うつくしい子ども (文春文庫 い 47-2)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167174057

感想・レビュー・書評

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  • 石田衣良の初期作品の1つ。弟が犯した猟奇殺人事件の真の背景を、地元社会やマスコミの偏見と悪意をかいくぐりながら、14歳の主人公が探っていく、というストーリー。主人公の少年の躍動感や清々しさと、黒幕の少年の屈折したドス黒い心理の対照的な描写がうまい。物語の終盤まで(フィクションとは思えないほど)リアリティがあって良かったんだけど、結末だけ妙に芝居がかっていてリアリティに乏しかったところが、ちょっとアンバランスな感じで気になった。これがノンフィクションだったら、結末の部分は当然「金と権力で揉み消す」となるんだろうけど、それでは救いがなさすぎるし、この作品が成り立たなくなってしまうから仕方ないか。

  • 東京近郊常陸県東野市。「研究学園都市」として発展するその街のベットタウンの夢見山地区で、9歳の少女が行方不明になった。朝風新聞東野支局の山崎は事件を追う。一方、有名進学校に通う三村幹生は中学2年生。生物部の三村は学校裏手に連なる夢見山・奥ノ山をフィールドワークの拠点としていた。そして、その奥ノ山山頂の用具小屋で少女の遺体が発見さる。ロープで吊るされその背面には《夜の王子 PRINCE OF THE NIGHT これだけではない》の文字。静かな街がマスコミで騒然となったある日の早朝、幹生の家のチャイムがなった。犯人は弟。13歳だった・・・

    1997年、神戸の酒鬼薔薇事件が題材もしくは感化されて描かれた作品であるのは間違いなしで、フィクション作品であるがゆえのリアルさ・・・容赦ない描写だったり、歪みのない描写だったりと、正直ショックな作品でした。やっぱり石田さんはリアリズムの中の一遍を書き出すのは上手だなと思う。フィクション作品と解かっていても、現実の冷や汗感が抜けない・・・
    作品中では「少年A」の兄の視点から描かれていて、それは、現実起こった少年犯罪に対するマスコミや報道、世論に対する、石田衣良なりの揶揄がなんだろうな、と。物書きとしての表現し与えられる「想像力」っていう形でね。痛いなあ。
    作品の感想としては、とにかくリアルに想像してしまうせいか引き込まれてしまいました。「少年A」の兄となってしまった幹生に対する、嫌がらせ、マスコミの対応、受験を口実に騒ぎ立てるPTA・・・ただ救いなのは幹生の「それでも僕は夢見山中学が大好きなんだ」という言葉や、灰色の海の中で灰色の港まで泳ぎ続けるといった前向きさ。きっと幹生少年と一緒だから読み続けられたんだと思う。
    最後のオチに関しては賛否両論。社会派な作品を求める人には未熟で、あくまでもフィクションを求める人には安心を。私は結論がどっちでも面白いと思うんだろうなと思う。

  • もう10年近く前の本なんですが、最近の秋葉原の事件など見ると、若い子たちを取り巻く状況はちっとも良くなってないことを痛感します。
    books112

  • 何が正しいのか、何が正しくないのか深く考えさせられる作品。正義とは何なんだろうか。加害者と被害者当人同士だけではすまない所に難しさがある。加害者の関係者というだけで、被害者と無関係の第三者が責めたてるのは、正しいのだろうか。自分が正義側だとして、行動する時程、相手を深く傷つけることもできる。そのことは忘れてはいけないと感じた。

  • 犯罪を起こした少年の「兄」を主人公にした小説。

    事件を騒ぎ立てるマスコミや、家族に向かって行われる精神的な暴力。

    「正しさ」を盾に、攻撃を続けることは、果たして「正義」なのか。加害者側の視点から、事件を見た、お話です。

  •  最近、普通の本もちょこちょこ読んでるので、その感想でも。

     主人公は十四歳の少年。
     植物が好きで、友達とふざけあうことも好きで、にきびが気になって……
     という、どこにでもいる普通の少年。

     けれど、その少年が突然、普通じゃない事態に巻き込まれる。

     それは弟が九歳の女の子の殺人事件で逮捕されたこと。
     そのことで、彼の周辺は一変するけれど。

     彼はその状況に立ち向かうべく、一つの決意をする。

     という話でした。

     なんというか……
     これは事実じゃないからこういう感想は変なんだと思うけど。
     子どもって意外と強いんだな……って思いました。

     事件が起こる前の少年の生活は、一見、何の疑問もなくまともだったように見えていたけれど。
     事件が起こってから振り返ってみると、いろいろなことが矛盾に満ちていて。
     まともに動いているように見えたことが、実はそうじゃなかったりして。

