花のれん (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101104034

感想・レビュー・書評

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  • 吉本興業の創設者の話。女性が創設者とは知らなかった。
    後家でずっと商売一筋で通した女性の一生がある意味淡々と書かれている。

  • 再読。
    「ぼんち」「女系家族」などと並んでいわゆる「船場もの」と言われる、商都大阪の中でも、古くからのしきたりや伝統が重んじられるセレブエリア「船場」を舞台にしたシリーズ。
    からきしダメな旦那に、古着商売を畳ませて、「寄席」商売をはじめさせた多加。がむしゃらに旦那の商売を支える矢先、妾宅で突然旦那が他界。まさに女手一つで小屋を増やし、芸人を増やし、やがては通天閣まで所有するに至るサクセスストーリー。後の吉本興業につながるまさに大阪文化草創の物語。銭銭銭、の商人魂の根底に流れる熱い義理人情に、ほろり、ですよ。
    物語で語られる大阪弁を読んでいると、こんなにゆったりして、優しさにあふれ、美しい言葉だったのか、と感心してしまいます。きつく聞こえてしまう表現も、少々ねばっこくてもオブラートに包んでしまう、この優しさに溢れた微妙なニュアンスをいつの間になくしてしまったのか、考えさせられます。

  • 面白かったけれど今ひとつ感が拭えません。

    女系家族、華麗なる一族、白い巨塔にあるような、欲望にギラギラとした所や、ねっとりとした迫力が無いのが残念です。

    この小説は必死に働く主人公の、商いにひたむきな姿勢は良く描かれているんだけれど、あまりにも普通過ぎる気がします。

    もう少し、人の情念のようなものが欲しいなぁ。。

  • 女興行師の半生記。男が今まで出来なかった事だって、女だったら出来るかもという発想が素敵です。

  • 安来節を買いに出た出雲で、伊藤友衛に挑まれたとき、多加は受ければよかったのに、と思うよ。なんでそんなにかたくなだったの?

    ・多加は胴乱を使っている。
    ・「松鶴十八番、天王寺詣り、金二千円也」、質入れ。

  • 船場の問屋の嫁いだ多加は倒産を機に「寄席」経営を目指す
    途中妾宅で夫を亡くし、借金を背負ったあと、猛然と経営に乗り出す
    時代時代の流行りものを取り入れ、通天閣まで手に入れるが、選挙区厳しくすべてをなくしてしまう
    しかし復興する大阪で再び寄席経営に乗り出した多加だったが、急な病を得、芸人たちの見守る中息を引き取る
    吉本興業の女主人がモデル

  • 時時間の経過が早いので、その分作品にのめり込めなかったかな。ただ、軽妙な大阪弁の掛け合いは読んでいてとても気持ちが良かった。

  • 主人公多加のモデルは吉本興業の創設者吉本せい。作品中、桂春団治やエンタツ・アチャコなどが実名で登場している。1966年NHK大阪で放映された。昆布店の主人に「長門裕之」寄席の女主人多加に「南田洋子」ガマ口役には「藤岡琢也」などが出演。
    著者・山﨑豊子は直木賞受賞のインタビューで「白い喪服の幻影に繰られながら一生を終える大阪女の姿を描きたかった」と述べている。白い喪服は、船場のしきたりで、二夫にまみえぬあかしであった。

  • タイトルに惹かれて買った一冊。女であれだけの商いをできるって凄い。面白かった。

  • 同衾してテクノブレイクしてしまった夫の葬儀で、白い喪服を着た妻。この妻が吉本興業の創設者で、恐るべき行動力と商才を発揮する。天満で打ち上げた商売の花火を、大阪中に打ち上げ花のれんを作り上げる。そして、もう1つの「花のれん」と「白い喪服」が行き着く最終地点が「感動」というより、奇麗すぎて寒気がした。
    お笑い好きとしては必読の教科書。落語に安来節、関東大空襲に漫才の到来。船場。法善寺横町。千日前。身近な笑いに歴史を感じることが出来る。
    ただ1つ。よみにくい!!
    作中名言「金が出来始めてから目だってきつくなった。絶えず強盗に押し入れられそうな不安に襲われ、寒い風の吹く日や、氷雨が降る日は恐ろしくて眠れぬこともある。妙に胸騒ぎする。恐ろしい。独り寝の布団の中で風の音に怯えている自分が寒々しく哀れに思えた。」
    女性が商いで成功するために生じる女性ならではの葛藤。挫折。成功。陰。苦労。人生。1つ違うレベルには、多くの「捨」が必要。

  • 山崎豊子を初めて読んだ。沈まぬ太陽を映画で観た程度で、経済小説自体にも今迄触れた事がなかったが、息をつかせぬ展開で夢中になって読破した。主人公の多加は、吉本興行の創設者、吉本せいがモデル。大阪の寄席の経営を生業にする女商人の話。最初は古い作品だという事と、大阪弁の文章でとっつきにくさを感じるが、文体に慣れ始めた頃に、旦那が妾亭で腹上死し、多加が御寮人として才覚を現すため、ストーリー的にも急に面白くなってくる。そこからラストまで一気にぐいぐいと読み進めた。山崎豊子の他の作品も読んでみたい。

