- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087464436
感想・レビュー・書評
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ここまで心を揺さぶられる小説を読んだのは久しぶりです。
本当に心が洗われるというか、人生を前向きに考えられるようになる小説でした。
この小説のあらすじですが、8年後に小惑星の衝突により世界が破滅するという発表があってから5年後、残り3年しかないという状況で、仙台にある『ヒルズタウン』とよばれる町で生活している人々の姿を描いた8篇の短編集です。
8つの物語のなかでそれぞれの主人公達はそれぞれの想いを胸に日々を生きています。
8つの物語、それぞれ心を打つものがあります。
ここに描かれている人達は、命について「達観」しているというか、「悟りに至っている」という言葉が正しいのか分かりませんが、そういった境地にたどり着いている人が多いのは必然なのでしょう。
なぜなら、この小説では直接的な描写はありませんが、ここに至る5年間の間に、暴動や大規模な騒乱、略奪、強盗に殺人、そして自殺といったあらゆる不幸な出来事がおき、世界の破滅を迎えるに至って、それに耐えられず精神に異常を来した人達やそれ巻き込まれた人など多くの人々が命を失っています。
つまり、そういった異常な事態を生き残った人達がここに描かれている人達ですので、ある意味においては、もう既に選ばれた人々なのです。
8つの物語のなかで、僕が一番刺さった物語は、4番目の物語『冬眠のガール』です。
現在23歳の彼女は、4年前の19歳の時に突然両親を失います。殺されたのでもなく、事故や病気で失ったのでもなく、二人そろって自殺してしまったのです。一人娘である彼女を残して。彼女はそれ以来、3つの目標を立て、それを紙に書いて壁に張り、4年間何とか一人で、その目標を実現するために生き残ります。その3つの目標とは、
〇『お父さんとお母さんを恨まない』
〇『お父さんの本を全部読む』
〇『死なない』
読書家だった彼女の父は、自分の書斎に数千冊の本を所蔵しており、彼女はその本を4年間かけて全部読み切ります。この『冬眠のガール』は、彼女が最後の本を読み終わったところから始まります。
2番目の目標を達成してしまった彼女は、新たな目標を探すために、多少の落ち着きを取り戻した町に繰り出します。そこで彼女は新しい目標を見つけます。その新しい目標とは・・・。
彼女は、あくまでも素直で前向きです。そして3つの目標を忠実に守る。余命3年であるにもかかわらず新しい目標に向かって努力を惜しまない。そのひたむきな彼女の姿に心を打たれます。
この小説がこれだけ感動を呼ぶのは、『死』を目の前にした人々の生活に真っ正面から取り組んでいるからでしょう。
僕たちは、誰でも死にます。それはいつか分からない。誰もがもっと先のことだろうと何の根拠もなく思っています。
『死』を意識しながら生きている人は少ないでしょう。しかし、そこに明確な『死』の期限が設定されれば、誰でもその圧倒的な威圧感の前で立ちすくみます。
誰の前にも『死の壁』は立ちはだかっているはずなのに、それが透明で見えないからこそ、誰もが全力でそこに向かって走っていくことができるのです。
でも、その壁に色がついてしまったら?
あなたはそこに向かって全力で走って行くことができますか?
この小説に描かれている人達は、全力とは言わないまでも、その『壁』に向かって確実に一歩一歩に前に向かって進んでいく人達です。
そこには、諦めや達観や希望や絶望や、ありとあらゆる感情が渦巻いています。でも、そこにあるのは、決して『絶望』だけではないのです。
「子供を産もうとする夫婦」「恋人を探そうとする若者」「誰よりも強くなろうとする少年」「最後の最後まで小惑星を観測しようとする天文学者」など、この小説に登場する彼らは、最後の最後まで諦めません。いや、生き残ろうとするのではなく、最後のその日までしっかりと生きようと心に決めているのです。
この小説は、人生の素晴らしさ、ありがたさ、そして、この世界をいとおしく感じることをもう一度改めて思い起こさせてくれる、素晴らしい物語です。
少年少女から老人まで、一人一人考えることは違うかもしれません。
ただ、誰にとってもかけがえのない自分の一生を見つめ直すきっかけを与えてくれる本であることは間違いないと思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2021(R3)3.6-3.13
8年後に小惑星が地球に落ちることが分かり、世界は大混乱に陥る。人々は自暴自棄になり、自殺の多発、殺人や強盗などのあらゆる犯罪が起きる。治安当局は、これを止めることができなくなり、無法地帯に。
それから5年。なぜか事態は沈静化し、表向きには日常が戻った。そんな日々を過ごす8組の家族の物語。
3年後に地球が滅亡するという絶望しかない中で、人はどう生きるのか?
