地下鉄に乗って (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (313ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062645973

作品紹介・あらすじ

永田町の地下鉄駅の階段を上がると、そこは三十年前の風景。ワンマンな父に反発し自殺した兄が現れた。さらに満州に出征する父を目撃し、また戦後闇市で精力的に商いに励む父に出会う。だが封印された"過去"に行ったため…。思わず涙がこぼれ落ちる感動の浅田ワールド。吉川英治文学新人賞に輝く名作。

感想・レビュー・書評

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  • 浅田氏は1997年に「鉄道員」で直木賞を受賞しています。読み始めはとっつきにくく、途中で読むのを止めようと思っていたのですが、後半(後ろ2割ぐらい)は展開がすごく面白くなってきてドキドキしながら読みました。そして、読み終わると、ただ展開が面白いだけでなく、この作品の根底にある親と子供の関係についてジワーっと考えさせられます。(勝手に思っているだけです。今まで国語の成績は最悪でした。)2006年映画化が決定しており、出演は堤真一、岡本綾、常盤貴子、大沢たかおということです。話の展開は映画にするとすごく面白いだろうなと思いますが、深いテーマがどこまで引き出すことができるのだろうかと期待半分、不安半分という感じです。是非映画も見てみたいと思っています。

  • 単純なタイムスリップSFものかと思ったら、なかなかじっくり読ませて頂けた。

    こちらもまた会社の方から何の情報も与えられずお借りした一冊。

    裏表紙の引き込み文章を読んで、自分なりにこんな結末かなぁ?とありきたりの道徳的ストーリーを思い描いたが、物語は思いもよらない方向に向かっていった(笑)
    私の想像力が乏しいのかもしれないが、なるほど
    !そうきたか!と。

    単なるSFではないし、単なる家族物語でもなく、地下鉄にも東京にもまるで縁の無い私がしっかり引き込まれるストーリーだった。

  • 私の大好物なタイムトリップ物語。浅田さんの作品はいつも嗅覚が働く。真次と腹違いの兄妹だと分かってしまったみち子。母・お時と対峙するラストがとても衝撃的で悲壮感漂わせる。佐吉1人をめぐって、多くの人間が彼に翻弄される。佐吉の愛されキャラ、その存在感、偉大さには納得するべきものがあり、また、その後のルビーの指輪の行方は気になるところ。戦後の復興のノスタルジーを堪能できる素晴らしい作品だった。また、母の実家がある溝の口が登場、とても身近に感じた。身近な銀座線、丸ノ内線に乗るのがとても楽しみ。

    • yhyby940さん
      おはようございます。私もタイムトリップ物語、大好きです。「地下鉄に乗って」も好きな作品です。きっと誰でも、自分の親の若い頃に会ってみたい願望...
      おはようございます。私もタイムトリップ物語、大好きです。「地下鉄に乗って」も好きな作品です。きっと誰でも、自分の親の若い頃に会ってみたい願望がありますよね。東京在住の頃、丸ノ内線の新中野で暮らしていました。確か鍋屋横丁も登場してたんではなかったでしょうか、勘違いかなあ。お邪魔しました。
      2020/08/16
    • ポプラ並木さん
      こんにちは。ブクログ、初めてコメント頂きました!ありがとうございます。我が家は茗荷谷に縁があって結構乗っています。中野は下町ですね。浅田さん...
      こんにちは。ブクログ、初めてコメント頂きました!ありがとうございます。我が家は茗荷谷に縁があって結構乗っています。中野は下町ですね。浅田さんの本はノスタルジーに浸れて楽しんでます。今、「終わらざる夏」を積んでいます。楽しみです!ではでは。
      2020/08/16
  • 浅田次郎さんの初期の作品。
    1994年に発表された本作は、第16回吉川英治文学新人賞を受賞した。そして直木賞受賞作が「鉄道員」、2017年には、毎日新聞朝刊に掲載されドラマ化もされた「おもかげ」。これらはどれも鉄道もので、浅田さんの作品を形作るのに、重要な舞台になっている感じだ。
    確かに人を運ぶだけではなく、心も想い出も、時空を超えて運んでくれるような気がする。

    それにしても、人の心や身体や周囲の、言葉による形容は奥深く、いつもうっとりさせられる。

    ラストのシーンでは、すべての秘密が明かされ、過去の悪夢も現在の苦境も反転して世界が急に広がっていく。
    この思いがけない結末は、思わず目頭を押さえてしまうようなものだった。

