裏庭 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (412ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101253312

作品紹介・あらすじ

昔、英国人一家の別荘だった、今では荒れ放題の洋館。高い塀で囲まれた洋館の庭は、近所の子供たちにとって絶好の遊び場だ。その庭に、苦すぎる想い出があり、塀の穴をくぐらなくなって久しい少女、照美は、ある出来事がきっかけとなって、洋館の秘密の「裏庭」へと入りこみ、声を聞いた-教えよう、君に、と。少女の孤独な魂は、こうして冒険の旅に出た。少女自身に出会う旅に。

感想・レビュー・書評

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  • 梨木香歩さん。

    けっこう打率の高い作家さんです。

    「家守奇譚」☆5
    「冬虫夏草」☆4
    「西の魔女が死んだ」☆3
    「村田エフェンディ滞土録」☆4

    安定の4打数4安打。内1ホームラン。

    これはもうまちがいありません。鉄板でしょう♪
    タイトルだけ見てブックオフで購入しました。
    しばらく寝かせておいた1冊です。


    アカーン_| ̄|○ダメヤコレ

    児童文学ファンタジーでした。

    合わない。
    合わないという言葉は便利なもので、本当はクソだなとか、クズだなとか、ハナクソだなとか、思っていても、でもあれだよなー、きっと好きな人もいるんだろうからいくら個人の感想つってもそんなに正直に辛辣には書けないよなぁ、なんてときに非常に便利な言葉で、今までけっこう多用してきたんですが、今回は本当の意味で合わない。
    右打席立つつもりが間違って左打席に立ったみたいな。

    主人公は13歳の少女。
    きっと現役の少女とか、昔少女だったとか、昔々少女だったとか、昔々のその昔に少女だった片鱗がかすかに残っている気がするとか、そういう方々には刺さる何かがあると思う。

    しかし当方、残念ながら身の内のどこをどう探しても13歳の少女は出てこなかった。

    読んでる間、これはアレだなと思った。

    ちょい和風な「不思議の国のアリス」に「オズの魔法使い」を混ぜ合わせて、「思い出のマーニー」(ジブリ版)をソースにして上からかけたような。
    そんな読後感。

    一九九五年第一回児童文学ファンタジー大賞受賞作だそうです。

    合わないってだけで特に文句はないんですが、あえていうなら、「意外と登場人物多くね? 相関図も欲しくね? なのに人物紹介みたいなのまったくなーい」ってことくらいですかね。

    あ、あとね。
    少女の頃の魂をどっかに保持したままで、人生をまっとうに頑張って生きてきたおばあちゃんたちは格好良いですな。

    これからは本を買うときはあらすじくらい見てから買うことにしようかな。うん。

    • 傍らに珈琲を。さん
      確かに、打率高い作家さんですよね!
      でもこれはダメだったのね…参考になりますっ。
      確かに、打率高い作家さんですよね!
      でもこれはダメだったのね…参考になりますっ。
      2024/02/12
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      土瓶さん
      梨木香歩の作品には「庭」がよく出てきますよね。猫の想像ではフィリパ・ピアス の『トムは真夜中の庭で』が念頭にあっったんじゃないか...
      土瓶さん
      梨木香歩の作品には「庭」がよく出てきますよね。猫の想像ではフィリパ・ピアス の『トムは真夜中の庭で』が念頭にあっったんじゃないかと、、、

      梨木版「再生の物語」であり。どんな時・状況であっても子どもの側に立つと言う決意表明なような←読んでから随分経つので、美化されている?
      2024/02/22
    • 土瓶さん
      猫丸さん。
      おっしゃるとおり、そういえばよく庭が出てきますね。
      すいません。『トムは真夜中の庭で』を知りませんでした。
      関わった人たち...
      猫丸さん。
      おっしゃるとおり、そういえばよく庭が出てきますね。
      すいません。『トムは真夜中の庭で』を知りませんでした。
      関わった人たち、みんなハッピーエンドで終わった印象です。
      生きてる人も。死んだ人も。泣けなかった親も。
      思い返してみると、ジブリ映画になんかすると良さそうかも。
      あ、そういえば千と千尋に似ている気もする。