けんか別れした娘と仲直りをする老夫婦や、子どもができたことに喜ぶものの、出産を迷う夫婦。身寄りのなくなった人たちの間を回り、亡くした相手の代わりを演じる元女優志望の女性。
どれもが普通の生活なんだけど、「3年後に地球が滅亡する」という現実があるからこそ、それぞれの人生が動き出していた。
この本を読んでいる最中、仕事の先輩の奥様が、胃がんで亡くなられた。孫の顔を見ることなく、定年退職を半月後に控え、これから夫婦で第二のハネムーンを迎えたであろう先輩と奥様。きっとご自分は、こんなに早く人生の幕を閉じるなんて思いもよらなかったと思う。ガンが発見されてから2年弱の間、「人生の終わり」を自覚する日々とはどんなものだっただろう。先輩はどんな思いで奥様の「人生の終わり」に向き合ったのだろう。
3年後に自分の人生が終わるとしたら、僕はどんな日常を過ごすのだろう。そんなことを考えてみたら、ひどく憂鬱になった。だけど、本書の登場人物は、終わりが決まっているからこそ、自分の命をあきらめずに生きている。自分は自分の命をあきらめず生き切れるだろうか。いい人生だったと言って小惑星の到来を笑って迎えられるだろうか。
どんな終わりを迎えるとしても、「これで良し」と穏やかに迎えたいなあ。 -
8年後に小惑星が地球にぶつかり人類が滅亡すると発表され、世界は治安が悪化し殺人や暴動で溢れていた。そこからさらに5年が経ち、小康状態となった仙台が舞台。
「あなたの今の生き方は、どれくらい生きるつもりの生き方なんですか?」と聞かれたらあなたはどう答えますか?というか、答えられますか?
この本を読みながら常に感じていたのは、誰もが明日を生きられる保証はないということ。今日誰かに殺されるかもしれないし、明日地震が来るかもしれない。そうなった時、家族にもっとありがとうって言えば良かったと。あの人に好きって伝えれば良かったと。ごめんねって謝れば良かったと。もっともっと会ってれば良かったと。少しでも後悔しないように、まずは今日を丁寧に生きてみよう。毎日が意味のあるように過ごすってなかなかに難しいけれど、またでいいやと後回しにしていたことを1つやってみるだけでもいい。私は今日は、昨日より多く家族に感謝を伝えようと思う。
「誰かが日常生活を送っている、という事実に嬉しくなる」という一文がある。コロナ禍のいま、同じようにどこかの家からカレーの匂いがすると安心するのは私だけだろうか。人と必要以上に関わらなくなった今日に、隣の人も同じように我慢をし恐怖に耐えながらそれでも日常生活を送っているんだと感じる。滅多にしか聞かなくなった外で遊び回る子供達の声も近所の工場の大きな音も車の走る音も誰かが生きてる音なのだけれど、やはり食べ物の温かさが含まれている匂いは特別に安心する。
みっともなくても必死でも、とにかく生きる。生き切るんだ、と強く感じた。必ず終わりはくる。その終わりが見えていたとしても最後まで生き切ろう。東日本大震災から10年、そんな時期に読んでいたのもあって考えさせられる時間が多かった。やっぱり大切な本。 -
3年後に小惑星が衝突して人類が全滅するという状況での様々な人間模様。当初のパニックはおさまり、世情は平穏に見える中でのそれぞれの心情や出来事が語られる。各物語に、他の物語の登場人物が絡んできたり様子が語られるのもおもしろい。
引きこもって本を読んでいた子が、新たな目的を見つけにいろんな人をめぐる「冬眠のガール」、子供やおばあちゃんなどに関わり役割を演じていたのがという「演劇のオール」などがおもしろかった。
最後の「深海のポール」で語られる「じたばたして、足掻いて、もがいて。生き残るのってそういうのだよ、きっとさ」というセリフが印象に残った。地球が破滅しなくても、生きるってそういうことで、この本のどの物語でも語られているように何かしらで人同士繋がっていくのだろう。
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世界の終わりを三年後に控えた仙台のニュータウンを舞台にした短篇集。
