人間失格 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101006055

感想・レビュー・書評

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  • 人間の本質を突いてる。

    誰もが多かれ少なかれ
    抱えてる生きづらさを
    巧く表現してる。

    こんなダメ人間と私は
    違うと、

    突き放せる人はいない
    のではないでしょうか。

    まあ名作中の名作です
    もんね。

    作品が発表されてから
    早七十五年。

    これまで数多の読者が
    共感してきたでしょう。
    そして、これから先も。

    多くの人びとに人間の
    本質を知らしめ救いを
    与える。

    それこそ著者にとって
    なにより救いなのでは
    ないでしょうか。

  • 教科書に載っていた「走れメロス」以外で、ちゃんと太宰作品を読むのは初めてかもしれない。

    解説にもあるとおり、太宰治の内的、精神的な自叙伝。
    内的、というよりしっかりと自叙伝だと思う。

    読んでいて、やたら読点(、)の多い文だなと思った。
    いつもそうなのか、それともこの作品だけ意図的にそうしているのかはわからないが、主人公の不安感や閉塞感を表すには効果的だと思った。まるで心中でハアハアと息切れしているよう。

    【つまり、わからないのです。隣人の苦しみの性質、程度が、まるで見当つかないのです。ただ、めしを食えたらそれで解決できる苦しみ、しかし、それこそ最も強い痛苦で、自分の例の十個の禍いなど、吹っ飛んでしまう程の、凄惨な阿鼻地獄なのかも知れない、それは、わからない、しかし、それにしては、よく自殺もせず、発狂もせず、政党を論じ、絶望せず、屈せず生活のたたかいを続けて行ける、苦しくないんじゃないか? エゴイストになりきって、しかもそれを当然の事と確信し、いちども自分を疑った事が無いんじゃないのか? それなら、楽だ、しかし、人間というものは、皆そんなもので、またそれで満点なのではないかしら、わからない、……夜はぐっすり眠り、朝は爽快なのかしら、どんな夢を見ているのだろう、道を歩きながら何を考えているのだろう、金? まさか、それだけでも無いだろう、人間は、めしを食うために生きているのだ、という説は聞いた事があるような気がするけれども、金のために生きている、という言葉は、耳にした事が無い、いや、しかし、ことに依ると、……いや、それもわからない、……考えれば考えるほど、自分には、わからなくなり、自分ひとり全く変わっているような、不安と恐怖に襲われるばかりなのです。自分は隣人と、ほとんど会話ができません。何を、どう言ったらいいのか、わからないのです。】

    残念ながら特に感じ入ることもなく読了。

    ただ、読んでいる間、J.D.サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」に似た感じがしていた。
    まるで違う話なのに。
    どちらも「あなたにもそういう部分があるよね」と語りかけるような感じなのかも?

    • みんみんさん
      い、い、いきぐるしい…(꒪⌓︎꒪)
      い、い、いきぐるしい…(꒪⌓︎꒪)
      2023/09/06
    • aoi-soraさん
      土瓶さんの「ライ麦畑でつかまえて」のレビューを読んできました(笑)
      実は私、ライ麦畑は何度かチャレンジしてるけど、何故か最後まで読めずに投げ...
      土瓶さんの「ライ麦畑でつかまえて」のレビューを読んできました(笑)
      実は私、ライ麦畑は何度かチャレンジしてるけど、何故か最後まで読めずに投げ出してるの(⁠~⁠_⁠~⁠;⁠)
      太宰の人間失格のほうがまだ読めます…
      2023/09/06
    • 土瓶さん
      あおいさん。
      わかりますっ(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)ウンウン
      あれは読みづらい。
      辛かった(~_~メ)
      あおいさん。
      わかりますっ(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)ウンウン
      あれは読みづらい。
      辛かった(~_~メ)
      2023/09/06
  • 初の太宰治はブク友おびさんが3回?も読んだ
    一番有名な「人間失格」です:.゚٩(๑˘ω˘๑)۶:.
    古典、純文学はいっさい読まず、まぁ教科書に載ってたなぁくらい笑
    今後も読む事はないだろうと思ってました。
    が!しかし!
    食わず嫌いはダメだ!

