うつくしい子ども (文春文庫 い 47-2)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167174057

感想・レビュー・書評

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  • あの酒鬼薔薇聖斗事件が下地となっているミステリー小説。

    「ぼく」と「新聞記者」の2人の視点で話が進んで行きます。

    悲惨な結末を迎えますが、「ぼく」の成長していく姿が見える内容で良かったです。

  • 少年による殺人事件の社会への影響・加害者の周囲の人間模様の変化・加害者家族の苦悩が描かれており重く響くものがあった。追い立てられているような焦りを感じながら読み終わった。
    弟の起こした事件により地に突き落とされたが、弟を理解しようと自分の頭で考えだした兄の話には説得力がある。それに比べ、自分で考えることを放棄した弟は、家族と共にこれからどう意識のすり合わせをしていくのか。果てしない道のりに感じた。
    題材が題材だけに後味はよくない。

  • 平成29年11月29日?読了

  • 児童殺人を犯した少年・その家族の行く末。本当の殺人者は誰かを問う小説。ミステリー。少年犯罪の闇を鋭い視点で描いています。
    主人公は、殺人者の兄。犯罪者の兄ということで、世間から冷たい視線をあび、学校ではいじめを受ける。報道陣に囲まれた家に戻ることはできない。両親の離婚、引越etc。それらを乗り越えながら、心から信頼できる友達もいる主人公が「弟がどうして殺人を犯したのか」を追求していく。ラストには、衝撃的な真相が明らかに。
    子どもの心の闇。操るのは誰か。家族ではおぎなえない何か。美し過ぎる子どもは怖い。主人公の強さには拍手ですが、少年犯罪の恐怖に背筋が凍りつくような小説でした。

  • 夜の王子の壊れた感じ、生徒の統治の元で閉鎖された学舎、主人公の弟と夜の王子の関係、長沢くんの女装趣味など、お耽美好きにもそそる要素がありつつも、幻想ではなくリアリティがあり社会問題を皮肉的に書いている。

    事件の顛末はちょっとご都合主義かなーとも思ったけど、読みやすかったし、次の展開が気になるのでサラサラ読めた。

    主人公の親や家庭は、お母さんがちょっとあれなだけでまともだと思う。ただ、お母さんのちょっとな部分とお父さんのよくある適度な無関係さに犠牲になったのが、感受性の高い弟なのだろう。

    主人公とはるきと長沢くんはずっと友だちでいてほしいな。

  • 石田衣良にはいつも騙される。もちろん、良い方へ。

    これだって、ミステリーという枠組みになるんだろうけど、それだけで済む話ではない。

    何が正しくて、何が間違っているのか、なんて、とても一言じゃ言えない。

    犯罪を犯したから間違っているとか、直接手を下していないから間違っていないとか、そんな単純なものじゃない。

    これは、池袋ウエストゲートパークシリーズの中でも取り上げられている流れだけれど、法律に反していても、人間として正しいことは罰せられるべきではない、ということだ。

    みずみずしい文体と共に、心に残るテーマだ。

  • 裏表紙で誰が殺人事件の犯人かは分かってるはずなのに、どうなってしまうのかというドキドキが止まらない。子どもと大人の間の中学生が自分で決定することの大切さを知って大人になってく物語。

  • 2016.10 課題本

  • 13歳の弟が殺人の罪を犯したため、周囲からのイジメにあいながらも、弟の心理を理解しようとする兄の話。ミステリーではない、日本の現状を書いてる感じ。
    弟の犯罪の裏にあった、優秀すぎる狂った少年、こんな子がきっとたくさんいるんだよ。
    石田衣良やっぱうまいな。こんなのも書くんだ。
    なんというか、意外性とかはないが、スルスル読める話だった。

  • 内容的には97年に神戸で起きた児童殺害事件を連想させる。著者もそれを意識して書いたのだろうけど。
    加害者や被害者本人ではなく、加害者の兄の視点で物語を描いているという所が斬新なのだろうか?
    そもそもどこが「うつくしい」かったのか、タイトルの意味がよく理解できずだった。

  • 大人になると、子供を美化してるのかも。
    自分が子供だった頃は、美しかったと決して言えないし
    いろいろあったなー

  • 石田衣良さんの作品を久々に。
    あまり心に響かないのは今読んだからだろうか。

  • 神戸の酒鬼薔薇聖斗事件をモチーフとした作品でしょうか
    すごく考えさせられた内容

    夜の王子は本当に子どもの心の闇の中に潜んでいるのかもしれない

    でも、「4TEEN」のような、子どもらしさと友情も描かれていて、
    最後まで希望を持って読み終えることができました

    とにかくタイトルのつけ方が最高だと思う

  • 兄弟に感じる劣等感、リアルで悲しいけどなぜかまた読みたくなる本です。

  • 展開が分かりやすく面白かったが、よくあるパターンでもある。

  • 一人称と三人称がいりまじり書かれている石田衣良さんの作品。

    解説に酒鬼薔薇事件が元となって作られたと書かれており、なるほどなと思った。もちろん、解説を読むまでもなく、読み進めていくうちに、そうなんだろうなという想像ができた。

