流しのしたの骨 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101339153

作品紹介・あらすじ

いまはなにもしていず、夜の散歩が習慣の19歳の私こと子、おっとりとして頑固な長姉そよちゃん、妙ちきりんで優しい次姉しま子ちゃん、笑顔が健やかで一番平らかな`小さな弟'律の四人姉弟と、詩人で生活に様々なこだわりを持つ母、規律を重んじる家族想いの父、の六人家族。ちょっと変だけれど幸福な宮坂家の、晩秋から春までの出来事を静かに描いた、不思議で心地よくいとおしい物語。

感想・レビュー・書評

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  • あなたは何歳までサンタクロースがいると信じていたでしょうか?

    目を覚ますと枕元にプレゼントが置かれていたあの日。サンタさんがくれたんだ、と信じてやまなかったあの日。あなたは、そんな日々を何歳まで過ごしてきたでしょうか?はっきりといつ頃までという記憶はありませんが、私はかなり早い時期から両親に直接プレゼントを手渡しされるようになりましたので、サンタクロースの物語に対するロマンは薄い人間です。一方で小学校時代、サンタクロースのことを輝く目で話していた友達もいましたので、このあたり人によって捉え方は様々だと思います。そう、サンタクロースというもの一つとっても各家庭の中での考え方、捉え方は千差万別です。どの考え方、捉え方が正解で、ということもありません。『家族』には『家族』の数だけ考え方、捉え方があります。そして、私たちは自分の家族以外、他の家族の中にある世界を実は良く知らないということにも気づかされます。

    この作品は『私たちきょうだいは、誰もサンタクロースを信じていなかった』という家族の物語。『我家におけるクリスマスプレゼントには』、『父より、とか、母より、とか、父と母より』という『署名がされていた』というある家族の日常の中に、一つの家族のあり方を見る物語です。

    『私たちの母は、昔からずっと、朝父を送りだすと化粧をし、夕方父が帰ると化粧をおとして出迎えた』と語るのは主人公の こと子。『それをとても奇妙だと思っていたが、二人の姉や小さな弟の目には、ごく普通の光景に映っている』という母への感じ方の違い。そんな『母は私たちを連れてよく動物園にいった』、『急に思いたち、私たちに学校を休ませてでかけることもしょっちゅう』だったと『動物園を愛してい』た母と動物園に行った幼い頃を思い出します。『縞うまを眺めるのにとてもながい時間を費した』母、その一方で、私たち『それぞれ気に入りの動物はいた』というあの頃。そんな こと子は最近になって『高校時代の友人が紹介してくれた』深町直人と付き合うようになりました。そして『彼女と彼女の恋人と、私と深町直人とでごはんを食べた』という先週の金曜日のこと。『じゃあいまはなんにもしてないんだ』、『優雅だなあ』と友人の恋人に言われた こと子。『去年の春に高校を卒業して以来、そう言われることにはもう慣れていた』と進学も就職もしていない こと子。そんな こと子は『バイトくらいしろとかって言われない?』とさらに言われて『言われないわ。二十歳まで彼らには扶養義務があるもの』と言い返します。『こと子の家族、仲がいいのよ』と言う友人に、『何人なの?』と訊かれ『六人』と返す こと子。そんな こと子の家族は、『去年そよちゃんがお嫁にいってからというもの、このうちはたいてい四人』という食事風景。そして翌朝、税理士事務所で働いている姉の しま子から『はい。贈り物』とプレゼントをもらいました。『お給料日』に毎月家族全員に贈り物を続けている『働き者だし気持ちがやさしい』しま子。そんな しま子の『ただ一つの欠点は、なにもかもが妙ちきりん』なところでした。『どこがとは言えないけれどちぐはぐでなにかずれている』しま子。しかし家族の誰もそのことを指摘できない過去がありました。『いままでに二度、しま子ちゃんは自殺未遂をしている』という過去。『高校生のときには薬で、短大生のときにはかみそりで』というその行為。そして、そんなしま子がある日『大切なひとをつれてくるから』と突然家族に語りました。『でもしま子ちゃんの大切なひとたちは、二度とうちにやって来たことがない』という今までを振り返る こと子。そして、『おじゃまします』と玄関に入ってきた人を見て驚く家族。それは『女の子だったから』というその理由。彼女のことを説明する しま子は『美也子ちゃんは妊娠しているの』と語ります。そして、『美也子ちゃんの赤ちゃん、私がひきとろうと思っているの』とまさかの今後の話を始める しま子に『唇が真一文字になっ』てしまった家族。そんな家族の日常が淡々とつづられていく物語が始まりました。