    太宰治は無頼派…どんな派⁇
    黒カバーの洒落たこの本…薄っ!(꒪⌓︎꒪)
    そして読みやすい文体!
    御坊ちゃまだからか何故か乙女っぽい言葉使い笑

    自分以外の人を「人間」と呼び、人間になれない自分を卑下し蔑み生きる値打ちもない…
    良すぎる頭脳、歪な感情、湧き出る負のオーラに依ってくる女達…

    この作品の執筆後に入水自殺する太宰ですが…
    ‥‥よく39歳まで生きていられたなぁ
    と正直思いました(u_u)

    自分を騙しながら生きた太宰は幸せではなかったけれど、こうして今でも読まれ続けている…
    太宰の事を話すこの世の人間達を顔を引き攣らせながらあの世で怖がっているのではないかしらん?

    さぁ次は「晩年」でも読んでみよっと♪



    おまけ…解説の奥野健男氏の太宰治愛が凄い笑


    • 土瓶さん
      鼠先輩だと……、いや違うか(笑)
      鼠先輩だと……、いや違うか(笑)
      2023/12/12
    • おびのりさん
      純文学の世界へようこそ。
      みんみん、太宰治の本はみんな薄いよ!
      持ち運び便利!

      走れメロスの元ネタ知ってる?というか、創作の元だけど。
      知...
      純文学の世界へようこそ。
      みんみん、太宰治の本はみんな薄いよ!
      持ち運び便利!

      走れメロスの元ネタ知ってる?というか、創作の元だけど。
      知っちゃうと、走れメロスが走れメロンくらいには、なるよ。
      2023/12/12
    • みんみんさん
      メロスはメロン笑
      ちょっと調べてみよう♪
      太宰のくら〜いヤツから読みたい(・`◡︎´・)
      メロスはメロン笑
      ちょっと調べてみよう♪
      太宰のくら〜いヤツから読みたい(・`◡︎´・)
      2023/12/12
  • 【読もうと思ったきっかけ】
    日本のベストセラーランキングで歴代3位(657万部)だったのと、一生に一度は読むべき小説人気ランキングで1位だったことに興味を持ったため。

    【読後の感想】
    初の太宰治作品。
    解説を含めても180ページほどなので、2時間ほどで読了。
    いわゆる日本人が書いた古典(1948年刊行、古典が何年前からなのか定義を調べてないので、古典の分類に入らなかったら、すみません)を読むこと自体も初。
    今まで昔に書かれた小説は正直敬遠していた。文体や仮名遣いなど、勝手なイメージだが読みにくそうなイメージが頭にこびりついていたので。
    実際読んでみると、ほぼ現代の小説と変わらずスラスラと読めた。

    (ここからネタバレ含みます)
    内容は巻末の解説にもあったが、太宰の内的、精神的な自叙伝である。私小説とは違って事実そのままではないが、より深い原体験をフィクショナルに表現しているとのこと。

    (太宰治の簡単なプロフィール)
    1909年青森県津軽に生まれる。生家の津島家は津軽屈指の大地主、富豪で父は衆議院議員にもなった地元の名士。
    太宰は6男(11人兄弟の10番目の子供)。
    津軽に生まれ育ったこと、生家が大地主であったこと、六男坊として育ったこと。
    この3つが太宰治の生涯と文学を知る上で、重要とのこと。

    (感想)
    読了前に本書を読了した知人に感想を聞いてみると、「読後感は結構ネガティブになるよ」と聞いていて心構えが出来ていたからか、そこまでネガティブになることもなく読了。
    ただ主人公には、アルコール依存症、薬物中毒、自殺未遂など、自分では理解できない行動に対しては、正直共感はしにくかった。
    今までほぼエンタメ小説(純文学以外)しか読んでこなかったが、最近哲学や文化人類学の書籍を少しづつ読んできた影響なのか、自分で理解できない登場人物の言動なども、ストーリーに没入しっ放しでななく、少し離れて俯瞰で読み進めることもできてきたことが、純文学を読む下地が出来つつある兆候かも。
    僕のように純文学に挑戦したいけど、純文学に対しては抵抗があるという人の純文学入門編としては、オススメできる作品です。

