くまちゃん (新潮文庫)

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  • / ISBN・EAN: 9784101058283

感想・レビュー・書評

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  • 失恋ってもっとブルーな気分かと思ったが、意外に激しい気分をいうんだなあ

    作者の角田光代さんのいう、「ふられ」小説。

    第一章で主人公をふった彼氏が次の章で主人公に。そして彼をふった女性が次章の主人公に、と物語を語る「視点」が次々と変わることによって、ああ、こういうふうに相手に世界は見えていたんだ、こういうふうに感じていたんだ、という新鮮な感覚が。

    次の章に移るたびに、前の章では「何なんだコイツは?」と感じていた登場人物に、いつのまにやら非常に好感を持っている自分に気がつく。
    なんとも不思議な感覚。どんどん読み進めるうちに、キャラクターへの当初の印象がコロコロとかわってしまう、というか視点を変えてみると、こういう風に感じるものなのかとすごく面白かった。そのへんの構成とか読ませる力ははさすがになぁ、うまいよなぁ、好きだなぁと思う。

    別れた後に、新しい恋人なりパートナーが出来て初めて「ああ、あの時の彼女は(彼は)こういう気持ちだったんだな、こんなことを思ってあんなことを言っていたんだな」ということがわかるということなんだよね。皮肉だよね。

    なんとも切ない。

  • 連鎖していく?「ふられ」小説。
    確かに、恋愛って、ふるか、ふられるか のどちらか。

    ふと思い出した…私が高校3年間密かにずっと憧れてた彼は、同じ女の子に3回告ってふられてた。(それを知っても同情や失望する訳でもなく相変わらず憧れてたけど)この小説と同じだわ!

    この本読んで思ったのは恋愛のゴールってどこだろう?てこと。結婚…とは言えないのはハッキリ描かれてたし。
    恋愛って、生きてる間一生付き纏う足枷みたいなものなのかもしれないな。

  • 失恋って文字とは違って失うものも沢山あるけど得るものだって沢山ある。

    ゆりえがまさにそうだったように、人を好きになるってことは好きになった人をを自分の理想や憧れってフィルターを通して見ることな気がする。
    相手の本質が見えるにつれ自分のイメージとの違いに戸惑ったり、自分が何者にもなれないと藻掻いて焦る中で何者かの枠にしっかり収まってる相手と恋することで自分を落ち着かせたり。

    恋は二人で、相手を想いやるものだけど恋ほど人間をわがままに利己的にするものもないな、

    けどひとつの恋が終わって時間が経つとその時の景色や記憶が一気にズームアウトして色々なことを考えるきっかけになるだろうし、その中には失恋しなきゃ気づけないことも沢山含まれていると思う。
    浮き草の話が一番すき。

  • いいですね~
    人ってほんとにみんな違う生き方をしているんだな、と思い、そしてみんな一生懸命なんだな、と。
    とても考えさせれました。
    最初、短いエッセイを集めたものかな、と思いましたが違っていて、全然違うお話(人生)が次のお話に絡んでいく。とても新鮮でした。

  • 最近、生まれて初めて好きな人に振られた。
    毎日の仕事もたくさんあった趣味も、何もかもが意味のないつまらないものに思えて、どうしようもない気持ちを何とかしたくてこの本に辿り着いた。
    何をしていても彼の事しか考えられず辛かったけど、これを読んでいる時はなんだか救われる気がして、この経験も自分には必要だったのかなと思えた。
    自分に必要なタイミングでドンピシャな本を読む事は、自分を助けてくれるんだなと初めて思った。
    あとがきに書いてあったけど、振られた事で人生観変わるぐらいものすごく勉強になったから、間違いなくこれからの私を形成するパーツになる。だから、彼はこれからも私の中にずっといるんだなと思える。私も彼を形成する一部になれたら良いなと思う。奴はもう忘れてるかな…。こんな事思ってる時点で全然吹っ切れてないけど…(汗)
    図書館で借りたけど、立ち直るまで手元に置いて何回でも読み直したいから買おうと思う。

  • なかなか良かった。
    他人の気持ちはわからないけれど、その他人にもそれぞれの生活や考えがあり、その人からしたら、自分のこともよくわからないんだろうなーとか。
    あとは、一方的に大恋愛をしていると思っていても相手にとっては特になんてことはない恋愛だったりしてってところも印象的。

