深淵と浮遊 現代作家自己ベストセレクション (講談社文芸文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065178737

作品紹介・あらすじ

アンソロジスト高原英理の呼びかけで実現した、未だかつてない「作家自己ベスト作品集」。

「そう来たか!」と意表を突くセレクトから納得の王道的傑作まで、さまざまな味わいの短編小説をはじめ、随筆、短歌、経典の評釈――
現代文学の最前線を牽引する文学者たちが挙げた、「自己ベスト作品」を集成した豪華アンソロジー。

「編者が作品を選ばない」
この編纂方法でなければ一堂に会することはなかった、それぞれの作家固有の文学観と達成を示す煌びやかな収録作品群の妙を堪能できる、奇跡の一書!


「これまでいくつかアンソロジーを編んできて、ほぼどれもありがたい反響をいただき、よい仕事をしたと自負もしているが、ただ、ときに内心忸怩たる思いがないではなかった。どこまでいってもこの自分の視点からしか見られないことの無念である。自分のまるで考えもしなかった視界を開く方法はないか。
こうして当アンソロジーのプランは生まれた。参加していただける個々の作家自身の決定にお任せする。それは私などの狭い先入観を裏切って思いもよらない豊饒な結果を生むだろう。ご覧いただきたい」
(編者・高原英理氏解説より)


〈収録作品〉
伊藤比呂美「読み解き「懺悔文」女がひとり、海千山千になるまで」
小川洋子「愛犬ベネディクト」
高原英理「ブルトンの遺言」 
多和田葉子「胞子」 
筒井康隆「ペニスに命中」
古井由吉「瓦礫の陰に」
穂村弘「いろいろ」 
堀江敏幸「のぼりとのスナフキン」
町田康「逆水戸」
山田詠美「間食」

感想・レビュー・書評

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  • 編者が作品を選んでいないのに、ほむほむの『共感と驚異』からの堀江先生の驚異の到達点であるスナフキン論。エンタメと純文学。わかりやすさとわかりにくさ。老成と思春。生と死。今の読者はわからないことの抵抗感が強いし、驚異を描きたくても、この世の全てを引き換えにしても未知の価値を得たいが、ほとんどは失敗する。だが、無謀な賭けに成功した一人が次の新しい世界を拓く。
    またこの作品集で伊藤比呂美さんを初めて読む、癖になりそうな筆致。

  • 満遍なく良かった

  • 途中まで、あやうい、奇妙なおはなしなのかな?と恐る恐る読んでいた。14歳にもなる「妹」がブロンズで出来たミニチュアの犬の「ベネディクト」をいかにも本物の犬のように、餌をやったり、さんぽしたりして飼っているから。
    途中、「おじいちゃん」ももしかしたらかわっているのかも、そして「僕」もだんだんそちら側にいくのかも、、と不安になるが、二人の会話のシーンで、妹の行動について冷静に捉えられているような一面が見られて安心する。しかし、そこから今度は「ベネディクト」が自ら動いているのかも、、?とホラーちっくな雰囲気を醸し出すのでまたグッとこのテクスト世界に引き込まれる。そんなふうに「僕」も読者も巻き込んでおきながら「ベネディクト」は落ち着き払った表情でただそこにいる。
    たった3人で暮らす家族が、蚤の市からやってきた「ベネディクト」によって4、5日前よりすこし強く繋がるような希望を持たせて、物語は閉じる。

  • 『編者が収録作を選ばない』というユニークなアンソロジー。『深淵と浮遊』というタイトルも不思議な感じがして良い。
    収録された作家は作風も、ジャンルもバラバラなのに、底の方に共通点が感じられるという不思議。

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著者プロフィール

伊藤比呂美
1955年、東京都生まれ。詩人。78年に現代詩手帖賞を受賞してデビュー。80年代の女性詩人ブームをリードし、『良いおっぱい 悪いおっぱい』にはじまる一連のシリーズで「育児エッセイ」という分野を開拓。「女の生」に寄り添い、独自の文学に昇華する創作姿勢が共感を呼び、人生相談の回答者としても長年の支持を得る。米国・カリフォルニアと熊本を往復しながら活動を続け、介護や老い、死を見つめた『とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起』(萩原朔太郎賞、紫式部文学賞受賞)『犬心』『閉経記』『父の生きる』、お経の現代語訳に取り組んだ『読み解き「般若心経」』『たどたどしく声に出して読む歎異抄』を刊行。2018年より熊本に拠点を移す。その他の著書に『切腹考』『たそがれてゆく子さん』『道行きや』などがある。

「2022年 『伊藤ふきげん製作所』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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