住んでみたドイツ 8勝2敗で日本の勝ち (講談社+α新書)

  • 講談社
3.16
  • (26)
  • (82)
  • (128)
  • (48)
  • (19)
本棚登録 : 859
感想 : 124
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062728140

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 2014年33冊目「住んでみたドイツ 8勝2負で日本の勝ち」読了。

    ずっと気になっていた新書。

    普段の生活の違いを庶民目線でゆるく書いているのかと思ったが、国際問題、原発、労働、教育、サービス、政治とその内容は幅広い。

    ------(以下抜粋)------

    「政治家を動かすのは票の力なのに、多くの日本人はその権利を端(はな)から放棄してしまっている」

    「(日本の教員免許更新制度に関して)なかでも私がいちばん驚いたのは、その講習会費が個人負担だということである。…三万円の個人負担などといえば、ドイツの教員は暴動を起こすだろう。」

    「この際、高校でも、討論し、論文を書き、自分の意見をフルにアピールする訓練をした方がいい。悲しいかな、それは必ずしも日本人の美意識と一致しないのだが、とはいえ将来、私たちの控えめな、和を基調とした文化が世界を制覇するようになるとも思えない。」

    「(TPPについて)いまEUは、経済力やメンタリティーの違う国々が統合するとどうなるのかという例を、如実に示してくれている。そして、抜け出したくても、EUには脱退する決まりも、脱退させる決まりも、しかとは定められていない。日本は、辞めることのできない共同体に入ってはいけないのではないか。」

    -------------------------

    良い面と悪い面を両方から著者の思うままに書いてくれている内容で、気持ちよく読めた。特に、最後のTPPについては、EUというものの体験から書かれていて、自分にはまったくない発想だった(それほどの統合だという感覚もないが…)。また、ドイツ鉄道の時間が守られない話とか、義務教育から始まる選別の話とか、労働時間に対するドイツ人の感覚の話なども大変興味深く、自分たちを外から見つめた人の意見は貴重だと感じる一冊。(もちろん、著者の印象や考え方が中心なので根拠には乏しいが…)

  •  正直、需給が一致してないのではないかと思う。そのことでだいぶ星の数を下げている。
     というのも、前書きなどに見られるような日本とドイツとのギャップを(読者として)求めていたのに、第一章は著者が尖閣諸島に向かう内容を置いている。いきなりの肩透かしなのだ。しかも、内容的にはかなり思想的に(右に)偏っているのだから、これはちょっとね。
     有給の件などを見ていても、どうも著者はドイツボケし過ぎていて、冷静に日本側を見ているか不安が残るし、自身の経験に基づかないうろんな情報も書いてしまっている様子が見受けられて、信憑性にもだいぶ疑問が残る。
     一方で、ドイツの鉄道事情などはまさに「そうそう、こういうのが読みたかった」的な話であり、それだけに全体的に見るともったいない印象が残った。

     そんな次第で、星三つ半相当の評価としたい。
     

  • ドイツに30年住み、3人の子育てをしてきた女性音楽家の目線で見た日独比較のエッセイ。
    話題は鉄道サービスや店舗の休日など柔らかいものから、安全保障、外国人移民、エネルギーやTPPなど経済政策にまで及ぶ。
    新聞やテレビの評論では、「ドイツでは◯◯」とか、”お手本の国”幻想が垂れ流されるのが常であるので、免疫をつけるために一読してみるのもいいかもしれない。

  • 日本のフクシマとドイツの脱原発。休暇がストレスのドイツ人と有休を取らない日本人。不便を愛するドイツとサービス大国の日本…。在独30年の著者が、日頃、目にするさまざまな出来事から日独を比較する。。

    著者はドイツ人と結婚し30年以上ドイツに在住。鉄道ほかサービス業は圧倒的に日本が優れ、学校教育ではグローバル化を考えると日本が圧倒的に遅れ、ドイツの脱原発政策の迷走、TPP問題…等の考察が記されるが、全体的に「驚き」はなかった。
    (C)

  • タイトルから想像したのは日常的な文化比較だったけど、文化を基にした政治的な内容のほうが多いです。
    ヨーロッパの国々がどういう背景や気持ち・思惑で政治しているのかが分かりやすくかつユーモアを入れて書かれています。特にEUのはなし(イタリアとかギリシャのくだり)は笑ってしまいました。
    海外からの視点を知ることで、日本の課題や長所を感じられる本だと思います。タイトルはともかく、ヨーロッパの様子も見えるし面白かったです。

  • ドイツの鉄道が不評というのは意外!
    まあ、日本に住んでたらどこに行ってもそう感じるんだろうけど。
    ただの国民性比較ではなく、政治・経済・歴史の側面からの考察が多く勉強になった。仕事に対するスタンスは勤勉で日本人と似ていると勝手に思っていたが、かなり合理的なようで、そこも意外だ。