  • 話がテンポよく進んでいくので、読んでいて気持ちがよかった。
    そして、終わり方も気持ちがいい。
    失恋してぼろぼろになっても、後でじわーっと得るものがあるって、何かいいなぁ。
    ふったりふられたりしなければ、別の誰かと違う物語を作ることもないわけだし、出会いってほんと奇跡だなぁって思う。

  • 読んでみて良かった!
    恋愛から遠のいたから分かる気がする小説だった。
    ひとを好きになって相手が同じ気持ちになるって奇跡みたいなものだっておもっているあいだはきっと絶対にうまくいかない。
    全部登場人物がつながっているのが良かった。
    せかいは案外狭い。
    いちばん好きだったのはマキトのはなし。
    マキトがなんにもなくてつまんない男なのが良かった。
    みんなだれかとしあわせになりたくて、なれないのが良かった。
    いちばん好きなひととはたぶんうまくいかない。
    それを小説にしてるのが良かった。
    とうぶん、この本を持ち歩きそうでぼろぼろになる予感しかない。

  • 失恋した時読みたかったなぁ。
    本当、あの頃の私はしんどかった。

    振られた翌日の朝、出勤する時、
    片腕を失ったような、世界が180度変わってしまったような、空がとっても低く感じて呼吸がうまくできなかった。

    この本に出てきた『別人格』の話。
    すごくうまい表現でしっくりきた。

    そうか、あの時
    私がせっかく形成し
    築いてきた彼に合わせた心地よい別人格を
    ある日突然彼に殺されちゃったんだなーと気付かされた。

    彼に『もういらない』と言われたら、その別人格は消えちゃうもんね。

    けどそうなると本当の自分ってなんだろう?

    みんなに共通して言えるのは…結局は惚れたもん負けなんだわ。

  • どうやら私は精神的に辛くなると本に頼りたくなるらしい。
    成人式から数年経ってるというのに初めての失恋を経験し、何をしてもどこにいても辛く、何かを求めて書店に足を運んだ。偶然手に取った本が私の人生を変えるような…というようなことを期待したりもしたが、偶然手に取った本がラブラブサクセスストーリーだったりした時には私の心は死んでしまう。結局ネットで失恋したときに読む本を検索し、出てきた中で気になったのが今作だった。どこまでも単純な人間だなあと思いながらも購入。積読も沢山あるのに…。


    それぞれの主人公が全員失恋する連作短編。ふられる側がメインでありながらもふる側が次の話で恋をして失恋するつくりになっているため、様々な面から作品の世界を見ることができた。

    良くも悪くも他者への“好き”や“憧れ”、“尊敬”が人の性格、考え方、人生に影響を与えあらゆることが変化する。もちろん恋愛に限った話ではない。でも恋愛ってすごい。
    なんていうか、好きになった方が負けってしみじみ感じてしまう。言いたいことが言えなかったり、相手の言葉一つで一喜一憂したり、ああ私ってこんなに弱い人間だったんだなんて気付かされたりもして。でもそれでも楽しくて幸せで嫌ではなかったりして。

    今作を読んでいて、共感する部分や学びの部分が所々あり、失恋というネガティブな題材でありながら前向きな気持ちを持つことができたように思う。こんなに弱いのは私だけじゃないんだ、とかこの辛さも過去になって未来の私の一部になるんだ、とか。
    何よりもこの登場人物達と同じように私も失恋を経験できて良かったなと思う。辛いけど。

    私をふったあの彼のほんの一部にでも私はなれているのだろうか、いつか名前も忘れられてしまうのだろうか、ふとしたときに思い出したりしてくれるのだろうか。彼が主人公となる話は読むことができないし永遠に答えが分からないんだろうけど。


    なんだかただの自分の失恋への感想になってしまった…。

    失恋の連鎖を通じて人と人の繋がりや人生について考えさせられたのは本当のこと。すごく面白かったし読みやすかった。
    だけど読んでいた最中の正直な感想として、なんだかんだで幸せそうな期間の描写が多く少し辛かったし、早くふられてくれと思ったし、ふられるといってもはっきりふられる描写はほとんどなくてもっとしんどいのが見たいとも思った。歪んでるよね



    はあ〜〜幸せになりた〜〜〜〜〜〜い

  • 昔に読んだけど再読。
    40代に入り読むとまた違った感想になるな。

    短編集なんだけど、みんなが恋をしてそれぞれがフラれちゃう話。
    登場人物がみんなつながっていておもしろい。

    あとがきの角田さんの言葉で、フラれることは旅を一回するようなことくらいの良さはあると思う、とあって心に響いた。
    旅から帰れば以前とは違う場所にいる自分にきづく。
    角田さんの的確な言葉にハッとした。

