新装版 翔ぶが如く (1) (文春文庫) (文春文庫 し 1-94)

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  • / ISBN・EAN: 9784167105945

感想・レビュー・書評

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  • 思うところあり読み返すことにした。

    最も司馬遼太郎らしい小説と言えるのではないか。
    史伝(当時の噂話を含む)、評論、小説が入り混じっていて、その境界が分からない。
    配分も絶妙。
    その効果でノンフィクションを読んでいる感覚に陥る。

    近代国家に生まれ変わろうとする日本。
    明治元年から明治10年にかけての日本に何が起きたのか?
    西郷隆盛は、何故、死ななければならなかったのか?

  • 明治維新後、新生日本のを造り上げゆく偉人たちについて。
    この時代は日本史の中でも指折りの激動な時代だったのだと改めて感じさせられた。

  • 日本の歴史の中でも、激動の時代としてはやはり幕末から明治初期と言えるのではないだろうか。稀代の名士が生まれては消え、それぞれが激しく燃える競うようなそんな感じがする。現代のだらけた経済社会しか知らない自分たちには、この様な時があったことが奇跡のように思える。しかし日本人は昔からこうなのだ。今後も日本人としての矜持をもって生きて行かねばと思わせる作品である。

  • 再び司馬遼太郎作品を歩み出した。今年になって「功名が辻」全4巻、「最後の伊賀者」しか読了していないので、少ない方である。
    さて、本作品を手に取ってみるきっかけとなったのは、8月に全50話観終えた「篤姫」の影響。主人公の篤姫、小松帯刀、西郷隆盛、大久保利通、島津斉彬など主要人物の多くを占めていたのが薩摩藩関係者であり、このつながりでもっと薩摩藩を知るべくチャレンジしてみたのだ。チャレンジという表現を使ったのは、本作品は全10巻もある「坂の上の雲」並の大作であり、更には後半には西南戦争の戦記が長々と綴られていて軍事マニアではない私にとっては戦々恐々だからである。
    本作品はご存知1990年放映の大河ドラマ原作であり、全話鑑賞済み。私にとっては初めての幕末ものだったが、結構楽しんで観ていた記憶がある。
    で、この原作は…。
    大河ドラマとは全然違う。というよりも、大河ドラマの前半、つまり幕末については回想程度に触れられているに留まり、明治維新からのスタートなのだ。よって、西郷隆盛と大久保利通が主役級であるのは変わらないとしても、征韓論をテーマとした政治学的小説なのである。そして、西郷隆盛下野、西南戦争と続いて終わるらしい。これで全10巻とは長い。が、意外にも1巻はスラスラ読めた。時代背景や登場人物のバックボーンなどをある程度理解しているからだろうが、何よりも司馬遼太郎の描き方が巧妙なのだ。単なる人物紹介でも、ついつい引き込まれて読み入ってしまう。登場人物は新政府幹部から幕末藩士までかなりの数であるが、今のところ、西郷隆盛、大久保利通、桐野利秋、川路利良の4人の薩摩出身者が柱か。本作品により、政治や外交というものの勉強ができればと期待する。

  • 昨年、司馬遼太郎の「坂の上の雲 全8巻」を読みました。

    坂の上の雲の中ですごく気になったのは、司馬遼太郎が描く薩摩藩型のリーダーシップ。
    ネット上での解説を少し転載します。


    明治時代も終わりに近づいた頃、ある座談会で、明治の人物論が出た。
    ある人が「人間が大きいという点では大山巌が最大だろう」と言ったところ
    「いや、同じ薩摩人だが西郷従道の方が5倍は大きかった」と反論する人があり
    誰もその意見には反対しなかったという。

    ところが、その座で、西郷隆盛を実際に知っている人がいて
    「その従道も、兄の隆盛に較べると月の前の星だった」と言ったので、
    その場の人々は西郷隆盛という人物の巨大さを想像するのに、気が遠くなる思いがしたという。




    西郷従道(つぐみち)は「ウドサァ」である。薩摩藩(鹿児島)の典型的なリーダーの呼ばれ方である。
    本来の語意は「大きい人」とでもいうようなものだ。
    従って、西郷隆盛などは、肉体的にも雄大で、精神的にも巨人であるという点で、
    まさに「ウドサァ」を体現した男であると言えよう。

    薩摩藩型リーダー「ウドサァ」の手法は二つある。まずは最も有能な部下を見つけ
    その者に一切の業務を任せてしまう。
    次に、自分自身が賢者であろうと、それを隠して愚者のおおらかさを演出する。阿呆になりきるのだ。
    そして、業務を任せた有能な部下を信頼し、自分は部下が仕事をしやすいように場を平らげるだけで、後は黙っている。
    万が一部下が失敗するときはさっさと腹を切る覚悟を決める。これがウドサァである。



