- Amazon.co.jp ・本 (429ページ)
- / ISBN・EAN: 9784104654024
感想・レビュー・書評
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終わり3分の1は、圧巻!
前半は、情景や心情の描写が細やかで、語彙の豊富さが際立つ印象(読めない漢字もありました笑)から一転。
様々な話が布石となり、最後繋がっていく爽快感。
失敗や堕落もありつつ、結局人の想いを大事にする主人公の行き方にも共感! -
椅子、家、行方不明、色々あるが、全部繋がりが見えた時の感動がある。
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誘拐事件を扱った警察小説の傑作「64(ロクヨン)」から6年。待望の横山ミステリーだ。期待を裏切らない、円熟の作品となっている。
ほかの横山作品と同様、実に巧い。
まず、展開。冒頭から、大阪のクライアントとの商談を経て新幹線に乗り、電話が鳴る。そこで本作品の中心である「Y邸」の話題がのぼり、そこが無人であるというミステリーが提示される。次にY邸の回想に入り…。無駄のないスムーズな流れでいきなり読者を作品世界へ引きずり込む。
次に、ドラマ。本作のクライマックスは、終盤、無理とわかっていても、コンペに勝つプランを完成させる場面だ。不夜城となった事務所で、メンバーたちが全力をつくして一つの作品を仕上げていく。ユートピアともいえる奇跡の時間・空間。ここが実に巧い。
さらに、関係描写。これまでの警察小説で同期や昔の上司など微妙な関係性を描いてきただけに、本作でも実にうまく微妙な距離のある人物たちを描く。最後、ミステリー。64ではまさに、度肝を抜くようなミステリーを繰り出してきた。今回もなかなかの謎解きだ。ただ、64ほどではなかったかな。やや無理があるとも感じた。
しかし今回、従来の新聞記者、警察小説から脱皮。建築士を主人公とし、建築家の職業小説として見事。タウトとY邸をめぐる、職業と芸術、家・家族の考察の広がりにも深みがある。実に味わい深い。脱帽だ。 -
同じような仕事ではないですが、建築関係の仕事というところでは親近感が湧いた作品でした。しかも横山秀夫さんと来たら読むしかないです。
ノースライトという言葉は造語なのかな。聞いたことない言葉でした。業界的には完全にやっちゃいけない北側からの光取り入れですね。実際の建物をCGとかでも作ってくれないですかね〜
内容はミステリーあり、仕事小説であり、青春でもあり、夫婦の愛あり。てんこ盛りでした。
大きく物語が動くとかではなく、心安らかに読める小説です。 -
ネタバレ記事を踏まないよう注意しながら、タウトの椅子、実在する建築物について調べながら読むのも楽しい。
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ああ、これを書きたかったんだな、ここに着くための旅だったのか!