  • 恥ずかしながら、山崎豊子1冊目です。ドラマでちょぃちょぃ内容は知ってるものの、大作が多いのでなかなか本に手が出ず… 『大地の子』『運命の人』とかと違って、気風の良い大阪人を描ぃてぃるので後味さっぱり。

  • 山崎豊子ならではの重厚で表現力豊かな文章です。コテコテの関西弁は、関東人の私にとってはちょっと読みづらいけどとても新鮮。主人公の女性の度胸と突き進むパワーに圧倒されます。ラストは「ああ、山崎豊子だなあ」という感じ満載。心に強く残るものがあまりなかったので、★3つ。

  • 大阪の商人として生きた女性の一生。ここまで商売一筋に生きるヒトはいるんだろうか?男とか、女とか関係なく。恋人も作らず、死んだ夫との間にできた息子のことも女中に任せきりで仕事にのめり込む。彼女をここまでにさせたものは何なのだろうか?

  • 吉本興業の発祥を描く。サクセスストーリーの細腕繁盛記。激動の人生に引き込まれる。

  • 山崎作品らしく、信念を曲げない生き方が、大阪商人の視点から描かれている。

    そして、商売上でのお金の有効な使い方も教えてくれる。商いを知らない人には、目から鱗だろう。

  • 山崎豊子っぽくなくてつまらなかった。

  • お金儲けばかりの人生はつらい。
    回り出したら止まれない独楽のように生きた人のお話です。
    私の独楽はまだ回りはじめてもいなそうです。

  • きもちいいね、こういう人

  •  吉本興業の創始者・吉本せいがモデルと思しき、女商人・多加の生涯。
     小さな船場の御寮人から、寄席の大席主へ。
     商売における、性根を据えて徹底した気遣いと、計算高さに裏打ちされたがむしゃらさ。
     真っ直ぐに突進する彼女の激しい視点に引き摺られながらも、その危うさや遣り切れなさを不意に気付かせる筆加減が絶妙。
     適度に抑揚のある練達した筆致は、女商人の豊かな情感を開花させる。
     過多な描写や感傷とは無縁でいて、文体の奥に人間の生が着実に刻まれる実感を伝える見事さ。
     特に多加の女たる部分や、市会議員・伊藤友衛との関わりを、湿っぽくも脂っぽくもなく、安易な語彙に陥らず、生々しく浮かび上がらせる手法に唸る。
     月に幾度か女席主と贔屓客として挨拶を交わすだけの一時(ひととき)が、密かな拠り所。
     一瞬互いの心に触れる言葉を投げ、揺らぎ、黙して去り、また何でもない顔で出逢う、不思議な繋がり。
     言葉に表さず体も交わさず、気配と匂いを探り合い安堵するような、絆ともつかぬ関係は二十年以上続く。
     潔癖な貞節を貫く後家の半生の裏にある、商売と情愛を秤に掛ける狡さや哀しささえ、愛らしく共感させる。
     厳しく倹しく生きてきた多加の唯一の贅沢は、伊藤の自死に際し、洒落者としての彼の名誉を守る為、写真一枚に大枚を叩いたこと。
     死の写真に這い伏しての慟哭に、生身の女たる顕わな部分が溢れ出る。
     伊藤を始め周囲の男達との擦れ違いは、彼女のもう一つの生を切なくも力強く息衝かせる。
     寄席道楽と女遊びの果て、借金を残し妾宅で情死した、夫の吉三郎。
     未亡人となって後、商売を表裏から支え続けたガマ口。
     二夫に見目えぬ象徴の白い喪服と、藍地に四季の花々を染め抜いた花暖簾に象徴される多加の生き様は、昭和の日本の世相を鮮やかに彩る。
     商業語としての大阪弁の融通無碍な含みと柔らかい響きが、小説の『音声』の部分を担い、耳に快い読後感を誘うのも良い。

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著者プロフィール

山崎 豊子(やまざき とよこ)
1924年1月2日 - 2013年9月29日
大阪府生まれの小説家。本名、杉本豊子(すぎもと とよこ)。 旧制女専を卒業後、毎日新聞社入社、学芸部で井上靖の薫陶を受けた。入社後に小説も書き、『暖簾』を刊行し作家デビュー。映画・ドラマ化され、大人気に。そして『花のれん』で第39回直木賞受賞し、新聞社を退職し専業作家となる。代表作に『白い巨塔』『華麗なる一族』『沈まぬ太陽』など。多くの作品が映画化・ドラマ化されており、2019年5月にも『白い巨塔』が岡田准一主演で連続TVドラマ化が決まった。

山崎豊子の作品

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