    「流しのしたの骨」というなんともミステリアスなホラーっぽい雰囲気も漂う書名を冠したこの作品。そこに描かれるのはホラーという予想に全く反して、ある一つの家族の日常風景が淡々と描かれる物語でした。しかし、読み進めれば進めるほどに、そこに描かれる家族の姿には違和感ばかりが感じられるようになっていきます。上記した冒頭の不思議な化粧の仕方を繰り返す母は、動物園に行くのに『しょっちゅう』子供に学校を休ませたり、急に こと子に『もみじを四枚、それ以外にも紅葉した葉っぱをできるだけたくさん』と指示して『テーブルのまんなかにどっさり敷きつめ』るという『野趣溢れてる』料理をするなど何とも個性豊かな存在です。また、過去に自殺未遂もし、毎月の給料日に不思議な贈り物を家族に贈り続けるかと思ったら、『美也子ちゃんの赤ちゃん、私がひきとろうと思っているの』と家族も絶句する他ないことを突如言い出す姉のしま子、こちらも強烈な個性を感じさせます。そして主人公の こと子です。高校を卒業して『なんにもしてない』ことを指摘され、それに対して『二十歳まで彼らには扶養義務がある』と友人だけの飲み会の席でそんな理屈を普通に語るのは流石に強烈です。そんな こと子は付き合い出した深町直人にこんなことを突然言って驚かせます。『そろそろ肉体関係をもちましょう』。『もう一度、言ってみてくれるかな』と聞き間違いかと訊き返す深町の心情を察したくもなる大胆極まりない台詞です。しかし、それは、こと子的には『律がほんの赤ん坊で、私は三つか四つ、しま子ちゃんが小学生で、そよかちゃんはたぶん中学生に入ったばかり』という時期に『それはまあある種の仕事だと思うの。たいしたことじゃないのよ』と教えてくれた母の言葉の延長線上にあるものでした。それが、特に何ら意味のない普通の会話であるところに、不思議感がさらに強まっていきます。そんな物語のことをストレートに『変な家族の話を書きました』と解説される江國香織さん。

    作者がそうおっしゃる以上、読み進めれば進めるほどに、なんなんだこの家族は?という違和感で頭がいっぱいになっていく家族に不思議な感情が湧いてくるのはある意味読者としては正常なのだと思います。そんな江國さんは『よそのうちのなかをみるのはおもしろい。その独自性、その閉鎖性』ともおっしゃいます。『たとえお隣でも、よそのうちは外国よりも遠い。ちがう空気が流れている』と続ける江國さんのおっしゃる通り、例えマンションのように二十センチほどの壁の向こうに普通に暮らす人々のことであっても私たちはその実際のところを知る術はありません。”よそ行きの顔”という言葉がある通り、自宅の家の扉を一歩でも出ると私たちは扉の内側で見せていたのとは違う顔をそこに見せます。そして、違う行動をそこでは取るように思います。一方でこの作品では、最初から最後までひたすらに こと子の家族を淡々と描き出していきます。そこに見るのは、こと子にとっては、”よそ行き”でない普通の家族の姿だということです。私はこの作品を読んで、こと子の家族に違和感を感じました。しかし、それはあくまで私が私の家族の日常と比べたからであって、この こと子に違和感を抱かない方、親近感を抱く方もいるのだと思います。そして、一番大切なことは、こと子は こと子の日常を何の違和感もなく生きているということだと思います。『その人たちのあいだだけで通じるルール、そのひとたちだけの真実』の中で、こと子は こと子なりの人生を一生懸命生きています。そんな こと子は高校を卒業したものの進学も就職もせず『二十歳まで彼らには扶養義務がある』という両親の庇護の下で生きています。『ことちゃん働くの?』という母の質問に『わからないわ。模索中なの』と答える こと子。その一方で二十歳を迎えるにあたり恋人の深町直人からその抱負を訊かれ『抱負としてはね、前進すること。それから正しく生きること』と答えます。大人になりきれていない こと子の姿を垣間見る一方で、生きることにとても素直な姿がそこには垣間見えるようにも思います。そんな こと子の考え方、生き方に共感を覚える方も間違いなくいるであろうこの作品。そんな物語は、こと子の家族の日常の一部分を切り取った作品です。この先、こと子がどのような人生を生きていくのかはわかりません。ただ一つ言えるのは世の中にはこういった家族もあり、彼らは彼らなりに普通と思っている日常を生きているだけということです。そんな彼らからすると、一読者の私が、こと子の将来を語ることなど余計なお世話と言われるのかもしれません。そう、この物語は、江國さんがおっしゃる通り『よそのうちのなかをみるのはおもしろい』、それ以上でもそれ以下でもない物語、そんな”巣”の家族の姿が見れるのがこの作品の魅力なのかな、と思いました。