…と思うと、「ケチをつけることもできるけど、全部許す!許すどころか、脱帽!ごちそうさまでした!」としか言いようがない。
横山秀夫さんって、まだまだ過小評価されてると思うんですよね。「第三の時効」、「陰の季節」だけでも、「読まずに死ねるか!」クラス。日本が世界に誇れる不朽の名作です(ともに短編集)。
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「ノースライト」横山秀夫。2019年新潮社。2019年8月読了。
泣く子も黙るベストセラー連発作家の新作です。
建築家が主人公。かつて自分が好条件で設計し好評を博した軽井沢の一軒家が、依頼主が住んだ形跡がなく、それどころか依頼主が失踪しているようだ、というミステリー。
プラス。
主人公は50代くらいか?で、バブル期に踊ったがその後家庭崩壊、離婚。今は「しがない御用聞き的なサラリーマン的な建築家」で、高校生くらいの娘とたまに面会するだけ。キャリアの不満と、私生活の悲哀。
(この話って設定は何年だったんだっけ?2019年の話ではなかったのか。まあ良いんですけれど)
プラス。
勤めてる建築事務所の社長(親友)の、「代表作を作りたい」、「家族子供に良い仕事を見せたい」という、もがく思い。
プラス。
ミステリーな軽井沢の一軒家に残された「かつての名建築家、ブルーノ・タウトの椅子」を発端に、建築家タウトの人生と思いを辿る、建築的な?ミステリー。(実在の人物)
プラス。
主人公の父親は、高度成長期の、渡りのダム職人だった。飯場から飯場への少年時代の悲喜こもごも、そしてやや謎めいた事故死をした父親への思い。
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一家失踪の謎、不法侵入者の影。入札を巡る不正疑惑、エトセトラというエンタメ要素が、脇役も含めて家族を巡る人間ドラマという太い河になる。流石のストーリーテリング。怒涛に読ませる素敵な小説です。
実は「解剖すると複数の短編要素の複合体である」ことや、
「仕事人間だった若くない男が、人生を後悔しながら家族との関係を再び改良しようとして、最終的に希望を持たせて終わる」
「そこに男の幼少期の体験も色を添える」
という構造。
そして今回は建築家。
「お仕事モノとしてもガッツリ読ませる重厚感」
などなど、
「クライマーズ・ハイ」、
「震度0」、
「64」、
の作者ならではの職人芸。(まあつまり、"似ている" ということですが、似ているか似ていないかより、面白いか面白くないか、が、大事)
横山さんは、乱発せずにじっくりと時間かけて長編を作り、その分、ハズレがないなあ、という印象。同時代でシアワセ、現代最高峰だな、と、改めてパチパチ、感謝。
まだまだ何年も健康に、新作を読ませて欲しいです。
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好みとしては、ワガママ勝手な一読者としては、「満足!…でも、64には及ばないなあ」というのが本音。
ミステリの謎解き、真相が。そしてラストの設計コンペを巡る、池井戸潤的な、大逆転勝利劇が、、、。うーん。考えようによっては、強引というか出来過ぎというか、感傷的過ぎないか?
いくつもの要素が、騙しとは言いませんが、
「あれ、必要だった?」
という感じ。
ワガママ勝手を言うと、やはり新聞記者か警察を舞台に犯罪が絡む物語でまた楽しませて欲しい…(でも、そのマンネリの危険性を作家本人が回避したいんだろうなあ)。
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…と、何でも、ケチをつけるのは簡単なんですが。「強引」とか「感傷的過ぎる」とか言っておいて、ラストのラスト、亡き友の建築家の息子へのくだりで…
恥ずかしながら本気で涙してしまいました。ボロボロ。完敗です(笑)。
でも、読み手の趣味、性別、年齢などによっては、そのラストも、白けたり反発したりもするんだろうなあ… とも思いますが。
そういう意味では、もはや万人受けや、若者ウケを気にしていない感じの割り切り方。それはそれで、個人的には拍手。 -
「この土地に3000万円であなたの好きな家を断ててください」
建築家なら誰もが言われたい言葉に発奮し、一級建築士の青瀬稔が作り上げた家。それは北側からの光、ノースライトを取り込む自己最高の傑作建築だった。しかし、引き渡しが終わって半年後、青瀬はその家に誰も住んでいないことを知る。しかも、家の中に残されたのは1脚の椅子。
横山秀夫作品なら、ここから警察組織の出番と期待するが、本作品には警察も組織も登場しない。主人公の建築士青瀬はいなくなったノースライトの家の持ち主を探しながら、自らの過去を思い出す。
家を建てることは人生を左右する。過去の住んでいた家を思い出すことは、人生を振り返ることに等しい。青瀬は亡くなった両親や離婚した妻と住んでいた家を思い浮かべ、再び建築家としてのプライドを取り戻そうとする。
この小説はミステリーじゃなく、一人の男の復活への道のりの物語だ。 -
久々の横山秀夫作品。
読みだして、引き込まれる作品と感じました。