  • なんて作品なんだろう。太宰治初読みでした。
    構成としては、ある男の手記。自分が人間らしいと思えず道化を演じ、道化を演じているとバレてしまうことが恐ろしく、酒女薬に溺れてゆく。ついに自分で自分に人間失格の烙印を押してしまう人生の話。
    簡単に共感なんてできないし、この文学を本当の意味で理解なんてきっとできていないけれど。それでも、なぜか生きようという希望が湧いてくる物語であるように思う。
    葉蔵は、確かにいろんな欲に溺れ、迷惑という迷惑をかけ続け、何度も死のうとしながら、溺れていきながらも生きている。見方を変えると、生命力が強いというかなんというか。だからこそ、問題作と言われながら高い知名度を誇っているのではないのかなと。私の主観ですが。
    あとがきのマダムの、「私たちの知っている葉ちゃんは、とても素直で、よく気が利いて、あれでお酒さえ飲まなければ、いいえ、飲んでも、…神様みたいないい子でした。」という言葉が刺さる。
    葉蔵は、自分で自分に失格の烙印を押し続けてしまった。それこそが、彼が欲に溺れてしまった要因なのではないかと私は思いました。

  • 誰もが持つ心の闇。
    決して、自己完結はできないのが罪だ。
    だからこそ質が悪い

    今ならどうか。発達障がいと言われるのだろうか。
    どうしようもない男。こりゃダメだ。

    女性の読者ならどう感じるだろうか。
    ダメ男で超イケメン。母性本能グリグリ~!

    読んでいてムカムカさせられるし、ため息が出るほど共感できる部分も。

    純粋に、葉蔵に手を差し伸べる気にはならない。

    重要な小説であろうことは確か。

  • 「恥の多い生涯を送って来ました。」

    人の心の葛藤を一冊で描き切った作品。

    一見おかしな主人公の話。

    だけど、誰もが生きていれば一度は考えた事があるであろう人間の心の内を言語化してある名著。

    歪んだ考え方にも見えるが、私たちと表裏一体の世界。

    「なぜみんな、実は欺きあっているのに表面上は傷ついてないよう、明るく朗らかに振舞っているのだろうか?他人が理解できず、自分が感じていることは異端なのではないか。」

    きっと誰もが感じた事がある
    人間関係の悩み。

    時代が違えば太宰治は生きていたかもしれない。

  • 太宰治の自叙伝的最終長編。
    大人になって初めて読んだ太宰治。学生のころ『走れメロス』は読んだことあったけど、他のは読んでなかったので、太宰治の傑作から読んでみました。

    『人間失格』太宰治の自伝的な小説。
    それにしても、こういうダメな人っているよね。それでいて女性にはめちゃめちゃモテるっていう男の人。
    太宰治自身も本当に色男で格好良かったんだろうな。
    自分からアプローチしなくても女性の方から寄ってくる。それが十代の女の子から後家さんまでという幅広さ。

    太宰を見ると女性は自分からお世話をしたくなっちゃうんだろうね。
    「私がこの人を支えてあげなきゃダメだ」
    っていう母性本能をくすぐりまくるタイプ。しかもとびっきりのいい男。

    もしも自分に娘がいて、娘がこういう男性に熱を上げてたら『絶対にダメだ』って怒るだろうけど、そうすると娘はその男と駆け落ちしてしまうんじゃないかっていう恐怖に襲われるので、仕方なく二人の交際を認めしまうくらいに色男、もう手に負えない。

    さらにこの『人間失格』の主人公のダメっぷりが半端ない。
    生きる気力というか、そういうのがまったくなくて、女性に養ってもらいながら、酒におぼれ、薬物におぼれる。そして、もうダメだと思ったら心中しようとする。

    こういう小説を読むと、「自分も大したことないけど、この男は俺よりもっとダメだな」って勇気づけられる・・・のかどうか分からないけど、そういう気持ちにさせる小説って、ある一定の需要はあるよね。
    このあたりはドストエフスキーの『地下室の手記』に通じるものを感じます。

    自分は、あまり共感する部分は無かったけど、こういうデカダンスな人生に憧れるところは実際にありますね。もし自分がものすごい色男だったらだけど(笑)。

    太宰の文体は嫌いじゃなので、今度は『斜陽』あたりを読んでみますね。

  • 人を惹きつけて止まない小説といえば、間違いなくこれ。

  • 太宰の思想と人生、祈りが色濃く反映された
    自伝的小説「人間失格」。

    「恥の多い生涯を送って来ました。」
    あまりに力強いこの一文だけで圧倒される。

    人生の本質や普遍的な人間の罪、弱さ、
    愚かしさ、美しさ、愛情、恐怖を
    すさまじいまでの集中力で落とし込み
    苦悩と解放の間でもがき書ききった太宰。

