働かないアリに意義がある (メディアファクトリー新書 15)
- メディアファクトリー (2010年12月31日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
- / ISBN・EAN: 9784840136617
感想・レビュー・書評
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遺伝子のくだりが理解できなかったのは己の頭の限界か。
総じて面白く読めたし、色々考えさせられた。
ヒトも細胞という群れである、ヒト一人もはアリの群れと同じである、というのは発見。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
音痴で不器用な僕は、気候の良ときにはバイオリンを弾いて遊びまくり、寒くなって働き者のアリさんに泣きついて結局助けてもらって、なんだ、人生って楽勝じゃん、って印象のキリギリスくんにいつも憧れていました。でも、夜這いしてせっせと子作りだけする社会寄生種のアリは、その遥か上を行っている!著者の文才溢れる序章でがっちり掴まれてグイグイと読みましたが、遺伝子関連の話でやや集中力が弱まった。いずれにしても、もう同じ感覚でアリを見ることが出来ません。多くのアリはとっても一生懸命なんですね。もう踏み潰せません。
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ネット記事で紹介をみて、ネット書店でその本を買う。でもまだ紙の本は手放さないぞ。
この本はまさにそんな風に知ってそんな風に買った。一般向けの書物として軽いタッチで描かれているが、実にまじめな生物学の本である。しかし、生物学といっても真社会性生物といわれる、社会を作る生物を扱っているので、俄然、人間という社会性生物の生態と対照されることで、「身につまされる」のである。
社会を作る生物というとハチやアリは誰もが思い浮かぶところだろうが、『新世界より』でネタになっていたハダカデバネズミから、粘菌の一種までいろいろあるという。
何しろタイトルにもある、働きアリが働いていないというのが、衝撃的というか、面白くて買ったのだ。実際、ある瞬間をとると、7割くらいの働きアリは働いていない。つまり休憩中。休憩が終われば働き出すのだが、それでも、2割くらいのアリは一生働かないのだそうだ。そういう話を人間社会、端的には自分の周囲の状況に照らし合わせて、「身につまされる」と思うわけだ。
ではなぜ働かないアリがいるかといえば、いくつか理由があるが、ひとつは個々の個体の知的能力が低い集団が状況に応じて適度に労働力を供給するためであり、また、いざというときの予備力として必要と説明される。後者の理由は、現代の人間社会が効率ばかりを求めるあまり、実は長期的には社会の生存に適していない状況に陥っているのではないという警鐘となる。
しかしながら、前者の理由にあるように、個々の個体が高度な知的機能を持った人間の社会と単純な反応しかできない個体によって構成されるアリの社会を比べるのは実は詭弁である。それは筆者もわかっているのだが、それでも人間と引き比べたくなるのが、面白いところ。基本的に生物の行動原理は自分の遺伝子をよりたくさん残すことを目的とするという前提に考察されるが、目下、苦闘を強いられている独裁者たちをみても、アリと一緒みたいだし。
そして、「働かないアリ」とは、自嘲的に筆者たち生物学者たちのことでもある。こうした研究がネットで紹介されたら「なんてひまな奴らなんだろう」と書き込みがあったそうだ。いわゆる会社の仕事はしていないし、すぐに役に立つこともしていないし、でも、夏のさなかにアリのコロニーを探して歩いて、働かないアリの数を数えたり、すごく大変らしい。そんな面倒なことを飽くことなく続けているなんて、なんてひまな人たち!
本書は200ページに満たず、とても薄いのだが、700円を越える。本も高くなったものだと思ったが、もしや、このメディアファクトリーという会社、働かない社員を飼っているので、本の値段が高くなってしまうのであろうか。 -
進化生物学者が、アリやハチのような特殊な集団構成をもつ生物(昆虫)の行動の実態を研究・解明した、画期的な著作。
著者が対象としたのは、単に群れを作って行動する生物ではなく、繁殖を専門にする個体(女王アリ・女王バチ)と労働を専門にこなす個体(ワーカー。働きアリ・働きバチ)からなるコロニーと呼ばれる集団をつくる「真社会性生物」と呼ばれる生物である。
生物進化には、「子どもをたくさん残せる、ある性質をもった個体は、その性質のおかげで子孫の数を増やし、最後には集団の中には、その性質をもつものだけしかいなくなる」という大原則があるにもかかわらず、真社会性生物のワーカーは多くの場合子どもを生まないので、「子孫の数を増やす」という法則とは矛盾する性質が進化してきた生物であり、これはチャールズ・ダーウィンが謎と考え、昔から生物学者の注目を集めていたのだという。
そして、その研究の結果、以下のような面白い事実が判明したという。
◆コロニーの7~8割のアリは、何もせずに休んでいる。働くアリだけを選抜したコロニーでも、働かないアリだけを残したコロニーでも、やはり、一部のアリは働くものの、7~8割のアリは働かない。これは、それぞれの個体に「反応閾値(仕事に対する腰の軽さの個体差)」があるためであり、疲労という不可避の要素を考慮すると、働くものばかりのシステムよりも、働かないものを常に含む一見非効率的なシステムの方が、長期的な存続が可能となるためと考えられる。
◆多くのアリ・ハチではコロニーには普段はメスしかいない。ミツバチのオスは新しい女王バチが交尾を行うごく短期だけ現れ、役割を終えるとエサを与えられず、巣から追い出されて死んでしまう。
◆自ら子どもを生まずに、他者のために自らを犠牲にして働くワーカーがどうして存在するのかについては、手伝う相手は血縁者であり、それが生む血縁個体を通して利他者の適応度が上がるという「血縁選択説」と、血縁関係がなくとも、群を作ることに大きなメリットがあるという「群選択説」がある。
著者の「働きアリの2割ほどはずっと働かない」という研究結果が新聞で取り上げられたところ、翌日の新聞に「この研究やった人ヒマだよね」という読者の投書が載ったというのは何とも笑える話だが、人間社会を考える上で、参考になるような、ならないような、ちょっと楽しい一冊である。
(2013年3月了) -
詳しくは http://fairylight.jugem.jp/?eid=1208 をご覧下さいね。
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蟻や蜂は、巣の中の仕事から始まり、最後に巣の外に出て活動するようになる、しかしそれぞれの閾値があり、頻繁に働く個体と、忙しくなる状況に応じて働くようになる個体があり、それがバッファとなりうまく運営できているらしい。
その閾値があるため全体の2割の個体は、働かないらしい。
その働かない個体を除くと、残った中の2割が同じようにかなくなるらしい。
しかし、みんな一斉に休む事が出来ないと言う制約条件では、その一見無駄に感じる2割が実は大切な役割になるらしい。
会社の仕事の仕方についても、考えさせられる。 -
アリの生態に興味がなくても十分楽しめます! いつもいつも忙しいと言っている方、ちょっとくらい休んでもあんがい大丈夫です。むしろそれは、世の中に必要なサボりだったりしたり…しなかったり?
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人間の目で見てみると残酷に思える行動も、アリなど真社会生物においては、種の保存の為に必要な行動である。
働かないアリとは、反応閾値の振れ幅の大きさの違いで生じるものであり、この「振れ幅」こそが種を存続するために必要。