失格社員 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (462ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101462240

作品紹介・あらすじ

嘘つき社員に傲慢部長、モーレツ執行役員にゴマスリ常務-不祥事の元凶がオフィスにはあふれている!サラリーマンが守るべき掟を「モーゼの十戒」に擬えて、コミカルにシニカルに描く。秘かに転職を目論む銀行員の心の内は…「二神に仕えるなかれ」、セクハラ対策を担当していながら、生保の中堅幹部はなぜセクハラに陥ったのか…「汝、姦淫するなかれ」など、傑作十篇収録。

感想・レビュー・書評

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  • スラスラ読めた。
    メッセージ性が強い小説。
    銀行という業界のシビアさを痛感した。
    給料が比較的良い、数字に追われている、とかその低度のイメージしかなかったけれど、さらにそのイメージは色濃くなった。
    お堅い業界で、いわゆる昔ながらの社風を感じた。
    悪くいうわけでも、なにが正解とかもないけれど、ほんとこればかりは金融業界の特徴であり、これからも唯一このお堅い風潮が続くと思われる業界だなと感じた。
    昇格、数字、仕事の難易度など考えてもストレスが多そうな大変なお仕事だと感じました…働かれてる方尊敬します。
    めちゃめちゃ大変そうと感じたのですが実際銀行で働かれてる方の話も聞いてみたいと思いました。どうなんだろうか。
    でも銀行員だからこそ見える風景、出会える出来事とかもたくさんありそうでそれはいい経験ではあるなと思った。やっぱりエリート感がありました。

  • コミカルさが薄気味悪くて、あまり合わなかった。

    『実直な人が報われる話』『報われない話』両方ある。後書きを読んだ後、「なぜこうなった……」って余計に混乱してしまう。

    「一生懸命頑張ったけどこんなもんだよね、笑える」ってふうに短編をぶち切られると、同情心とか「この人に頑張って欲しい」って気持ちが消え失せる。
    作者の自己表現を知るほど、作者が苦手だなって思ってしまう。

    銀行の実際をもう少し知っていたら面白かったかもしれない。

  • その会社の会社員として失格、という意味合いで読んでいたけれど、それぞれの話の中に出てくる各主人公自身が「失格」であることもあれば、「失格」だからといって、倫理的に間違っているわけでもなかったりした。
    あとがきを読んでわかったけれど、「会社のため」が必ずしも正しいわけじゃない、「社会のため、世のため人のため」が正しいのだ、というメッセージだったのだと思う。
    会社の常識は、時には社会の非常識だ。ということを、会社員は肝に命じないといけない。

  • 社長になった江上 剛さんは、大丈夫なのだろうか?
    会社内には、さまざまな人間があふれている。
    うそつき社員にうらぎり社員、または傲慢な部長、
    モーレツ執行役員もいれば、ゴマスリ常務もいる。
    まったく、不祥事の元凶どもがオフィスには多い。

  • 読みやすく飽きないが、なんか消化不良。
    会話とか若者の書き方が不自然。

  • あとがきは、良かった。
    後書きを読んでから、本編を読んだ方が良いかも。
    モーゼの十戒に擬えたサラリーマンが遵守すべき戒律の短編集。

    ところどころ、報われない社員が出てきて心が痛い。中でも、『汝、盗むなかれ』が報われなさ過ぎて、気の毒。

    あとがきより
    『お客のために、家族のために、そして自分のために働け。決して会社のために働くな』

  • 江上剛の作品は、たぶん初めてかな。
    会社と社員、サラリーマンを舞台とした短編10編からなる小説です。
    まあ会社には、いろいろテーマに成りうるネタはゴロゴロあるでしょうが、短編だからかどれも中途半端な内容。
    電車の中で、暇つぶしに1編ずつ読む・・・そんな感じで、あくまで暇つぶししかならん。

    ファンの方には、常々申し訳ないと思うが、私には受け入れられない小説だった。
    読後の感じも、何もなかった・・・という感じ。

    ただ、最後の著者自らの「あとがき」が唯一、ふーん、と感じたぐらいか。

    さ、コーヒーでも飲もうか。

  • 短篇10個の物語を書いた経済小説。
    内容はシンプルで、読み易い物語。
    「モーゼの十戒」に擬えた人としての掟を、自分の欲によって踏み外してしまった銀行や建設業など、サラリーマンの様子を描いている。
    嘘をつかない事、謙虚でいる事、仕事とプライベートのバランスなど、わかっているつもりでも何かの間違いで道を外れてしてしまいそうな、サラリーマンとしての心構えを改めて見つめ直すことが出来る。
    お客のために、仲間のために、家族のために。
    自分の行動は自分に返ってくるという、心が引き締まる物語。

    印象に残った話は、「安息日を聖とせよ」
    いくら自分が頑張っているつもりでも、頑張っているから偉いわけではない。周りが見れなくなってしまっては、ひとりよがりになってしまう。

  • どこかで読んだうなような?
    あとがきを最初に読んだらまた違った感想かも??