    フラれることってありえないくらい悲しくて痛くて辛いのにみんなまた懲りずに恋をする。

    全ての失恋を糧にしていけたらそれでいいんだ。
    そんな風に思える作品。

  • 大号泣。良すぎた。
    ネットで「失恋した時 小説」で検索して出てきたので読み始めたが(安直すぎて我ながら恥ずかしい)予想してたよりはるかに良かった。

    淡々としてるんだけど人を好きになる気持ちとかつらさとかがひしひし伝わってくる静かでやわらかい文体で良すぎた。まったく大げさじゃないのになんでこんなに胸が痛くなるんだろう。
    こういう、なんでもないようなことをさらっと上手く書けるのがいかにも文豪って感じする。
    だって奇事を派手に書くのなんて簡単だもの。

    キャラクターみんなにめちゃくちゃ共感できた。特に「何者かになりたい」「社会で普通の人として生きる流れに取り込まれることへのなんともいえない怖さ」みたいなものを抱えたキャラたち、すごく好きだった。
    そのうえでの希麻子や黒田に対する槇人や久信とか、凡人と天才の残酷な対比も良かった。

    成功なんてものは目指してどうこうなるものじゃないし、それはそもそも金とか知名度とかそんなものじゃないから、とにかく人間は目の前にある自分の課題を自分で見つけて片付けていくしかないし、いわゆる「成功」なんてその過程で意図せずに、気がついたら手に入れてるものだ……っていう、すごく冷めた天才の考えというか、どうしようもない凡人との器の違いみたいなものが作中で一貫してたと思う。し、それがまた正しいよなぁと思った。

    そしてそれをよく理解してた久信が大好きな文太に対しては、成功もなにもわかっちゃいなかった学生の頃に抱いた羨望や尊敬だけを一方的にずっと向け続けちゃってたのがつらいなぁと。

    月日が経って何もかも違ってるのに、「その頃」の力関係がずっと続いちゃうことってあると思う。
    でももう「自分が好きになったその人」はいない。

    結局、成功とか天才とか過去とか未来とか関係なく、人間には今しかない。今やれることをやるしかない。っていう、そこでも一貫した「天才のカラクリ」みたいなものが語られてた。
    そして、苑子との語らいによって「自分の天才に対する見解」と「文太に対する変わらぬ期待」との間の齟齬に気がついちゃって、その瞬間に久信の中で昔のままの強い文太はもういなくなってしまって、おまけにそれを文太を奪ったダサい女に指摘されて、そんな色々な気持ちで涙が出たのかな。

    希麻子と黒田もそうだと思う。昔の憧れのまま、力関係が変わらないままず〜〜っとその人のことをだらだら思い続けちゃう。
    「黒田に勝った」って思うところ泣ける。今までずっと悔しかったんだもんねぇ。最後くらいはね。
    いやぁ、つらいなあ。
    でも希麻子はパワフルで、なんとなくこれからも大丈夫だよなって思えるラストで良かった。
    ユリエも。二人はすごくガッツがある。

    こうして書いてても希麻子と黒田、久信と文太の二組が一番刺さったかも。と思う。

    乙女相談室も好き。
    終わりの場面で、過去に必要としてた人が雑踏に消えていって光が一つ一つ消えていくのが悲しいけど別れってそういうものかと思ってなぜか受け入れられる不思議なラストで好き。

    最後の章の主人公だけは前編から引き継がれてなくて、作中ではあくまで漠然とした「別れ」とか「恋愛」とかそういうものに対する彼女たちなりのアンサーが示されてるのは、この物語全体に登場してきた恋愛や別れの意義とか、そこからの立ち直りとかそういう総括みたいなものを小説世界の最後に与えたかったのかなとも。
    なんというか、人を愛することへの絶望や悲しみだけでは終わらない感じ。
    祝福だと思う。人生とか恋したことへの。
    あとがきまで通して読んでそう思った。
    なぜかあとがきでボロ泣きした。多分すごくあたたかかったから。

    私も才能とか成功とかそういうことに悩まされてて、たぶん希麻子とか黒田側の人間で、ふるかふられるかではふられる側で、っていうか恋人いたことないけど、私これから大丈夫だよねってちょっぴり信じたくなるような切なくもしたたかなラストでめちゃくちゃ良かった。
    大好き!

