亥子ころころ

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065161203

感想・レビュー・書評

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  • 麹町の小さな菓子屋「南星屋(なんぼしや)」のシリーズ第二弾。
    前回はいきなり、主人の治兵衛がしょっ引かれたり、孫のお君が遠い九州に嫁ぐ話が持ち上がったりとハラハラのし通しだったが、一旦は皆落ち着き、代償は払ったものの平らかな生活が戻った。
    ある意味、皆、自分らしさを取り戻した感じ。

    今回は、まだ老いは認めたくないが、治兵衛が転んで手首を傷めたところから、手伝いの職人が必要になる。
    そこに現れたのが、昔の治兵衛のように諸国を回って菓子の修行をしてきた、雲平(うんぺい)。
    同じ菓子屋で修業をしていた、弟弟子の亥之吉の消息を尋ねているという。

    雲平の出現に揺れる南星屋だが、前回ほど重くなくて良い。
    しかし、お君の心の成長が嬉しく、お永と修蔵の仲や南星屋のこの先など、気になることたくさんの展開。
    ますますの楽しみを残して、次回に続く?
    待ち遠しいです。
    そして、やたらと和菓子が食べたくなり、スーパーで豆大福をかごに入れる日々(笑)
    サブタイトルはすべてお菓子の名前。
    検索するのも楽しい。


    『夏ひすい』
    転んで手首を痛めた治兵衛。
    利き腕ではないが、和菓子作りには差し障る。
    そこへ、店の前に行き倒れた男が…

    『吹き寄せる雲』
    不思議な縁で南星屋に吹き寄せられた雲は…

    『つやぶくさ』
    安い給金で手伝ってくれることになった雲平。
    長らく江戸を出ていなかった治兵衛は、雲平のもたらした新しい風に吹かれ、一緒に菓子を工夫することが楽しくて仕方ない。
    一方、治兵衛の弟、僧侶の石海は、お永やお君に虫がつくことを嫌って、雲平を置くことに大反対。
    そこへ、治兵衛の大甥の志隆(ゆきたか)が見舞いに来るが…目的は別にある様子。

    『みめより』
    老舗和菓子屋の女将が、亥之吉の件で、と雲平を訪ねてくる。
    雲平と亥之吉が最初に菓子修行した和菓子屋の、元お嬢様だという。
    お永の様子が、なんとなく変。

    『関の戸』
    行くか行くまいか…人は戸の前で決断を迫られる時がある。

    『竹の春』
    南星屋の前で思案顔の武家の子。

    『亥子ころころ』
    亥之吉が奉公して茶席の菓子を作っていた日野家の事情が明らかになる。
    少年の笑顔が戻ったのが何より。
    当代の基知(もとのり)様が良い人で良かった。

  • 「まるまるの毬」の続編

    お君の心の傷も徐々に癒え、三人の平和な暮らしを取り戻しつつある南星屋に、ひょんなことから菓子職人の雲平が加わる

    小石を投げ込んだ池に波紋が広がるように、南星屋も雲平が入ったことにより、三人の心に微妙な変化をもたらす

    菓子職人としての確かな技を見せる雲平と一緒に菓子作りをすることが楽しくてたまらない治兵衛

    雲平と旅の思い出を語り合うことで、胸をときめかせるお永

    そんな母の姿を見て、母が雲平と旅に出るなら快く賛成しようと心に決めるお君

    謙虚で、寡黙、親方を立てしっかりと支える雲平の姿は
    読んでいても気持ちが良い

    そして、治兵衛と雲平が、『打てば響く』がごとく、お互いの技と知識を出し合い工夫を重ね、菓子作りに勤しむ姿が何ともかっこいい
    南星屋の菓子がさらに進化したようだ

    吹寄せや求肥の由来や上用粉と上新粉の違いなど、ほんのちょっとだけど和菓子に関するミニ知識もついたような

    「ここに来るだけで、諸国を巡ったような心地になれる
    客にとって、これほど心浮き立つことはありやせん」
    という一節は、

    「これを読むだけで、諸国を巡ったような心地になれる
    読者にとって、これほど心浮き立つことはありやせん」
    というふうに置き換えられるのではないだろうか

    諸国のいろんな銘菓、味見ができたらもっといいのだけれど・・・

  • “まるまるの毬”続編。
    江戸の町を舞台に、お菓子屋を営む主人公と家族の物語。

    優しくて人情深い登場人物達に、もう一度会えて嬉しかった。前作同様に、皆がお互いを思いやっていて、ふわりと温かい気持ちになりました。今作には、弟分を探す“雲平”という新しいキャラクターが登場して、物語に新しい人間関係や謎解きのスパイスといった彩りを与えます。

    前作の少し重苦しい感じが、今作には無くて読みやすかった。主人公治兵衛の、お菓子作りへの情熱、楽しさや喜びが伝わってきて、読んでいる方までわくわくします。

    これからが気になるところで終わり。
    また続きが読みたいです。



  • 全国各地の銘菓を日替わりでふた品、しかも値段も手頃で味は極上、店を開けて一刻ほどで売り切れ御免の「南星屋」。
    ある日、主人で菓子職人の治兵衛が左手首を痛め、思うように菓子を作れなくなってしまった。
    そんな折、たまたま店の前で行き倒れていた男を助けてみれば、その男もまた、若き日の治兵衛と同じく渡りの菓子職人であった。