    根拠のない自己肯定のできる人間たちに戦慄し、
    傲慢の醜悪さに苦い思いを抱く。

    苦しみから逃れ、享楽的に生きることの
    愚かしさを人生を持ってして示し、
    暴力的な時代への嫌悪を嘆き、
    実体のない世間へと祈りを込めて矢を放つ。

    麗しくも恐ろしきは浮世なれ。
    人の世を憂い、時代に絶望しながらも
    それでも生涯求めてならなかった人間への
    長い長いラブレターに思えた。

  • 4.5年振りくらいに読んだ。
    確か前に読んだ時も思ったけど、これ書いたら死んじゃう。というか、死ぬつもりだから書ける作品なんだよね。
    ノンフィクションではなく、多少の誇張や創作の部分はあるかもしれないけど、太宰の本質はここにある。
    いまで言う母性をくすぐられるような魅力のあるヒモ男。酒も薬も女もやめられなくて体を壊して吐血したり心中未遂。どうしようもない人だし、人のことを信じられないという性質のくせ、人には好かれる。世の中色んな人がいるし、うまくいかないことだらけだけど、これを読むと自分はまだまともに立ててるなって思う。

    以前は人間失格を読んで衝撃を受けたのと、近代文学作品の中では読みやすくて、何冊か太宰を読んだけど、いまの自分はそんなにハマらないかなぁ。
    お気に入りの作家とか、読みたい作品、読みやすい作品って結構変わるものなんだな。

  • メロスに続き久しぶりの再読。1948年(昭和23年)太宰が死の1か月前に書き上げた最後の完成した作品で(『グッド・バイ』は未完)、内面の自伝とも遺書とも取れる内容になっている。

    語り手の名は葉蔵。太宰自身を思わせる家族構成と幼少時。他人の顔色や機嫌を常に伺う小心者であると同時に、それゆえ道化を演じて気に入られようとする才覚はある。そのくせ世知に長けているかといえばそういうわけではなく、世間知らずでお人よしな側面、人に気に入られるためにノーといえない気の弱さがあり、お金持ちのお坊ちゃんなうちはそれでも良かったが、自立できずにダラダラ過ごすうちに取り返しのつかないところまで落ちてしまった。

    女性にモテたのも彼の不幸だろうが、そもそも男友達に対する見る目もない。堀木なんかは結局、根っこの部分で葉蔵を妬み、金づるとして利用していただけのように思えるので、友達選びをそもそも間違えた面もあるかもしれない。彼の近くによってくるのが、堀木のような外面の良いみせかけの破天荒な男か、ヒラメのような小人物ばかりでなければ、もう少しマシな人生を送れたろうにと思ってしまう。

    葉蔵目線で、モテる男によってくる女性たちというのはこれほど愚かに見えているのかとゾッとした。しかし女性の中には侠気のある姐御肌な者もいて男友達よりいくらかマシかも。堀木は嫌いだったけど、喜劇名詞(コメディ)と悲劇名詞(トラジティ)を区別する遊びや、対義語(アントニム)遊びは楽しそうだった。

    それにしても70年前の作品が今も現代人の内面にここまで響くのはすごい。表面的な部分で自分が葉蔵に似てる部分はひとつもないけれど、それでも葉蔵の自己分析、自分の言動の理由についての内面の掘り下げなど、いずれも鋭くて、似ていないのに思い当たる部分もあり、共感してしまう。太宰の作品が普遍的に愛される理由でしょう。

  • 「世間じゃない。あなたが、ゆるさないのでしょう?」
    この言葉がとにかく刺さった
    自分の中で考えていたが言語化出来ていない考えをきれいに表現していてとても感銘を受けた

  • 葉蔵という分身を用意し、太宰治自身を綴ったとしか思えない問題作です。
    この作品を完成させて間もなく、太宰は自殺します。
    生きることに不器用な葉蔵ですが、もしかしたら現代人にこそ共感されるのではないでしょうか。
    読んでいる間、苦しいほどの疎外感が伝わってきました。
    しかし、人生について深く考えさせられた一冊です。