      2024/02/22
  • 率直に感動した。大作だった。
    己の傷と対峙することのどれほど険しく難しいことか。傷との融合の話でもあったのかと思う。印象に残る文が多くて、それぞれの箇所について感想を言い合いたくなる。
    日本の家庭って、家に庭って書くんだね。その庭をどう手入れし育み作り上げていくかは庭師次第なのだと。
    エピローグ後の展開も気になるけど、それはそれぞれ私たちの中でまた育てていくものなんだろう。
    最後に河合隼雄氏の解説があるのもよき。

  • かつて英国人一家の別荘だった洋館。近所の子どもたちは塀の穴をくぐり、洋館の庭で遊んでいた。照美もその一人だったが、面倒を見ていた軽い知恵遅れで双子の弟、純が庭の池に落ち、肺炎で亡くなってからは、庭を避けるようになっていた。

    純が亡くなり、家族の中で自分の居場所がなくなったと感じた照美は、友達のおじいちゃんの話を聞くことが唯一の楽しみとなっていた。
    おじいちゃんはかつて洋館に住んでいた英国人一家のこと、また洋館の「裏庭」での不思議な出来事について話してくれた。「裏庭」とは、死の世界にとても近い場所で、洋館の玄関つきあたりにある大鏡から入っていけるという。

    ある時おじいちゃんが倒れた、と聞いた照美は、いてもたってもいられず、洋館の大鏡の前に立つ。すると、どこからともなく声が聞こえ、照美は導かれるように裏庭に足を踏み入れるのだった。

    本書は照美と照美の母であるさっちゃんの視点から描いた現実の世界と、照美が裏庭の世界に入り、冒険を繰り広げる異世界の二つのパートに分かれる。
    現実の世界では、登場人物の誰もが心の中に喪失を抱えている。純の面倒見役だった照美は純を失った今、自分を家族の中で不必要な人間だと感じている。さっちゃんは純を失った悲しみから立ち直れず、照美に向き合うことができない。また、彼女は自分の母に愛された記憶がないことに苦しんでいる。照美の父は純を失った悲しみを表すことができずに照美やさっちゃんに無関心な対応を取ってしまう。
    洋館に住んでいたレイチェルは、裏庭を自由に行き来できる妹のレベッカに対して疎外感を感じ、レベッカの婚約者マーチンは若くして病気で亡くなったレベッカを忘れられない。
    皆が傷を守るために心の内を鎧で固めてしまっている。そんな中、照美が裏庭という異世界を旅し、現実の世界へ戻ってくることで、皆が少しずつ心の鎧を脱いでいくのである。

    物語はイギリスの児童文学の世界を模したような設定だが、大きく違うのが、本書では子どもの照美だけでなく、母親のさっちゃんの心の内も描き出していることだ。つまりこの物語は、子どもの成長物語というだけではなく、大人が過去の傷を乗り越えるための物語でもある。

    裏庭で繰り広げられる冒険ファンタジーは、やや抽象的な寓話を読んでいるようで、どういう意味を持つのかわかりかねるところもあったが、すべての登場人物がつながり、それぞれに再生の兆しが見えるラストは胸を打たれる。

    心の中に喪失を抱える人たちに少しだけ癒しを与えてくれる物語。

  • いまお医者さんのはしごをしていて「閉鎖病棟」は待合室で読むのにちょっとためらわれたので持ってたこれをちょっとだけ、と思ったらとっても読みやすくて止まらない。ドキドキな世界観。ナルニアと昭和がそこに。併読しようと思います。

    梨木香歩さんデビューしました。
    6年前、双子の弟、純くんを亡くした照美ちゃんという女の子が主人公。日本にある英国人が昔住んでいたバーンズ屋敷という古いお屋敷が主な舞台です。石垣の穴を潜り抜けて忍び込む裏庭は、何世代もの子どもたちの密かな楽園。
    実はここにある大鏡は異世界のドア。
    照美は、テルミーとしてここで大冒険を繰り広げます。
    そのなかで彼女はたくさんの出会いと経験と試練を繰り返して成長してゆきます。
    スナッフ・キン、テナシ(コロウブ)、レベッカ、妙さん、ハシヒメ、ソレデ、カラダ、ハイボウ、キリスゲ、ビャクシン、タムリン、音読みの婆
    3人の音読みの婆の
    傷を恐れるな
    傷に支配されるな
    傷はそだてていかねばならない
    そこからしか自分は生まれない が好きです。