    『「家族」というのは小説の題材として、複雑怪奇な森のように魅力的です』とおっしゃる江國さん。思えば『家族』に焦点を当てた小説というのは多々あります。しかし、それらの多くはそこに何かが起こり、また『家族』の絆が揺らぎ出す、場合によっては『家族』の形が変わっていく、そういった物語が多いように思います。一方でこの作品に描かれる こと子の『家族』の絆は非常に強固です。一見、構成員のそれぞれに色んな意味での不安定さはありますが、『家族』全体として見ると不思議なくらいに結びつきの強さを感じさせてくれます。そして、この物語は、そんな『家族』の何の変哲のない日常が描かれていました。

    『家族』は、『家族』の数だけその形がある。この作品ではこんな『家族』の形もあるんだというその姿を見せていただきました。もちろんこれは小説の中の世界です。しかし一方で、私の『家族』だって、あなたの『家族』だって、他の人から見れば同じような不思議感の中で見られるのかもしれません。そう、改めて『家族』とはなんだろう、そんな風に感じた作品でした。

    • さてさてさん
      m.cafeさん、コメントありがとうございました。
      江國さんの作品を一年以上ぶりに三冊読みましたが、m.cafeさんおっしゃる通り、江國さん...
      m.cafeさん、コメントありがとうございました。
      江國さんの作品を一年以上ぶりに三冊読みましたが、m.cafeさんおっしゃる通り、江國さんの描く家族の風景って独特ですよね。一見変わっているようにも見えますが、彼ら家族の中では淡々とした生活が送られているのもわかります。その家族の中でのさりげない愛情を感じることのできるところ、それが魅力の作品ですよね。書名を読んで一瞬緊張感が走りましたが、なんとも穏やかな作品だったと思います。
      m.cafeさんに勧めていただいて素敵な読書の時間となりました。
      どうもありがとうございました!
      2021/05/24
    • m.cafeさん
      さてさてさん。
      あら、なんだか小さな読書会のよう。
      何気なくお薦めした本を、こんなに早くきっちりと読んでくださって、本当に嬉しいです。ありが...
      さてさてさん。
      あら、なんだか小さな読書会のよう。
      何気なくお薦めした本を、こんなに早くきっちりと読んでくださって、本当に嬉しいです。ありがとうございます。
      さてさてさん自身が選んだもう一冊も、楽しみにしています。
      2021/05/24
    • さてさてさん
      m.cafeさん、改めてお勧めいただきありがとうございました。
      江國さんの作品は数がありすぎてなかなか選ぶのに悩むところがありました。今回二...
      m.cafeさん、改めてお勧めいただきありがとうございました。
      江國さんの作品は数がありすぎてなかなか選ぶのに悩むところがありました。今回二冊を選んでいただけたのは嬉しかったです。特にこの作品の場合、”骨”という言葉に緊張感があったので(ホラーは苦手なので)自分では選ぶことはなかったと思います。m.cafeさんのお勧めあってこその読書でした。ありがとうございます。
      私が選んだもう一冊はベタかもしれませんが、三冊続けての読書なので江國ワールドに浸った一週間でした。
      ありがとうございました。
      2021/05/25
  • 「結局のところ、万物はみな流転する」
    宮坂家の母の言葉通り、物事は時の流れにのって刻々と変わっていく。
    宮坂家の家族もまた各々の状況の変化を迎えるけれど、流れに逆らうことなく流されていく様が心地よかった。