  • ふられるのって、居心地が悪い。
    なんだか全部自分が悪かったみたいに思ってしまって。
    自分が自分でなくなって、どうしたら相手の気持ちを捕まえられるかばっかりになってしまう。

    「くまちゃん」からバトンのようにフラれていく連作小説で、前の話に出てきたカレもしくはカノジョが、次の話ではふられるので、痛み分けって感じでモヤモヤせずに読めました。

    お互いに相手を愛するみたいに、相手は愛してくれなくって、すれ違いが起こっていく。
    今の自分の精神状態的に、恋愛を必要としてないので、かなり客観的に読んでしまったけど、面白く読めた。
    円環的な話法だから、最初の「そのちゃん」だけフラれっぱなしかと思ったらそうでもなく、予想外の見せ場も用意されていました。

    惨めで、カッコ悪くて、不幸せで、切ない。
    こんな思いをわざわざ小説でするなんて!
    そんなふうにも思いましたが、落とし所のスッキリさが心地よかったです。
    フラれて損って気持ちにさせない、むしろふることも、ふられることも、恋愛の一部なんですってテーマ性があってよかった。
    恋愛してると、相手から嫌われたらとか、ジタバタしちゃうけど、それでも恋してカッコ悪くなっちゃうことに、背中を押されている気分になる。
    ふられたほうが、えらいモンを失って、失った分、何かを得られるのかも。

    私が悪かったんかな…なんて思うあの気持ちも抱きしめてくれる気がして、フラれたことのある人には、過去の記憶の意味も変えてくれるストーリーなのではないでしょうか。

  • 振られ小説!
    振った人が次の章で振られるストーリー!
    好かれている人には冷たくて
    好きな人には重くなって上手くいかないみたいな
    あるあるがひたすら続く(笑)
    いっぱいいっぱいの時
    自分の気持ち伝えられなかったり
    相手に振り回されていたり…
    後味はスッキリ小説❣️

  • 八日目の蝉 を録画したつもりが出来ていなくて悲しい。
    角田光代さんの恋愛小説がうまいのは周知のことだけど、今回は「ふられ」小説である。

    ふる側、ふられる側。どちらも経験しているけれど、どちらがしんどいかと言えば私の場合は間違いなく、ふられる方がしんどい。大人になってからの失恋は学生時代より辛いし、だからこそ慎重になりすぎたりもする。

    風の又三郎のように現れては消えて行く恋を通して、新しい自分を発見したり再認識することもある。「ふる」小説でなく、「ふられ」小説だからこそそれが嫌味なく描けるんだろう。
    恋愛の形には遊びか本気かしかなくて、それは付き合う前から決まっているものってイメージがあったけど、寄り道みたいな始まりでも本気になる恋もあるんだろうなーと最近思うようになった。逆もまた然り。

    • m.cafeさん
      「予定日はジミー・ペイジ」面白そうですよね。ありがとうございます。(^^♪
      「予定日はジミー・ペイジ」面白そうですよね。ありがとうございます。(^^♪
      2012/06/27
    • 円軌道の外さん

      こんばんは!
      お気に入りポチありがとうございました(^O^)

      「八日目の蝉」ヤバいです(>_<)

      自分は女やないけど、...

      こんばんは!
      お気に入りポチありがとうございました(^O^)

      「八日目の蝉」ヤバいです(>_<)

      自分は女やないけど、
      かなり考えさせられたし…


      しかしレビュー上手いですね(^_^)v

      しかも深いぃぃ!


      自分は男だからなんかなぁ〜
      振る方がかなり辛かったです(^_^;)
      (そんな経験は数少ないんやけど汗)


      また気軽に遊びに来てくださいね(*^o^*)

      2012/07/04
    • hetarebooksさん
      円軌道の外さん
      ありがとうございます。嬉しいです。
      円軌道の外さんの本棚はDVDやCDも充実してて、あっ!コレコレって思いながら拝見させ...
      円軌道の外さん
      ありがとうございます。嬉しいです。
      円軌道の外さんの本棚はDVDやCDも充実してて、あっ!コレコレって思いながら拝見させてもらってました(*^_^*)