    このお屋敷の持ち主バーンズさんたちは日本に親しい人々と親交を持ったけど、戦争で母国に帰国。お屋敷はそのままで残り、照美のおばあちゃんと親しかったバーンズ家の少女、レイチェルは、孫世代が彼女たちとおなじ年頃になるころ、再び日本に戻ってきて数人と再会を果たします。
    レイチェルと家政婦マーサ・レイノルズさんとの会話の
    115ページから117ページが軸なんじゃないかなぁって思いました。家庭は家の庭と書く。裏庭なんて言葉が大嫌いなマーサ。どんな庭も大切な庭。裏なんて表現は許せない。そんなふたりがとてもステキ。

    年端もいかない女の子の照美に知恵遅れの弟の純のことを任せきりで仕事に没頭する両親。その母にずっと厳しくあたり続けた祖母。庭は何世代もの長い時間を経てできあがってゆくものだといいますが、家や人もまたそうだと思わずにはいられません。長い時間を経て環境が生むものは大きそうです。
    純の死に後悔する照美ですが、純を守る方法がなにかあったのではないかと思ってしまいます。読んでいると、庭師の不在が招いた不幸だともいえるかもしれない、と。パパは純と照美が庭に入ってゆくところを偶然目撃していたし、もう少し照美達という「家の庭」をみつめてほしかった。照美ばかりが罪を背負うには、幼なすぎる。
    子どもたちを優しく、日本の庭のように、理想的な混沌のなかで見守ってあげてほしいという大人への願いと、厳しい世界のなかでも子どもたちが逞しく優しく育ってほしいという願いを感じます。
    綾子ちゃんのおじいちゃんのジョージさんの10ページのお部屋がとても好き。懐かしい昭和の匂い。

  • 梨木さんのからくりからくさ、りかさん、家守奇譚などが大好きで手にした作品。
    個人的に西洋風ファンタジー(竜や妖精が出る系統)が苦手で世界観に没入出来なかったので評価が低くなってしまったが、そうでない方にとったら良い作品だと思う。

  • 一日中のんびりと本を読みました。梨木香歩「裏庭」です。児童文学ファンタジー賞を受賞した作品です。大作という感じで読み込むのにかなり力が必要でした。ファンタジーの部分が多く、この前に読んだ「西の魔女が死んだ」の方がシンプル(一つ一つの心情などはすごく深いですが)で素直に心の中に入ってきました。

  • 梨木さんの本はこれで三冊目。
    まるで壮大なアニメを観るような感覚で読み終えました。
    作品の肩書きは「1995年第一回児童文学ファンタジー大賞受賞作」。
    主人公は思春期の少女、照美。
    タイトルの「裏庭」とは、照美の家の近所にある、かつて英国人一家の別荘だった洋館の遊び場のこと。
    同時に彼女自身の内面をあらわします。

    双子の弟「純」を亡くしてから、両親との間の溝を乗り越えられない照美。
    友人の祖父から聞いた近所の屋敷の「裏庭」にある日入り込み、不思議な鏡の声を聞いて「裏庭」への長い旅に。
    それは照美自身の内面への旅でもあると読者も知らされていくのです。

    まるでRPGのような照美の冒険と、「裏庭」に関わる現実の人々との話は並行して進んでいきます。途中に織り込まれる幾多のメッセージが照美を目覚めさせ、読み手の心も大きく揺さぶられます。

    一貫して流れるのは「家族の再生」というテーマ。
    悲しみにはきちんと向き合って泣かなければならない、大切な家族には「あなたが大切だ」と態度でしめさなければいけない、そんな当たり前の事を知るための、照美の旅の辛さには思わずエールを送りたくなってきます。
    家族に対して感じている遠慮や諦め、何となく埋まらない溝。
    それらをうやむやにせず言葉で表現する本作品は、特に若い方にお薦め。

    当たり前な家族のあり方が出来なくなっている大人にもお薦め。
    導入部でワクワクさせ、途中では心のストライクゾーンに何度もヒットを打ち込まれ、最後まで読むと暖かい気持ちになる、さすが梨木さん。
    展開のドラマティックさと、色彩感の豊かさとは、アニメ化しても良さそうな気がしますが、読まれた方はどう思われますか?