  • 20代の頃に初めて手にとり、途中で挫折。

    2回目、
    読了したがこれが名作なのかとよく分からず。

    今回、30代で再読。
    「人間失格」というタイトルと、あまりにも有名な名作文学だから何回も手にとってしまうのか。
    自分がネガティブになってる夜なんかに読むとスーッと入ってきたり、これがこの作品の魅力なのかなと、少しわかったような、まだまだわからないような。

    芸人×作家の又吉が100回以上読んでいると耳にしてから、又吉を葉蔵に重ねて見てしまう。

    また歳を重ねて読んでみよう。

  • この小説は、太宰そのもの、太宰の自殺を読みこめる「遺書」であると思っていた。

    今回の再読で、太宰はなんて「客観的に」幼い頃からの自己の主観を記憶し、見つめ、炙り出すのに長けているのかと。
    自分が監督兼役者となり、悲劇なのか喜劇なのかを披露している。
    その役どころはずっと道化師だ。

  • やはりこれは名作。
    確かに鬱々とした内容ではあるが、ユーモラスでウィットに富んでいてサクサク読める。
    色々ととんでもない人生すぎて、こんな風に人間失格でもいいじゃないか...と思える。
    文豪の筆力にただただ圧倒される本。

  • 今まで読む勇気なくて初めて読んだ。

    読んでる時の気分はどんどん自分までどん底に落とされていくけれど、先が読みたくなってしまう。
    読み終わった時はしっくりこないな〜って思った

    あとから思ったのは、主人公の気持ちもわかるところもあって
    人間の負の部分、弱さ、悲しみ、裏切り、不安、怒り
    人間の陽の部分、温かさ、優しさ、安心、幸せ

    色々感じさせらる話だ

  • 太宰の他人に対する根源的で絶望的な恐怖が綴られている。
    この作品で最も象徴的だったのは主人公がいなくなったあとのマダムの最後の一言。

    お道化をやめられず他者からの評価と反比例するように自己を肯定できなくなっていく様子が自分と重なった。

  • 2014年の新潮文庫プレミアムカバーの黒い表紙をふと手に取って読み始めた。きっかけはたわいの無いものだ。先日マンガ大賞を受賞した「響 小説家になる方法」の冒頭で、太宰治の名前が出て来たからである。文芸部の若い編集者が呟く。「世界を変えるような新人が出てこないかしら。太宰治のような‥」と。確かに、純文学の世界はずっと右肩下がりで、なおかつ出版不況で行き止りだ。彼女の嘆きもわからないではない。けれども、それが太宰治なのか?と、私はその時に正直思ったのである。それで3年前に買って積ん読状態だったこの本に手を伸ばした。

    文体は今読んでも新鮮だ。短い文で、リズムを作る。私の文章もつい短くなる。既読だと思っていた。初読だった。自伝かもしれない。そうでない、かもしれない。主人公は最近のテレビドラマの主人公が悩むようなことを悩む。だから、今でもテレビドラマに影響をあたえているという意味で、影響力は絶大なのかもしれない。

    けれども、私は流石に歳をとった。太宰かぶれなどにはなるはずがない。ホント自死したコイツの悩みとか、「惚れられる」運命にあるオトコへの嫉妬とか、戦前の共産主義運動のこととか、すべてがまるで台詞のようだ。すべてが私の周りを廻って過ぎて行った。

    世界は描かれていない。1人の寂しいオトコが描かれている。まるでテレビドラマのように。

    若い漫画家に言いたい。早く、出来るだけ早く卒業しなよ、と。

    2017年4月25日読了

  • 「自分なんて、人間失格だぁぁぁ」とスーパーネガティブになっている時に読んでみたら、スッと言葉が入ってきた。『人間失格』を必要とする人と、一生読まなくても生きていける人に二分されるんだろうな。
    人間の情緒をここまで言語化できるなんて、はぁ、すごい、と感嘆した。ユーモア・リズムが癖になるし、本書は自伝的小説なので、太宰治は本当はどんな人なのか、知りたくなる。なるほど、こりゃあ、太宰文学にはまる人が続出するわけだ、と納得した。
    私の中で『人間失格』は、ネガティブになった時にお世話になる本であり、精読したい一冊である。

