電子書籍の衝撃 (ディスカヴァー携書)
- ディスカヴァー・トゥエンティワン (2010年4月15日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (303ページ)
- / ISBN・EAN: 9784887598089
感想・レビュー・書評
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今話題の電子書籍について、出版産業というビジネスがどのように変わっていくかがよく解ります。本を読むための適したデバイス、最適化されたプラットフォーム、セルフパブリッシングによる本のフラット化、などを佐々木氏がインタビューや自らの経験、引用を用いて丁寧に説明していきます。電子書籍とソーシャルメディアの関係性も非常に興味深く、時代の流れに乗り遅れない為にも、ぜひ読みたい1冊です。
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電子書籍はまだ来ない、と思った。何がきっかけとなって変わるのだろう。
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これを読んでた5月あたりはもうなんか自分の中で勝手に電子書籍ブームが来てたので電子書籍関連の本を続けざまに読んでみた。
この本が出たのは2010年とのことで昨年のことなのですが、たった1年前なのにiPadも出てない時代ですでに時代遅れになりかかってる本でした。電子業界のスピードを痛感せざるを得ない。
たとえば去年まではまだみんなタッチパネルとか、すげー!!どうやんのー??って感じでしたが、今ではもう当たり前って状況です。普通に生活をしてると当たり前過ぎて気にも留めないですが、なんか私生活をAppleさんあたりに作られてく感じがする。笑
この本では特に音楽業界と比較して電子書籍業界がどうなるかということが書かれていて面白かった。凄くリンクした部分が多く単純に考えたら、iTunesの電子書籍版が出来て、一件落着になりそうなのだが、どうやら書籍の方が音楽以上に関係者が多く様々な利権が絡んでいて簡単には行かないらしい。
さてさてどうなることやら。。 -
本屋・出版業界の仕組みがよくわかる。おもしろい。
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今日はフリージャーナリストの佐々木俊尚さんの著書『電子書籍の衝撃 本はいかに崩壊し、いかに復活するか?』を紹介します。
まずは目次から。
目次
第1章/iPadとキンドルは、何を変えるのか?
第2章/電子ブック・プラットフォーム戦争
第3章/セルフパブリッシングの時代へ
第4章/日本の出版文化はなぜダメになったのか
終章/本の未来
日本では、2010年5月にアップル社の「iPad」という電子ブックリーダーが発売されて話題になりましたが、つい最近もシャープの「ガラパゴス」が同年12月頃に発売されることが発表され大変話題になっています。
私は電子ブックリーダーを所持していませんし、当分の間は購入する予定もありませんが、電子ブックの登場によって本の世界や日本の出版業界がどうなっていくのかということに関してはとても興味があります。
本書では、アメリカの出版業界事情から日本の出版流通文化、そしてこれから予想される本の未来まで幅広く考察されています。
現在、アメリカでは激しい電子ブック・プラットフォーム戦争が繰り広げられており、出版社の中抜きという事態が進みはじめて、大手出版社の方々はヒイヒイ悲鳴をあげているそうです。
その辺の裏事情は、これまでに音楽業界が辿っていった事例を交えながら詳しく説明してあるので、アマゾン、アップル、グーグルをはじめとしたIT企業に携わる人たちのしたたかさを驚きとともに知ることができ、あまりIT業界に詳しくない人でも興味深く受け止めることができる思います。
また、セルフパブリッシングという可能性が生まれてきているということには個人的に希望を持っています。
日本では、共同出版をうたい文句に素人の書き手に自費出版幻想をあおって大儲けし、詐欺まがいの商法だと批判されて潰れた出版社がありましたが、電子ブックの時代になると紙代や印刷代、流通コストなどの経費が必要なくなるので、誰でも手軽に本を出版できるようになり、そういう怪しいビジネスは成り立たなくなるそうです。
私のような素人の書き手であっても電子ブックであれば、売れる・売れないは別にしても、出版すること自体は今よりもずっと簡単になるというのですから、なかなか魅力的な話です。
そうなると、書き手やその作品をどうプロデュースし、どうプロモーションしていくかというのが重要になってきて、小さな企業でも書き手の才能を発掘し、育て、大きな舞台へと送り出していくことが可能になり、出版社は小さなチームを結成して電子ブックの世界を渡っていくような時代になると予測されます。