    日本人はこのリーダーシップのスタイルに対してあまり違和感を持っていないと思う。

    日本の組織のトップはリーダーというよりは殿様なのだ。殿様は知識やスキルではなく人徳で勝負。
    細かいところまで口を出す殿様は
    家老に 「殿!ご乱心を!」とたしなめられてしまう。

    でも、このリーダーシップのスタイルは世界のスタンダードではないと思う。
    世界の卓越したリーダー達で「ウドサァ」みたいなスタイルだった人を私は知らない。
    スキピオ、ジュリアスシーザー、アレキサンダー大王
    ナポレオン、リンカーン ・・・ ビルゲイツもジョブズも孫正義も
    部下に仕事を任せはするが、後は黙っているなんて事は絶対にない。

    古代中国の劉邦と劉備は「ウドサァ」かもしれない。(だから日本で人気がある?)

    私も大きな組織で働いているが
    トップに非常に細かいことまで指示される事を想像すると辟易してしまう。
    そのくせ、「トップの方針が明確でない」みたいなことを言ってみたりもする。 どないやねん!


    1年以上かけて、ようやく全10巻を読破しました。

    いや〜〜長かった。
    面白かったけど、やっぱり長いよ司馬さん。

    「翔ぶが如く」本線のストーリーは、征韓論から西南戦争に至るまでの話なんですが、水滸伝のように、周辺の人物の描写や逸話に入りこんでしまって、本線のストーリーが遅々として進まない。。

    新聞小説の連載だからなのかもしれないが、ふだんノンフィクションの実用書ばかり読んでる身としては、かなりじれったかった。

    本線のストーリーだけ書けば、半分ぐらいの頁数で済むのでは?
    と思ってしまいました。

    [読んで思ったこと1]
    本書を読み「薩摩藩型のリーダーシップ」について理解するという当初の目的は果たせませんでした。
    著者にとっても、西郷隆盛という人物は、スケールが大き過ぎて掴みどころのない存在のようでした。特に征韓論以降の西郷隆盛は、現在の我々からは訳がなかなか理解し辛い事が多いです。

    しかし、リーダーシップとは何かという事について、いろいろと考える事ができました。昨年一年間かけて考えた、私なりのリーダーシップ論は、後日別のエントリで纏めようと思います。

    [読んで思ったこと2]
    西南戦争は、西郷隆盛を担いだ薩摩藩の壮士と、山縣有朋が徴兵して編制した政府軍との戦いでした。

    当時の薩摩藩は古代のスパルタのような軍事教育国家であったため、壮士達は世界最強の兵士とも言える存在でした。
    しかし兵站という考え方がほぼ皆無に近かった。

    一方で政府軍の鎮台兵は百姓出身者が大半であり、本当に弱く、戦闘となるとすぐに壊乱してしまう有様でした。
    しかし、山縣有朋の綿密な軍政準備により、予備兵・食糧・弾薬などの後方支援が途切れる事は無かった。

    両者が激突するとどうなるのか。
    短期的には薩摩藩が圧倒的に有利なのですが、戦いが長期的になつてくるとジワリジワリと政府軍が有利になってくる・・・

    古代ローマ帝国とカルタゴのハンニバルの戦いを見るようでした。

    いや、普段の仕事についても同じ事かなと思いまして。

    仕事でも、短期的に物事をガーと進められる人に注目が集まりますけど、さまざまな兵站をキッチリ意識して、長期的に組織的に物事を動かせる人の方が最終的な結果に結びつくのかなと。

    この間、絶好調のアップルの決算発表がありましたが、今のアップルの収益性を支えるサプライチェーンとロジスティクスの仕組みを確立したのは、現アップルCEOのティム・クック氏だとの事。

  • 明治維新直後の不安定な時代を描いている。
    征韓論から西南戦争にいたる5年間が舞台。
    西郷隆盛を始め多数の人物のエピソードと緻密な時代考証にその時代を知る思い。

  • 古本で購入。全10巻。

    征韓論争とそれに敗れた政府首脳・軍人らの下野(いわゆる「明治六年政変」)から西南戦争までを描く、司馬遼太郎屈指の長編。

    川路利良らの欧州視察行から書き起こされる冒頭が実に象徴的。
    後に大警視として日本警察の礎を築くこの薩摩人に対し、ある意味でこの作品の主題とも言うべき言葉を投げかける男が、旧幕臣の沼間守一である。
    彼は帰国の途にある船の上で、川路にこのようなことを言う。
    「時勢という悍馬には手綱がないのが特徴だ。時勢そのものがくたびれきってしまうまでその暴走をやめない」
    「英雄ほど悍馬にのせられる。英雄とは時勢の悍馬の騎乗者のことをいう。西郷という人がそうであった。時勢の悍馬に騎り、270年の徳川幕府をあっというまにうち倒してしまった。幕府は時勢という悍馬に蹴散らされてたのであって、西郷その人に負けたのではない。が世間はそうは思わず、倒幕の大功を西郷に帰せしめた。このため維新後、西郷はとほうもなく巨大な像となり、ただ一個の人格をもって明治政府に拮抗できるという、史上類いない存在になった。
    (中略)悍馬は西郷の尻の下だけに居る。この巨人は役目(倒幕)の終わったはずの悍馬なのに、なおも騎りっぱなしになっているのだ。新政府に不満を持つ連中は、ことごとくその騎乗の西郷を仰いで第二の維新を願望する」

