裏庭 (新潮文庫)

  • 新潮社 (2000年12月26日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (416ページ) / ISBN・EAN: 9784101253312

みんなの感想まとめ

自己の傷と向き合うことの難しさを描いた物語は、主人公・照美の成長と内面の旅を通じて、家族の再生というテーマを深く掘り下げています。かつての英国人一家の別荘に隠された「裏庭」での冒険は、彼女が失った双子...

感想・レビュー・書評

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  • 梨木香歩さん。

    けっこう打率の高い作家さんです。

    「家守奇譚」☆5
    「冬虫夏草」☆4
    「西の魔女が死んだ」☆3
    「村田エフェンディ滞土録」☆4

    安定の4打数4安打。内1ホームラン。

    これはもうまちがいありません。鉄板でしょう♪
    タイトルだけ見てブックオフで購入しました。
    しばらく寝かせておいた1冊です。


    アカーン_| ̄|○ダメヤコレ

    児童文学ファンタジーでした。

    合わない。
    合わないという言葉は便利なもので、本当はクソだなとか、クズだなとか、ハナクソだなとか、思っていても、でもあれだよなー、きっと好きな人もいるんだろうからいくら個人の感想つってもそんなに正直に辛辣には書けないよなぁ、なんてときに非常に便利な言葉で、今までけっこう多用してきたんですが、今回は本当の意味で合わない。
    右打席立つつもりが間違って左打席に立ったみたいな。

    主人公は13歳の少女。
    きっと現役の少女とか、昔少女だったとか、昔々少女だったとか、昔々のその昔に少女だった片鱗がかすかに残っている気がするとか、そういう方々には刺さる何かがあると思う。

    しかし当方、残念ながら身の内のどこをどう探しても13歳の少女は出てこなかった。

    読んでる間、これはアレだなと思った。

    ちょい和風な「不思議の国のアリス」に「オズの魔法使い」を混ぜ合わせて、「思い出のマーニー」(ジブリ版)をソースにして上からかけたような。
    そんな読後感。

    一九九五年第一回児童文学ファンタジー大賞受賞作だそうです。

    合わないってだけで特に文句はないんですが、あえていうなら、「意外と登場人物多くね? 相関図も欲しくね? なのに人物紹介みたいなのまったくなーい」ってことくらいですかね。

    あ、あとね。
    少女の頃の魂をどっかに保持したままで、人生をまっとうに頑張って生きてきたおばあちゃんたちは格好良いですな。

    これからは本を買うときはあらすじくらい見てから買うことにしようかな。うん。

    • ひまわりめろんさん
      むむむ、なんか面白そう!『秘密の花園』近々読もうと思ってたんでセットで読んでみようかな
      どっちが先がいいのかな?読み方指南みたいな感じっぽい...
      むむむ、なんか面白そう!『秘密の花園』近々読もうと思ってたんでセットで読んでみようかな
      どっちが先がいいのかな?読み方指南みたいな感じっぽいから『ノート』が先かな?
      2024/02/29
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      ひまわりめろんさん
      猫が言うのもアレですが、『秘密の花園』はキイワード一杯の話ですから、見方の例は後にされた方が。。。
      ひまわりめろんさん
      猫が言うのもアレですが、『秘密の花園』はキイワード一杯の話ですから、見方の例は後にされた方が。。。
      2024/03/01
    • ひまわりめろんさん
      わかりました!
      ブックレットの方も近隣図書館にあったので近々借りてきて読んでみますねん
      わかりました!
      ブックレットの方も近隣図書館にあったので近々借りてきて読んでみますねん
      2024/03/01
  • 昔、外国人の別荘として使われていたバーンズ屋敷。
    そんなバーンズ屋敷も今ではすっかり廃墟と化し、庭も荒れ放題だ。
    子供たちにとっては絶好の遊び場だが。
    照美はジョージおじいさんから、バーンズ屋敷の不思議な裏庭の話を聞く。
    裏庭には、屋敷の大鏡を通り抜けていかないと辿り着けず、裏庭に自在に行き来出来るようになると死に近付くという。
    照美はその裏庭の世界に迷いこんでしまう。