その究極の進化形は、フリーの編集者とフリーのデザイナーとフリーの書き手がフリーランス連合を組んで本を作り、その売上をレベニューシェアするようなチーム編成かもしれない、と言われています。
ただし、日本の場合は委託制やデータ配本などの特殊な出版流通体制ができてしまっているので、アメリカのようにスムーズにセルフパブリッシングが広まっていくかどうかはわかりません。
これからの出版流通業界に必要になってくるのは、書き手と読者との良いマッチング(出会い)を提供する環境を育て上げることだと佐々木さんは言います。
確かにその通りで、書き手がどんなに優れた作品を作り上げたとしても、それが読者に届かなければ意味がありません。
地方のロードサイドではどこに行っても似たような品揃えの書店が溢れており、書き手と読者との良いマッチングはなかなか生み出されていないのが現状です。
そこで佐々木さんは、東京千駄木の往来堂書店や東京駅前の丸善丸の内本店における松丸本舗を例に挙げ、書店が本のコンテキスト(文脈)を見事に演出する可能性を提示しています。
要するに、「文脈のある本棚づくり」です。「書棚は管理するものではなく、編集するものだ」という考えのもと、往来堂書店では文脈を店の側が編集し、店内をひとつの空間メディアとして見せる手法を精力的に行い、熱狂的なファンを集めたそうです。
松丸本舗でも同様に、評論家の松岡正剛さんが品揃えをプロデュースし、本棚というコンテキストに沿って本を並べ替えたコーナーがかなり成功しているそうです。
これらの「文脈棚」にはとても手間がかかり、維持するのも大変で、流行に対する敏感なアンテナと、本に関するバックグラウンドとしての大きな教養のある優秀な人材が不可欠となるようです。
そのような人材を集めるのは大変難しいことですが、自ら文脈を提供することができるような意欲的な書店が地方にも沢山増えていけば良いのに、と思わずにはいられません。
どうやら電子ブックの世界においても、自分の好みにあったお気に入りのレビュアーを見つたり、自分にとって最も良い本のチョイスをしてくれる人を見つけることが重要になってくるようです。
マスモデルが中心だったこれまでのコンテンツの世界では、読者の側に教養や文化や知識といったコンテキストが備えられていなければ楽しむことは困難なことでしたが、ソーシャルメディアを経由して流れてきたコンテキストとコンテンツをともに受容することで、そのコンテンツが持っている価値を容易に理解することができるようになるというのですから、それは非常に有り難いことです。
ネットの世界には優れた書評ブロガーさんが沢山いらっしゃいますから、その方たちから得た情報を存分に活用して良い読書体験をしていきたいものですね。
今回は、本の未来と可能性を模索していくための、なかなか刺激的な読書でした。 -
古本屋で100円だったので買ってみた。千歳行きの機内で読んだ。
自分が死ぬまでに紙の本はなくならないだろうけど、電子書籍がメインストリームになるのは避けられないだろう。
で、本書は電子書籍によって「本を買う」「本を読む」「本を書く」そして「本と出会う」ことがどう変わるのか述べられてる。最後の項目で読書とはコンテンツだけじゃなくて読み手のコンテキストも含むというはなるほどそうだなと思ったけど、一番面白かったのは今の日本の再販制度が確立していった歴史。もともとは雑誌を大量に出版、流通する仕組みに、書籍が乗っかったという流れだったのね。知らなかった。 -
電子書籍の登場。
これは「紙の本が消滅するのかしないのか」こういった論点で語られがち。
むしろ、自分もどっぷりその考えにはまっていた。
「画面で読んでも読んだ気がしないだろ」
とか
「iPadデカすぎて持ち歩きに適していない」
とか、その程度で考えていた。
しかし、それは大きな間違いのようだ。
・電子書籍の登場によって、著者の選択肢が広まる。作家というハードルの高い世界に誰でも足を踏み入れられるようになる。
・大衆迎合的な作品を量産する出版社・取次の仕組みにメスが入れられる。
こういったことが起こる模様。
驚きなのはアメリカでは電子書籍登場後、紙の本の販売も伸びているということ。
インターネットという最強のツールがうまく本の世界と融合することによって、本を取り巻く環境がより読者によっていいものとなっていく。そして電子書籍でも紙の本でも、それは読者が選べる時代になっていく、というイメージが湧いてきて、新鮮だった。
とにかく自分にとっていい本に巡り合えるのであれば、そして紙の本がなくならないのであれば、電子書籍がんばれ!って思えるようになっただけで、この本の影響はすごく大きい! -
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