    • マサユキさん
      確かに、ドイツ人は几帳面なイメージがあるから、ドイツの鉄道が不評というのは意外な感じがします。
      確かに、ドイツ人は几帳面なイメージがあるから、ドイツの鉄道が不評というのは意外な感じがします。
      2014/05/15
  • ドイツ在住の著者が日本とドイツの暮らしにおける対比をしている。

    ただ私はあまりこの意見(8勝2敗で日本の勝)とは言えないなと感じた。
    本論の要旨

    日本のいいとこ
    ・思いやりのあるサービス
    ・よい治安
    ・極端な格差を生み出しにくい優れた義務教育制度
    ・すべて自分たちだけで頑張ってきた歴史
    ・きちっとしているところ

    ドイツのいいところ
    ・短時間労働、高給
    ・しっかり休める
    ・政治家がしっかりしている
    などなど

    こういうのを見ると確かにドイツより日本のほうがよく見える。
    しかし、ここで挙げられた日本のよいところは日本人という組織集団のよいところであって、一個人としてそこで生きる人にフォーカスが当てられていない。
    特に労働に関しては、奴隷的とさえいえる業務状況はそこかしこにあり、自己犠牲的に働き、家庭が崩壊している人も多く、年間3万人が自殺している。

    日本は働かず、観光で来るにはよい国だと思うけど。
    その場で働き、生きるとなると手放しには賞賛できないと思う。
    この本を読んで個人的には 6:4 でドイツの勝ちかな?
    と思う。

    ただ、なるほどなーと思ったこと。
    ドイツはできるだけ時間内に仕事を詰め込もうとするから人間関係は希薄でみんな不機嫌でイライラしている。
    対して日本ではそんなことはない。

    これはちょっと考える内容です。

  • ドイツに長年住んでいて、鉄道や国民性、働き方、歴史など比較して書いている本。

    資料とかが書いてないので、信憑性という点では少し?(著者の方の考えに片寄っているような…)でしたが、とても面白く読めました。

    勤勉で敗戦国で似ているイメージがとても強かったのですが、電車は10分遅れるとか、鉄道員が振り替えのこととか全く把握してないとか、やはり外国なんですね。(笑)
    外国の方から見ると、1分遅れただけでも謝罪する日本の鉄道なんかは異色なんだろうけど。


    特に面白かったのがTPPのこと。
    EUで居場所がなく辛い立場に置かれるドイツのようですが、日本も完全自由貿易になったら似たような境遇に陥ってしまいそう…。ただでさえ全く交渉力のない日本がTPPの枠組みに入っちゃったらもう逃げられないよなぁと、私と同じ考えでした。

    今の日本を考える意味でも、とても面白く、さらっと読めるので気軽に読める本だと思います。

  • まえがきにある、日本人の広報活動の稚拙さの具体例として、WIKIPEDI
    Aのドツ語版で尖閣諸島を調べると中国の主張がそのまま掲載されているというのには驚かされた。ちなみに英語版ではどうなんだろう。

    最近中国政府は、安倍総理の靖国参拝について  ドイツ首相がヒットらーの墓参するのと同じで、日本が軍備を増強して、近隣諸国への侵略を意図しているとPRしている。いっぽう安倍総理は、参拝は戦死した方々の慰霊と世界平和を祈願するためのものだと主張している。

    日本は、戦後ひたすら、平和国家の道を歩き経済大国を築き上げたことは世界の人々が認めるところである。

    さて世界の人々は、どちらの主張を受け入れてくれるか。しばらくは見守りたい。

    EU内でのドイツの存在感は傑出しており、それはドイツの技術力と勤勉さのせいかと思っていたが、どーもそうでもないらしい。
    終業時間10分まえの電話は誰も取り上げない、というのには思わず笑ってしまった。
    また年間3週間のヴァカンスも,大方のドイツ人はエンジョイしているとのこと。

    365日24時間会社人間であるのは、日本人だけらしい。


    いろいろと参考になりました。

  • とても読みやすく、ドイツのあれこれを知ることができた。日本有利に話を進めてくれるので気持ち良く読め、それでいて日本の問題点の指摘などはすっと心に入ってきて名著だと思う。ユーロや移民の問題にも言及していて、もっとそこらへんの事情をきちんと理解していたいと思えた。

全124件中 21 - 30件を表示

著者プロフィール

作家、ドイツ・ライプツィヒ在住。日本大学芸術学部卒業後、渡独。1985年、シュトゥットガルト国立音楽大学大学院ピアノ科修了。2016年、『ドイツの脱原発がよくわかる本』で第36回エネルギーフォーラム賞・普及啓発賞受、2018年に『復興の日本人論 誰も書かなかった福島』が第38回の同賞特別賞を受賞。近著に『メルケル 仮面の裏側』(PHP新書)、『無邪気な日本人よ、白昼夢から目覚めよ』(ワック)などがある。

「2022年 『左傾化するSDGs先進国ドイツで今、何が起こっているか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

川口マーン惠美の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×