スローターハウス5 (ハヤカワ文庫 SF 302)

  • 早川書房
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感想 : 246
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150103026

感想・レビュー・書評

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  • SF小説と戦争ノンフィクション小説が融合したような作品。時間旅行と戦争実録が絡み合う。
    ドレスデン爆撃については、全く知らなかったので、衝撃的だった。米兵の捕虜生活も壮絶で、作者の実体験を元に描かれたからこそ、具体的だ。
    「そういうものだ」…多用されるこの言葉に諦めを感じさせる。
    ビリーの虚無的な人生は戦争体験によるものなのか。
    ヴォネガットがこの作品を描いてから何十年経つのだろう。いまだに戦争は無くならない。
    愚かな行為を繰り返す地球人をトラルファマドール星人はどう見ているのだろうか。

  • SFというジャンルに弱い人間なのだが、読み終わった後の率直な感想…「SFだけど、SFじゃなかった!」
    ドレスデン爆撃という出来事があったことを初めて知った。現在はきれいな街だけど、白黒の焼け野原の写真を見て愕然とした。味方に空爆されるって、どんな気持ちだろう。体験した者にとってはやはり「そういうもの」なのだろうか。変えることのできない、ただそこにある現実。
    生死を含めた人生の一瞬一瞬を客観視するなんて地球人には不可能だけど、だからといってトラルファマドール星人やビリーのようになりたいとは思わない。ただ、絶望的な一瞬やそれにまつわる考えだけに支配されるのではなく、生きていることの喜び、ハッピーな瞬間がそこに「ある」ことはいつも頭に置いておきたい。
    ところどころに顔を出す筆者の痛烈な皮肉がパンチが効いていてよかった。
    「貧者への義務を公的にも私的にもほとんど果たすことなくすましてきたという意味では、彼らはナポレオン時代以降もっとも恵まれた支配階級といえるであろう。」(p156)
    「いずれにせよ戦争とは、人びとから人間としての性格を奪うことなのだ。」(p194)