     なんだかとっても難しい……。

     ただ、最後だけはどうしても納得がいかない!!
     少年らしい潔癖さ、といえばそうなんだろうけど。

     結局、少年は真相へと辿り着いて。
     それを表に出すことなく、飲み込んでしまう。

     なんだかなー……と。
     私だったらこのラストには納得しないけど。
     起きてしまったことには仕方がないかなー……。

     話自体はよかっただけに、その辺りがちょっと残念でした。」

  • とても、おもしろかった。
    意味も異議もある本。

  • 少年犯罪というのはとても難しいテーマだ。
    個人的には、未成年であろうが罪を犯したら大人と同じように罰せられるべきだと思う。自分が被害者の家族だったら、犯人に立ち直るチャンスなんて別に与えたく無い。

    少年犯罪のニュースを見るたびそんなことを考えていたが、この本を読むまでは「加害者の家族」の立場については殆ど考えたことが無かったことに気がついた。悪いのは加害者当人。家族が嫌がらせを甘んじて受けるのは間違っている。でも、、これももし自分が被害者の家族だったら、相手の家族まで憎くなるかもしれない。
    一番やってはいけないのは、被害者でも加害者でもない第三者が、好き勝手に加害者や被害者家族に嫌がらせをすることだ。

    終盤、「うつくしい子供」という題名についても深く考えさせられました。

  • 主人公の少年は中学2年生。

    妹の同級生が殺される事件が発生。

    犯人はなんと主人公の弟。

    弟が殺人を犯すに至ったいきさつ・理由を調べているうちにある結論へと至る…。

    加害者の兄という立場で被害者への償い、学校でのいじめ等に悩まされながらも果敢に生きている主人公の姿に共感しながら読みました。

    積ん読していた本だったけど、まぁまぁ面白かったです。

  • ひとつの話を、二人の視点から見つめており、その場面切替ごとにどんどん話に引き込まれていった。

  • 「うOこ食えよ~~」

  • 九歳の少女の殺人事件の犯人として補導されたのは13歳の自分の弟。十四歳の兄が、殺人者の心理を明かしていこうとする。
    両親の離婚、家族の崩壊など、事件後に生活は一変する。
    顔写真のネットへの流出など、神戸の事件を連想させる。
    先行する事件を基にしているが、兄の立場で語られることによって、事件の背景やその波紋がよく見えてくる。

  • 殺人犯は僕の弟。
    「大人になること。正しさの基準を外の世界にではなく自分自身の中心に捉えること。」

    ニュータウンにおける少年犯罪を舞台に、加害者家族と、新聞社の視点から切実に綴られる。
    僕がこの本を読んで思ったのは若い少年ほど大人なのではないか?ということ。美しすぎる心は犯罪をも生み出す。ニュータウンという時代が生み出した特殊な環境に順応していく大人と、ここが世界だと教え込まれる子どもの心。心の成長とはなんなのだろうか?

    よく分からないという意見もあるけど僕はこのリアリティーが好きでした。

    まず一章のパンチ力が凄い。石田衣良の中で一番好き。

  • やはり石田衣良の文章は好きです。
    IWGPに比べると締めが若干甘いが、全編を通して楽しめた!

  • quote:
    いつだってなにがあったって、ふざけていられるというのは立派な才能だ。
    Life is beautifulと同じメッセージだと思った。
    quote:
    大人になること。正しさの基準を外の世界にではなく自分自身の中心に据えること。
    まだよく意味が理解できないけど、良い言葉だと思った。

    あとがきが好きだった。

  • 殺人以外にも人がたくさん死んだけど
    ラストは友達と一緒だったからほっとした

  • おもしろかったんだけど、あちこちいろいろと引っかかる。そんな風に考えるかなあ。

  • うーん。何でしょう。

    決して絶望的な感じはしないけれど
    どうも私には希望は見えませんでした。

    人が沢山死んでしまったのが後味悪し。

  • え!?第一章読み終えたけど、現時点で「こども」全然うつくしくない…

    でも続き気になるから読むけど。


    で、読み終わった。
    しっくりこない…

  • 作者の顔のイメージで、作品を手に取る事を止めていた。
    (大学の先輩なのに、、、)
    でも読んでみると面白い!! さすが先輩!!