世界の終わりにあがくのも人間、悟り、受け入れるのも人間なんだろうと思う。
好きなのは「冬眠のガール」と「籠城のビール」一番好きなのは「太陽のシール」 -
終末の世界で過ごす人々の短編集。
終末世界というSFのような世界観で、同じ団地で暮らすそれぞれの生活が非常に面白かった。 -
コロナ禍の中、思い出したかの様に再読した。
当たり前の日常に、笑ったり泣いたり。
改めて、大切な存在がそばに居る有難さを考える時間になった。 -
3年後に小惑星の衝突で全世界が滅亡するなんて考えただけでも怖くて、でも妙にリアリティもあって読み終わった後も、しばらく恐怖の波に飲み込まれていました。
でも、この本は絶望だけではなく、
残された人生を前向きに全力で生きている人達から、
後悔しない生き方や、絶望の中でも希望を見出してなんとか生きていく、力強さを感じました。
続きが気になって気になって、
読み切ってしまうと楽しみがなくなると思って、ちびちびと大切に1つずつ読みました。
・自分はやりたい事を先延ばしにして妥協をした人生を送っていないか?
・自分の大切な人たちを、現在進行形で大事にできているか?
など、自分に当てはめて考える機会を得られました。
さっそくやりたい事を、妥協をしたり、諦めずに取り掛かろうと前向きに思えました。
時間は有限!
毎日を、だらだらと目的もなく
なんとなく消化している人生を送らないように生きていこうと思えました! -
デビュー作から順に再読11。
世界の終末が来た時、誰とどんなふうに過ごしたいか考えてしまう。
「演劇のオール」が一番好き。 -
悲惨な設定なのに、なぜだか心がふんわり温かくなるような、不思議な読後感。残された数年、自分ならどう過ごすかな。
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三年後、小惑星が衝突し地球は滅亡する、として
残りの三年を私やったらどう生きるかしらね?
それって、周りの誰が生き残っているのか、によって随分変わってくるよね。と思った私ははひとりになった時は生きる事を放棄するかもね。
「あのな、恐る恐る人生の山を登ってきて、つらいし怖いし、疲れたから、もと来た道をそろそろ帰ろうかな、なんてことは無理なんだよ」「登るしかねえだろうが」
「明日死ぬとしたら、生き方が変わるんですか?」「あなたの今の生き方は、どれくらい生きるつもりの生き方なんですか?」
辛くても寂しくてもあと三年でも、それでも生きていく人達の姿は尊く、人間味に溢れ幸福そうで、読後は爽やか。日本茶が美味しい。 -
伊坂幸太郎さんの本は二作目。前に短編工場(人気作家さんたちのアンソロジー)を読んだ際、初めて伊坂幸太郎さんの作品「太陽のシール」を読んで、誰?この素敵な文章を書く人は!!ってすごく感動したのを覚えています。それでちょっとしてから手に取った「終末のフール」この作品に以前読んだ短編が掲載されていて勝手に運命感じちゃいました。というのもあって一番好きな章は「太陽のシール」
ですね。最後の
「それならオセロを二組に分かれて、できるじゃないか。」という富士夫君の言葉が個人的にえらく気に入ってます(^^) -
心地よい終末、穏やかな絶滅、緩やかな破滅、暖かい終焉、優しい破局。
それがこの物語体験だった。
解説でもキューブラー・ロスの「死の受容」の段階が記されていた通り、この作品は否認、怒り、取引、抑うつの段階を経て受容の段階にある人々が残りの日々を過ごす。
一つ一つの物語に派手なところはなく、終始心地よく、穏やかで、緩やかで、暖かく、優しいエピソードに包まれている。
それでも時折、あと3年程で間違いなくこの世界が終わり、自分たちの命も尽きる『最後の時』(p.369)が来るという決定済みの未来が覗いてくる。
その時、主人公たちよりむしろ、読んでいるこちらが恐ろしい気分になり、次のページで「世界の終わりはとんでもない誤報でした」とか「最新の観測によれば世界は終わらない事が確認されました」的な発表がされないかと願う。