  • ダメな社員、会社の没落を描く短編10作。

    ・二神に仕えるなかれ
    ・偶像を刻むなかれ
    ・主の名を妄りに唱えるなかれ
    ・安息日を聖とせよ
    ・汝の父母を敬え
    ・汝、殺すなかれ
    ・汝、盗むなかれ
    ・汝、偽るなかれ
    ・汝、貪るなかれ
    ・十一番目の戒律-あとがきにかえて

    権力闘争やノルマ達成のために不正を働いてしまう社員や、暴力団との癒着を断ち切れない会社、男と女のトラブルなど、仕事で失敗していく人たちを描いた作品。


    江上さんは長編の方が好きかも。
    でもこれはこれで面白い。

  • モーゼの十戒をモチーフにした短編集。

    著者は元第一勧業銀行社員で、総会屋事件当時、広報を担当していた。著者は十一個の戒めとして、「ために」をあげる。「お客様のために」という論理と銀行の論理は相容れず葛藤の末、著者は退職をする。本書はその葛藤をベースに書かれているように思う。本書のあとがきのメッセージがそれを表している。

    「お客のために、家族のために、そして自分のために働け。決して会社のために働くな」

    各短編のタイトルは、モーゼの十戒の一つ一つの戒律になっている。

    9月13日読書開始、9月19日読了。

    <hr>
    二神に仕えるなかれ・・・人事が偽ヘッドハンターを装い、高給の外資銀行への転職という誘惑に誘われないかをテストする。

    偶像を刻むなかれ・・・顧客の定期預金に手をつけ、解約し、投資信託のノルマを達成するが・・・

    主の名を妄りに唱えるなかれ・・・ライバルの常務二人を蹴落とした頭取に。しかし所詮前頭取の腰巾着に過ぎず、前頭取の言葉を唱えられても、頭取としての所信表明も言えず、自分の言葉を失っていた。

    安息日を聖とせよ・・・振興ベンチャーは完全テレワーク環境を整備。社員は自宅でも猛烈に働くが、会社には仲間と語らうために来る。銀行から転職した主人公にとっては、彼らが遊んでいるようにしか見えなかった。

    汝の父母を敬え・・・ホテルのオーナーを父と敬愛する支配人。オーナーにとっての父親は暴力団組長だった・・・

    汝、殺すなかれ・・・部下殺しの異名を持つ主人公。人事部長から社員を育てるようにと釘を刺され、支店長として赴任する。従来の猛烈なしごきは陰を潜め、チーム間を競わせるが・・・

    汝、姦淫するなかれ・・・コンプライアンス副部長の主人公。部下の子持ち×一の女性に行為を持つ。「ホメル、アゲル、フレル」を実践し、見事に関係を持つが、結婚を迫られることに。

    汝、盗むなかれ・・・広報としての実績を上司に盗まれる。社長による査定面談で自己の実績をアピールしたところ、盗んだ咎でクビに。

    汝、偽るなかれ・・・ゼネコン大手4社による非公式の談合組織。独禁法が強化されたため談合から足を洗いたい主人公の営業部長。お互い疑心暗鬼となり、公正取引委員会の餌に釣られ、4社全てが密告。主人公は密告と同時に退職。

    汝、貪るなかれ・・・王子製紙による北越製紙の敵対的買収がモチーフになっている。

    <メモ>
    86 「社会」広辞苑には福地桜痴がソサイアティの翻訳後として生み出したと紹介してある。
    409 上杉鷹山「為せば成る 為さねば成らぬ 何事も 成らぬは人の 為さぬなりけり」

  • モーゼの十戒をサラリーマン向けの寓話に展開した短編集。

  • あとがきはよい。

  • 嘘つき社員に傲慢部長、モーレツ執行役員にゴマスリ常務―不祥事の元凶がオフィスにはあふれている!サラリーマンが守るべき掟を「モーゼの十戒」に擬えて、コミカルにシニカルに描く。秘かに転職を目論む銀行員の心の内は…「二神に仕えるなかれ」、セクハラ対策を担当していながら、生保の中堅幹部はなぜセクハラに陥ったのか…「汝、姦淫するなかれ」など、傑作十篇収録。(e-hon)より

  • 20180909


    元銀行員の著者による経済小説。

    銀行に関する話が多いが、製紙会社、保険会社、ホテルなど多岐に渡りサラリーマンの悲哀を絶妙な皮肉を混じえながら表現されている。

    硬い話から色っぽい話まで、最後まで飽きる事なく一気に読めた。

    最後の製紙会社の買収劇を題材にした作品は、短編だけでなく、長編でも読みたい。

  • 短編だから読みやすかった。
    銀行って怖いですね

  • サラリーマンの短編集。
    元銀行員の作家の書く、厳しいサラリーマンの世界。
    上司や同僚、昇格、男女関係等、とにかく色々ある。
    なかなか読みごたえがあった。
    あとがきの「お客のために、家族のために、そして自分のために働け、決して会社のために働くな」は印象深い。

