第七官界彷徨 (河出文庫 お 19-1)

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 1910
感想 : 185
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  • Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309409719

感想・レビュー・書評

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  • 女の子というものは

  • 水彩画のような瑞々しい言葉と独特な読みにくさは、理解することを諦めさせふわふわと漂うだけで良いのだと気づく

  • 帰りたい思う気持ちに対し、ふる里や実家などのものを、真に求めているのではないように、その感じ方の果てでも、たえまなく注ぐ感性の束。
    はっきりと意識してはないが、どこかで感じたことのあるような、向き合いにくい、空を見ているのに井戸の底を眺めているような感じ。
    理屈ではなく、成長によって得られるものと云えば保証はできなさそうだし、流れるように話は進んでゆく。

    いつか英語を勉強した時、アクセントにびっくりした思い出がある。日本語ではそんなものはないと思うし(訛りを別とすれば)、意識もしたことがなかった。
    だからこそ日本語は流れるように美しいと感じるし(抑揚がないといえば悪いかもしれない)、こういった小説に出会うと、著者が日本人でかつ日本語に堪能で、ちょうど自分の手元にあって読むことができるこの境遇に感謝しなくてはならないだろう。

  • みんなの気持ちの表現が控えめで、「月がきれいですね」を彷彿とさせる。

  • 作家の名前だけは知っていて、そのうち読んでみようかと思っていた。
    読みにくくはないけれど読んでいて不思議な感覚になる文体。
    時代の雰囲気なのか独自の文章なのか。
    兄弟・従兄弟らしい関係なのに、ここも不思議な距離感。
    分裂症の研究・蘚(こけ)の研究を語りながら
    個々の恋のようなものも見えて
    どれも恋愛になっているのかいないのか分からない
    形のない気持ちが全体にふわふわ漂っていて
    読み終わって後も捉えどころのない感じがあるけど
    決して不快ではない。
    こういう文章は、今は書けないのでは。

  • 80年以上も前にこのような小説が書かれていたとは様々な意味でたいへん興味深い。

    いや、自分が勝手にそう思い込んでいるだけで、戦前の祖父、祖母たちもこんな瑞々しい青春時代を過ごしていた(そうでなくても、思いを馳せて楽しんでいた)のかもしれない。

  • うーん。よくわからなかった…
    何回も読めば理解できるのかもしれない。

  • 映画的手法を用いたということで、説明が少なく、描写のみの場面が多いのでなかなか状況を掴めず、読み始めは苦戦。
    第七官とは、五感といわゆる第六感に次ぐ第七の感覚という意味らしい。そのためか、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚に訴える表現が多数。町子の赤毛、大根の白、こやしの黄色、めちゃくちゃなコミックオペラ、こやしを煮る匂い、酸っぱい蜜柑、町子の髪の毛。そして恐らく第六感を意味する分裂心理と恋愛。これらをヒントに町子は第七官を捉え得るのか。登場人物に四を除く一から六までが入る名前を持たせてるのも意味深。町子が詩を書く属性を持つため、音の共通によって詩=四で、町子が四を担うと言う説もあるそうな。
    独特すぎる兄二人と従兄と、視点人物である町子、みな愛らしく魅力的。兄二人と従兄は何故町子を「女の子」と呼ぶのか。謎が多く、興味深い一作。他の翠作品もよんでみたい。

  • 所在:紀三井寺館1F 請求記号:Browsing
    和医大OPAC→http://opac.wakayama-med.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=68578

    一度は文壇から忘れられ、晩年再び評価された作家、尾崎翠の最高傑作。ほかにも素晴らしい作品はいくつもあるが、あえて言おう、「第七官界彷徨」が最高傑作であると。

    まずこのタイトルからしてすでに傑作。本好きならタイトル買い必至、ものすごい言語感覚。
    そしていったい日本文学の古典なのかそれともSFなのかと思って読み始めたら、なんとこれは少女漫画ではないか!
    兄弟と従兄との、下宿での共同生活。ふわふわした会話。兄弟らは主人公の町子を「うちの女の子」と呼ぶ。従兄の三五郎のセリフはこうである。「しかし、女の子というものは、こんな晩には、あとで一人になってから、いつまでも泣いてるものではないのか」ーうん、もう絶対、少女漫画。

    尾崎翠にしか書けない文体の妙だとか、計算されつくした構成だとか、メタファーだとか、小難しく説明することもできるかもしれないけど、もう古き良き少女漫画だと思って、臆せず読んでみてください。
    国語の教科書にも、こういう日本文学が載ってれば良かったのにと思わずにはいられませんよ。

    とにかく、トキメキたければこれを読め!

    ※で、トキメいたあなたは、この後「こおろぎ嬢」「アップルパイの午後」等が収録された『尾崎翠 (ちくま日本文学 4) 』をお読みください。
    ※あとこの本、売れっ子装丁家、名久井直子さんによるカバーデザインの愛らしさがたまりません。ぜひ図書館でお手にとってご覧ください。

  • 駄目だ一体なにが起こっているのか読んでいてさっぱりわからないけれど、文章が好きなので☆3つ。

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著者プロフィール

1896年鳥取生。女学校時代投稿を始め、故郷で代用教員の後上京。日本女子大在学中「無風帯から」、中退後「第七官界彷徨」等を発表。32年、病のため帰郷し音信を絶つ。のちに再発見されたが執筆を固辞。71年死去

「2013年 『琉璃玉の耳輪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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