- Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163906225
感想・レビュー・書評
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『機織る武家』『沼尻新田』『遠縁の女』の三篇。
いつもの如く、武家やその妻女が何かを強く希求する清冽な生き方を描いた作品です。
青山さんはもともと端正な文章の書き手という認識がありましたが、こんな文体だったでしょうか?
キリキリと張詰めた弦のような文章が小気味よく連なり、読むうちにそのリズムに乗ってしまい、ストーリーの瑕疵は有ると思うのですが、それをあげつらうことさえ忘れて一気に読了してしまいます。
一つ不満は表紙ですね。本のタイトルが「遠縁の女」で表紙がヌード画。何やら怪しげで、図書館で借りるのにちょっと躊躇してしまいます。 -
三遍の「女」の物語。
「機織る武家」は婿入りした夫とその後添えの妻、前妻の母である姑の三人の物語だ。
落ちぶれた家の名にしがみ付く者、妻にだけ暴言を吐く者、行きて行くために賃機をするもの......。
その機織が日々を変えて行く。
おかしなことばかり起こるものだと女は思うが、仕方がないと流れに身を任す。
良くも悪くもなっていないが、心のままに。
「遠縁の女」
父が武者修行をせよ、と言った。
この太平の世に。
何を馬鹿なことを、と男は思うが、そのことが男を変えて行く。
男は本当は学問が好きで、友はそんな男を見て学問をする理由を語る。
「乗れば、己れ独りで手がかりなしに考えるよりも、早く考えを進めることができる。
限りある時を無駄にせずに済む。
さらには、己れ独りでは行き着けぬ彼方の場処へも行き着ける」(166頁)
学問をする意味を知れば、人は未来に漕ぎ出でることが出来るのだ。 -
【収録作品】機織る武家/沼尻新田/遠縁の女
諦念を含んだ静謐な語り口に心惹かれる。 -
『機織る武家』『沼尻新田』『遠縁の女』の3編の時代小説が収められた中編集。
いずれも困窮にあえぐ武家や藩が舞台となっており、やむを得ぬ事情で決断を迫られる者の苦悩が描かれている。
そういった心の機微を描いた時代小説かと思いきや、どの作品も最後にミステリー的要素の真相が待っているのが特徴。たとえば『沼尻新田』では、どうしても領主になりたかった男のセンチメンタルな執念が明かされる。
仕掛けとしては面白いと思ったが、ミステリとして見たら中途半端で、どっちつかずの印象が残ったのも確か。 -
淡々と物語は進むのに、そよ風が吹くような心地よさがある。植物と色の描写が素敵。
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面白かった。一話めは、完全に一人称での語り口が晩年の筒井康隆の作品のどれかとの相似を思った。是非はなく、ただそう感じたというだけだが。全話ともこれまで読んだどの作品とも共通して、舞台は江戸時代中期、武士がもはや武威のみにては生きられなくなってきた時勢に対し、それでもなおかつ武士であらんと煩悶する姿を取り上げている。エピソードは違ってもテーマは同じ。さらに、武士を武士たらしめているのは、一事あれば真っ直ぐ死を潔くすることを自ずと腹に呑んでいるかどうかだとする点も他の作品に共通する青山作品に置ける武士の定義。あえて辛い意見を言えば、そろそろ同じ舞台装置と類型の人物群像にやや食傷してきた感も抱いてしまった。相変わらずのディテールの精密さ、そこからの本当にリアルな空気感はさすが安心して楽しめるものではあるものの。
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『半席』が非常に面白かったので、期待して読みました。思っていたのとはちょっと違う感じでしたが、これはこれで面白く読めました。このミスにも載っていたので、もっとミステリ色が強いのかと思ってましたが、それほどでもなく、時代小説として面白かったです。
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別の方が感想に書いている通り表紙の絵が合わないと
思う。全て短編だが最初の二篇は内容が中途半端
な感じ。表題の遠縁の女は5年も剣の修行をした
のに、あっさり女を同情し女の思惑に自らの人生を
捨てた愚かな男、骨抜きとはこんな男の事を
言うのだと思う。
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http://amegasuki3.blog.fc2.com/blog-entry-269.html
武士が貸し本屋を生業とするのが面白く、小学校時代に(土曜日だけ漫画を見ても良いと許可されて)楽しみにしていたのを想いだしました。『白樫の樹の下で』も好きな作品です。
todo23のお困り顔が想像されました(...
todo23のお困り顔が想像されました(ぺこり)
全部読んだと思ったのですが、改めて調べたら、なんと『つまをめとらば』は未読でした。それと『鬼は...
全部読んだと思ったのですが、改めて調べたら、なんと『つまをめとらば』は未読でした。それと『鬼はもとより』の2冊。余り多作な作家さんではないので、じっくり読んで行こうと思います。
『遠縁の女』実は予約で取り置きして貰ってたので、棚から図書館の女性が引っ張り出してきたのを見てギョッとしたというのが本当です。思わず「これ真面目な時代小説ですよ」と言い訳したくなりました。