    2017.4.20

  • 経済小説。サラリーマンとして生きる上で気をつけるべきことをモーゼの十戒に例えて描く。例えば「汝、殺すなかれ」では部下殺しの異名を持つ鬼の支店長が人事部長に指導され「部下を処罰するより育てる」事をメインに実践していく話だとか、結構面白い訓話的なものもあるが、最後投げっぱなしで終わる話もあるので惜しい。詳細→
    http://takeshi3017.chu.jp/file8/naiyou24202.html

  • 内容には、割と救いのない勤め人のお話が綴られていたりする。
    それ自身は読んでいてそう面白いものではないが、最後のあとがきで、筆者の会社生活の実感に触れていて、それとあわせて読むと、違った味わいが立ち上ってきて、面白い。
    いろんな人が、いろんな境遇に立たされ、いろんな受け止めをしつつ、ただ年を重ねていくのだろうか。

  • ホメル、アゲル、フレル。

  • 短編集。
    いろんな会社(といっても主に銀行)にいる、嫌な奴とその犠牲になる人とかの話。

  • 他の本の後ろの案内を見て、会社生活で苦労したりする一般人の話かと思えば、全部の短編集が銀行員。

    作者が銀行出身。
    2編読み終えたところで、終了。
    銀行員に好意を持っていないので、読みすすめる気起らず。
    同情心も湧かず。

  • サラリーマンの悲哀等、10話が、書かれており、作者は、「モーゼの十戒」になぞらえたので、~なかれの題材が、7話ある。

    昔は、証券会社、銀行、商社などに、入社が決まったら、退職まで安定の職業であった。
    作者も、第一勧業銀行と言う、エリート銀行に、入行している。
    勉学も相当出来ないと、入行出来ない時代である。

    しかしながら、山一証券のように、大企業の金融会社が、潰れて行く時代が、おとずれる。頭取は、テレビで、平謝りに涙するが、退職金は、ごっそりと、貰ったと、後で聞いた覚えがある。

    時代劇ではないが、正義とは、何ぞや!
    作者も、銀行マンとしての、自覚から、上との衝突で、退社したのであろう。

    この小説の中でも、割に合わない社員が、書かれているが、はがゆい思いで、読んでしまった。

    今の銀行にしても、メガ銀行にして、倒産の危機を招かないようにしているが、2行も3行も、合併をすれば、派閥争い以上の闘いが、行内で、行われ、衝突することも多々ある事だろう。

    先日、シャープが、2,000億円の大赤字、リストラに90年以上続いた阿倍野区の本社売却へ、と言う事態にもなっているが、これも、行け行けどんどんを指示するお偉方が、いたのであろう。

    東洋ゴムは、不正を認識後も出荷していたとの記述もあった。
    一生懸命働く、真面目な社員が、損をするような企業体質は、作者の「~のために働け」の意味が、最後の所に書かれている。

    「お客のために、家族のために、そしてj分の為に働け。決して、会社のために働くな」と。

  • モーゼの十戒に合わせて、短編集を10本作っていて、ブラックユーモアたっぷりな話がとても面白い!!

  • 前半怖いがな。後半考えさせられるがな。って感じ。

  • 銀行ものって本当に腹が立つけど、本当にそうだからこそ、何度もそう描かれるんだろうね。でも、これだけ書かれても変らない社会はある意味恐ろしい。

  • これをやるとダメ。サラリーマンの十戒が面白く読める。文庫本の後書きの十一戒めの話しも、ままよかった。
    ホメル、アゲル、フレル…いやいや、あかん。

  • インパクトあるタイトルだからか、タイトルと中身が合っているかが妙に気になりました。「主の名を妄りに唱えるなかれ」みたいに合っているとスッキリするのですが、「汝、盗むなかれ」みたいに合ってないとモヤモヤ。あとがきには「なるほど」と。しかし「自分は部長ができます」なんて言う人本当にいるのかと思っていたのですが、その記述見るのこの本で2冊目だからいるんだろうなあ、実際。

  • この著者は銀行を舞台にした小説しか書けないと決めつけてしまっていたが、もう少し範囲を広げ、短編10話で構成しており、面白い本だった。

  • 「嘘つき社員に傲慢部長、猛烈出向役員にごますり常務。不祥事の現況が、会社には溢れている。」経済短編小説集。「モーゼの十戒」に、ストーリーを準えたところは面白いと思う。しかし、内容が面白いかといわれると…。少し、経済の勉強にはなったかな?「なんじ盗むなかれ」なんて、腹がたっただけだったし、「ハッピーエンド」と呼べるものは、ほとんどなかったかな?

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著者プロフィール

1954年、兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。77年、第一勧業銀行(現・みずほ銀行)入行。人事、広報等を経て、築地支店長時代の2002年に『非情銀行』(新潮社)で作家デビュー。03年、49歳で同行を退職し、執筆生活に入る。その後、日本振興銀行の社長就任、破綻処理など波瀾万丈な50代を過ごす。現在は作家、コメンテーターとしても活躍。著書に『失格社員』(新潮文庫)、『ラストチャンス 再生請負人』(講談社文庫)、『我、弁明せず』『成り上がり』『怪物商人』『翼、ふたたび』(以上、PHP文芸文庫)、『50代の壁』(PHP文庫)など多数。

「2023年 『使える!貞観政要』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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