うつくしい子ども (文春文庫 い 47-2)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • / ISBN・EAN: 9784167174057

感想・レビュー・書評

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  • これ、小学生と中学生の話。
    これでもかと言うほど暗い。

    巷を騒がす少女惨殺事件の犯人は、僕の弟だった。

    これだけ聞いたら、残された家族を取り巻くヒューマンドラマみたいなんイメージしがちやけど、
    いや間違ってはないけど、
    こんな歪んだ子供ばっかの学校嫌や。

    物語では得てして、歪んだ人間ほど美しい。

    「夜の王子さま」を中学の夏休みの宿題で書いて出してやろうかと本気で考えてた。

  • 幹生はニュータウンに住む中学二年生。ある日その閑静な住宅街で9歳の少女の殺人事件が起き、辺りは騒然となる。なんと警察に補導されたのは幹生の弟、13歳のカズシだった。驚きと悲しみを表わす間もなく たちまち世間の非難の矢面に立たされ、慣れ親しんだ家を離れざるを得なくなった幹生の家族。ある日、妹のミズハが言った「お兄ちゃんは、なんであんなことしたんだろう?」という言葉に突き動かされ、幹生はカズシが何故そのような恐ろしい行為に及んだのかーーという真実を求めて、調べてみようと試みる。

    この話は一見 恐ろしげなミステリーのようだが、加害者の家族としての幹生の生きかた、考え方に重きを置かれていてとても勇気が出てくる話だ。本来ならある意味被害者ともいえる幹生であるが弟思いの強い言葉が胸を打つ。
    “最悪の行いでも、誰かが分かってやる必要があるのではないか。そうしないと犯罪を犯した人は一生ひとりぼっちになってしまう。最低の人間だって誰かがそばに寄り添ってあげていいはずだ。それがぼくの弟ならなおさらじゃないか”という気持ちと共に幹生は今までカズシと通った中学校に戻って調べはじめる。復帰した学校では周りのシカトや陰湿なイタズラなどに悩まされるが以前からの友達が支えになり、だんだんと幹生は核心に近づいてゆく。
    妹のミズハや弟のカズシは小さい頃から「うつくしい子ども」と母から言われて芸能活動をしたりしていたが幹生の方は顔中に吹き出物が出来ていて、友達からも「ジャガ」と呼ばれるくらいだった。
    でもこの「うつくしい子ども」というタイトルはうつくしい心を持った子ども、幹生のことなんだろうなぁと思う。
    話の背景は鬱々としてはいるが、それをはねのけるくらい勇敢な幹生の行動にどんどん読み進めてしまった。

  • こんな強い子供いないでしょ、ってくらい主人公が強い。し、なんか危なくてハラハラするんだけど、全部うまくいっちゃう。子供というより、話がうつくしすぎる。きれいに収まる。

    だから、いかにも「お話」って感じだけど、でも友情が芽生えたとことか、なんか心温まる点でとても好き。松浦君が死ぬ以外に救われる方法があればよかったなー。というか松浦君が仕掛けてこなかったら主人公はどうするつもりだったんだろう。ナイフをどうしてたんだろう。。。。。。。。

  • 殺人事件の加害者の家族にスポットをあてた話。きっと今まで現実世界で起きた事件には、すべて加害者の家族の苦悩があるんだろうと考えさせられました。

  • 弟が殺人犯の犯人だった…。
    一歳上の兄は、彼の犯行の動機を探していくことを決意する。
    主人公と周囲の友人達が素晴らしい。
    14歳とは思えない発言と行動力。
    但し、弟が最後まで救われない。
    でも、そういうものなのかもしれない。

  • 神戸の酒鬼薔薇聖斗事件をモチーフとした作品でしょうか
    すごく考えさせられた内容

    夜の王子は本当に子供の心の闇の中に潜んでいるのかもしれない

    でも、「4TEEN」のような、子供らしさと友情も描かれていて
    最後まで希望を持って読み終えることができました

    タイトルのつけ方が最高だと思う

  • 読んだ?

