望郷

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163819006

感想・レビュー・書評

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  • 瀬戸内海の一つの島を舞台にした、短編集。

    みかんの花
    交通事故で人を死なせてしまった父親を持つ、みかん畑を営む家族。島を出て行った姉と島に残った妹。
    妹の知らなかった、姉が出て行った本当の理由は母親の殺人を隠すためだった。

    海の星
    父親が突然行方不明になった母と息子。ずっと待ち続ける母と母のために釣りを始める息子、その父親の死体を見つけ、黙っていた漁師の男。
    罪を償おうとしていた不器用な男と、母に好意を持っているのだと勘違いしていた息子の話。

    夢の国
    東京ドリームランドにずっと憧れを抱いている夢都子。祖母の目を気にし、縛られる家族。
    「私を縛っていたのは、祖母であり、祖母でなかったのかもしれない。」

    雲の糸
    父親を殺した母親を持つミュージシャン。
    島を出て成功し、久しぶりに帰った時、手のひらを返すような態度の島民。
    母親を守ろうと思っていたけれど、ずっと自分を守り続けてくれていたのは母親の方だった。

    石の十字架
    子供の頃都会の恵まれた生活から、島に引っ越し、今は不登校の子を持つ母親である「わたし」。小学生の頃、クラスで浮いた存在だっためぐみと親友になり、白綱山に登る。

    光の航路
    生徒のいじめ問題に悩む教師。放火による火傷で入院していた際に、教師である父にいじめから救われたという教え子と出会う。
    誰だって、誰かに祝福されながら生まれてきた。進水式の船のように。

    どの話も、人と人とのすれ違いや勘違いが含まれている。自分が知らなかった事実を知った時、今まで持っていたその人に対する思いが全く違うものになってくる。人間は自分の知っていることを自分なりに解釈しながら生きている、主観的な側面が大きいのだと感じる場面が多いお話。

    1番好きな話は雲の糸。



  • 1つの島を舞台にした6つの短編からなる。
    しかし短編といえどもそれぞれの読後感はどっしりとしていて、短い中でこれだけの想いのようなものを表現できることに感動しました。

  • 故郷の定義に当てはまると思っている小学生から高校生まで暮らした市に住んでいる。しかし、他県から結婚を機に移り住んできた妻は、20年以上たっても、この地を嫌い、まるで私の故郷を私の育ってきた日々を否定する。アイデンティティを否定されると、今の立ち位置が判らなくなる、第三者に出会う事で持ち直す事が出来るのかもしれない。6作品を順番に読むと見えると思う。

  • 短編集。ただどれも架空の島、白綱島を舞台にしている。島と本土とを結ぶ白い大橋がかかってつて、瀬戸内海の島があるみたい。どの話も閉鎖的で身動きのできない島の暮らしがかかれている。 過去に辛い出来事があつたのによそに行けないとか。主人公たちは、それについて我慢できないけど、実は真実は別の面にあった・・・というラストの話がいくつかあつた。そう考えると、島で耐えている大人たちのほうがしぶとかったこかもな。それにしても、湊かなえつて、実家の母親の鈍感さや、地元のいじめつこが成長した図々しさを書くのが上手いわー。読んでで毎回イライラする。でもそれを上回る読後感の良さが好きだ。

  • いじめられていることからの、零れるような、死にたい、がとても胸に迫った。

  • 短編より長編の方がいい人だな…きっと。

  • 綱島という故郷に生きる人たちの思いが描かれた短編6話。狭い世界に生きることの息苦しさも、故郷を思う気持ちも共感が持てるほどではないけど、わかる気がする。私自身、実の父が教師であったこともあって、6話目の「光の航路」が好きだったな。久々に故郷の海を見たい気持ちになった。

  • 白綱島を舞台にした短編集。
    この中の「海の星」が日本推理作家協会賞を受賞。
    「海の星」以外はミステリーではない。
    https://gamp.ameblo.jp/ya9moku63-akazukinrimy/entry-11481792814.html

  • 瀬戸内海に浮かぶ白綱島を舞台とした短編集。
    ひょっとしてそれぞれの作品が最後に繋がるのか?と思いましたが、それはなし。
    湊かなえらしい大どんでん返し的なものは少なく、淡々とした作品が多かった印象。かと言って感情を揺さぶるような味わいも乏しく、どっちつかずだったな…というのが率直な感想。

  • 著者の故郷、因島のことを念頭においているだろうか、瀬戸内の島で起こる六つの物語、内容は人間のいやらしさを描いた著者らしいイヤミスではあるが、それぞれの物語の閉じ方はそれほど嫌味な終わり方ではなく納得のいく爽やかささえ感じる物語であった、読みやすく半日で読み終えることが出来た。

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著者プロフィール

1973年広島県生まれ。2007年『聖職者』で「小説推理新人賞」を受賞。翌年、同作を収録した『告白』でデビューする。2012年『望郷、海の星』(『望郷』に収録)で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞する。主な著書は、『ユートピア』『贖罪』『Nのために』『母性』『落日』『カケラ』等。23年、デビュー15周年書き下ろし作『人間標本』を発表する。

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