- 本 ・本 (480ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101250229
感想・レビュー・書評
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2023.11.6 再読了(1回目2022.4.6)☆8.7/10.0
伊坂幸太郎さんの真骨頂の偶像劇
大きく分けて5つの場面で展開される物語。時系列がバラバラなことが後々分かってくるので、読んでいる最中は同時並行のように錯覚してしまう。
それぞれに出てくる主人公が、さまざまな場面で交わり、関わり、関係し合っていたことがだんだんと分かってきて、「あ!これはこの時のアレだったのか!」「ここでこの人とこうして繋がるのか」という驚きの連続。
全く個別の人生なのに、それぞれが意外なところで結びつき、予想もしないところで出会い、巻き込み、巻き込まれていく。
それはまるで、冒頭のエッシャーの騙し絵の挿絵のように、五つの物語がまるで"一枚の壮大な騙し絵"。
それまでバラバラだった人物たちの物語が、読んでいる側が頭の中で組み立てていた物語が、終盤になって綺麗に解体され、鮮やかに再構築される。それがとても心地よくて痛快。
そして、伊坂さんの真骨頂の一つでもある、散りばめられるこの世の真理やきらめく機知も今回も満載です。
自分のこの人生も、きっとどこかで誰かと交わることで影響を与え、知らないところで繋がっていて、作用し合っているのかもしれないと想像すると、実は誰もが誰かの救世主だったりもするんだろうなと、そう感じました。
〜〜〜〜〜〜〜〜心に残った言葉〜〜〜〜〜〜〜〜
"この地面にアスファルトを流してるのは、俺たちの勝手だ。ガソリンで突っ走るこの乗り物だって俺たちの勝手。そうだろう?それでもってその勝手とさ無関係のはずのタヌキだとか猫が轢かれちまう。とばっちりだよな。俺たちの横暴だよ。せめてこんな硬いアスファルトで晒し者になっているのだけは救ってやりたいんだ"
"優しいって字はさ、人偏『憂い』って書くだろう。あれは『人の憂いが分かる』って意味なんだよ、きっと。それが優しいってことなんだ。ようするに、想像力なんだよ"
"神について考えててね、俺は俺なりに分かったんだ。内臓の定義を知っているかい?一つに、『自分でコントロールできない』ってことが挙げられる。例えば、右腕を 上げるのはやろうと意識すればできる。頭が痒ければその場で掻ける。ただ、内臓は無理だ。胃や腸は蠕動運動を繰り返して、こうしている今も食べたパンを下へ下へと送り続けている。でも、それを意識してやっているかというと、そりゃ無理だ。心臓の筋肉を何秒かおきに動かして、その間に腸のことを気にしつつ、目の前のデスクワークもこなす。そんな状態になったらわ、脳では把握できなくなってパンクだろうな。
そして俺と胃の関係は、人間と神の関係に似ているんだ。俺は自分の意思で勝手に生きている。死ぬなんて考えたこともないし、誰かに生かされているとも思ったことがない。ただ、そんなことは胃がまともに動かなくなったら途端にアウトだ。そうだろ?俺が必死に口に入れた食事が何一つ消化されず、止まってしまったら、俺の生活も止まってしまうだろうな。ただ、胃をコントロールすることはできない。俺は暴飲暴食を避けて、よく噛み、胃の状態にたえず気を配っていなくてはならない。痛みはないか、ガスは溜まっていないか。要するに、胃は俺の人生を担っているわけだ。で、俺が胃に対してできることとは何かというと、声に耳を傾けて、最善を尽くし、祈ること。
俺は胃を直接見られない。あとは祈るだけだ。内臓ってのは俺が死ぬまで一緒のはずだ。いつも見えないところで、そばにいて、一緒に死んでいく。神様と近いだろ?俺が悪さをすれば神は怒り、俺に災害を与えてくる。
それに、人はそれぞれ胃を持っている。そこも神と似ている。誰もが自分の神こそが本物だと信じてる。ただ、誰の胃も結局は同じものであるように、みんなの信じている神様は煎じ詰めれば、同じものを指しているのかもしれない"
"人生に抵抗するのはやめた。世の中には大きな流れがあって、それに逆らっても結局のところ押し流されてしまうものなんだ。巨大な力で生かされていることを理解すれば怖いものなどない。逃げることも必要ない。俺たちは自分の意志と選択で生きていると思っていても。実際は『生かされている』んだ"
"人生については、誰もがアマチュアなんだよ。誰だって初参加なんだ。人生にはプロフェッショナルがいるわけではない。全員がアマチュアで、新人だ。
初めて試合に出た新人が、失敗して落ち込むなよ"
"行き詰まっているとお前が思い込んでいただけだよ。人ってのはみんなそうだな。例えば、砂漠に白線を引いて、その上を一歩も踏み外さないように怯えて歩いているだけなんだ。周りは砂漠だぜ。縦横無尽に歩けるのに、ラインを踏み外したら死んでしまうと勝手に思い込んでる"詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
めちゃくちゃ面白かった〜!