  • 2010/09/04読了
    すごい、久しぶりにこんな読みごたえのある小説を読んだ気がする。
    こんな小説をいつか書いてみたい!と思ったのと、これを作った石田さんはとてもしんどかっただろうなあ。
    主人公はマスコミの一人である新聞社の人間と、加害者の兄
    閉鎖空間の中での出来事で、それは社会的にも大きいもので。
    マスコミとかPTAとか、そのどれでもない人間とかの実態は辛かった。読んでいて。
    そこで大抵の人は耐えられなくなるだろうし。
    だけど、ジャガは本当によく頑張ったと思う。それは弟のためであり、自分自身のためであっただろう。
    ここまででも十分考えさせられるけれど、ここからの展開、そしてクライマックスは鳥肌ものだった。
    愛する息子の自白を聞いた父親の想いはいかなるものだったのだろうか
    そして「ロボット」となった弟は…
    いじめの黒幕が死んだとしても到底ジャガを含む家族や友達たちへの風当たりは厳しいだろう。
    それよりその、ニュータウン・学校という環境が。
    クライマックスに向かってゆくにつれて、確かに王子は黒幕であり、マリオネットとして子供たちを操った
    間接的な殺人犯だ。けれど、それを作りだした環境があり、それを軸にしたネットワークが生まれてしまったとか。
    誰もが被害者で、加害者
    考えさせられることは多くある。身近に起こった事件の、どんな小さなそれにもある、歪みの様なものだ。
    PTAとかマスコミとかにも読んでもらいたいものだ。
    子供はしょせん子供だと、決めつける前に。

  • 中学生の話なんだけど、シリアスな内容で面白いです。

  • 少年による理解しがたい猟奇的殺人という題材は、
    TVでの容疑者とその家族などに対する避難や
    理由探しによる他責隔離というイメージだったが
    容疑者の兄が事件について考えるというスタンスが
    とても面白かったと思います

    ただ、最終的な意思決定者を外にしちゃった
    というのはやや残念で、弟自身が決定し
    兄としてその問題とどう向き合っていくのか
    というストーリーのほうがより興味が湧いたように思います

    本編とは関係ないですが、
    “だってそんなのただの言葉だから”
    という言葉が妙に心に残りました

  • P273
    「ぼくも夜の王子が誰かわかったよ。
    それから、あの王子は死んだ。
    かわいそうな最後だったけれど、
    これでミズハに心配はなくなった」

  • まあ、面白かったです。

    サカキバラ事件が元になってるんだろうなぁ・・・
    もっと暗く重い話かと思ってたけど、案外軽いノリでした。
    敢えてそうしたんだろうけどね・・・

    う~~ん、難しい問題だ・・・

  • 少年犯罪をモチーフのミステリー。
    実際の事件を題材にしており現代社会における問題や矛盾を問いかける作品。

    そもそも犯罪というものは何なのか?
    先日あるテレビ番組をみていたときこの話題が取り上げられ、「その事件に関わった人は事件後すべての人が幸せになっていない。皆一様に不幸になっている。」
    と元科捜研の人が言っていました。
    犯罪は未来永劫なくならないものだとしても少しでも減らすために、何ができるか。
    私は想像力がとても大切だと考えています。

  • 「弟が九歳の女児を絞殺」
    内容が重いですがラストまでぐいぐい引き込まれる程面白かった。
    主人公が弟の思いを知る為に真相に迫る、と
    加害者サイドの視点で物語は進みながら、主人公(ジャガ)をとりまく家と社会が描かれています。
    事件によって起こる学校でのいじめ、執拗な報道に晒されながらそれでも、負けない心を持った主人公は子供でありながらとても強い。
    そして彼はひとりではなかった事に救いがあります。

    人権とは都合がいい言葉だと嘲笑する場面がひっかかった。
    事件で日常が崩壊した今、そんなものは在るようでなくけして護られるものではないとどこか悟っている子供達がかなしくも、どこか大人めいていておそろしい。