    今日は体調がすぐれなくて寝ていたのですが、そのおかげで本作品を読み終えました。風邪に感謝。

  • 中学時代に梨木さんの「西の魔女が死んだ」を読んで、他の作品も興味を持ち購入。
    家族旅行の際にこの本を持っていき、夜ホテルで読み始めると、先が気になって、ページを捲る手が止まらなくなり、ほぼ徹夜をして読んでしまったことは今でも覚えています。
    学生時代の私に良い読書体験をもたらしてくれた、かけがえのない作品です。近々、再読したいです。

  • 穏やかそうな装画から受ける印象に反して、とても壮大なファンタジーだった。
    家族との関係性が希薄で孤独を感じている小学生の照美が、打ち捨てられた洋館の裏庭に迷い込んで、冒険しながら自分自身や様々なつながりを取り戻す話。
    図書館ではティーンズ文庫のコーナーにあったけど、大人でも結構難し目の話で、読みながら現実と対比させて考えることが沢山あった。

  • 私にとって世界観に違和がない作品。のみならず変化や導きを感じる作品。誘導される際の抵抗感は全然ない。きれいな丸みを帯びた、すべすべした鉱物を一個ずつ世界に配置したら、こんな物語になる気がする。それを一個ずつ指先で押さえるような嬉しさ。ときに拾い上げて掌に収めるときの安堵感。いつの間にか、私にとっての地図を広げている。

    石の持つ、硬さ。清潔さ。冷ややかさ。沈黙。

    それなのに、描写は木々や花々を追う。土くれ。そして風の感触。水辺も。ときに火が上がる。

    そのときに、その炎がどれほどのものか、水の決壊がどれほどのものかと、なぜかその感情が真に伝わってくるようだ。

    石、という自分の本質を横に一度置いてでも、この世界の鮮やかさを語りたいと願うその切実さに息を飲む。それほどの献身に胸が震える。母だ。物語を産む母なのだと思う。この子のためなら、と宝を差し出す母。

    母は何を差し出すか。梨木香歩が、母が、母を語る。祖母から母へ。その母から娘へ。贈り物の内容を語る。

    贈り物は「私は誰?」という問への「教えよう、君に」という応答だった。物語のはそもそもの始まりは、主人公である孫娘に祖母が授けた名前。照美。「Tell me」なのだ。

    祖母が最後に渡そうとする物は、磨き上げられた鉱物。たくさんの研磨を、傷を受け入れて輝く魂。「こんなにきれいに仕上げてくれた」と祖母が主人公に労いのことばをかける。
    美しい抽象化を書き綴る、その淡々とした調子に不思議なほど冷静な私がいた。でも、やっぱり「これはママへ」は衝撃だった。がつんと後頭部を殴られたような驚きだった。梨木香歩はすごい。絶対ニヒリズムに屈しない。素朴な感情の愛しさをこんな風に書いてしまうのか。すべてを兼ね備えた直球。ここでも鮮やかなコントラストが際立っている。

    確かに、戦争を始めようと決めた人間は、宣戦布告の当事者は、民間人にはいないだろう。でも、名指しはされないはずなのに、当事者だって「自分じゃない」と言いかねないというのに、戦争は私たちの中でこそ起きた。起きている。戦争で犠牲になった祖母とレベッカの女性性は浄化の道を歩み始めた。両国の女性性が共に、その道を。

    舞台となる町を覆い尽くした大空襲の炎の因縁さえ、レベッカの裏庭で、クオーツアスの炎が制していく。

    子孫は、生命の更新として、生まれたとき何もない地平に立たされるようだけれど、やっぱり幽霊たちは期待している。願いを込めている。そしてそのために生まれたいと思う子供たちもいる。照美は裏庭から帰ってから悟る。誰の役に立たなくても、もういいんだ、と。だけど、それは照美が課題をこなしたからだ。

    誰かを助けるために得た、銀色の両腕。彼女は裏庭でそれを見た。

    その課題は、誰の役にも、の誰、が誰なのか。他人と自分の境界線を見極める力を得ること。そのあるようで、ないような境目、を知ること。

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著者プロフィール

1959年生まれ。小説作品に『西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集』『丹生都比売 梨木香歩作品集』『裏庭』『沼地のある森を抜けて』『家守綺譚』『冬虫夏草』『ピスタチオ』『海うそ』『f植物園の巣穴』『椿宿の辺りに』など。エッセイに『春になったら莓を摘みに』『水辺にて』『エストニア紀行』『鳥と雲と薬草袋』『やがて満ちてくる光の』など。他に『岸辺のヤービ』『ヤービの深い秋』がある。

「2020年 『風と双眼鏡、膝掛け毛布』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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