    10代の犯罪が変わらず起きているいま、この小説に書かれているように、加害者の家族の立場にたって書かれた本は希少だと思う。

    そういうのを想像できる本があれば、
    思いとどまる人もでてくる。そんな希望を私がもっているから。

    悲しく、やるせない小説だったけれど、大人としてちゃんと子供のことに向き合っていきたいと思った。

  • 殺人事件を起こした犯人の兄弟の本と言えば、東野圭吾さんの手紙を読んだことがありましたが、手紙は犯人の弟が社会的な困難に直面するのに対し、ここでは犯人の14歳の兄が13歳の弟の事件に向き合い、その心情の変化について丁寧に描写されています。きちんと向き合うと決断した幹雄は偉いと思いますが、幹雄を始め周囲の人物が中2にしては大人びています。特に夜の王子に関しては、中2にあそこまでのことは無理だと思います。けれども幹雄が事件を前向きに捉え、立ち向かって行く様は立派でした。私も幹雄のように強かでありたいです。

  • 幼女を殺害した弟の真理に寄り添おうと決意する兄が、夜の王子と闘う苦難と成長の物語。
    画一的閉鎖的な学校空間で得られた価値ある友情と、人知れず築かれていた王政がだんだんと暴かれる過程は学園ミステリ感が楽しめてとまらない。爽やかな友情と誠実な感性が眩しい青春風味は石田先生らしく、その分 真相と対面してからの展開の後味悪さが際立った。もっと軽めの着地を予想させたけどなぁ。全体としてはよりたくさんの人が傷つき血を流す陰惨な話だった。そう思うと加害者親族視点で問題を捉える本作として、エンタメ性に寄って主軸から逸れたような印象もあった中盤の謎解き部分はまさに装飾パートであり、加害者親族として経験する感情と、最終章で重ねられた絶望感こそが本題なのかも。濡れたビー玉の目をした弟との面会は、多分その精神状態という発想がなくて素直にショックうけたし、それも現実だとなんだか府に落ちてしまった。。思った以上に救われないはなしで、びっくり。でもだからこそ心に残る作品だったとおもう。

  • 自分も息子がいるので、こういった作品はついつい引き込まれる。これもまたかなり泣いた。これを読んで石田衣良さん好きになった。

  • 頭良過ぎ。コワ過ぎ。

  • タイトルの意味が最初はよくわからなかった。最初のほうで、主人公の少年の母親が主人公の弟をさして「この子はうつくしい子どもよ」というシーンがあるので、そこから取られているのだろうというのはわかったのだが、何故このタイトルにしたのか、というのがずっとわからなかったのだ。

    ついでに言えば、石田衣良は以前何かを読んで、結局読みきれずに挫折して切り捨てた作家だった。それが何を思ったのか、何故か読もうと思ったのだから、きっと縁があったのだろう。読書はこうやってインスピレーションで縁がつながっていくから面白い。

    作中で起こる殺人事件がメインなのでミステリーにカテゴライズしたが、これはれっきとした中学生の青春小説だ。『波のうえの魔術師』も読んだが、こちらも20代前半の青年の成長・青春小説。
    この二冊しか読んでいないのに決め付けるのは危険だが、多分、この作者は若者の成長小説や青春小説を書くのがバツグンにうまいのだろう(一番有名な『池袋……』はなんとなく敬遠しているのだけど)。そして登場人物や舞台の設定がうまい。このあたりは元広告マンだからなのかな。


    東京からほど近いニュータウンに住む家族が主人公。
    近くの研究所に勤める父親、教育熱心でステージママの母親、中学2年生の主人公、最近ちょっと暗い中学1年の弟、チャイルドモデルをしている小学生の妹の5人家族。

    主人公は、顔にはニキビがたくさんあるような、弟や妹とは少し違う「うつくしくない」少年。
    この街の子供たちの間で広まっている恐怖の対象として「夜の王子」というのがある。昔でいう口裂け女のようなものだ。
    ところが、本当にその夜の王子が殺人事件を起こす。さあ、夜の王子とは誰!?