    これこそ『翔ぶが如く』という作品で作者が描こうとしたテーマのように思える。
    明治初期という時代は、「悍馬」に騎った「西郷隆盛」という巨大な虚像を中心に回った時代であった。
    時勢という悍馬、そして勇敢無比の薩摩人が、“翔ぶが如く”跳梁した時代だったように感じられる。

    作者がこの作品で試みているのは
    「西南戦争とは、西郷隆盛とは何であったか」
    という問いに対する答え探しなのだろう。

    しかし司馬遼太郎をもってしても、結局は「西郷」というものがわからなかった。
    賢者であったのか、あるいは愚者であったのか。
    下野した西郷の目的・真意は一体どこにあったのか。
    非常に茫漠とした存在として読者の前に現れる西郷という人間は、確かに巨大である。

    おそらくこの作品を読んだ多数の人が思うことだろうが、これは「小説」とは言い難い。
    作者が己の中のテーマの下に書き綴った「エッセイ」と言った方が、実情に近いように感じる。
    しかし明治初期の政治を中心とした膨大な情報が詰め込まれているため、読んだ人間が興味に応じてそこから広がりを持たせられるという点で、おもしろいと思う。

    前半は少々退屈だが、後半(8巻)以降、西南戦争の記述に入るや俄然おもしろくなる。
    そのあたりは司馬遼太郎の面目躍如というところか。

  • 川路利良のパリ行きから話が始まる。
    この人と桐野利秋(中村半次郎)を低い身分から取り立てたのが
    西郷隆盛

    時代は明治で着々と地歩を固める実務派と
    廃藩置県などで居場所をなくした武士階級に乗る征韓派
    というのがアバウトな構図

    6 明治10年まで独立薩摩国
    18 示現流、鳥羽伏見で切られた幕府軍は頭蓋骨粉々
    58 複数合議制、江戸も明治初期も

    65 大久保=内務省、江藤=司法省。犬猿の仲
    68 江藤=フランス、大久保=ビスマルク、プロシャ
    71 薩摩人、執着力の希薄さ

    73 大久保、厳格で怖い。西郷と大違い
    75 伊藤、大久保より。木戸はうつ病的評論家、西郷は世評のみ大
    76 大久保、度量が広かった、と伊藤

    77 大久保党、西郷党、島津久光党。酔ってくだをまく「芋ほり」
    79 大久保、行儀の良い囲碁。珍奇なほどに上品
    81 大久保、富国強兵のためにのみ人は存在する

    83 大久保、即答しないので有名
    88 隆盛?従道?新政府に名前届け間違いを放置
    93 人斬り半次郎

    105 西郷、酒は飲まない
    152 中村楼騒動、店壊した
    165 大隈、晩年は珍妙な自己肥大漢。外国人を怖がらず日本の利益主張、銭勘定が達者。2つの特性

    181 江藤、抜けている薩摩人を利用して切り崩し、長州も
    187 廃藩置県、島津久光は激怒
    190 天皇が明治5年に薩摩に行って怒りを解くことを狙う

    221 壮士・志士上がりの近衛軍(桐野)徴兵制の国防軍鎮台(山県)
    229 「朝鮮」国の名前は中国に決めてもらった
    237 禅と朱子学、武士の基

    248 木戸、山内容堂に「なぜ武市を殺したのか」酒席で聞く
    262 木戸の大久保嫌い
    272 コメ麦なし肉OKのダイエット、西郷
     
    279 黒田、酒精中毒者。人を尊敬できるのが長所
    292 江戸の名物、立小便。見せ付ける
    296 単衣、一着しかもたない、西郷。乾くの待つ、遅刻

    303 農民、維新にがっくり。租税負担重くなり徴兵
    316 島津重豪
    342 床の間を枕に寝る薩摩人。畳の上にアタマを載せない

  • 新国家が成立する過程が面白くて一気読みしてしまった。

    西郷隆盛と大久保利通。手を取り合って維新を遂げた2人の盟友が、維新後では理念の違いによって袂を別れる運命に歴史の因果を感じてしまう。

  • 大権力者にして粗末極まる生活をしている西郷は政治的考えにせよ傑物。

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

司馬遼太郎の作品

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