      振るのも悪者にならなくちゃいけないから辛かったけど、向こうからアプローチされたのに振られると、期待はずれだったのかなとか考えてぐるぐる~。

      きっと円軌道の外さんは優しい方なんでしょうね。
      2012/07/05
  • 最後の乙女相談室が好きだった
    こっぴどい失恋を少し前にして、街中にはその人との思い出が溢れてて外に出るのも辛くて毎日泣いてた日々だった
    振られたんじゃなくてその恋愛はもうお互いにとって必要無くなったんだって、今は本当にちょっとだけそう思える、まだたまに悲しい日もあるけど
    だけど、その人から振られなきゃ気付けなかったことが本当にたくさんあって、成長できた恋愛だったと思う
    振られた時、これから先の人生どうしようって思ったけど選んだ道を自力で正解にするしかない
    もう二度と傷つきたくないけど性懲りも無くまた人を好きになりたいし、なる予感

  • 失恋した時に読むとわたしだけじゃないと
    少しホッとする、だけどその辛さに共感して
    うるっとくるお話ばかり。
    最後の話が1番好きだったかな。

  • ★3.8
    くまちゃんという男から始まり、振られる側に常に焦点を置きながら、振られる側が何を思ったのか、そしてその人を振った相手がが次の章では振られる側、、という面白い構成の本。
    おもしろポイントは、同一人物のことを書いているのに、主観と客観でだいぶ印象が違う描かれ方なこと、その印象の違いは、単純に、主観客観だけの違いもあれば、時の経過や関わる人でその人自身が変化したことによる違いもあって、そこがおもしろい。人だな、と思う本。

    ひとつの恋愛やその中で起きた事実でさえも、たくさんの見方、少なくとも自分の捉え方と相手の気持ちと2通りの見方があって、、改めて、人にはその人の事情やこれまでのその人を形成した歴史があるんだな、と思う。


    _φ(・_・
    自分の精神というものも入社時にぴたりと止まり、何も吸収しないまま伸びないばかりか、縮んでいくのではなかろうか、と時々考える

    普通で平和な毎日が決してわたしをだめになんかしない。そういう日々の先に私にしか手に入れられないものがある。

    大人になってよかったねと思わず抱きしめて頬擦りしたくなる

    ずっと見ていたいというのは、美しいという言葉とおんなじだ

    何かをやりたいと願い、それが実現するときというのは、不思議なくらい人が気にならない。意識のなかかから他人という概念がそっくりそのまま抜け落ちて、あとはもう自分かしかない。自分が何をやりたいしかない。

  • 失恋のしりとり小説。

    付き合う相手に合わせて自分を見失うという経験が昔のように自分と重なってあるあると共感した。

    特に勝負恋愛のゆりえに共感した。

  • 一人の人と付き合って振られることは旅をすることと一緒。最後まで楽しいとは限らないけど、行く前の自分と帰ってきたあとの自分は違う人になってる

  • 振られるってその瞬間は馬鹿でかいもので、受け止めきれないけど結局成長。

  • 今まで読まなくてごめんなさい。
    謝りたくなるほど、いい気持ちになれる本。
    失恋しても怖くない。
    どうせ、生きなきゃならないんだから。
    いっぱい傷ついて、とことん堕ちたら、
    なんか変わってた、自分。てかんじ。
    ひとっておもしろい、可愛らしい。

  • 失恋したときかなり助けられた小説。
    欲しい言葉だらけだった。

    そうやって考えた方が楽だからかなのか。
    本当にそうなのか。
    腑に落ちる考えを正解とすればいいよな別に。
    って思える

  • 大好き。
    これぞ恋愛!って感じ。
    好かれてる時は冷たいのに、自分の方が好いてる時は重くなる主人公たち、ほんとこれだよな。
    「光の子」が特に好き。
    恋愛とはまた違う、性別も関係のない愛みたいなのがすごく共感できた。本当に大好きな一冊。

  • アラサー男女の「振られリレー」オムニバス短編集。
    前の話でふった人が、次の話ではふられる。この繰り返し。恋愛は好きになった方の負け!という意味がよく分かる小説でありました。

    その話の主人公は皆、振られる側なので、振られる人の目線で話は進む。
    だから振る方に対して、掴みどころがなくて冷たい男だなー、勝手な女だなーと思うんだけれど、その人たち全員、次の話では振られる側になる。
    目線が変わるとその人の印象が変わるから面白かった。

    別れを告げたのは自分なのに、私が振られたんだ、と感じる登場人物の心理描写が好きでした。作者の後書きも良かった。

    30歳過ぎて、10代20代の頃より読書がますます面白いのは、
    登場人物と同じ年齢になって、共感したり、そうでなくてもなんとなく気持ちを重ねて読むことができるからかなあと思う。