  • 「恥の多い生涯を送ってきました。」という、まぁ、ぶっちゃけ身もふたもない、主人公 大庭葉蔵の手記から始まる、あまりにも有名な小説を新年早々38年ぶりに再読。

    今作は昭和23年に上梓。「斜陽」と並ぶ太宰の代表作。 書き上げた1ヶ月後に、前年、屋台のうどん屋で知り合い、愛人となってまだ日も浅い山崎富栄と玉川上水に入水自殺を図る。流行作家が愛人と身投げというセンセーショナルさも手伝い、遺作として自叙伝を書いたとも言われ当時ベストセラーとなった作品。

    さて本書。主人公 葉蔵がこれまでどんな人生を送り、その我が人生に影のようにつきまとう“孤独”が如何様なものであったか、その孤独がもたらしたものとは…』を、幼少期から薬物中毒に至るまでを終始葉蔵の独白で綴られていく。

    言うまでもなく決して明るい小説ではない。葉蔵が齢を重ねるにつれどんどん壊れていく、救いようのない展開が進むのだが、ついつい笑ってしまうのだ。

    それは葉蔵がとにかく女にモテるからだ。そのモテ方は尋常じゃなく、カフェの女給と心中を図るも自分だけが生き残り、その心の傷も癒えぬうちに雑誌記者の女性の家に転がり込んでヒモ男に。少し落ち着くのかと思えば、突然タバコ屋の純情娘と結婚する。「袖触れ合うも多生の縁」の数珠つなぎというか、それを逆手に取ったのか思いたくなる程の『だめんず』。「これだけモテてて何が孤独や!」と思う人は少なくない筈。もっともなツッコミである。

    「私が支えてあげなくちゃ!」という女心。恋の百戦錬磨の男ゆえ女性の扱い方を熟知。この2つが見事に交錯する人がモテるんですな。55歳になって「“モテる”を科学できた」と実感。お金があるところにお金がさらに集まるみたいなもんでしょうか。

    そこで『人間失格』を、男性は「モテるための指南書」として、女性は「“だめんず”診断」として読む。不朽の文学を齢を重ねてから読むと、「な〜んだ。取っつきやすいじゃん!」と思えるはず。

    太宰の著した作品が、太宰より先に生まれ、彼自身が先達の作品として読んでいれば、薬物中毒にならず、死なずにすんだかもしれないと思うのは、文学に求め過ぎか。

  • 記事編集。
    よく、自分の精神状態がアレなときに
    うっかり手に取ってしまう本だと言われていますが、
    今回は淡々と、ニュートラルに読み進めてみました。
    作者本人の人物像がどうとかいう問題抜きに、
    単純に読み物として面白いなぁ、と。
    遺書的な作品と目されていますが、
    「はしがき」と「あとがき」によって本編を相対化しているというか、
    生々しい自叙伝的な内容を、
    よく出来たフィクションに昇華させることに成功していて、
    つくづく上手いと感心。
    それにしても、昔、職場で事務作業の傍ら、この小説について語らっていた折、

     「自らを主人公と重ねて読む人が大多数でしょうけど、
      僕は自分を堀木に似てると思いましたよ」

    と発言して空気を凍らせた青年は、元気でやってるだろうか(^_^;)

