補給戦: 何が勝敗を決定するのか (中公文庫 B 14-10 BIBLIO S)

  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (422ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122046900

感想・レビュー・書評

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  • 戦争で勝敗を分ける大きな要因「補給(兵站)」という側面を、16世紀の荷馬車(と船)で運ぶ時代から、鉄道、トラックなどのテクノロジー発達とともに、どのような変遷をたどっていったのかを解説する一冊。ナポレオンやシュリーフェン、ロンメル、パットン将軍などの戦略を具体的に説明してくれるのはいいが、かなり細かく、文章も堅苦しくて読みづらいし、欧州の地理や戦争の基礎背景を知っていないと読むのがけっこうつらい。資料的価値は高いと思うが、読書としてもおもしろさには欠ける。基本は「現地調達」が便利。

  • 2006年(底本1980年)刊。17C以降の、主に欧州内戦役での補給・兵站の技術的・軍略的変遷を解説し、戦争(特に戦術面)での補給の意義と、戦略・政略面への影響を検討する書。著者のモルトケ批判、クラウセヴィッツ批判が舌鋒鋭く、戦史分析に新たな光を当てた点は良だが、これほど多数の頁を費やしたにも拘らず、著者の出した結論は実に身も蓋もない。また、工兵能力(補給基地や飛行場の設営能力、鉄道敷設能力)には余り触れず。太平洋戦争における米軍のそれ(が、米軍の補給も限界近くだったらしいが)から見て、この欠落は痛い。
    結局、補給についても相対的なもの(日米対比)、状況依存(交戦能力の高低、時期にも依存。戦場と本国や基地との遠近)なのかなぁ、とも。さらに、朝鮮戦争やベトナム戦争などに触れないのは問題のようにも(後者は刊行時期からして無理かもしれないが)。

  • 新書文庫

  • 過去の戦争における兵站について書かれた書籍。戦争に関する多くの書籍ではその戦闘戦略に重点をおいて書かれますが、この本ではあえて兵站という側面から有名な戦争のいくつかを取り上げています。「昔はほとんどの食料が現地調達だったために、自ら攻める方向を決められなかった。停止していると大軍の補給が滞るから常に移動しなければならなかった。」などはこの本から初めて知りました。組織構築に応用できるといいな。

  • 「Supplying War」の翻訳( 2006/05/25発行)。

    本書は、原書房から出版されていた古典的名著の文庫版で、いろいろと興味深いことが記載されています。 
    例えば、第2次大戦中の東部戦線でのドイツ軍の補給に関する分析と、北アフリカ戦線における補給面からの考察で、著者の分析からは一般に云われている見解と少し異なり、興味深く感じました。

    ただ一方で、随所におかしな訳文が見られ、読みずらいところが有ります。 どうやら直訳しているようで、日本語にした時、文章がおかしくなってしまった様です。
    取り上げているテーマが良かっただけに少々残念でした。

  • 兵站の重要性を解説した名著。思えば日本の戦国時代末期、豊臣政権における武断派と文治派の対立は、兵站の重要性を理解できない日本人の特質に因を発するものか。その悲劇は大東亜戦争でも繰り返すこととなる。

  • [ 内容 ]
    ナポレオン戦争から第二次世界大戦のノルマンディー上陸作戦に至るまでの代表的な戦闘を「補給」という観点から徹底的に分析。
    補給の計画、実施、戦闘への影響を、弾薬、食糧等の具体的な数値と計算に基づいて説明し、補給こそが戦いの勝敗を決するということを初めて明快に論じた名著。
    待望の復刊。

    [ 目次 ]
    序章 戦史家の怠慢
    第1章 一六~一七世紀の略奪戦争
    第2章 軍事の天才ナポレオンと補給
    第3章 鉄道全盛時代のモルトケ戦略
    第4章 壮大な計画と貧弱な輸送と
    第5章 自動車時代とヒットラーの失敗
    第6章 ロンメルは名将だったか
    第7章 主計兵による戦争
    第8章 知性だけがすべてではない

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 具体的な数字と計算の根拠を用い、過去の戦争で補給が如何に失敗してきたのかを分析する戦国史観。
    砲の登場により河川を利用した運搬が行われても、食料の現地調達はそれ以前と変わらなかった16〜17世紀の略奪戦争。初めて正規の補給部隊を設立し、略奪からの一歩を踏み出したが、砲戦の激化による必要重量及び兵員の増加と、困難な戦地の状況により撤退せざるをえなかった1800年以降のナポレオン戦争。期待された鉄道の運用がことごとく失敗した1870年のモルトケ戦略。技術革新が軍備の拡大においつかず、トラックを用いても全く補給が追いつかなかった1914年のドイツ陸軍。その後全く成長せず、兵站において何一つ成功させることができなかった1941年のバルバロッサ作戦。天才的な戦術家ロンメルと十分な兵数と物資があっても、その補給線の距離によって敗退した1942年の北アフリカ派遣。大量の物資と綿密な計画があったが、その緻密さゆえ実行できず、各軍が計画を無視することで勝利に至った1944年の連合国軍。
    歴史は失敗の積み重ねとはいえ、こうも英雄の活躍も作戦の妙味も戦場のドラマもないと、兵站術に人気が出ないのも頷ける。失敗の理由にしても誰かがやらかした物語があるわけではなく、交通状況、経済状況、荷役状況の計算としての無理を延々と聞かされるので、読み進めるのに苦労する。
    これはいっちょかみで楽しみのために読むものではなく、詳細な数値を得るための研究書的なもの。向いてる人にはこの上なく役立つのだろうが、素人にはオススメできない一冊。

  • 古本屋で見つけて読んでみた。欧州の有名戦争への理解が別の側面から深まった。ただ本としては意味の分からない箇所も多く、?マークを付けながらやっと読み終えた。補給、兵站が重要なのは当たり前だろうけど、多少の工夫のしようはあるものの、短期的には大抵どうしようもないということが分かった。

    「プロシャでは、鉄道が軍事目的に役立つかもしれないという考えは、最初すべて反対された。」
     
    「第一次大戦前、騎兵の大部隊を現地物資に依存して維持するのは危険だとの警告の声はあがっていたのだが、シュリーフェンもモルトケもこれを無視した。」
     
    「イタリア軍最高司令部から補給方法を尋ねられた時、ロンメルは分からないと告白」

  • 戦争の現実的な側面がよく分かり、非常に面白い。ただし世界地図を隣に置いて読まないと苦しい場面があるかもしれない。

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