  • 大学生の頃、人生で初めて失恋して手にとった一冊。当時は物語の中で人が振られることですらきつく、2話目で読むのをやめてしまった。

    社会人になり、二度目の失恋をした。そして再度手にとったこの本。
    前回読めなかったのが嘘かのように、めくる手が止まらない。
    失恋してもまた人を好きになる。失恋を重ねるごとに状況把握が早くなる。
    二度目の失恋を経験したからこそ、共感できる部分が多く、また前回よりも楽観的に読み進めることができた。

    一度目の失恋の時は、何もかもが嫌だった。振られたことをきっかけに振られ小説を読むのも惨めに感じた。

    しかし、恋、ひいては人生とはそういうものだ。誰かを振った誰かも、また別の誰かに振られる。皆惨めなのだ。
    失恋し、傷つく。でもそこから学び、また違った恋愛をする。
    それが人生の楽しさでもある。

    きっと、これから三度目の失恋、四度目の失恋を味わうことで少しずつ違った角度からこの小説の良さを理解することができるだろう。

  • おもしろかった!
    フラれた相手が別な人にフラれて、という形式がよかった。
    それぞれのキャラと描写もよかった。
    苑子がまた男飼っててウケたけど、ちゃんと成長しててよかった。

    自分を大事にしてくれなかったその人も別の誰には本気で恋してて、そういうもんなんだけど恋愛って難しいなーと思った。
    本気じゃない、好きじゃない相手だから自分の好きなように振舞えて、そこが好かれる要因になったりするし。
    縁とかそういうのもあるんだろうな。


    恋愛うまくいかなくても前見て進んでいかないとダメ。
    生活が荒んじゃダメ。
    人生の楽しさは自分で見つけるもの。
    相手がすごいのに、満足するのはアホ。
    つまんない毎日を救ってくれるわけではない。
    恋愛は現実から逃げ出す道具じゃない。

  • 全部フラれる話なのに、暗くなくてかわいらしいかんじだった。
    こいつなんなんだ!っておもっても、次の話をよむと、「こいつ!」と思った人に
    共感したりかわいらしくおもえたりするのが不思議だった。

    幸せな時間が描かれていても、うーんでもフラれちゃうんだ…って思うと切なかった。「これはフラれずにいける!?」とか期待するのもあった。

    おもしろかった!!!

  • 振られる側に焦点を当てた失恋の連作短編集。
    私は自身の失恋から抜け出せずに、それならばいっそどっぷり浸かろうと失恋小説を探していて辿り着いた。
    だから、そんな私には最後の「乙女相談室」が一番しっくりきた。
    ありきたりなアドバイスも、目に見えるハッピーエンドも何も要らない、ただ等身大でリアルで、それでいて誰もが違う形の恋愛を持っていることを知って、私は安堵したかったんだ。

    他の人の感想を読んでみて思ったのが、この小説を探して手に取った人の多くは、乙女相談室のような「ただ自分の失恋を誰かに聞いてほしい人」「似たような境遇の人に触れ合いたい人」なんじゃないかって。現に自分もそうだ。

    私がもう少し先に進んで行った時、この小説をまた違う見方ができるのだろう。
    フラれたばっかりの時にこの本読んだな、とぼんやり思い出すその日まで、本棚でしばらく眠ってもらおうと思う。

    2024.05.06 読了

  • 失恋時に読む本をひたすら探してたどりついた。失恋した自分は励まされ次に進む一歩をもらえた一冊。また違った状況時に読んだら違う感想になるのかも。

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著者プロフィール

1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸科卒業。90年『幸福な遊戯』で「海燕新人文学賞」を受賞し、デビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で、「野間文芸新人賞」、2003年『空中庭園』で「婦人公論文芸賞」、05年『対岸の彼女』で「直木賞」、07年『八日目の蝉』で「中央公論文芸賞」、11年『ツリーハウス』で「伊藤整文学賞」、12年『かなたの子』で「泉鏡花文学賞」、『紙の月』で「柴田錬三郎賞」、14年『私のなかの彼女』で「河合隼雄物語賞」、21年『源氏物語』の完全新訳で「読売文学賞」を受賞する。他の著書に、『月と雷』『坂の途中の家』『銀の夜』『タラント』、エッセイ集『世界は終わりそうにない』『月夜の散歩』等がある。

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