初期の伊坂作品をほぼ読めてなかったので、刊行順に読んでいってます。
この作品は2作目!
2作目にしてこのクォリティなのか〜!
凄い、、天才的すぎる、、
5つの視点で語られる群像劇。
伊坂さんのこのパターンめっちゃ好き♪
▫︎ お金で買えない物はないという拝金主義者の戸田と、そんな彼の元で働く志奈子。
▫︎ 泥棒を生業としてる黒澤。
▫︎ 1人の男を神と崇める河原崎。
▫︎ 精神科医の京子と、その不倫相手の青山。
▫︎ リストラされ再就職先が決まらない豊田。
5つそれぞれの物語なのだけど、どこかしら繋がりのあるそれぞれの話。
文中に出てきた"つなぐ"という言葉がキーポイントなのかな。
この話の中には残忍な部分もあるけど、エンタメ要素強いので、エグ、グロ苦手な私もサラッと物語として受け入れられた。
伊坂さんと言えば伏線回収ってよく言われてるけど、ほんと後半からはあちこちに散りばめられた伏線がどんどん回収されて、ハッ!とする事だらけだった!
読み終わってからも、また初めから読んで確認してみたくなる様な仕掛けや構成は、スゴいとしか言い様がない。
とっても面白かったです\♡︎/
✎︎____________
登場人物では黒澤が1番好き!
豊田さんが幸せでありますように。
オーデュボンの優午の話が出てきた!
話をした額屋の男は伊藤なのかな?
✎︎____________
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一休さ〜ん(^_^)v
そうなんですね!(°_°)
私、初期の伊坂さんあんまり読んでなくて〜(×。×)アチャー よし!これから楽しみます(...一休さ〜ん(^_^)v
そうなんですね!(°_°)
私、初期の伊坂さんあんまり読んでなくて〜(×。×)アチャー よし!これから楽しみます( ー̀֊ー́)و♡2024/03/08 -
2024/03/08
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途中までの印象はしっちゃかめっちゃか。
どのように収束するのかなぁ…大丈夫なの?と心が落ち着かなくなる。
しかし、そんな心配は無用で伏線はしっかりと回収されていく。最終的にはきれいにおさまるところにおさまる。
フワちゃんが「この物語、小説というよりもはや騙し絵!」と評しているが、そのとおりだなあ。
長編二作目で、早くも伊坂ワールドの真骨頂。
さすがです。
唸らされます。
てか、すごすぎます。
「人生については誰もがアマチュアなんだよ」
泥棒の黒澤が元画商・佐々岡にかける言葉。けだし至言。誰だって初参加だから、失敗して落ち込むことはない。イッツオールライトで、一見壮大な騙し絵のような豊潤な人生を歩んでいこう。
ところで、「最高時速240キロの場所」って一体?