    少し時間が経ってしまい、時代が古くなった部分もあるが、文章の表現は何と言うか「優しさのあるシャープな感じ」が今読んでも感じる。
    ストーリ的には細部で少しどうかな?と言う所があるが、ラストは落ち着く所に落ち着いて、まあ納得という感じだ。

  • 石田衣良の描く中学~高校生くらいの男の子の話がすき。とらえてると思う。
    ただテーマが重すぎる。すっきりは全然しない。

  • 殺人を犯してしまった13歳の弟を持つ15歳の兄と、その事件を追う新聞記者の2つの視点で物語りは進められていく。

    この兄は、この事実に正面から向き合っている。
    学校からも、いじめからも逃げないのだ。
    これだけでも並大抵のことではないのに、
    今の自分には何ができるのかを考えるのだ。
    そして弟がどんな気持ちで妹と同じ歳の女の子を殺したのか、一体何が弟をそうさせてしまったのかということを知りたいと思い、調べていく。
    大の大人でもまいってしまうに違いない状況なのに、この強さはどこからくるのだろうか。

    一方で、新聞記者の視点では、マスコミ、犯罪報道の現状が描かれているように思う。
    犯人の家族への報道被害はあまり表に出ることはないとしても、実際は深刻なものだろう。
    真実を伝えるためにあるはずの報道が、逆に被害を加える立場になってしまう。
    そういったことを彼はわかっているからこそマスコミという立場に疑問を抱かずにはいられないのだ。

    加害者の家族も被害者となってしまうという現実を思い知らされた。
    加害者の家族への被害はインターネットが普及した現代社会によってさらに過酷なものとなる。

    作者からみた現代社会を鋭い視点で描いた物語だったと思う。

  • ジャガの成長していく姿が素晴らしい。

  • 11.12.25

    11.12.30読了

  • 少年犯罪や、心の成長に触れた作品。

    石田衣良の文体はあまり好きではないけれど、
    この作品は少年の心を表しているようでよかったです。

  • 殺人事件を起こした子供の家族側から見た話。
    ちょうど最近通り魔の犯人で中学生が捕まったので、報道を見て思ったことと照らし合わせながら読むことができ、とても考えさせられた。
    最後に警察官のお父さんが、このことは秘密にしてくれないだろうかといって自殺をするが、警察官としてどうかと思う。
    ここでわかりましたという主人公もきれいな終わり方にするためにそういう設定にしたんじゃないかと思い、現実味がない。
    それともすっきりしたいだけの私の偏った意見か…

  • 自分の子どもが犯した過ちを、その子と心中することで償おうとするなんて絶対間違ってるからな…!!

  • 酒鬼薔薇事件を元にしたサスペンス
    加害者である少年Aの兄を中心に物語りが進み
    弟が残虐な犯行に及んだ理由、取り巻く環境を知ろうとすることで
    兄や周囲が成長して行く。
    赦しではないが、理解しようとすることによって、救いにはなる。

  • 読むの二度目ですが大分忘れてしまっていた…。
    少年犯罪の話と思って読み始めましたが、寧ろ主人公の少年が成長していく過程の方が強く印象に残りました。
    嫌がらせに対して恐れもありつつ気丈に暮らしていこうとするミキオの姿にちょっと泣きそうになった。
    犯罪の内容そのものは結構えぐかったな。

  • こわい。こわかった。現実感ありすぎ。

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著者プロフィール

1960年東京生まれ。成蹊大学卒業。代理店勤務、フリーのコピーライターなどを経て97年「池袋ウエストゲートパーク」でオール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。2003年『4TEEN フォーティーン』で直木賞、06年『眠れぬ真珠』で島清恋愛文学賞、13年 『北斗 ある殺人者の回心』で中央公論文芸賞を受賞。他著書多数。

「2022年 『心心 東京の星、上海の月』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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