    喪失感を抱えた親子(さっちゃん・照美)が、照美は裏庭の世界で、母親・さっちゃんは現実の世界で、それぞれ生死と向かい合い、受け止め、乗り越える物語…かな?
    ほぼほぼ予感はしてたけど…う~ん(;つД`)
    これは私には合わなかった~。
    ファンタジーの世界に素直に入り込めなかった~~。

    • 傍らに珈琲を。さん
      あ、お茶有難う御座います♪
      (*/◎\*)ゴクゴク…プハー
      土瓶さんのレビューをいつだったか拝読して、
      その時から私も合わないだろうな...
      あ、お茶有難う御座います♪
      (*/◎\*)ゴクゴク…プハー
      土瓶さんのレビューをいつだったか拝読して、
      その時から私も合わないだろうなーと思っていたのです、実は。
      2025/04/26
    • 土瓶さん
      それでも読むのが強~い!
      それでも読むのが強~い!
      2025/04/26
    • 傍らに珈琲を。さん
      ありがとぉぉぉ!
      でも実はそれも土瓶さんを見習ってみたのです。
      前に、つまらなそうでも放り投げずに最後まで読んでみるって、いつかどこかで仰有...
      ありがとぉぉぉ!
      でも実はそれも土瓶さんを見習ってみたのです。
      前に、つまらなそうでも放り投げずに最後まで読んでみるって、いつかどこかで仰有ってませんでした?
      2025/04/26
  • 率直に感動した。大作だった。
    己の傷と対峙することのどれほど険しく難しいことか。傷との融合の話でもあったのかと思う。印象に残る文が多くて、それぞれの箇所について感想を言い合いたくなる。
    日本の家庭って、家に庭って書くんだね。その庭をどう手入れし育み作り上げていくかは庭師次第なのだと。
    エピローグ後の展開も気になるけど、それはそれぞれ私たちの中でまた育てていくものなんだろう。
    最後に河合隼雄氏の解説があるのもよき。

  • バーンズ邸の鏡から「裏庭」に抜ける照美はその世界を救うための冒険に出る。一方、バーンズ邸の庭の池からは謎の遺体が。
    ------------
    以前読んだのですがすっかり内容を忘れてしまい、以前オンラインで書き溜めていた読書感想文が喪失したこともあり、再読です。
    異世界と現世で同時進行するお話ですが、ちょっと乗り切れませんでした。全般的に好きな梨木さんのお話ですが、時々乗り切れなくなる作品があります。
    しかしテーマ的には心に残る深い傷から各々がどう回復に向かっていくか、という重めの作品で、主人公が最後に向き合った心の傷にはグッときました。

  • かつて英国人一家の別荘だった洋館。近所の子どもたちは塀の穴をくぐり、洋館の庭で遊んでいた。照美もその一人だったが、面倒を見ていた軽い知恵遅れで双子の弟、純が庭の池に落ち、肺炎で亡くなってからは、庭を避けるようになっていた。

    純が亡くなり、家族の中で自分の居場所がなくなったと感じた照美は、友達のおじいちゃんの話を聞くことが唯一の楽しみとなっていた。
    おじいちゃんはかつて洋館に住んでいた英国人一家のこと、また洋館の「裏庭」での不思議な出来事について話してくれた。「裏庭」とは、死の世界にとても近い場所で、洋館の玄関つきあたりにある大鏡から入っていけるという。

    ある時おじいちゃんが倒れた、と聞いた照美は、いてもたってもいられず、洋館の大鏡の前に立つ。すると、どこからともなく声が聞こえ、照美は導かれるように裏庭に足を踏み入れるのだった。

    本書は照美と照美の母であるさっちゃんの視点から描いた現実の世界と、照美が裏庭の世界に入り、冒険を繰り広げる異世界の二つのパートに分かれる。
    現実の世界では、登場人物の誰もが心の中に喪失を抱えている。純の面倒見役だった照美は純を失った今、自分を家族の中で不必要な人間だと感じている。さっちゃんは純を失った悲しみから立ち直れず、照美に向き合うことができない。また、彼女は自分の母に愛された記憶がないことに苦しんでいる。照美の父は純を失った悲しみを表すことができずに照美やさっちゃんに無関心な対応を取ってしまう。
    洋館に住んでいたレイチェルは、裏庭を自由に行き来できる妹のレベッカに対して疎外感を感じ、レベッカの婚約者マーチンは若くして病気で亡くなったレベッカを忘れられない。
    皆が傷を守るために心の内を鎧で固めてしまっている。そんな中、照美が裏庭という異世界を旅し、現実の世界へ戻ってくることで、皆が少しずつ心の鎧を脱いでいくのである。

