可燃物 (文春e-book) [Kindle]

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  • 文藝春秋
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感想・レビュー・書評

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  • 連作短編集。米澤穂信さん初の警察もの。
    オーディブルにて読む。

    風変わりであまり人を寄せ付けないが、コツコツと事実を積み上げ、上司でも部下でも使えるものは全て使って、事件を解決していくドライな刑事、葛の活躍を描く。

    米澤穂信さんによれば正答率15%のミステリーだそうだ。
    複雑怪奇ではなく、シンプルに楽しめる。
    もしかしたら真相に辿り着けるかもってワクワクしながら読める。
    これはねー、楽しめます。

    あと、葛のような鉄の意志を持って仕事を進めることはなかなか難しい。打算だったり妥協だったり忖度だったりズルだったりで、いつの間にか低きに流れていく自分にため息ばかりなのが日常だ。
    だからこそ、真相にたどり着いたときスカーっとするんだろうな。
    葛はありたい自分のひとつの姿なんだと思う。

    横山秀夫さんの「64」なんかにも影響を受けているそうだ。なんかわかる。実直な感じというか…
    こういう警察小説、好きなんだよな。

    ♫Bone Broke/The White Stripes(2007)

  • 2023年のミステリーの主要な賞で1位だった作品。群馬県警捜査第一課の葛警部とその部下の活躍を描いている短編集。といっても特殊な事件を扱っていたり、スーパーマン的な活躍で事件を解決というようなものではなく、一見わかりやすい事件のその先にある真相に迫る内容。

    検挙率でも上から一目置かれている葛警部が、「人を見ることから始める」「面子のことは考えない」「辻褄が合うことを全て事実だと考えることはない」「直感とは観察力の蓄積が警告を発すること」「違和感は徹底的に調べ上げること」「事件を俯瞰する」といった自分流儀の捜査手法で、最後の一歩をひとりで飛び越える。

    普段知り得ない警察内部からの視点でもあり、まるで自分も一緒に捜査に加わっているかのような臨場感に知的興奮が止まらない。そして、もう一つ裏にある真相に…

    期待通り、それ以上の読後感です。

  • 昭和風短編推理小説

    評価4.0
    audible 8時間39分
    kindle 257ページ

    群馬県警葛警部の活躍を描く5つの短編集。

    崖の下 スキー場バックヤードで遭難した若者が殺害されるが、凶器が見つからない。凍ったつららの記載があり、まさかこんなコテコテのと何故かこちらが心配になる。特段の紹介もなく、主役の葛警部が登場し、この時点ではちょっと真面目な刑事さんとしか思えない。真相は開放骨折で飛び出た骨が凶器ということ。つららよりはましか。確かに一人で推理をして事件を解決してしまったが、嫌われるほどではなさそう。友達は少なそうだが。  

    ねむけ 強盗犯が関与した交通事故。葛は管轄外ではあるがしつこく捜査を重ねる。過程で、葛の上司も融通の効かない実力主義者であることが紹介される。しつこく疑問を追及した葛のお陰で強盗事件も急転解決に至る。交差点で居眠りしただけの奴など何も嘘つかなくてもとは思う。

    命の恩 バラバラ殺人。あえて見つかりそうなところに死体を捨てた意図は?題名からの予想通りの結末だが、後味はあまりよくない。

    可燃物 連続放火犯の動機を探る。表題作であり、その動機も意表を突かれたが、なんせしょぼすぎる。

    本物か 刑事の忙しい日常の最中に拳銃を持った立てこもり事件が発生。緻密な葛の推理から実は人質の店長の殺人が発覚する。

    最近の名探偵ブームとは一線を引く骨太な昭和風のいわゆる推理小説。主人公の葛も嫌われ者のように描きたいのかもしれないが、他部署や他人特に年配者には一定の配慮を行っておりただの無愛想ないい人。永遠に読んでられそうなどこか懐かしい小説であった。そうはいってもやはり重厚感には欠け、本格派の長編小説を超えるのは難しいかな。このミスを短編集が取るのはちょっとした違和感が残る。