その時、あぁ、主人公たちと違って物語を読んでいるこちらはまだ受容の段階に達していないんだ・・と洞察に至る。いや、愕然とする。
死の受容は必ずしも一方通行に進む訳ではなく、時に前段階へ戻ることもある。
この物語はディストピアものであり、終末ものではあるが、ゾンビも銃も出てこない。悲愴感もない。
しかし恐ろしく、心地よい気持ちになる。
その他
『『東京物語』と『帝都物語』って一貫性があるのかないのか、』(p.348) -
世界が滅亡するというテーマに沿った程よく退廃的で程よく哀愁を感じる短編集。
この間見たエンドオブザワールドという映画もそうだったけど、
世界の終わりに対してこういう視点で人の生き方を描くっていう事自体好きなのかも。
いままで読んだ伊坂作品の中でもぶっちぎりで好きだった。 -
世界が終わるまであと3年。ある町に住む人たちが主人公ということで、主人公の違う8つの話が入っていて、それぞれがリンクしあい、そこで話が進んでいくという形。山はないとしても、うまいことできているなぁ~って思った。俺の中で一番面白かったのは最後の『深海のポール』。きっと俺も"じたばたするけど、許してくれよな"って思う。
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短編だし、あっさり読みやすいから、伊坂幸太郎作品の中でもあまり好きって人に出会わないんだけど、私はすごく好きな一冊です。
"8年後に小惑星が衝突すると予告されてから5年後"という混乱も過ぎてあと少しという絶妙な舞台がすごく良い。
「明日死ぬとしたら、生き方が変わるんですか?」「あなたの今の生き方は、どれくらい生きるつもりの生き方なんですか?」
「鋼鉄のウール」より
人の命に永遠も保証もない。あと8年と言われないと気付けないのか、頑張れないのか。いつ死んでも誇れる自分でいるような生き方をしないといけないと、この作品を読んで思えるのです。 -
伊坂幸太郎が好きだ、と久しぶりに彼の小説を読んで思った。
数多くの魅力的な登場人物が、それぞれのストーリーで同時並行に生きている。そしてそれが最後何気ない瞬間で絡み合う感動というのは、やはり伊坂幸太郎らしい演出だ。
特に感動したのは「鋼鉄のウール」と「深海のポール」
前者では家庭事情に苛まれる少年が、スポーツジムの選手に憧れ前に向き直るという、一種のスポ根のような話。
後者では穏やかでありながらも、やはり粗暴な父に育てられた息子の漢らしさに痺れた。
一章一章が短編であるにも関わらず、全員が主役となった映画を創り上げられそうな充足感は、舌を巻くしかない。
隕石衝突、世界滅亡という重いテーマに服して、まるでバイオハザートような社会にも関わらず、「それでもなお生きる」ことに向き合う人間たちは、かっこ悪くも美しい。
洒落た言葉遣いや表現、読後の爽快感。
やはり、伊坂幸太郎。好きです。 -
小惑星が3年後に落ちるまで8人の主人公らが生と死の狭間で生きる意味を模索する話。世界観は世界の終わりが決まってからあちこちで暴動が起きた後の小康状態。世界が終わること以外は現実世界と変わらない。
めちゃくちゃ面白かった。ありえない設定だけど普通の小説として読めて、死が迫っているから一段とセリフに重みを感じるし、登場人物のそれぞれが持つ現代特有の背景が死と絡まることでら、彼らが生きることとどのように向き合っているかが読み取れる。
一番良かったのは、死に直面した時の人々の愚かさ。
死が確定すると誰もが仕事や役割を放棄していて、まさに化けの皮が剥がれた状態になる。仕事の罪悪感や死への恐怖で辞める人がいる一方でいまだに店を開けてたり、使命感で仕事する人もいる。『もうルールに縛られる必要がない』と知った途端にありのままの姿を晒す。もし強い諦めを強要するような事態になっても普段と変わらない自分でありたいと思う。 -
年後に隕石が地球にぶつかって地球がなくなっちゃうよ、