    物語はイギリスの児童文学の世界を模したような設定だが、大きく違うのが、本書では子どもの照美だけでなく、母親のさっちゃんの心の内も描き出していることだ。つまりこの物語は、子どもの成長物語というだけではなく、大人が過去の傷を乗り越えるための物語でもある。

    裏庭で繰り広げられる冒険ファンタジーは、やや抽象的な寓話を読んでいるようで、どういう意味を持つのかわかりかねるところもあったが、すべての登場人物がつながり、それぞれに再生の兆しが見えるラストは胸を打たれる。

    心の中に喪失を抱える人たちに少しだけ癒しを与えてくれる物語。

  • いまお医者さんのはしごをしていて「閉鎖病棟」は待合室で読むのにちょっとためらわれたので持ってたこれをちょっとだけ、と思ったらとっても読みやすくて止まらない。ドキドキな世界観。ナルニアと昭和がそこに。併読しようと思います。

    梨木香歩さんデビューしました。
    6年前、双子の弟、純くんを亡くした照美ちゃんという女の子が主人公。日本にある英国人が昔住んでいたバーンズ屋敷という古いお屋敷が主な舞台です。石垣の穴を潜り抜けて忍び込む裏庭は、何世代もの子どもたちの密かな楽園。
    実はここにある大鏡は異世界のドア。
    照美は、テルミーとしてここで大冒険を繰り広げます。
    そのなかで彼女はたくさんの出会いと経験と試練を繰り返して成長してゆきます。
    スナッフ・キン、テナシ(コロウブ)、レベッカ、妙さん、ハシヒメ、ソレデ、カラダ、ハイボウ、キリスゲ、ビャクシン、タムリン、音読みの婆
    3人の音読みの婆の
    傷を恐れるな
    傷に支配されるな
    傷はそだてていかねばならない
    そこからしか自分は生まれない が好きです。

    このお屋敷の持ち主バーンズさんたちは日本に親しい人々と親交を持ったけど、戦争で母国に帰国。お屋敷はそのままで残り、照美のおばあちゃんと親しかったバーンズ家の少女、レイチェルは、孫世代が彼女たちとおなじ年頃になるころ、再び日本に戻ってきて数人と再会を果たします。
    レイチェルと家政婦マーサ・レイノルズさんとの会話の
    115ページから117ページが軸なんじゃないかなぁって思いました。家庭は家の庭と書く。裏庭なんて言葉が大嫌いなマーサ。どんな庭も大切な庭。裏なんて表現は許せない。そんなふたりがとてもステキ。

    年端もいかない女の子の照美に知恵遅れの弟の純のことを任せきりで仕事に没頭する両親。その母にずっと厳しくあたり続けた祖母。庭は何世代もの長い時間を経てできあがってゆくものだといいますが、家や人もまたそうだと思わずにはいられません。長い時間を経て環境が生むものは大きそうです。
    純の死に後悔する照美ですが、純を守る方法がなにかあったのではないかと思ってしまいます。読んでいると、庭師の不在が招いた不幸だともいえるかもしれない、と。パパは純と照美が庭に入ってゆくところを偶然目撃していたし、もう少し照美達という「家の庭」をみつめてほしかった。照美ばかりが罪を背負うには、幼なすぎる。
    子どもたちを優しく、日本の庭のように、理想的な混沌のなかで見守ってあげてほしいという大人への願いと、厳しい世界のなかでも子どもたちが逞しく優しく育ってほしいという願いを感じます。
    綾子ちゃんのおじいちゃんのジョージさんの10ページのお部屋がとても好き。懐かしい昭和の匂い。

  • 一日中のんびりと本を読みました。梨木香歩「裏庭」です。児童文学ファンタジー賞を受賞した作品です。大作という感じで読み込むのにかなり力が必要でした。ファンタジーの部分が多く、この前に読んだ「西の魔女が死んだ」の方がシンプル(一つ一つの心情などはすごく深いですが)で素直に心の中に入ってきました。