    小さな衣料会社に勤める営業マンの小沼真次がふとしたはずみでタイム・トリップを体験し、はからずも家族の過去と向きあうことになる。自殺した兄、反目していた父、そしてデザイナーとして会社でともに働く軽部みち子。地下鉄に乗るたび、過去へつながる出口へと向かい、自分の知らなかった事実を目にする。
    不思議なことにタイム・トリップをするのは真次だけではなく、みち子もそうだ。しかも夢なのか現実なのか、区別がつかない時と場に、共通した認識を持ち、記憶もしている。それには理由があったのだ。

    自分としては、気丈だが優しいみち子に共感をした。

    このラストシーンは、暫く脳裏に残った。
    走るほどに、みち子の体が心細く萎えしぼんで行くように思えた。この女を失うまいと懸命に握りしめる腕の重みが、やがてとろけ出した氷のようにあやうくなり、柔らかな手ざわりが残ったと思う間に、真次は降りしきる雨だけを抱いていた。
    みち子、みち子、と、かけがえのない名前を呼び続け、姿を求めてさまよう真次の行く手に、地下鉄の入口がぽっかりと開いていた。
    吹き上がる温かい風が、よろぼい歩き、倒れかかる真次の体を、しっかり抱き止めた。

  • なんか凄いお話だったな~
    地下鉄の出口を出たら過去に戻ってる。
    ときには夢が入口になっている。過去の出来事に繋がっていて、
    しかも会社の同僚(といっても深い関係)も同じ経験をする。
    なぜこの子もそうなのかは最後でわかるのだが・・・

    自分の父親の過去をタイムスリップするたびに、どんどん遡っていく。

    ずっと過去に行きっぱなしではなく、今現在にも戻れるから、冷静になれば仕事どころではないですね。

    知らなかった事をどんどん知る事になるのは、いい事だったのだろうか。

  • 渋いなぁ。内容全然知らずに読んで、あらすじからしたらSFみたいになりそうなのに、ノスタルジーというか何というか。終始独特の雰囲気があり、最後まで昔の映画を見ているような気持ちになれた。やっぱり渋い。

  • 永田町の地下鉄駅の階段を上がると、そこは三十年前の風景。ワンマンな父に反発し自殺した兄が現れた。さらに満州に出征する父を目撃し、また戦後闇市で精力的に商いに励む父に出会う。だが封印された“過去”に行ったため…。思わず涙がこぼれ落ちる感動の浅田ワールド。吉川英治文学新人賞に輝く名作。

  • 『大人の童話作家』浅田次郎の初期作品。地下鉄という“地の中を走る電車”は景色も大きな変化のない、ある種の不思議な雰囲気を上手に使って現在と過去を繋ぐタイムマシンとして扱っている点が興味を引く。主人公は反目する父親の過去をタイムスリップを繰り返しながら知ることで時代と富こそ違え、父と全く同じ生方をしていることを思い知らされる。主人公の愛人であるみち子の存在と、彼女の“決意”こそは妻子ある主人公が父から受け継いだ血故の『引き継いだ業であり罪』ならば、それを残酷と言えるのだろうか。まさに大人の男の説話といえる。

  •  父親のことを妬んで恨んで過してきた主人公。地下鉄に乗り、何度もタイムスリップする。その過程で、父には自分に見えなかった様々な姿があったことを知り・・・。

     親を憎んで過してきた方。許せない人がいる方にお勧めの作品。

     地下鉄という乗り物が人を繋いでいく。幻想的な設定が素敵だと思う。

     「人は、自分に見えている部分が全てではなく、ごく一部分であること」を気付かせてくれた。私にとって感動的な収穫であった。

     タイムスリップを繰り返し、人の様々な顔を知り、誤解やわだかまりがなくなれば、どんなに救われるだろう。と切に思った。温かい気持ちが込み上げてくる一冊。

     

     


  • 確執のある父と息子、兄の死、バラバラになった家族。。どの時代にもそこには地下鉄が走っていて、時空を超えて父や母の過去や兄の死に至る背景や謎が次々明かされ驚きや意外性で物語に引き込まれます。
    特に父の人生は壮絶。日本が辿ってきた歴史に触れるにつけ、戦争や敗戦を体験した人の苦悩や無念、悲しみと言ったものに胸が締めつけられる。
    みちこが語る戦前の銀座線の様子や、鮮やかで華やかな銀座の街の情景の中でのみちこの生き生きとした姿が印象的。だからこその彼女の顛末は衝撃的で悲しさが際立っている。
    兄の死を止める事はできなかったし、父と息子の関係はその後どうなっただろうなど、やや心残り。
    同様な設定の映画バック・トゥ・ザ・フューチャー的なハッピーエンドではなく、物悲しい読後感。