    ……とはいえ、案外あっさりその殺人事件の犯人は判明する。帯にも書いてあるらしいから、ここにも書こう。主人公の弟なのだ。
    警察が家にやってきてから、家族は崩壊する。主人公も学校でイジメを受けるようになる。
    だが、ここからがこの物語の本題。
    今まで、難しいことを考えるのは苦手、などと言ってきた主人公が、しっかりとゆっくりとじっくりと自分なりに弟の犯行の動機を調べることを通じて、強く、逞しく成長していく姿が丁寧に描かれている。

    その成長ぶりを確認する役回りを担っているのが、新聞記者の青年。この青年も入社して数年しかたっておらず、記者としてはまだひよっこ。ひよっこなりに今回の事件に真摯に向き合う。
    主人公の少年と知り合うことになるのだが、少年の成長を見届けながら青年もまた成長していく姿が見られる。

    ヘンテコな恋愛小説なんかじゃなくって、こういう小説をもっと書けばいいのに……と思ったりした(笑)。

  • 「13歳の弟は猟奇殺人犯!?」
    石田衣良らしい作品。
    IWGPの話の中に出てきてもおかしくないような
    キャラクターが何人か出てくる。
    あらすじからこの話の犯人を予めあかしてしまっているっていう珍しい帯の文章。殺人犯が誰なのかっていう事が大事なんじゃなくてそれを知った兄の語りから物語は始まったように感じた。話の内容をもっと重いものにも出来ただろうけど、そこは石田衣良。思春期だったりいろんな要素を兼ね備えて希望を紡ぎだして一歩一歩前に進んでいく。今どんな大人になっているんだろ。

  • 重い話ではあるが、ジャガの成長を通して少しの希望を見させてくれる。
    ハラハラするようなスリリングな部分もあり、先が気になる本だった。

  • おもしろかったよ。
    やわらかい表現で、重めのテーマ。いいね。

  •  着眼は非常に好きになれたので、やはり登場した中学生がありえないほど大人びた考えやしゃべり方をするのが気になりました。

     それともいまどきあんなかんじなのでしょうか。

  • 子どもが犯してしまった殺人という罪。加害者側で書かれていて、あまりにつらい事件だが、救いもある。東野圭吾の手紙のように、加害者について、そして、これは子どもであることについて、深く考えさせられる。

  • 例の神戸の事件も、もう過去の話になったけど、現在では、もっと酷い事件が頻繁に起こっているという事が恐ろしい。人を殺してみたかったからと同級生を殺す女子高生。そもそも、人を殺すことは、年齢など関係ないのかもしれない。子供の残虐性は大人のそれより強いものだし、理性のコントロールだって子供の方が失うものがない分弱いかも。この前読んだソロモンの偽証でもそうだけど、子供達はそんなに閉塞感や絶望感を抱きながら生きてるのかな?わたしの中学んときなんか、なーんも考えてなかったけどな。ただ部活動と給食と好きな子の事だけ考えてた。この小説は、兄の語り口が優しいので文書自体重苦しくはなってないのが救いだが、世間の目の冷たさや虐めなど人間って、ここぞとばかり叩きまくるよな。強くならないとこの世は渡っていけませんな。

  • 9歳の女の子を殺した13歳の少年の兄の物語。

    テーマはすごくそそられたが、やはり重過ぎたのだろうか・・ラストがしっくり来なかった。

    最後に兄は選択をせまられる。

    兄が下した決断は、事件後、兄が体験した様々な辛い出来事により、成長した事を表したかったのだろうが・・

    殺人はそんなものではない。

    そんな綺麗ごとですませてはいけない。

    殺された娘の母親が、娘のお墓で兄と対峙するシーンがあるが、そのシーンもすごく違和感を感じた。

    殺人とはもっと重いものだと思う。

  • 石田さんのいいところでもあるさらさら読めるうつくしい文章ですが
    この題材を扱うにはさらさらしすぎかな・・と思いました
    深く考えさせられる力がなくさらさら流れていった印象

  •  石田衣良ってのは、僕の中では「14」と「池袋ウェストゲートパーク」を書いた人。「暗い」話は似合わないと思ってたので、人の「悪意」の深淵を覗くようなこの小説はちょっと驚き。で、それが実は長編第1作って聞いてもっと驚いた。
     つくばを思い起こさせる無機的な「ニュータウン」での少女殺人事件と、その背景を丁寧に描いた小説。中学生にしてここまで他人をコントロールしようとする人間が本当にいるのかどうかは別として、話の骨格がしっかりしてて、変な言い方をすれば安心して読める力作。
     レビューの点が低いのが不思議でした。お薦めです。

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著者プロフィール

1960年東京生まれ。成蹊大学卒業。代理店勤務、フリーのコピーライターなどを経て97年「池袋ウエストゲートパーク」でオール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。2003年『4TEEN フォーティーン』で直木賞、06年『眠れぬ真珠』で島清恋愛文学賞、13年 『北斗 ある殺人者の回心』で中央公論文芸賞を受賞。他著書多数。

「2022年 『心心 東京の星、上海の月』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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