    誰もがそれに失望するときが来ないとは言い切れない世の中、「これで終わりではない」という言葉は重い。

  • 表紙とタイトルで選んだので読んで衝撃を受けた。
    加害者家族にあたる容赦ないメディアや世間の風・・・
    少年犯罪の後は、加害者の家族もまた被害者となるという事実。
    その中で、壊れてしまった家族、家族に何が足りなくなってしまったのか、弟になにがあったのか知ろうと努力する兄の姿に感銘を受けました。。
    これ以来、石田衣良ファンだがこれが1番好きな作品。

  • 東野圭吾の「手紙」と合わせて読みたい本。
    自分の弟が猟奇的殺人の加害者になった兄のとまどいが描かれていて、考えさせられる。
    こんなお兄さんみたいになる家族が出ない世の中になりますように。

  • 話の内容はすごく重い。。。
    だけど、なんか読み終わった後に不思議と爽快感を感じることのできる本。

    それはきっと主人公のひたむきさと強さから来ているのだと思う。
    目の前で目まぐるしく変わる現実に流されないように、
    しっかり地に足をつけて歩ける人間になりたいと思う。

  • どんな差別や苛めを受けようとも、兄は、弟が犯した殺人事件の真相を追求していく。

    東野圭吾の『手紙』を先に読んでしまったので、犯罪加害者の家族が被る差別や苛め、冷遇については、甘いというか、大したことがなく、ややリアリティに欠けると感じた。でも、文章は読みやすく、作品の構成も二者の観点(報道する側、される側)から交互に描かれているので、最後まで退屈せずに読了できた。話の節々に珍しい植物の名前が登場するので、そちらもつい、調べてしまった。

    “読後感が悪い小説”と言われているようだけど、そうでもなかった。最後は一応、事件解決。

  • 石田衣良さんの作品を読むのは『池袋ウエストゲートパーク』以来でした。読みやすい!

    ニュータウンで起きた女児殺害事件。その犯人であるカズシの兄・ミキオが、「なぜ、弟は殺人を犯したか」を調べていく。
    犯人の家族だからという理由で嫌がらせにあっても、めげずに調査を続けていくミキオ。
    それは、大切な友達が協力してくれたおかげかも。ミキオと友達だから嫌がらせをされているのに一緒にいてくれるのは、本当の友達だからだ。強い。
    カズシの背景に浮かび上がってきたのは、カズシの指導生だった松浦くん(父親は警察署長)。成績優秀で学級委員もつとめ、秀才な彼には裏の顔が…。
    歪んでしまった松浦くんが恐かったな。

  • 小学生を殺した僕の弟、13歳。歪んだ心を持つ子供。子供の幸せを願わない親はいない。なのに何故だろう?

  • ★2010年81冊目読了『うつくしい子ども』石田衣良著 評価B
    石田衣良らしく現代日本社会に潜む親と子の溝、管理社会の縮図となった学校などを背景に、そこで起こりえる事件を神戸の酒鬼薔薇事件を下敷きにしながら紡ぎ出したある断片が物語を構成している。
    サスペンスとしてよりも、日常社会の異常性に着目して書かれており、その観点で読めると面白い作品だと思います。
    結局、悲劇的な結末で物語は終わることになるのですが、全編に流れる石田氏の時代に対する皮膚感覚には秀逸のものがやはり感じられます。

  • 1997年に神戸で起きた酒鬼薔薇事件を覚えているだろうか?
    この作品、土台にあるのはこの事件である。作家・石田衣良にとって、この事件は相当な衝撃を与えたに違いないことは、本作を読めば判然とするだろう。ミステリという枠内に収まらず、現代社会を照射した問題作として単行本発売当時から話題になっていた。
    13歳にして殺人犯となった少年A、そして「犯罪者の兄」となった「僕」。そしてこの兄弟を取り巻く家族、学校、街、社会・・・。どこかしら現実味を帯びた内容はフィクションのようであり、一方ノンフィクションのようでもある。土台にある酒鬼薔薇事件を真摯に受け止めた筆者の意志が随所に見受けられ、その文章一つ一つに、さまざまな願いが込められているように思う。
    小説としての読み応えは十分にある。ただ、この作品を読んだ人が、どのような感想を持つか。作品そのものの良し悪しよりも、そちらの方が問題であることは言うまでも無い。