    • 深川夏眠さん
      談話室の「ブクログのここを改善して」スレッドにも出てきた話題で、
      私もちょこっとコメントさせてもらったんですが……
      本棚の表紙画像って、...
      談話室の「ブクログのここを改善して」スレッドにも出てきた話題で、
      私もちょこっとコメントさせてもらったんですが……
      本棚の表紙画像って、Amazonに登録されているデータを引っ張ってきたものですよね。
      で、登録したときNo Imageだった表紙が、
      後日見直したら、いつの間にか画像が出ていたケースがあります。
      それで、同じシリーズの別のNo Image本の画像を再取得したら「出た(・∀・)!」
      ということもありました。
      Amazonにおいて、出版社から画像が提供されておらず、
      現物を所持しているユーザがアップロードするカスタマーイメージが表示されている場合、
      それがブクログに反映されるまで、相当なタイムラグが生じるみたいなのです。
      いえ、はっきりしたことはわかりませんが。
      気が遠くなりそうですけれども、千里の道も一歩からの心意気で、
      現物を持っている人は地道に写真撮ってアップしようよ~と思う今日この頃です。
      (あ~、もう『人間失格』と関係なくなってますね、すみません……)
      2012/09/10
    • mkt99さん
      こんばんわ。
      実は自分も「ブクログのここを改善して」スレッドに投稿したことがあります。
      せめて現状の維持だけは最低限してほしくて、現在、画像...
      こんばんわ。
      実は自分も「ブクログのここを改善して」スレッドに投稿したことがあります。
      せめて現状の維持だけは最低限してほしくて、現在、画像がある表紙をNo Imageで上書きしないようにしてほしいですと。No Imageコードがわかっていれば、ソースコード的にはおそらく1~2ステップ追加だけなので、比較的簡単なのではないかなあ・・・。
      Amazonへの画像アップの誘惑は自分も何度もかられました。(笑)特に旧版のハヤカワ文庫のクリスティ関連を充実させたくて!(笑)ただ、ご指摘の通りいつ反映するんだろうかなと・・・。(>_<)
      あと、Amazon上で画像が複数採用されてしまうと、ブクログの方は変な表示になってしまうようなのと、Amazonに採用された画像がいまいちの場合もあり、あんまり無理しないように~、という優しい思いもあります。(笑)でも、やっぱり試しにいくつか画像アップしてみようかな~。(^o^)
      あっ、『人間失格』に関係ないですね・・・。(^_^;
      2012/09/10
    • 深川夏眠さん
      > 画像がある表紙をNo Imageで上書きしないようにしてほしい

      そうですね、これは本当に「頼むっ(>_<)」って思います。
      そし...
      > 画像がある表紙をNo Imageで上書きしないようにしてほしい

      そうですね、これは本当に「頼むっ(>_<)」って思います。
      そして、

      > Amazonに採用された画像がいまいちの場合

      確かに、カスタマーイメージがちょっと残念なケースも
      ありますよね。
      痛し痒しというか……難しいですねぇ(溜め息)
      2012/09/11
  • 人間失格…

  • 世間は個人じゃないかという箇所が印象に残った。
    世間は、一般的には、っていうけど、それって、その人から見た世間であり、主観によるところが大きいと思う。人それぞれの世間があるわけで、その人の世間に当てはまらなかったら、人間失格になるのかと。

  • ちゃんと読んでなかったので。
    人間失格なのに、葉ちゃんは、おそらく周りの人々から憐れまれることはあっても、憎まれたり、嫉妬されたりは皆無だったことでしょう。マダムの言葉「葉ちゃんはとても素直でよく気がきいて、あれでお酒さえ飲まなければ、いいえ飲んでも、神様みたいにいい子でした。」でわかります。しかし本人は、手記で、道化を演じ自分を偽りながら生きていたといい、苦しみます。でもそれが自分なのでは?世間ではなく、君。個人。堀木に葉蔵が言いたくて言えない真実。

  • 自分の事じゃないかと読むのが怖くて避けてきたこの「人間失格」。
    というわけで恥ずかしながら初挑戦。

    結果、あーーーわかる。わかる。わかる…
    共感の嵐。
    人間失格といいつつも、逆にものすごく人間らしくて、その人間の闇の部分、繊細なところをとてもリアルな描写で表現していて、これは刺さる人にはグサッと来るよなと私には痛かった。

    いや、そもそも人間らしいって何だろう…。
    上手く生きるって、人間らしくないと思ってしまう。ロボットやAIじゃないんだから。っていや、だから人間らしいって何。
    生きづらさを感じた事ない、ハッピーでポジティブに行こうぜ!的に生きられてる人には逆に全く刺さらない、ただのボンボンの女たらしの薬物依存者の暗い話なんだろう、きっと。表面だけ取ればそうだし。

    いや、そんな風に生きられてる人はもちろん素晴らしいと思う。
    でも何かしら闇がある人、抱えたことのある人には全く違ったお話に感じるでしょう。

    流石の名作でした、「人間失格」。

    • aoiさん
      Mayさんはじめまして。
      私も同じ感想を持ちまして(^^)親近感が湧きコメントしてしまいました。また感想楽しみにしています。

