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- Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152091628
感想・レビュー・書評
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米国北東部メイン州の海辺にあるという設定の架空の小さな町・クロズビーを舞台に、そこに暮らす高校の数学教師オリーヴ・キタリッジとその周辺の人々の生活を描く連作短編集。(2009年度ピュリツァー賞受賞作品)酸いも甘いも経験した熟年向けの小説だと思う。一話一話が、オリーヴの中年から老年に至るまでのさまざまな時期を通して語られているのだが、決してオリーヴが主人公と言うわけでもない。一編目の『薬局』など、主人公と思いこんでいたオリーヴはちっとも登場せず、ストーリーは夫で薬局を経営するヘンリーを中心に展開していく。あくまでこの作品ではオリーヴは脇役、それもチョイ役でしかない。 二編目以降から徐々にオリーヴの出番が増えるものの、あくまで主人公はクロズビーの町に住む人や、この町に係り合いのある人々だ。それぞれの物語の語り手である主人公の内面の言葉が、思い出を語るように現在と過去を行きつ戻りつしながら綴られていく。そうした登場人物たちの人生の積み重ねが、次第に読み手の心に重層的な物語を形作っていくようだ。
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