    • アテナイエさん
      こんばんは♪ ひさしぶりにお邪魔します。

      この作品、ほんとにSFなのにSFではないSF仕立ての感動作で、私の好きな作品の一つです。マヤ...
      こんばんは♪ ひさしぶりにお邪魔します。

      この作品、ほんとにSFなのにSFではないSF仕立ての感動作で、私の好きな作品の一つです。マヤさんの言われる、第二次大戦末期の米国のドレスデン無差別爆撃は衝撃ですね。体験者ヴォネガットの作品群やエッセイによれば、たしか2~30万人の一般市民があっという間に殺害され、美しい街並みもほぼ壊滅したようです。まるで長崎・広島のように悲惨です。ヴォネガット自身、心的外傷になっていてもまったくおかしくないなかで、そんな不安定な状況を逆手にとったような(?)本作品。時空を錯綜させたSF仕立てで面白く読ませます。こんな発想や創造は他の誰にもできないのではないでしょうか。決して易しい本ではありませんが、シニカルな笑いと気骨ある作品に仕上げたヴォネガットに感激しました(^^♪
      2017/09/29
    • マヤ@文学淑女さん
      アテナイエさん、コメントありがとうございます♪
      オススメしていただいたヴォネガット、ようやく読むことができました。表紙にUFO描いてあるの...
      アテナイエさん、コメントありがとうございます♪
      オススメしていただいたヴォネガット、ようやく読むことができました。表紙にUFO描いてあるのでコテコテのSFかと思っていたんですが、なんと立派な戦争文学ではないですか!体験した人にしか書けない、稀な作品ですね。やはり戦争を経験したヘミングウェイの作品「キリマンジャロの雪」を思い出しました。彼も戦争中の記憶を作品として残そうとするのだけど、書きたいと思いながら書くことができない。とても正面から向き合って書き記すことのできる記憶ではないのだろうと思いました。ですからこういった文学はもちろん、戦争体験の語り手さんたちの記憶は本当に無駄にしてはいけないなと…。SFが苦手な人にも読んでほしいし、また戦争文学が苦手な人にも読んでほしい作品ですね。
      ちなみにこの本図書館で借りたのですが、普通の開架棚ではなく書庫にしまいこまれてまして…しかも区内の蔵書が超古い版の一冊だけ。なんでよ!もっと読まれるべき作品なのに!と思いました(ー ー;)
      2017/09/29
    • アテナイエさん
      え~この本が閉架ですか? しかも古い版が1冊……あらら、それはちと悲しすぎますね。ぜひ図書館の館内にあるアンケートや利用者の声の紙にガンガン...
      え~この本が閉架ですか? しかも古い版が1冊……あらら、それはちと悲しすぎますね。ぜひ図書館の館内にあるアンケートや利用者の声の紙にガンガン書いて投函しましょう!
       私は自分が借りたい本が結構ない確率が高くて(汗)、他から取り寄せになる場合が多いので(それはそれでありがたいのですが)、いい本なので買い入れのお願いをしたり、その他にも新版を要望したり、開架要望など、いろいろ書いてます。マヤさんの貴重な声をあげられてくださいね~笑
      2017/09/29
  • こんなふうにユーモアたっぷりに批判的な主張をかける人って、すごい頭がいいんだろうな。ドレスデンの爆撃がどれほどひどかったのか知らないので実感として受け止めることはできなかったけれど、戦争というもの、またそれも含めての人生、人の運命というものに対しての諦念混じりの憤りが描かれていたように思えた。
    実際に読む前はなんとなく不条理SFのイメージがあった本書だったが、読んでみたら不条理ではなくこの世の理がそのまま書いてあったので少し驚いた。命や時間というものについてトラルファマドール星人のような見方ができたら、確かに人類の考え方や行動は変わるのかもしれない。
    ところで、やたら出てくる「そういうものだ。」という言葉は、訳として上手な日本語なのだろうか?

  • 読書会課題本。奇想天外な展開と言えば、確かにそうだけれども、戦争によって多くのものを失う悲しみが、ひしひしと感ぜられる内容だった。時々挟まれるユーモアや繰り返される「そんなものだ」という台詞に、諦めのような感情が伝わってくる。戦争について色々と考えさせられた。

  • 古典的なSFで、著者のヴォネガッドの実際の戦争体験が元になっているということだが、自分にその手の歴史的な知識がないため内容が良く理解できない。

    ラスト近くの有名な一節だが、なぜ主人公がそう思うに至ったかが上手く飲み込めない。

    自分にとっては読み進めるのが難しい難解な部類の本だった。映画化もされているということなので、映像で見れば多少はイメージが湧くか?


  • 昔読んだことがありましたが、久しぶりに再読しました。
    何度も繰り返される「そういうものだ」という文に、著者の凄絶な体験への思いが集約されていると感じました。
    その一方で、作品全体としては名作だと思いますが、女性や障害者を蔑視したようなブラックユーモアは、今読むとやりすぎだと感じました。

  • あなたの人生の物語の解説や、ほかの本でも出てきていたのでずっと読みたかった一冊。

    でも、期待値が上がり過ぎてしまっていた、、、
    ⭐︎3の評価は不当かもしれない。

  • カートヴォネガットジュニア
    スローターハウス5
    カバー 和田誠

    面白さはないが、死に対して鈍感にならざるえない戦争の雰囲気は伝わる

    戦争の中の死を語った自伝的小説。時間旅行や異星人との会話などSF要素を組み込んでいるのは SF世界が本来あるべき世界という意味か?

    多くの人の戦死が 語られた後、必ず出てくる セリフ「そういうものだ」が 鈍感に生きる全てを示唆しているように読める


    *過去、現在、未来は変えられないが、変えられないことを受け入れることはできる

    *戦争に対して何もできないが、死を無視して、生の瞬間の深みを感じることはできる

    *個々の人間に差異は存在しない〜この世に性悪とか、低劣と言われる人間はいない

    *我々は〜いなければならない場所にいるだけ〜自由意志でこの場所にいるわけではない→自由意志は存在しない

  • 不思議なSF

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