    雲平と名乗った男は、かつて江戸でともに修行をした仲間の亥之吉からの便りが突然途絶えたため、年季を切り上げて京からやってきたのだという…


    おお、「南星屋」まさかの続編!
    まさかの、と書いたのは、治兵衛の年齢と、前作で治兵衛がひとつの頂点に達したところで物語が終わっていたから。
    この時代の平均寿命を思うと、本作で六十三歳を超えている治兵衛が現役職人というだけでも大変なこと。
    けれど、雲平との出会いで、治兵衛の職人魂はまだまだ燃え尽きることなく、新しい技やさらなる工夫を加えて、もっといいものを作り続けるだろうな、と感じられた。

    物語は、雲平の登場で新しい風が吹き、亥之吉の出奔の謎を追う連作。
    前作のような重苦しい秘密はないけれど、季節の和菓子をきっかけに謎がゆっくりとほぐれてゆき、これ以上はないハッピーエンド…いや、ハッピーを予感させる終わり方。

    治兵衛さんには頑張ってうんと長生きしてもらって、ぜひお永さん、お君ちゃんまで家族皆のこの先を見せて欲しい!


    あーあ、こんな和菓子屋さんがご近所に欲しい…
    でも毎日2種類制覇は大変だ。
    だって、和菓子も好きだけどケーキも食べなきゃいけないし…

    しかもたまたま今同時に読み進めていたのはビールの醸造所が舞台の話で、ビールも飲みたくなるし。

    結構エライ僧侶のくせに、毎度お茶目な食いしん坊の石海が、もしかして一番好きなキャラだったりして。

  • 『まるまるの毬』の続編。

    武家出身の職人・治兵衛、出戻り娘のお永、孫娘のお君と三人で営む「南星屋」。
    行き倒れの菓子職人・雲平を助けた事から、雲平の弟分の行方探しと、旗本の隠居の死の真相。それらに絡む諸々を、各地の美味な菓子と共に展開していきます。
    腕の確かな雲平と、共に菓子を作れる喜びでウキウキしてしまう治兵衛さんが微笑ましいです。
    一方、お永の心は揺れているようで・・。そして前作で縁談が破談になってしまった、お君に想いを寄せる人も現れます。
    色々あったものの、心温まるラストにほっこりしました。続きはあるのでしょうかね。

  • 涙が滲んだ読後。絶対出ていくと思ったのに、まさかの・・・でした。登場人物全員が少し不器用だけど、まっすぐで思いやりに溢れている。そんな人達の関わるお菓子は本当に美味しそう。和菓子を買いに走りたくなります。女心も男心も、とても丁寧に描かれていて、思わずふふ、と笑ってしまったり。みんなのその後を読みたい。お永さんがどちらを選ぶのか、お君が誰と添うのか気になります。#NetGalleyJP

  • 久しぶりの西條奈加さん。
    このほっこり感が落ち着く。
    新しい職人さんが「南星屋」働くようになり、今後の展開が気になる。

  • 家族って厄介です。大切な存在だからこそ思いやりすぎて、先回りして相手の気持ちを決めつけ、自分の気持ちに蓋をしていい親・いい娘を演じちまう。素直な気持ちを伝えるのが肝要と、分かっちゃいるけど(^^;)

  • 前作「まるまるの毬」に続く待望の二作目。前作の良さを損なわず、暖かな心配りで美味しいお菓子を作ってくれる南星屋の人々の姿に元気をもらえる。

    ひょんなことから雇うことになった若い菓子職人の雲平に刺激を受けより一層の精進を目指す治兵衛の姿に、成長と学習に年齢は関係ない、こういう歳の重ね方をしたいと思わせた一冊。

  • 小説現代2016年1月号:夏ひすい、8月号:吹き寄せる雲 、2017年5月号:つやぶくさ、9月号:みめより、2018年1月号:関の戸、5月号:竹の春、8月号:亥子ころころ、の7つの連作短編を2019年6月講談社から刊行。シリーズ2作目。面白いのだが、なんかわざとらしさを感じます。

    • goya626さん
      うーむ、なかなか評価が厳しいですね。
      うーむ、なかなか評価が厳しいですね。
      2020/08/09
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著者プロフィール

1964年北海道生まれ。2005年『金春屋ゴメス』で第17回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、デビュー。12年『涅槃の雪』で第18回中山義秀文学賞、15年『まるまるの毬』で第36回吉川英治文学新人賞、21年『心淋し川』で第164回直木賞を受賞。著書に『九十九藤』『ごんたくれ』『猫の傀儡』『銀杏手ならい』『無暁の鈴』『曲亭の家』『秋葉原先留交番ゆうれい付き』『隠居すごろく』など多数。

「2023年 『隠居おてだま』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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