなく、カッコよくもなく、無様でもなく、強欲でもなく、質素でもなく、その全てであり、クマなんだ。
韻文は韻文っぽく訳してもらいたいんだけど、これ脚韻踏んでないんだろうか。すごく気になって、原文みるべきか、迷う。大変だと思うけど、是非頼みます。