今はもっと速いのだろうけどね。
単行本は2002年7月発売 -
泥棒を生業とする黒澤。
父に自殺され、新興宗教の信者になる、画家志望の河原崎。
不倫相手と協力して、お互いの配偶者を殺害しようとしている、精神カウンセラーの京子。
リストラされ、家族を失い、四十社連続不採用中の豊田。
何の関係もないと思われる4つの物語が並行して進んでいく。
仙台駅前には、新しくできたコーヒーのチェーン店や展望台があって、首輪のない柴犬やプラカードを持った白人女性がいて、それらが人々の繋がりを暗示しているようだ。
この先どうなるんだろうと思われるような、悲観的な状況が続いていくけれど、パズルのピースの欠けた部分がみごとに埋められて、面白さがどんどん加速して、ものすごく手の込んだ仕掛けに圧倒されてしまった。
所々にはさまれている音楽もシャレているし、「人生については誰もがアマチュアなんだよ」なんていう黒澤のセリフも、豊田の書いた『イッツオールライト』も、何もかもが愉快で、最高な結末。
他の作品と少しずつリンクしているところなど、まだまだ知らないことが多いので、伊坂作品もっと読んでみたいです。 -
『う〜ん、難しかった』が率直な感想。
4つの物語が並走し、交錯し、途中でよくわからなくなってしまった。
私の読み込みが足りないんだろうなぁ〜
もう一度、読み返せば色々な発見がありそう。 -
登場人物が多いけど面白い!
色んなとこで繋がってるのがまたいい。
面白かった〜!
黒澤のセリフがいちいち心に染みる…笑 -
バラバラのストーリーが、謎が、一気に混ざり氷解していく伊坂マジックが凄い。
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本作は4つの物語が並走するスタイルで、時間軸を巧妙にずらしながら、最終的に絡み合った物語の全体像が映し出されるという緻密で計算し尽くされた作品。
読後改めてみると、表紙見開きのエッシャーの挿画に本作の特徴が上手く表現されていると感じた。作品全体がまるで1つの大きな騙し絵のような構成になっているためだろう。
並行する物語のなかでも、それぞれの登場人物の人生に、意外な所で接点が見え隠れしたり、危険な目にあったり、逆に助け合ったり、騙したり騙されたり、と展開していく面白さに読み手が振り回される感じも心地よい。更に、一筋縄ではいかない登場人物それぞれの人生と、丁寧な人物描写で、時には感情移入してしまった。
中でも私は、プロの泥棒である黒澤の人間性が気に入ってしまった。伊坂幸太郎さんの作品は、殺し屋とか泥棒とか、犯罪に手を染める方々を極悪非道に仕立て上げずに、どこか魅力的な人物として描くのが本当に上手いと思う。それの方が現実的なのかもしれない。
散りばめられた伏線が回収されていく様子は勿論のこと、読み手の想像を超え、予想外の方向から繰り出される展開の巧みさが1番の見所だと思う。
こんなに悲惨で残酷な事件や事故は起きていないながらも、普段の何気ない日常で、人と人が繋がり関わっていることの究極の縮図が本作なんだろうなぁと感じた。
読後は、パズルが完成した後のような爽快さは味わえたが、負のオーラ漂う登場人物達に感情移入したせいか、はたまた人との繋がりの縮図を垣間見たからか、虚無感に近い感覚が残った。
その意味で、展開自体はとても面白いが、パワーダウンしている時にはあまりオススメしたくない作品だった笑
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個性豊かな魅力的なキャラが沢山登場
人物相関図みたいなのを書きながら読んでみた
同じ仙台に居ながら、みんながそれぞれ色々な事があって人生を模索する
全く繋がっていない様に見えたキャラ達が最後の方は繋がる、繋がる、あっちでもこっちで繋がるー!
人生を影響したり、ちょっとだけ接点があったり
そしてそれぞれズレていた時間もわかって納得
個人的には黒澤と豊田&老犬がお気に入り
黒澤はなんで泥棒?
老犬を守り、高慢チキな戸田の鼻の頭をへし折ってやった豊田、いいね!
そういえば、オーデュポンの祈りの喋るカカシの話も出て来た(^O^) -
複数の物語が並走し、終盤見事に交わりあって道が繋がる感じ。細部まで考えられた構成にどんどん引き込まれていきました。
個人的には礼儀正しい泥棒のキャラが好き。
家族や友人・職場で一緒に働く人以外にも日々色々な人と触れ合いすれ違っているけれど、その周りの人の人生(状況)を細かく知ることってなかなかない。
この本では登場人物それぞれの想いからくる行動や言葉の意味が後からわかってくる・繋がるのが理解難しいながらもクセになる。
著者プロフィール
伊坂幸太郎の作品