  • 薄暗くてすこし不安な気持ちになるけど乗っていて冒険的なワクワクも感じる地下鉄、今作はまさに地下鉄ような空気感のある物語でした。

    地下鉄の不安定な空気感と空間の歪みが重なって、真次は兄の自殺のときのことや縁を切った父の過去を知っていく。その過程がとても面白くて、どうなるのかワクワクしながらどんどん読み進められました。

    ただでさえ東京の路線や位置関係などよく分からない中、さらに時間まで遡り何がある場所やらさっぱりなのですが、細かく書かれている描写から想像し、私まで時間旅行したような気分にもなれました。昭和初期の東京は特に興味深くワクワクしました、綺麗すぎる現代の日本で育ってしまった私にはあまり行きたいとは思えませんが…

    ただ、ラスト。どうしてもラストよかった!とは言えません。みち子の運命が酷すぎます。何故みち子が犠牲にならなければならないのか。
    それでいて真次は結局父親に会いに行くことも圭三になにかすることもないと…

    えっ、時代を行き来したことで何が変わりました?みち子が消されただけでは?
    読者からしたら小沼佐吉よりもなによりも真次が一番人として最低なような…
    みち子には母でも愛する人でもなく自分の幸せを一番に優先する選択肢を持って欲しかった、現代の価値観なのかなあ
    (追記:自分を犠牲にできるほど人を愛せたみち子が羨ましくなってきた)


    「人の記憶こそが時間なんだ」
    仮面ライダー電王の大好きなキャラクターの大好きなセリフです。人の記憶とともに時間がつくられ、時代がつくられる。
    みち子の時間も確かに存在していたのかもしれないけど誰の記憶からも消えてしまったことで時間まで消えて、存在までなくなってしまったんですね…。



    あと母親も母親で、そのタイミングで父親違うって言うの、そりゃないよ…

  • タイムトラベ専門書店utoutoさんで購入した作品。傑作が多い吉川英治文学新人賞ということで少し期待しすぎた感はあるけど、タイムスリップをうまく使ってる話だと思います。

  • 切ないなぁ。喜怒哀楽のすべてを経験しなきゃならない様に出来てんだ、人生は。喜楽には生きられない。施設に居る100歳のおふくろの人生はどうだったのだろう?会いに行って来るか。自転車に乗って

  • 巻末の解説に関して、
    本作を父と子の物語として捉えた吉野仁氏の解説は非常に良い文章なのだが、みち子に対する言及が殆ど無かったのが気になった。

    個人的に、
    「本作を読み終えた読者は、どこかすがすがしい思いを抱いたのではないだろうか」
    という解説中における氏の一文にはあまり同意出来ない。

    具体的には、本編における下記一文が今でも心の中でもやもやと残ったままだからだ。

    --みち子が彼女自身の存在と引きかえたものは、いったい何だったのだろうと、

  •  タイムスリップというと、SFチックな物語を想像してしまいがちだが、浅田次郎さんという類まれな作家の手にかかると、渋い邦画のような味わいを醸し出すから不思議だ… 

     冒頭の掴みから、常に予想すらさせない展開で、タイムスリップのメカニズムに疑問を感じる余地が与えられなかった。このような設定でしが描けない世界観があり、私が大好きな池井戸潤さんの『BT’63』は、この作品のオマージュとして書かれたのでは?と思う程であった。

     物語をじっくり味わいたいという気持ちと、早く結末を知りたいという衝動を、常に闘わせながら読まなければならなかった。優れた作品は、読んで楽しいだけではなく、読者に人生を問いかけてきたり、示唆を与えてくれたりするところがある。この『地下鉄に乗って』は、まるで「あなたにとって人生とは、家族とは何ですか」と訊いてきているようだった。

     主人公である真次の人生は波乱に満ちており、多くの読者の人生とは隔たりがあると思うが、読了後は、自分の過ぎ去った人生と父、母、妻との関係とをメトロに乗って確かめに行きたくなることだろう。

     続いて『鉄道員』を読み始めたが、これもいいなぁ~

  • なんで、不倫していることが、堂々としていて
    まかり通っているのだろうか。。
    もう、こういうのは刑事罰にしてほしい。
    と思う、私の個人的な気持ちは抜きにして・・・・

    タイムトリップをしながら父を知る。
    ファンタジーなお話と言えばいいのだろうけれど
    戦争というのは
    どの人にとっても、悪でしかない。
    結局、誰も幸せにならないじゃないか!という気がした。