  • 梨木さんのからくりからくさ、りかさん、家守奇譚などが大好きで手にした作品。
    個人的に西洋風ファンタジー(竜や妖精が出る系統)が苦手で世界観に没入出来なかったので評価が低くなってしまったが、そうでない方にとったら良い作品だと思う。

  • 梨木さんの本はこれで三冊目。
    まるで壮大なアニメを観るような感覚で読み終えました。
    作品の肩書きは「1995年第一回児童文学ファンタジー大賞受賞作」。
    主人公は思春期の少女、照美。
    タイトルの「裏庭」とは、照美の家の近所にある、かつて英国人一家の別荘だった洋館の遊び場のこと。
    同時に彼女自身の内面をあらわします。

    双子の弟「純」を亡くしてから、両親との間の溝を乗り越えられない照美。
    友人の祖父から聞いた近所の屋敷の「裏庭」にある日入り込み、不思議な鏡の声を聞いて「裏庭」への長い旅に。
    それは照美自身の内面への旅でもあると読者も知らされていくのです。

    まるでRPGのような照美の冒険と、「裏庭」に関わる現実の人々との話は並行して進んでいきます。途中に織り込まれる幾多のメッセージが照美を目覚めさせ、読み手の心も大きく揺さぶられます。

    一貫して流れるのは「家族の再生」というテーマ。
    悲しみにはきちんと向き合って泣かなければならない、大切な家族には「あなたが大切だ」と態度でしめさなければいけない、そんな当たり前の事を知るための、照美の旅の辛さには思わずエールを送りたくなってきます。
    家族に対して感じている遠慮や諦め、何となく埋まらない溝。
    それらをうやむやにせず言葉で表現する本作品は、特に若い方にお薦め。

    当たり前な家族のあり方が出来なくなっている大人にもお薦め。
    導入部でワクワクさせ、途中では心のストライクゾーンに何度もヒットを打ち込まれ、最後まで読むと暖かい気持ちになる、さすが梨木さん。
    展開のドラマティックさと、色彩感の豊かさとは、アニメ化しても良さそうな気がしますが、読まれた方はどう思われますか?

    今日は体調がすぐれなくて寝ていたのですが、そのおかげで本作品を読み終えました。風邪に感謝。

  • こんな感じ、知っているような知らないような、空を飛ぶような地を這うような。
    英国人別荘の裏庭から繋がる異世界への旅。
    仏教の輪廻転生(六道)を旅するということ、言語化するとこんな感じなのかも。
    恐ろしい美しさと共に、抗えないほどの凄まじい肯定がある。

  • 秘密の花園とか、ふしぎの国のアリスとか、そういったものを感じさせるのだけど、でも、全体を通してずーんと重めのテーマが流れている。

    心に傷を負ったりすることって大なり小なりそれぞれみんな体験することだとは思うんだけど、そういった部分にこうぐいぐいとさしこんでくる何かがある。

    生と死の世界、親子の問題、心の傷との向き合い方…

    しばらく我が本棚に積んであって読むタイミングを待っていた作品なのだけれど、今回読んでみてほんとに良かった。

    夜寝る前に読み始めてから、次の日の午前中にかけて一気読みの1冊でした。

    河合隼雄さんの解説は個人的にかなりテンションあがりました



  • 中学時代に読んだ本。
    梨木さんの「西の魔女が死んだ」を読み、
    他の作品にも興味を持ち、購入。

    家族旅行の際に、この本を持っていき、夜ホテルで読み始めたら先が気になり、ページを捲る手が止まらなくなり、ほぼ徹夜をして読んでしまったことを今でも覚えています。

    学生時代の私に良い読書体験をもたらしてくれた、かけがえのない作品です。
    近々、再読したいです。

  • 穏やかそうな装画から受ける印象に反して、とても壮大なファンタジーだった。
    家族との関係性が希薄で孤独を感じている小学生の照美が、打ち捨てられた洋館の裏庭に迷い込んで、冒険しながら自分自身や様々なつながりを取り戻す話。
    図書館ではティーンズ文庫のコーナーにあったけど、大人でも結構難し目の話で、読みながら現実と対比させて考えることが沢山あった。

