- Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152091628
感想・レビュー・書評
-
敢えて、主人公を脇役として登場させながら、読み進むにつれ、その性格を知るようになる…という仕掛けも新鮮で面白かった
しかし、何より、オリーヴ・キタリッジの一筋縄ではいかない性格が面白すぎる!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
巨体で尊大なメイン州の教師・オリーブ・キタリッジの50代から70代(だったと思う)にかけての日々を、彼女が主役だったり脇役だったりしながら紡いでいく短編集。
このオリーブが魅力的で、私の口の悪い田舎の伯母さんを髣髴とさせる。
ずけずけ物を言って、でも人並みに傷付きやすく、時に誰かの救いになったりする。
夫や息子との間には深い葛藤があり、特に息子とのくだりは息子を持つことの怖さすら感じる。
彼女に近く、彼女が愛する人ほどぎくしゃくしてしまう切なさ。
どの話の登場人物もだいたいちょっとずつ不幸で、
だからこそささやかな光も温かく感じられるのだろう。
一番好きだったのは教え子の夫の葬儀に行く話。
メイン州の物語がスティーブン・キング以来に読めたのも嬉しいところ。 -
いつの間にか残りが少なくなっていく中高年の文学。
タイクツなようでいて、いろんな葛藤がある。 -
退屈な感じ。
-
メイン州の架空の田舎町で数学教師をしている大柄な女性、オリーヴ・キタリッジの生活を描いた連作短編集だ。
オリーヴ自体が主役になる編もあれば、他のひとたちの会話にこっそりとしか出てこないときもあり、その距離感や、時間の流れ(中年だったオリーヴも最後は72歳のおばあちゃんになる)のゆるやかさが独特だ。
自分が悪くても謝らず、直情径行な性格をしたオリーヴは友達になりたくないタイプだし好人物とはいいがたいのだけれど、全編通して読んでいるとなんだか親近感が沸いてくるのが不思議だ。
オリーヴに限らず、さまざまな夫婦のかたちを描いた物語だと思った。 -
一言一言が映像のように浮かび上がってくる。
悦びや苛立ちや哀しみがそのまま体温として伝わってくる。
ただもうそれだけで充分だ。
オリーブキタリッジの喜怒哀楽と共に小さな街の住人として僕も一緒に人生を送って行く。
こんな本が読みたいのだ -
ブクログで評判が良かったっぽいので借りてみたら残念な感じだった。小説としての出来・不出来というのは、私は評論家でも何でもないので関係なく内容とか読後感、文章表現についての感想だが。
まず、訳文が悪いのかなんなのか変な描写や説明不足で話が2〜3行分飛んだようなところがあったりして(前半に顕著で後半はほとんど見られない)何か読んでいてひっかかった。時には誤植なのか間違いなのか「人と人とも思わない」なんてのにぶつかると萎える。
内容もメインであるオリーヴ・キタリッジがどうにも嫌な感じで後半で少し盛り返すがやっぱり嫌な感じ。他の登場人物たちも総じて嫌な感じで田舎の嫌な感じの中年・老人を描くことが主眼だったら、それは見事に成功していると思うが、正直そんな小説は読みたくはない。よって、「自分に合わない小説を苦行のように最後まで読んでしまった」という意味で自分が悪いので作者は悪くないんだろうけどやっぱり何か嫌な感じだ。もう読みません、すいません。
でも、これってピュリッツァー賞なんですね。賞をとっているから誰もが楽しめるわけではないという好例。 -
人生とはかくも平凡で、悲しみと諦めと偶然と納得と、そして束の間の幸福でできている。翻訳小説特有の乾いた文体が、主人公の乾いた心とうまく折り合っている。これが日本の小説ならば、向田邦子のしっとりとした文体に、主人公のしっとりとした気性が馴染んでいる、といいたい場面だろう。作品は、絶望、投げやりな心や諦めに満ちている。読んでいてあまりにも身につまされるので、途中で投げ出したくなった。それでも、主人公の人生を見届けるつもりで最後まで読み進めると、そこに突然、違う展開が現れる。人生捨てたもんじゃない。作者はきっと、そこに万に一つの光を描きたかったのではないだろうか。
-
「オリーヴ・キタリッジの生活」(エリザベス・ストラウト:小川高義 訳)を読んだ。なんだろうこの胸を打つ感じは。ありがちな情景のさりげない描写のようでいて実は魂の深層を見事に捉えている。どこかしらサリンジャーを想わせる素晴らしい短編集です。しみじみとオリーヴの人生を噛みしめよう。