    2001年12月/文藝春秋/文春文庫

  • 所持。

  • 自分が生きている、違う世界を目の当たりにした1冊。
    これが現実なんだと思い知った。

    衣良 作品の最初の読本となったが、言葉巧みな文章構成に感動と言うより、言葉の無い歓声が自分の中に広がっていた。
    ストーリーと文章構成の両方ともに、衣良作品のファンになってしまったのである。。

  • 最初のうちは読みにくかった。
    事件もの?をあまり読まないし、好きでもなかったからかな。
    けど途中からすごく引き込まれた。
    好きな本。

  • 中学生時代に読みたかった!と心から思う本。
    社会に対する警告や挑発が多く、一瞬、めんどくさい作品なのかな・・・とも思いましたが、ぜんぜん。
    読み終わった後は爽やかで優しい気持ちになれました。

  • 中学生とは思えない、できた大人なお兄ちゃんだね。

    弟のことはあえてよくわからないままなんだろうか。

  • 困ったときは、石田衣良。
    といっても過言ではないほど読みたい本がなかなか決まらないときなんかは石田衣良を選んでしまう。

    だからなのか?
    これも途中まで読んで気づく。。。
    これ、、、読んだことある…汗

    殺人を犯した弟のために、冴えないあばたのジャガが
    事件の闇を解き明かす。

    石田衣良を読んでると、
    架空のはずの主人公が自分に本当に語りかけてくるような
    錯覚を感じる。

    一度読んだのに、2回目もまたおもしろい。
    共通して印象に残ったのは、やっぱり夜の王子のはなし。

    ラストは、なんか悔しい。

    夜の王子は、死んじゃったの?

    松浦署長も巻き込まなくてもいいんじゃないの?

    新聞記者は記事にして事件を解明しなくてよかったの?

    弟は元気になっても、結局はまた支配されているだけ。。。


    やりきれないね、、、ジャガ。

  • 池袋ウエストゲートパークを書いた、石田衣良の作品。誰もが平和に過ごしているニュータウン。だが住宅街を震撼させる事件が起きた。9歳の少女が猟奇的な方法で殺されたのだ。そんなことが身近に起きたらどうしますか? ベースは1997年に起こったある事件。マスコミに翻弄される地域住民たち。大人たちの喧騒を遠くから見ていたはずだった14歳の少年に知らされた事件の結末は今までの生活をひっくり返してしまうようなことだった。「殺人犯はぼくの弟だった。」事件の闇を調べ始めた兄は更なる闇を発見する。子どもの視点で事件を追っていくミステリーです。

    (熊本大学学生)

  • 殺人を犯した少年の兄が、事件の真相を探っていく話。マスコミがわらわら叩いてきて皆遠巻きの中、一緒に事件を追ったり味方してくれる仲間との友情が素敵だった。だからこそあの嫌がらせは我慢ならなかったというか、長沢くん・・・!というか。彼が生きてて本当に良かった。ウエストゲートパークみたいに主人公の一人称なのがまた良い感じ。石田さんのこういう書き味好きだなぁ。

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著者プロフィール

1960年東京生まれ。成蹊大学卒業。代理店勤務、フリーのコピーライターなどを経て97年「池袋ウエストゲートパーク」でオール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。2003年『4TEEN フォーティーン』で直木賞、06年『眠れぬ真珠』で島清恋愛文学賞、13年 『北斗 ある殺人者の回心』で中央公論文芸賞を受賞。他著書多数。

「2022年 『心心 東京の星、上海の月』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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