  • 私にとって世界観に違和がない作品。のみならず変化や導きを感じる作品。誘導される際の抵抗感は全然ない。きれいな丸みを帯びた、すべすべした鉱物を一個ずつ世界に配置したら、こんな物語になる気がする。それを一個ずつ指先で押さえるような嬉しさ。ときに拾い上げて掌に収めるときの安堵感。いつの間にか、私にとっての地図を広げている。

    石の持つ、硬さ。清潔さ。冷ややかさ。沈黙。

    それなのに、描写は木々や花々を追う。土くれ。そして風の感触。水辺も。ときに火が上がる。

    そのときに、その炎がどれほどのものか、水の決壊がどれほどのものかと、なぜかその感情が真に伝わってくるようだ。

    石、という自分の本質を横に一度置いてでも、この世界の鮮やかさを語りたいと願うその切実さに息を飲む。それほどの献身に胸が震える。母だ。物語を産む母なのだと思う。この子のためなら、と宝を差し出す母。

    母は何を差し出すか。梨木香歩が、母が、母を語る。祖母から母へ。その母から娘へ。贈り物の内容を語る。

    贈り物は「私は誰?」という問への「教えよう、君に」という応答だった。物語のはそもそもの始まりは、主人公である孫娘に祖母が授けた名前。照美。「Tell me」なのだ。

    祖母が最後に渡そうとする物は、磨き上げられた鉱物。たくさんの研磨を、傷を受け入れて輝く魂。「こんなにきれいに仕上げてくれた」と祖母が主人公に労いのことばをかける。
    美しい抽象化を書き綴る、その淡々とした調子に不思議なほど冷静な私がいた。でも、やっぱり「これはママへ」は衝撃だった。がつんと後頭部を殴られたような驚きだった。梨木香歩はすごい。絶対ニヒリズムに屈しない。素朴な感情の愛しさをこんな風に書いてしまうのか。すべてを兼ね備えた直球。ここでも鮮やかなコントラストが際立っている。

    確かに、戦争を始めようと決めた人間は、宣戦布告の当事者は、民間人にはいないだろう。でも、名指しはされないはずなのに、当事者だって「自分じゃない」と言いかねないというのに、戦争は私たちの中でこそ起きた。起きている。戦争で犠牲になった祖母とレベッカの女性性は浄化の道を歩み始めた。両国の女性性が共に、その道を。

    舞台となる町を覆い尽くした大空襲の炎の因縁さえ、レベッカの裏庭で、クオーツアスの炎が制していく。

    子孫は、生命の更新として、生まれたとき何もない地平に立たされるようだけれど、やっぱり幽霊たちは期待している。願いを込めている。そしてそのために生まれたいと思う子供たちもいる。照美は裏庭から帰ってから悟る。誰の役に立たなくても、もういいんだ、と。だけど、それは照美が課題をこなしたからだ。

    誰かを助けるために得た、銀色の両腕。彼女は裏庭でそれを見た。

    その課題は、誰の役にも、の誰、が誰なのか。他人と自分の境界線を見極める力を得ること。そのあるようで、ないような境目、を知ること。

  • 15年くらい前に読んだはずなのに、今でも風景がぽわんと浮かぶ、のすごい。

    • なおさん
      私も全く同じです。
      いきなり失礼しました。
      私も全く同じです。
      いきなり失礼しました。
      2023/01/08
    • けーこさん
      共感いただけて嬉しいです!ってずっとコメントしようと思って遅くなってすみません。
      共感いただけて嬉しいです!ってずっとコメントしようと思って遅くなってすみません。
      2023/06/01
  • 読み始めて5ページで「この話好きかも!」と思った
    。一人の女の子が古鏡から裏庭に迷い混むお話。『鏡の国のアリス』のような『オズの魔法使い』のようなファンタジー。梨木さんの世界観は好きだ。
    人は心の中に裏庭を持っている。裏庭を育てるにはエネルギーが必要で、時には傷付く事もあるけれど、それを恐れてはいけない。支配されてはいけない。大事に育んでいく。裏庭って結局、自分自身(人生)なのかなと思った。