  • 今年のミステリー賞3冠ですって!
    米澤穂信作品では珍しく警察もの。
    ミステリーの王道じゃないですか。

    主人公は群馬県警の葛警部。

    ちょっと曲者だけど捜査力は確か。
    導かれた真実は、明らかになって清々しいものばかりではない。

    特にファミレス立てこもり事件は何が起きたのかを聞き込んでいくうちに見え方が真逆になって面白かった。

  • Audibleにて。
    警察ミステリ小説 全5編。
    主人公の葛(かつら)警部は、捜査能力抜群。彼の洞察力で、事件の真相に迫る姿が魅力的。
    予想を超える結末と納得感がすごい!ストーリーの展開や事件の解決などが、論理的な思考や推論に基づいて進むような形で描かれていたため、提示された情報やヒントを駆使し、共に謎やミステリーの解明に挑むことができた。
    心理描写も秀逸で、ストーリーに一層の臨場感が生まれたため、深く入り込めた。
    Audibleのナレーションが葛警部のイメージに合っていて、より楽しめた。
    シリーズ化を期待したいです!

  • 「崖の下」3…スキー中の事故。見つからない凶器。
    「ねむけ」4…交差点での交通事故に目撃者多数。
    「命の恩」4…山中にばら撒かれたバラバラ死体。
    「可燃物」3…連続ゴミ放火事件の動機。
    「本物か」3…ファミレス人質立てこもり事件。

    主人公刑事のキャラが地味で文章も淡々としており、意図的にミステリ以外の不純物が排除されていた。つまりミステリ自体の純度は極めて高く、しみじみと力強く面白かった。

    #audible

  • いかにもミステリ!て感じじゃないのに、そうだったのか!感がしっかり味わえる

    現場刑事じゃなくて捜査を指揮する部長の話というのも珍しく、なるほどそういうお仕事なのねーというところも面白かった

  • 優秀な刑事の謎解き捜査。

    事件はに対してバイアスや先入観を捨てて、冷静沈着な整った心で向きあい、事件の全貌を明らかにする。明かされる時の腑に落ちる感じがたまらない。

    一癖ある事件を淡々と解決する敏腕さ!
    一つの事件が短めで、サクッと読める。

    そしてこんな上司はいやだ。
    部下に「ご苦労」の一言ぐらいあってもいいやろ。優先課題が犯人逮捕、事件解決であっても、部下たちも人間なんだから。

    新卒の時の上司を思い出した。
    凄いできる人だったけど、あの人の下では二度と働きたくない。

  • いくつかのランキングで、おすすめミステリー1位ということで読んでみました。短編すべてには手を出さず、「崖の下」と「可燃物」だけ読みました。「可燃物」よかったです。犯人側からのストーリーの方がぼくには魅力的なのかもしれないです。ミステリーは、謎が解けるまでの物語以上のものと思えず…残りのページ数で終焉の接近も想像しちゃったり…

  • 群馬県警の葛警部を主人公とするミステリ連作短編集。
    5作品。

    証拠はすべて読者に示され、葛警部の思考過程も丁寧に描かれる。
    いずれも無駄がない“筋肉質”な作品で
    (いい意味で)淡々と物語は進む。
    5作とも面白かったが、
    最後の作品『本物か』は展開にドキドキ感があり、
    個人的には一番好きだった。

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著者プロフィール

1978年岐阜県生まれ。2001年『氷菓』で「角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞」(ヤングミステリー&ホラー部門)を受賞し、デビュー。11年『折れた竜骨』で「日本推理作家協会賞」(長編及び連作短編集部門)、14年『満願』で「山本周五郎賞」を受賞。21年『黒牢城』で「山田風太郎賞」、22年に「直木賞」を受賞する。23年『可燃物』で、「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」でそれぞれ国内部門1位を獲得し、ミステリーランキング三冠を達成する。

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