    女は添えもので、女は意志を持たず、
    女の気持ちは男が左右する、というこの時代が
    とても哀しい。
    そして、つくづく女は強く、男は女々しい。
    結局、暴力でしか自己を主張できないなんて。

    男の人には非常に都合のいい話だったと思う。
    書き手の年齢を思うと頷ける気もするけれど。

    みち子が消えてしまうのなら、
    その代わりにと言ってはいけないのかもしれないけれど
    お兄さんに生きていてほしかった。

    敢えての個人的な気持ちは、戦争の話が絡むのは、ダメだぁ。
    つらかったぁ。

  • 一体何という本なのだろう。色々な要素が塩梅良く練り込まれ、次頁が気になるが一行一行を味わってしまう。
    読後はホンワカ芯が温まる。惜しむべきは次郎さんの本は好きだけど残らないんだよなー!

  • アムールが父だったことには流石、と思わず感心してしまった。流石浅田と言うべきか、物語へ入り込めた。過去と現在を行き来する真次やみち子、その話を聞かされる家族の困惑や好奇心がひしひしと伝わってくる。
    しかしながら、まさかの終着点、事実には呆然。いくらなんでも悲しい、寂しすぎる。
    忘れられるとかの話ではなく、存在の抹消。誰も知らない存在。それはあまりにも。
    結局誰が幸せになれたんだろう、誰か幸せになれたのだろうか。
    シュールでロマンティックで非現実的で切ない、そんな物語だ。

  • 3回目の再読。
    本書を読んでまず感じたのが・・・ちょっと本の内容と違うんだけど、読み手側の環境や状況の変化によって、感じることも変化するんだなぁ~っていうことでした。
    この本から私は浅田小説ファンになりました。
    当時好きだったモデルのMASAKOさん(だっけ?)が雑誌ですすめていたんです。
    地下鉄の古い路線を舞台に、そこをタイムスリップの入口にするのもナイスアイディアと思います。

    ワンマンな父親に反抗し、確執を持ち、そんな主人公がタイムスリップして自分の知らない父親に会う。そして自分の知らない父親の違う面を見ます。
    でもなぜ?急にそういうことが起きるのか?
    そこに秘められた悲しい結末。
    最初に読んだ時はクライマックスがあまりにも衝撃的に感じ、すごかったぁ!という思いしかなかったんです。
    で、今回読んで・・・主人公のへんにポジティブさっていうか、あんなすごいことがあったのに淡々とし、それでも明日はくるんだーみたいな部分がちょっと鼻につくというか・・・。
    私が主人公ならきっと狂いそうになるくらい嘆くのではないかな~って思います。
    (ん・・・これは女性側の視点なのかな?)
    それと、あのアムールがどうしてこうも変わってしまったのか?というところもちょっと疑問に思ったり。
    本書はもっと長く書いて欲しかったなぁ~と今回は思いました。

    自分をこの世から自らの手を使って消してしまったみち子があわれに感じます。
    いくら『愛』のためとは言え・・・。自己犠牲できるほど愛していたんだろうけど。
    私は「I love me」だからきっと無理><

    それでも、やっぱり好きな本には変わりません^^
    たしか、この作品はTVのスペシャルドラマになったんじゃなかったかな?
    主演が佐藤浩市さんと常盤貴子さんだったような・・・ちがったかなぁ~
    観たはずなんだけど、本より感動しなかったことは覚えています。
    浅田氏の作品って、視覚どーんとくる感動じゃなくて、ジワジワとくる読書からの感動の方が絶対いいと思うなぁ~。

  • 浅田次郎さんの本を読んでいると、なんの変哲もない文章なのにパズルをはめていくような気持ちよさを味わいますね!だいすきだー

    ラスト、というよりもそれまでの旅が素敵で素敵で。
    浅田さんの描く男の人は本当に格好よいです。薄汚れた服の中身は粋で健康的で、読む側も前向きで爽やかな気持ちになります。
    大好きですが他の浅田作品との兼ね合いで星よっつ!

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著者プロフィール

1951年東京生まれ。1995年『地下鉄に乗って』で「吉川英治文学新人賞」、97年『鉄道員』で「直木賞」を受賞。2000年『壬生義士伝』で「柴田錬三郎賞」、06年『お腹召しませ』で「中央公論文芸賞」「司馬遼太郎賞」、08年『中原の虹』で「吉川英治文学賞」、10年『終わらざる夏』で「毎日出版文化賞」を受賞する。16年『帰郷』で「大佛次郎賞」、19年「菊池寛賞」を受賞。15年「紫綬褒章」を受章する。その他、「蒼穹の昴」シリーズと人気作を発表する。

浅田次郎の作品

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