と発表されてから5年後のお話。
この時間設定は、伊坂氏らしい設定だなぁと。
さて、人はそんな宣告をされたら、パニックになるらしい。
治安もなんも、あったもんじゃなくなるらしい。
そして、あきらめたように終息するらしい。
おそらく、私は、これになぞられて生きているような気がする。
できれば、生きていたいと、現実世界では思うけれど、
人は3年後に人類がいなくなる可能性が非常に高い、と知らされて
それでも、力強く生きることってできるのだろうか。
通常の世界での、人の終わりはさまざまな形で、
継がれていくものがあったり
或いは、世界は自分がいなくなっても、
ほかの誰かが生きていて、続いていく。
けれど、この小説の中では継がれていくものが、
あるのかないのか定かではなく
みんないなくなるかもしれないし、
そうではないかもしれないなんて不確かな、
そんな中で、生きて行くのは、きっと結構、しんどい。
いろんな歪が人の中にできるだろうな、と思う。
その日が来る前に死を選ぶ人は、まだ、世界が続いているうちに・・
ということなのかもしれない。
それでも、ぶれない苗場のような人もいるし、
恋をしようという女子もいる。
人は、ほんの小さな希望や光でも見つけ出して
生きてみようと思えるのかもしれない。
思えるのだと思いたいな。
この、ヒルズタウン付近でおこっている、それぞれのエピソードが
日本各地で、世界各地で形を変えておこっているのだと思えば
ちょっと、前向きな終末が迎えられそうな気もする。
或いはみんなの思いで「隕石はぶつからなくなる」とか・・・
私の終末はいつやってくるのかはわからないけれど、
誇れるものなど何もないけれど、私は最後まで生きたよ!と言いたい。
言えるように生きたいと思う。
短編の中では「演劇のオール」が伊坂氏らしくて好きだ。
あと「太陽のシール」あと「冬眠のガール」
あと「鋼鉄のウール」あと・・・・全部だな。 -
一つのバックボーンに色んな人達の想いを絡めた作品。
最後にどうすべてが繋がっていくか…
地球の消滅にかけての色んな人の日常。でも、起きてることは非日常。 -
もし明日世界が終わるとしたら、あなたは何をしますか?
…っていう質問ってよくあると思うんだけど、これって究極。
世界の終わりが予告されていて、人類に、地球に残された時間はあと3年。
そんな極限の状態の中で、ひとびとはどう生きるのか。
短編集だけど、登場人物みんなが仙台に住むご近所さん。
互いに関係し合っていて、その存在が知らず知らずのうちに救いになったりしているのが、すごく自然に上手く描かれていた。
終末が見えていても希望を捨てずに強く生きるひと、私もそうなりたいなとしみじみ。
最初に書いた質問に対して、普通に日常を送る、って答えられたらなんて素敵だろうなあ。
明日世界が終わるとしたら、その答えと同じ過ごし方を、毎日の中でできたらいいなって思う。
すごく難しいことだけどね。
とりあえず私は、自分の大切なひとたちと残された日々をのんびりと暮らしたいなと思います。 -
伊坂幸太郎作品ではこれが一番好きかもしれない。
「隕石で地球滅亡が知らされてから数年経った後のパニックがちょっと落ち着いた小康状態」という絶妙な所を切り取った作品で、終わりに向かう人々の絶望しているわけでもなく案外淡々としている描写が良い。
この中では冬眠のガールがとても好き。 -
「世界が終わる」
この状況に直面したら自分はどうなるか。
それでも明日を生きようと思えるか。理性を保てるか。本能に溺れるか。恐怖に打ち勝てるか。
色んなことを考えながら読んだ。
登場人物が皆まっすぐで綺麗。
どんなに暗い中でも希望は生まれるんだなと思った。
最後のシーンが印象的。 -
泣ける本を探して購入。
結果一滴の涙も出なかったけど、まさに「万馬券を当てた」ような出会いだった。
泣けない、だけどいい。そこが良い。
そんな本は初めてです。
どの話にも必ずある最高の一文に惚れ込みました。
大好きです。