    宮坂家は父母と四人の姉弟の六人家族。
    一家全員が見事なまでにマイペース。各々が好きなことを好きなようにやり、互いに肯定し合う(少しはお小言も言うけれど)。それでいて何かあるとすぐにまとまる団結力も強固。

    おっとりしていてちょっと頑固な長女・そよちゃん。
    神経質で少々エキセントリックな次女・しま子ちゃん。
    のんびりしている物語の主役、三女・こと子。
    そしてそんな三姉妹から可愛がられている物静かでいつも冷静な弟・律。
    姉弟というより、年の離れた友達のような仲の良さが羨ましい。姉のことも名前をちゃん付け呼びなんてちょっとびっくり。
    家族の誕生日や年中行事など何やかやと一家全員が集まって賑やかに祝う。そこに他所の人が入る隙間はない。この宮坂家の居心地の良さは家族六人にしか分かり得ないものだろう。たとえ長女の旦那さんでも。旦那さんが宮坂家に対して躊躇する気持ちがよく分かる。

    どこで何をしていようと自分を信じて待ってくれている家族が当たり前にいて、家族全員が帰る家がいつもある。
    当たり前のようだけれど、そんな当たり前の居場所があることはなんて心強いことなのだろう。
    外で少々嫌なことがあっても、言葉は悪いけれど”逃げ場”があって”味方”がいることはその人の強みになる。
    そんなことをしみじみ思わせてくれる物語だった。

  • 六人一家の物語。真面目な(でもどこかずれている)父母、ふわふわとしているけれど芯は鋼鉄のごとく頑固な長姉そよちゃん、優しくて真面目でまっすぐだけど立ち位置のずれている次姉しま子ちゃん、一番平らかな弟の律、そして高校を卒業してなにもしていない19歳(この家では別にニートではなく20歳まではなにをしてもいい権利がある)主人公のこと子。

    数年に一度の頻度で再読します。この一家にも会いたくなるけれど、なんといっても、最強に心が平らかな「クリーニング屋の娘」に会いたくなるのです。数ページしか登場しないのに。私も邪気なく「ボーイフレンドって素敵よね。いるあいだはたのしいし、いなくなると気持ちいい。」(P108)と言ってみたかった…。

  • 読み終わってすぐ、また最初から読み始めたくなるような、不思議な魅力をもった物語でした。
    この家族の空気にとりつかれてしまったみたい。
    メビウスの輪のように、同じ場所をぐるぐるまわって、閉鎖的だけど、息苦しくはなく、なぜかとても憧れます。

    • アールグレイさん
      こんにちは、m.cafeさん
      「流しの下の骨」変わった題名ですね。私だったら多分その本に手を出すことはないと思う。~骨゙という言葉に尻込みし...
      こんにちは、m.cafeさん
      「流しの下の骨」変わった題名ですね。私だったら多分その本に手を出すことはないと思う。~骨゙という言葉に尻込みしてしまいそうです。自分で見つけた本ですか?それとも、どなたかのお薦め本ですか?江國香織さんですよね。多分、1冊読んだかなという感じの作家さんです。
      ふ~ん(∵)
      2021/05/24
    • アールグレイさん
      わ~っ!10年前に読んだ本だったんだ!
      わ~っ!10年前に読んだ本だったんだ!
      2021/05/24
  • ちゃんと五感とつながる日常生活の中の描写。描写と会話のリズム感…日常を描いた作品なのに、どこか非現実的な雰囲気もあり、読んでいて独特の心地よさがあった。
    一見変わった家族だけど、それぞれが誠実に生活を積み重ねている。逆に言うと日常生活の積み重ねがその家族独特の空気を生み出しているのかな。きっとどの家族もよそから見たら「変わってる」んだと思う。