      Mayさんはじめまして。
      私も同じ感想を持ちまして(^^)親近感が湧きコメントしてしまいました。また感想楽しみにしています。

      2024/03/01
    • Mayさん
      aoiさん、コメントありがとうございます^ ^
      私の拙いレビューに共感してくれて嬉しいです!
      闇多き私にはこの「人間失格」刺さりまくりでした...
      aoiさん、コメントありがとうございます^ ^
      私の拙いレビューに共感してくれて嬉しいです!
      闇多き私にはこの「人間失格」刺さりまくりでした笑
      私もaoiさんのレビューこれからも楽しみにしています♪
      2024/03/01
    • aoiさん
      Mayさんコメントお返しして下さりありがとうございます!Mayさんの村上春樹の本の感想も大好きです(^^)読み終わったらそちらにもコメントし...
      Mayさんコメントお返しして下さりありがとうございます!Mayさんの村上春樹の本の感想も大好きです(^^)読み終わったらそちらにもコメントします!いろいろ感想お伝えできたら嬉しいです。宜しくお願いします!
      2024/03/01
  • "人間失格"というタイトルは物凄く有名で、もっと陰鬱でどろどろした話かと思っていたら、どろどろではあるが思ったよりカジュアルだった。
    お調子者を装って人間に擬態して過ごす、それがむしろ人間らしい。しかし人に対する恐怖などが渦巻いて、自分とはなんぞやと、いっそ死にたくなる。
    罪人として縛られると、かえってほっとするp76
    自分は、どれほど皆を恐怖しているか、恐怖すればするほど好かれ、そうして、こちらは好かれると好かれるほど恐怖し、皆から離れて行かねばならぬ、この不幸な病癖を、p98
    思ったより読みやすく、何度でも読み返してしまう人の気持ちも分からなくもない。


    「金の切れめが縁の切れめ、ってのはね、あれはね、解釈が逆なんだ。金が無くなるから意気消沈して、ダメになり、笑う声にも力が無く、そうして、妙にひがんだりなんかしてね、ついには破れかぶれになり、男のほうから女を振る、半狂乱になって振って振って振り抜くという意味なんだね、金沢大辞林という本に依ればね、可哀そうに。僕にも、その気持わかるがね」p64

  • 昭和55年5月25日 86刷 再読

    太宰治自殺前、最後の完成小説。ある青年の手記の手法をとった精神的自叙伝と言われる。
    社会的営みができる人間ではなかったのは、明白。人間、失格だったかと言えば、違いますよ先生。素晴らしい作品が多く残されています。同じように生き方を模索している青少年達が未だに読んでます。
    ちょっと、クズだっただけです。まさに、「あとがき」で望まれたような評価を得てます。コミックにまで、登場してますよ。支えた女性達や家族には感謝ですね。

  • さすがに有名な小説だから読んでおこうと思ってずっと積読されていたが、文豪ストレイドッグスにハマり速攻で読むに至った。

    私自身が自殺したいと思って生きてきたから、実際自殺した人の思考ってどんななんだろうと興味があった。太宰治は思考が達観していて世の中の真理に気づいてしまったから人生に飽きてしまったんだろうと思った。
    自分の思考ととても似ていて共感することばかりだった。「死にたい」と思うことは普通からズレていると思っていたし、共感してくれる人なんてそんなに居ないと思っていたから太宰治のような文豪が同じ考え方を持っていたことに驚き、同時に安堵した。
    自分は間違った人間ではなく、ただそういう考え方を持った1人の人間だと。

    いちばん心に残った言葉は「心中はひとりでは出来ない」と言うこと。

    女や酒に狂い、お金に盲目になるのは人間の性なのかもしれない、生きることになんて意味なんかないのかもしれない。
    それでも明日を生きるんだよなあ私は。と思った。

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著者プロフィール

1909年〈明治42年〉6月19日-1948年〈昭和23年〉6月13日)は、日本の小説家。本名は津島 修治。1930年東京大学仏文科に入学、中退。
自殺未遂や薬物中毒を繰り返しながらも、戦前から戦後にかけて作品を次々に発表した。主な作品に「走れメロス」「お伽草子」「人間失格」がある。没落した華族の女性を主人公にした「斜陽」はベストセラーとなる。典型的な自己破滅型の私小説作家であった。1948年6月13日に愛人であった山崎富栄と玉川上水で入水自殺。

「2022年 『太宰治大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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