  • こどもでも読める平易な文章で、こんなにも深い世界を描いてしまう梨木香歩さんに驚いた1冊。

    双子の姉として生まれた照美に象徴されるように、表と裏、現実と異世界、傷つけられる私と傷つける私、というふうに、「ふたつの相反するもの」がモチーフになっていて、ストーリーに巻き込まれながらも、作中の「ふたつのもの探し」に夢中になってしまった。。。

    この本をきっかけに、本棚に一気に梨木さん作品がふえたという、大切な1冊です。

    • まろんさん
      ふふ(*'-')♪
      だってtorachanさんと私は、パラレルワールドでは隣のクラスで、同じ本を手にとってハッ!とするはずだった二人だし!
      ...
      ふふ(*'-')♪
      だってtorachanさんと私は、パラレルワールドでは隣のクラスで、同じ本を手にとってハッ!とするはずだった二人だし!

      私もtorachanさんのオススメ本とかが気になって、本の在庫が加速度的に増えてるから、おあいこってことで(*^_^*)
      2012/05/11
  • この愛すべきファンタジィの感想を、未だ書いていなかったことに驚いている。梨木香歩さんの本は、どれも「しみじみと」沁みるけれど、この「裏庭」も私たちの感性(普段意識しないかもしれないけれど、確かに体が感じているもの)と地続きに感じられる。届きそうで届かない、或いは取りこぼしている物語をひたひたと寄せてくるのだと思う。その水は(私の鼻には)淡水のにおいがする。
    絡み合って行く、いくたりものひと。ひとが持つ記憶ーー物語。テルミィが餓鬼をゆるすシーン(と、その餓鬼の正体がわかるところ)がいちばん、父さんが泣くシーンが次点で好き。もちろん、そこまで運ばれてくる重層の織りなしがあってこそ、だけれど。ああ。感想をしたためていたら、私も私のファンタジィを書きたくなった。

  • 小さい頃は単なるファンタジーとして読んだけど、再読したらいろいろ分かって大人になったな、と冷静な気持ちで読めたのが感慨深かった。

    自分の心が傷を持っていることを自覚しないとその傷を自分のものにすることはできない。認めて次に進むこともできない。
    傷ついていることをごまかして、見せかけの癒しに頼ったり、向き合わずに他の人に同調して自分の正直な気持ちを失って生きていくのでは解決にならない。
    大人になったって傷つくことはあるし、悲しかったら泣いてもいい。その経験も含めて自分は自分なんだと、堂々と生きて行ったらいい。
    悲しいことに直面したときに認めるのは難しいけど、傷ついていないふりをしていると、楽しいことにも鈍感になってしまう。喜怒哀楽を感じられる、そのうえで自分をコントロールできる大人でいたいと思う。

  • 伊集院静さんの描く「生と死」は、「からっと無常観、さらっと諸行無常」って感じがするんだけど、
    梨木香歩さんの描く「生と死」は、「輪廻転生、現世と来世、魂の救済」ってところを強く感じました。
    静謐な世界と、持続低音の響く世界の違いというか、「ぴーん」と「ぴちょん」の違いというか。
    (これでは余計わからなくなる)

    3代にわたって祖母、母、子どもと引き継がれる「業」が、ねっちょり感をだしています。
    あちら側とこちら側を行ったりきたりしながら、心の中にあるどろどろしたものを浄化していきます。
    そういうところを深く読んでしまうと、ちょっと苦いかも。

    冒険小説としての読み方もできます。
    謎解きの要素もたくさんあって、面白いです。
    スナッフの正体はすぐにわかりましたが、おかっぱの少女の正体にはかなり驚きました。
    おかっぱの少女の正体を知ると、話し全体がさらに光り輝きます。

    2013/03/31

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著者プロフィール

作家。小説に『西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集』『丹生都比売 梨木香歩作品集』(新潮社)、『家守綺譚』(新潮文庫)、『海うそ』(岩波書店)、『椿宿の辺りに』(朝日新聞出版)など。エッセイに『ほんとうのリーダーのみつけかた』(岩波書店)、『炉辺の風おと』(毎日新聞出版)など。児童文学作品に『岸辺のヤービ』(福音館書店)、絵本に『蛇の棲む水たまり』(ブルーシープ)などがある。

「2025年 『森のはずれの美術館の話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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