    話題作は次々と映像化され、あえて活字で読むことに疑問を感じてしまうこともあるこの頃だけど、このような作品は活字じゃないと楽しめないと思う。読書の本来の楽しさを味わせてくれた作品だった。

    それにしても、「こういうとき、この人ならこう言うだろうな」という安定感のある登場人物の中で、
    なんでしま子ちゃんだけなんでこんなに不安定で、痛々しいキャラクター設定なのかな…読んでいてちょっと胸がチクタクした。

  • 「雪はさふさふ」(137ページ)
    「雪はみずみずしい」(277ページ)
    お気に入りの言葉です。

    穏やかで静謐な小説でした。

  • どこにでもいそうな、でもちょっと変わった家族のお話です。

    家族ってその数だけ形がありますよね。
    私の家族では当たり前のことでも他の人から見たら変なこと。
    一つとして同じものはありません。

    どんな時でもなんだかんだ味方でいてくれる。
    それが家族かなと思います。


    高校生の時は私自身も子どもだったため、仲の良くなかった弟といまはお互いを大切にできる関係になれたことをとても嬉しく思います。
    かけがえのない唯一の兄弟です。


    My family may look a little strange, and your family too.

  • 好きな文章がいっぱいあって、なんだか嬉しくて読みながら何度も頬が緩んだ。
    江國さんの描く色彩(冷蔵庫色とか)、光、匂いから、景色だけでなく物語の空気感、人物の気持ちが伝わってくる。穏やかに続く日々を豊かな表現の幅で様々に映し出している。
    こと子ちゃんの夜の散歩とか、空を見上げる描写とか、自分の心に正直に生きてる感じとか、すごく好きだなと思った。律との会話もとっても好き。
    宮坂家はちょっと不思議なところもあるけれど、素敵な習わしのようなものがいっぱいある。それぞれの性格や考えていることが違って、でもお互いに思い合って、時には寄り添ったり見守ったりしながら生活を共にする家族。家族で住んでいても、自分一人の生活があり、人生がある。それぞれがそこに向かい合いながら、一緒にいることで励まされたり優しい気持ちになったりするのがなんかいい。


  • 同じ親から育てられ、同じ家庭で生活してきて、どうしてこんなに性格が違うんだろう。宮坂家の話を読んで思った。兄弟っていいなは思いますが、それは穏やかな家庭だったら、いや、宮坂家だったら、いいなと思う。

    9個下の妹がいます。母(台湾人)と再婚相手(日本人)の間の子。彼女は産まれも育ちの日本だったか、自分のルーツに対して執着もないんだろう。私の「日本にいながらの疎外感」は、彼女は恐らく感じたことはないでしょう。

    私達は姉妹というより、少しばかり親しい友人、それほどでもないかもしれない。

    挫けても、失敗しても、待っててくれる人がいて、帰る場所があるって素晴らしいと思う。家族だけど他人と同じく適正な距離を保ち、互い尊重することは宮坂家のやりとりを読んですごくいいなと思った。

  • わたしはこれからも毎年、この作品を晩秋になったらまた開いて、春にかけて少しずつ大切に読み進める
    眠りにつく前、幸せな気持ちでいても苦しくて寝付けなくてもこの本を少しずつ読むと、まさに平らかな気持ちで一日を終えることができた
    そうして、こないだの秋から春にかけても本当に助けてもらった ひとりだけど孤独じゃない気持ちになれるし、なんとなく周りを見据えられるようになる
    本当にかけがえのない作品

    もしいつか、3冊を選んでほかの本をすべて捨てなさいと言われたらこれは絶対に残します(3冊まで可なのがずるいね)

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著者プロフィール

1964年、東京都生まれ。1987年「草之丞の話」で毎日新聞主催「小さな童話」大賞を受賞。2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞、2010年「真昼なのに昏い部屋」で中央公論文芸賞、2012年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、2015年に「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」で谷崎潤一郎賞を受賞。

「2023年 『去年の雪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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